奥様秘密倶楽部、える。
マスター名：白河ゆう
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| ■オープニング本文 地位や体面を重んじる武家や高貴なる家柄。中には贅も得てこの世の謳歌を暮らす向きもある。 古きしきたりや夫や親族の求めに縛られ、必ずしも自由気ままに贅沢三昧という訳でもなく。 華やかなる添え物の妻として、奥を仕切る大黒として、鬱憤や悩みを募らせる事には欠かず。 誰が始めたのであろう。それを解消する為の会合がいつしか作られていた。 初めは数人の茶会だったらしい。ごく普通の。 ただ彼女達は同じ趣味を持っていた。加虐や被虐に喜びを見出す人には明かせぬ趣味。 姿や身分を隠し、こっそりと趣味を満たすうちにその甘美さに捕らわれ。 安心して遊べる場所を――。 一人の未亡人が私財を投げ打って彼女達の為の場所を創った。 奥様秘密倶楽部。 正式な名称ではない。正式な名称など必要ない。 秘密裏に集まる事ができ、ゆっくりと誰にも知られぬ時間を過ごせ、口の固い人材のみが仕える。 紹介で人の輪は広がり、実際何人所属しているのかは元締め以外は誰も知らぬ。 建物の場所も厳密に秘匿されていた。 ●新メンバー参入 淑やかに天儀伝統の着物に身を包み、黄金色の豊かな髪を近隣の奥方達と同じ形の髷に纏めた女性。 年の頃はまだ四十路には掛からぬ頃合か。穏やかな微笑みには小皺もあるが、相応の美しさに欠かせぬ要素として完成している。 静かに深緑の水面を佇ませる茶碗を置き、白い指先で取り出した懐紙で縁に付いてしまった紅を拭う。 「お仲間に入れて戴けるのですか……エルは幸せ者でございます」 彼女の名は綾元（あやもと）エレオノーレ。 生まれはジルベリアだが、交わる文化の流入により魅せられた天儀に身ひとつで空を越えてきた。 右も左も判らぬ土地で、天真爛漫な彼女は騙され危うく花柳の郭に身を沈める寸前だったのを運命の出逢いで逃れた。 お忍びで放蕩に出向いていた働きもせず世襲の財ばかり食い潰す駄目男だが心根は悪くない年下の青年と手を取り合い。 嫁取りの条件として一族に押し込められた定職に怠惰ながらも勤める夫を支える賢妻として新たな道を歩み始めたばかり。 何処の馬の骨、遊女上がりと勝手な噂を立てられ、近隣の上流夫人達の輪からは妬み嫉みで爪弾きに不遇の扱いを受ける。 そんなエレオノーレに何の分け隔てもなく接してくれるのは、本家御曹司の奥方である綾元 杏（あやもと あず）と、彼女が慕い親しくする二人の奥様達だけであった。 志太 可南子（しだ かなこ）と朽木 真弓（くちき まゆみ）は鏡餅と竹竿に例えられる体型の対照的な二人組だが、たいそう仲が良くいつも一緒に居る。 今日も、二人の茶飲み話に一緒にどや？と声を掛けられて、まったりとした楽しい時間を過ごしていた。 「絶対に旦那にも秘密やで。エルはんも最初は戸惑うかもしれへんが、きっとやみつきになりはると思うわ」 「杏さんもご一緒できるよう手配しますから、心配は要りませんわ」 「会合には特殊な規則もあるんやけど、たいした事やあらへん。簡単やから後で教えるから、それでええね？」 その時はまだ、どのような内容の集まりであるかエレオノーレには、想像も付くはずがなかった。 ●江夢の間にて 趣味に徹した衣装を纏いジルベリア風の源氏名で呼び合う。 規則は簡単だ。決して本名で呼び合ってはならない。日常の事は全て、この建物を出るまで忘れる事。 「エレオノーレはんは、そのままでもええけど。やっぱり別の名前にした方が楽しめるんでないやろか」 「どのような名前がいいかしら。ちなみに私はエカテリーナ、こちらはジョセフィーヌとフランソワですわ」 鏡餅体型の中年奥様もといジョセフィーヌは、昨年末に新調したという豪奢な毛皮を纏い、ぶっとい編み上げのブーツを履いている。 