とある鏡の物語
マスター名:東雲八雲
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 難しい
参加人数: 10人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/10/22 22:19



■オープニング本文

 とある村に事件が惨劇に変わった。村の少し先の道に現れたアヤカシ倒すためにやってきた10人の開拓者が村人を殺しくらい始めたのだった。
 そうやってきたのは開拓者ではなくアヤカシだった。
「なんで開拓者が人を襲ってるんじゃ?!」
「爺さん!あれはアヤカシだ。人型のアヤカシなんだよ!まずは逃げるぞ!」
 若者がそう叫ぶと村人は一斉に森の方へ駆け出していった。そこへたまたま依頼を終えて帰還中の開拓者が8人に遭遇した。
「そんなに慌ててどうしたんだ?」
 開拓者が声をかけた。
「村に人の格好をしたアヤカシが現れたんだ。よかったら退治してもらえないか?」
「なるほど。わかった俺たちがいこう。村の方向はあっちでいいんだな?」
 開拓者は任せておけと微笑み村の方向を指差した。
「そうだ。頼んだぞ」
 村の若者は開拓者を見送った。

 そのあと開拓者は1人だけギルドに逃げ帰れたが事情を伝えた直後息絶えることになった。
 開拓者が持って帰ってきた情報は簡単なものだった。
 それは、アヤカシが戦闘する開拓者に化けるというものだった。姿や戦闘能力やスキルをそのまま移し鏡のように移してくるのだ。怖いのは姿を写し取ることだ。乱戦になれば敵も味方もわからなくなり、気が付けば味方を攻撃しているといった事態になりやすいのだ。
「これは困ったものだな。今は旅の吟遊詩人が足止めしていると言っていたな。早いところ開拓者を送ってやらないとマズイようだな‥‥」
 開拓者ギルドの受付は頭を抱えながら依頼の一覧に載せることになった。


■参加者一覧
無月 幻十郎(ia0102
26歳・男・サ
紙木城 遥平(ia0562
19歳・男・巫
白拍子青楼(ia0730
19歳・女・巫
柳生 右京(ia0970
25歳・男・サ
斉藤晃(ia3071
40歳・男・サ
シャンテ・ラインハルト(ib0069
16歳・女・吟
琉宇(ib1119
12歳・男・吟
朱鳳院 龍影(ib3148
25歳・女・弓
鉄龍(ib3794
27歳・男・騎
高瀬 凛(ib4282
19歳・女・志


■リプレイ本文

●己との戦い
 とある村に剣戟が響き渡ったっていた。その中に楽器による音色も聞こえた。
 その剣戟は開拓者と‥‥開拓者との戦いだった。
 10人対10人による戦いだ。それぞれ2班に分かれていた。乱戦を懸念して開拓者の策だ。うまく開拓者‥‥に化けたアヤカシを分断し、剣戟を始められたのだった。
「はっはっは。さすがに鋭いねぇ」
 無月 幻十郎(ia0102)はそう言いながら、幻十郎の攻撃を的確に受け止めていた。アヤカシの幻十郎の攻撃は確かに鋭い、さらに重い。しかし、自分の攻撃だ。受け止められない通りはないのだ。殲刀「朱天」と殲刀「朱天」がぶつかり合い、火花を散らせていた。
 その横では柳生 右京(ia0970)の荒々しい剣鬼の姿があった。非常に大きく重い斬竜刀「天墜」を軽々しくぶつけ合っていた。2人の右京は同時に柳生無明剣のための構えを取った。
「余り時間を掛けている余裕はない‥‥短時間で決着を付ける」
 両者同時に発動した柳生無明剣はガキンッと凄まじい金属音がした。そして両者の剣が止まった。
「なんだ。この程度か?」
 鍔迫り合いのような状態から右京は気力を乗せて両断剣を放った。右京の姿を映したアヤカシは肩口に斬撃を受けた。
 そして、後方には高瀬 凛(ib4282)が理穴弓を構えていた。そして矢を次々放ち牽制を続けていた。その頃、アヤカシの凛も理穴弓を持っているとは思いきや、業物を持ち前衛に向かっていたが、前に進むことは叶わなかった。
 それは前衛に向かって開拓者の姿を惑わしていた2人の吟遊詩人ののシャンテ・ラインハルト(ib0069)と琉字(ib1119)がスプラッタノイズと偶像の歌と心の旋律の相乗効果によって混乱状態に陥り、開拓者を狙うかのように凛の姿のしたアヤカシはシャンテの姿をしたアヤカシに斬りつけていた。
「「成功だね!」」
 2人の吟遊詩人はそう言うと演奏を続けていたのだった。
 紙木城 遥平(ia0562)は合言葉である花札の役を言い、
「大丈夫ですか?無理はしないでください」
 と続けて、
「月見で一杯」
 と合言葉を言う幻十郎の回復を行った。

 一方、少し離れたところで戦うのは白拍手青楼(ia0730)たちだった。
 こちらでも剣戟が繰り広げられていた。青楼は瘴索結界を使用しアヤカシと開拓者を的確に見分け回復を行っていた。
 その回復を背に戦うのは斉藤晃(ia3071)と朱鳳院 龍影(ib3148)と鉄龍(ib3794)だった。
 それぞれ己の姿をしたアヤカシと激突していた。
「今度は自分斬りか。ほないっちょ殺ったるか!」
 晃は晃の姿をしたアヤカシに向けて大斧「塵風」を振り上げ、両断剣を放った。
 それと同時に龍影と鉄龍も攻め込んでいた。3人は陣形を組みお互いの隙を補い合っているのだ。
「自分の弱点は自分が1番よく知っておる。‥‥ふむ、相手の方が胸が少し小さいかの」
 と、不適な笑みに乗せ告げると、隼襲で加速し一度の踏み込みで間合いを詰めた。その狙いは自分の弱点だと自負している翼や胸の下を狙い打った。その攻撃は容易く決まっていった。なぜなら、写し取ったとは言え、弱点など知ったことではないのだ。
 一方、鉄龍は鉄龍の頭を左手で鷲掴みにして持ち上げていた。
「残念だったな。例え見かけが同じでも中身まで真似ることはできない。それが敗因だよ」
 そして―――
 と、そこに至る経緯は実に簡単だった。予め決めておいた合図、挑発のあと眼帯を触った。それをきっかけに晃は酒瓶を眼帯を触っていない鉄龍に向けて投げたのだ。そのわずかな隙を逃さず接近し、鷲掴みにしたのだ。
 そして、バルカンソードを鉄龍の姿をしたアヤカシの胸に突き立てた。次の刹那、バルカンソードはアヤカシの胸を貫いた。
「グォォォオオオオオオオ!」
 一足速く自分を写したアヤカシに勝利したことを吼えて知らせた。

 その頃、琴織は村に残っていた人々を助けに回っていた。

●経緯
 時は少し遡る。
 琴織は開拓者が駆けつけるまでの時間稼ぎのために、弔鐘響く鎮魂歌と夜の子守唄を繰り返し使用し続けていた。
 琴織は自分の錬力量には自信を持っていたが、それでも無限ではない、有限である。つまりは限界がやってくるのだ。それが今だった。
「今回ばかりはちょっとマズイかな‥‥」
 と苦笑した瞬間。
「おぉ。よくがんばった、もう一