竹竿体型の中年奥様もといエカテリーナは、肌にぴったりとした革衣装で全身を覆っている。 華奢で小柄な若奥様もといフランソワは、胸と腰だけを覆った水着に踵が床板に突き刺さりそうに細いハイヒール。 そして揃いの目元だけを覆った仮面。 「あまり違っても、その……判らなくなりそうですし。ではエルフリーデで」 エレオノーレもといエルフリーデ、やっぱり愛称はエル、の衣装は漆黒の長襦袢一枚。 「相手は全て承知でらっしゃるから、遠慮は要りませんからね」 かつて初々しく頬を染めていたフランソワは、嬉々として備え付けの道具の具合を確かめていた。 さあ、恍惚の宴を今宵も――。 鞭に蝋燭。短刀。鋸。畳針。板棒。荒縄。目隠し布に猿轡。 冷水に熱湯に蜂蜜、卵、小麦粉、葱、塩、砂糖、醤油、味噌、高級酒。蜘蛛や蟻を封じた壷。 紐を引くと降りる仕掛けになっている針天井。寝台も仕掛けで傾けたり分割できるそうな。 鎖鉄球付きの足枷。散歩紐付きの犬用首輪。罪人の膝に抱かせるような切り石。 ここまでは何故か備え付けである。 「今度はヴォトカを咽る程に喉へ注ぎ込んで、全身真っ赤でへろへろになりながら泣き叫ぶ姿も見てみたいですわね」 「漏斗なら用意してございましてよ。鞭でひりひりになった肌に唐辛子味噌を塗っても面白いのじゃなくて？」 「そういえば別の会合で野菜を使った責めというのもあったとか……山芋も仕入れて貰いました」 「随分と大量だこと……どうやって使うのかしら」 「摩り下ろして垂らすと、面白い反応が見られるらしいですけど。想像するだけで痒くなりそう」 「エルフリーデはんも気に入ったのあったら、色々試してみるとええで」 快楽の扉を叩く猛者よ、彼女達に煌く充足の時を与えたまえ。 |
■参加者一覧
雪ノ下 真沙羅（ia0224）18歳・女・志 
相川・勝一（ia0675）12歳・男・サ 
ネオン・Ｌ・メサイア（ia8051）26歳・女・シ 
エルディン・バウアー（ib0066）28歳・男・魔 
岩宿 太郎（ib0852）30歳・男・志 
リィムナ・ピサレット（ib5201）10歳・女・魔 
雁久良 霧依（ib9706）23歳・女・魔 
豊嶋 茴香（ib9931）26歳・女・魔 |
| ■リプレイ本文 奥様方の代理人だとかいう者に茶を供され、意気込みを喋ってるうちに気が付くと眠っていた……らしい。 「む……むぐっ……むぁあっ！？」 大紋に『おいでませフランソワ様』と書いた旗を背負い、薔薇の花を咥えた上から荒縄でぐるぐる巻きにされた岩宿 太郎（ib0852）。 「良かった、お目覚めになりまして？無粋な巻き方で申し訳ないですわ、せっかく素敵なお姿でいらしたのに」 固い床の上、視界に入るのはハイヒール。視線を上げれば脚線美の上に腰の線を切れ上がった水着。 （絶景……いやいや、人様の奥方なるご婦人にこの角度で見上げるのは失礼。えーっとこの場合は正しい位置へ下がってから！） 転がる以外にやりようがないのだが。 「むぐふぅっ！」 ビシィッとエカテリーナが鞭を振り下ろしたそこにちょうど移動してしまった。 「あら。貴方のお相手は私じゃなくてよ」 （太郎殿もここに！？） 豊嶋 茴香（ib9931）と背中合わせに縛られた状態で座らされたエルディン・バウアー（ib0066）が驚きに目を開く。 責め苦による悟りの境地を求めて。天儀の聖職者にちょっと間違ったイメージを抱いたまま、再び彼はやってきた。 もしも神と対面する事があっても恥ずかしくないよう正装のカソックで。 後ろの女性は依頼の内容を全く知らずに来たようなので、どうにか離して貰わねばならない。 状況を把握できずに縄を解こうともがく背後の茴香に、声を掛けて気持ちを鎮めてあげたいが。 「場所を移した方が良さそうですわね」 太郎を足蹴にフランソワの元へと戻し、伸ばされた手が縄を掴み二人をきつく締め上げる。持ち上げるには重い。 エカテリーナの爪先がエルディンの腹を蹴飛ばす。茴香を庇って横向きになり頬が汚れた床板を擦る。 鞭を投げ、棚の短刀を手に反対側へと回り、茴香の轡を切り。 一息吸った顔面を踏む。エルディンからその位置は見えない。 「ちょっと、何で！？どーいう事よ！？」 「お黙り」 目と鼻の先に突き刺さる短刀。ひくと息を呑んで茴香の動きは止まった。 「初めての子ですわね。ちゃんと説明を受けて来なかったのかしら？」 「え、あ、だから知らないってば本当にっ」 「まぁ、いいですわ。そっちの男は経験者みたいだから支度する間に聞きなさいな。でも貴女いいわよ、その噛み付くような目つき」 下手に動かなければ相手は慣れているのだから狙いを外しはしない。涼しい顔で轡を切って貰うエルディン。 お願いです。後ろの女性は初めてですので容赦してその分私を倍に責めて下さい。魔術師といえど力もありますから鎖で縛って下さい。 懇願すればこのぐらい聞いてくれるはずだ。少し上級でも宜しくてとの問いにも迷う事なく頷く。真摯で誠実な瞳で。 「でも何もしないで返しては報酬は差し上げられないですわ。ちゃんと説明なさい」 エカテリーナが野菜を検分している間にかくかくしかじか。驚きに大きな声を上げそうになる茴香を目で制す。 （……それなりに抵抗した方が相手を喜ばせるのか。いやこの場合本気で抵抗していいのか。それにしても何をされるのか） 既に始まっている太郎は笑顔のまま失神しかけている。唇にあったはずの薔薇は頭に飾られて。 「あら、男前な飲みっぷりですこと。まだまだいけますわね」 「ふぐっ、ふごっ、ふがっ」 漏斗に矢継ぎ早に注がれるヴォトカ。溢れそうになると手を止めてにこやかに太郎の顔を観察するフランソワ。 「飲みました？はい、しっかりと呼吸して。いい子ね」 「ふぐっ、ふごっ、ふがっ」 目尻から涙が垂れても、唇から酒を少々零しても優しく手拭で清めてくれる。彼女の頬も嬉しさで紅く染まっている。 正直後悔している。高嶺の花な高級酒を浴びるように飲めるなんて、どんだけきても平気なんて思っていた自分を殴りたい。 （甘かった！マジ甘かった！やべぇ、撃沈するっ！よっしゃ、こうなれば） 強張った笑顔はそれでも意地だった。 次の息継ぎで口内を思い切り噛んで覚醒するのだ、頑張れ、俺。痛みで耐えろ！ むしろ染みる痛みで顔から火が出そう。血走った眼でまだも頬には笑顔を作り。 おもてなし一途。 記憶はそこから途切れている。 「ち、違う。私は男だ！見るなぁっ！見るなあああっ」 必死に否定しているが、茴香が女性な事はエルディンもエカテリーナも最初から知っている。 甚平姿だからっていっても、本人は本気で男装のつもりだが遠目には男の子に見えない事もないだろうか程度である。 というか、下着くらい付けよう。エカテリーナの方が困って剥ぎかけた服を戻した。流儀に合わぬ。 「丸出しでは、風情も何もありませんわ。そこに這い蹲ってなさい」 きちんと帯を締め直してから、床に叩き付ける辺りに。傍で見ていたエルディンはやはりこれは修行であると確信する。 （エカテリーナ様は私達苦行を求める徒の為にあえて鬼となってこのような仕打ちをなさっている） この場の流儀に馴染んで、悲鳴も堂に入ってきた茴香。 「鞭を、鞭を下さい。ぎゃ……うわああっ」 待たせられた。その分身体はじっとりと汗ばんでいる。 「キュウリはなんとか、人参は厳しい、ナスは無理！」 彼がどのような妄想の域に達していたかは問わぬが花。 「そんな使い方をするなんて、食べ物を粗末にしてはいけません！」 いや、しないから。 「山芋は痛いですって、山芋は。あああっ！」 カソックの内側に注ぎ込まれたドロドロの汁。肌を伝い滴る。 「これを越えたときに……何かが見えてきそうな……気が……」 ● 衝立の向こう。こちらは雁久良 霧依（ib9706）の要望により小芝居の趣向。 揃いの巫女袴で母娘の設定。リィムナ・ピサレット（ib5201）を庇い、壁へと追い詰められた霧依。 「お、お母様……」 リィムナの手鎖は肩が痛むほど高々と巨体に掴み上げられ。 人質を取ったジョセフィーヌの命令に従う霧依の姿を眺めるだけで助けられない。 浴びた冷水を顎から滴らせ睨み付け、リィムナを捻り上げられては懇願し。 言われるがままに虫の入った壷を傾け、胸元に注ぎ込む。 （はあ……ゾクゾクしちゃう♪） 服の中で蠢くおぞましいはずの感触にむしろ恍惚とした表情を浮かべる霧依。 ちらりと見上げたジョセフィーヌが不満そうな顔をしてるのを見たリィムナはここで自分が何とかしないと考えた。 （霧依さん見てるとゾクゾクするなぁ…お芝居ってアドリブもありだよね、うん！） 涙を浮かべ口から付いて出た言葉は一瞬二人を唖然とさせた。 「もうやめて下さいっ！あたしが……あたしがお母様を責めます！」 （幼女に責められるとかご褒美！でもここで顔に出しちゃったらジョセフィーヌ様の興を削ぐわね） あくまで任務に忠実な形を取らねば。目的は私のお楽しみだけどね！ （リィムナちゃん、さあいらっしゃ……） 「ええっ、やめなさいっ！？こんな、ひぎぃっ！？」 いきなりヴァイブレードナイフで巫女服を破った上に刃の平を押し付けて宝珠の力を発動。 高速振動が、ってちょっと、ずれたら肌が引き裂かれちゃうじゃない。 「これは却下ですがな。大怪我させたらあきまへんで」 もう少し柔らかにとのジョセフィーヌの意向で水と油をたっぷりと飲ませたところに。 やっぱり容赦ないのはリィムナ。本来アヤカシに向けられる聖なる矢は人間には軽い痺れ程度とはいえ。 「おごおおお！リィムナ、精霊の御力をそんな事にっ」 「あははっ、蛙みたいなお腹して何言ってんだか♪ジョセフィーヌ様、一発踏んじゃって下さい♪」 「お願いです、娘の……娘の前では堪忍して下さいいい！」 それでもまだ演技を続けてる霧依に、ジョセフィーヌが引いている。 この状態で踏めばどうなるか。お下品過ぎる結果が待ち受けてるのは見えている。 「ふぎゅ」 潰れた蛙状態に這い蹲ったのはリィムナであった。 ● 詳細を告げられずにネオン・Ｌ・メサイア（ia8051）に騙されるように。否、完全に騙されて訪れた相川・勝一（ia0675）。 褌と鎧だけで来るように言われて疑わなかったのか。いや何か褌が大事な依頼なのかもしれないと。 自分は褌将軍の名を持つのだから。そんな訳ない。 「如何した真沙羅、勝一？ 楽しみだろう」 後ろ手に縛られ。上だけは忍び装束、下は褌。あられもない姿で四つん這いにさせられているネオンの落ち着いた声。 「は……はい。また、奥様方からの依頼という事は、凄く苛められて……はぅぅ♪」 いけないと思いながら、身体はかつての快楽を蘇らせて薄絹に透けえ肌を火照らせた雪ノ下 真沙羅（ia0224）。 理性と身体はうらはら。自分の反応に戸惑いながら。荒縄でぎっちりと四肢を寝台に拘束されている事については動じていない。 そんな二人がモロに見える位置で宙吊りにぶらさげられた勝一。荒縄は胴丸を重心に結ばれているので痛くはない。 「……こ、ここってもしかして。あ、まさかまたですか！？」 「またと言ってもエルフリーデ様は初めてだそうだから、失礼のないようにな。衣装の選択はどうだったかな？」 「素晴らしいですわ。サムライ、シノビ、ヒメ！では戴いたプラン通りに……」 「プランってどういう事ですか、ネオンさんっ」 「エルフリーデ様に喜んで戴けるよう私が厳選したプランだが、何か問題でも？」 「厳選って一体何を、ひゃ、ふぇぇぇ！？」 喋り終わらないうち頭から蜂蜜を浴びせかけられ、胴丸の中にもねっとりと生温かい液体が注ぎ込まれる。 「あ、あの、お手柔らかにお願いし……わふ！？甘いって、何を、ひゃぁ！？」 そしてネオンと真沙羅には摩り下ろした山芋を。 「そのお胸にはたっぷりと流せそうですわね、ヒメ。零さないようにじっとしてくださいまし」 流れた後が空気に触れるように。襦袢から溢れた豊かな白い肌へゆっくりと回すように垂らし。 最初は気持ち悪いだけ。次にネオンの大きな尻に垂らしている間に真沙羅の肌で痒みは次第に増してゆく。 忍び装束の襟足から首筋に注ぎ、自身の重みでぽたりと落ちる雫もあるが、喉元から開いた胸元へじわりと侵入する山芋。 訪れる痒みをじっと我慢するネオン。 仰け反らせる事で胸から今度は腹に伝う。これからだ。もう少し我慢してこそ楽しみになる。 「サムライさん、筆をしっかりと握ってくださいね。シノビさんとヒメをしっかりと擽るのですよ」 「えぇっ！？」 エルフリーデが別の縄を引くと滑車で動くようになってるらしい。ぎしりぎしりと勝一の身体が蜂蜜を滴らせたまま寝台へ近付いてゆく。 「ふぅ……結構重いですわね。でもまだ鎧を脱いで戴く訳にはいきませんわ」 頑張ってくださらないとこちらを鎧に入れますからね、と言われ振り返った勝一は見なければ良かったと思った。 壷の中に蠢いている黒い虫。 （大きくないですか。羽根とか触覚みたいのとか見えたの気のせいですか。名前も言いたくない虫だったりとかしませんか！？） 絶対嫌だ。あんなのを入れられるくらいなら。覚悟を決めて。 「……はぅぅっ。ふ、筆でこしこししちゃダメですぅっ。か、痒みがぁぁ……っ！」 「そんな事言っても、ぼ、僕だってあの虫を入れられるのは嫌です……っ！ご、ごめんなさいっ」 悶えても四肢は曲げられぬ程にきっちりと寝台に固定されて、胴をわななかせて浮かせるのがやっと。 木が軋む音を立てる。 「うっ……くわぁっ。勝一、もっと奥の、腹の辺りも」 姿勢を仰向けにしようとするが、何かが手首の縄と絡まっている。 「そ、そこは服の下ですよネオンさん！？僕にはできませんっ。ひぁ、褌を引っ張っちゃ駄目ですってば」 「いや引っ掛かってるみたいだ。動くな、余計取れないだろうが」 「エルフリーデ様、縄から下ろしてください！ふ、褌が脱げるぅ……！？」 どたぁーん。ネオンの縄と引っ掛かったまま落下。勝一の顔を受け止めたのはネオンの尻。 慌てて転げた先には真沙羅の胸。もう一度戻ればネオンの胸が目の前に。更に戻れば、ああっ！？ 真っ赤で慌てもがいた勝一から滴っていた蜂蜜が二人にも飛び散って酷い有様である。 暴れてはだけた衣装を戻そうにも手が自由なのは勝一だけ。それでも直さねばと思いきや。 「あら……半端に蜂蜜で汚れてしまっては可哀想ですわね」 更に三人まとめて浴びせかけれて、寝台の上はぬめぬめの海と化してしまった。 「ついでですから虫も？」 「それはやめてぇぇぇっ！？」 「残念ですわね。では縄を解いて差し上げますから全員蜂蜜が綺麗になくなるまで舐めてくださいませ」 早くしないと虫を寝台に撒きます。と言い終わらないうちから泣き叫びつつ自分の腕を舐め始める勝一。 しかしそこには理性が完全に吹き飛んだ真沙羅と、確信犯からやはり同じく何かを吹き飛ばしたネオンが一緒だ。 「やぁぁ、そんな、は、離れてぇ。これだめですぅぅ……っ♪」 「しょ、勝一、真沙羅ぁ…うあぁぁぁぁ…！」 「僕が何でこんな目にぃぃぃっ！？」 ここで起きた出来事は忘れた方がいいのかもしれない。 なお、再利用が無理だろうという物は先方で同等品をきちんと返してくれた事を告げておく。 |
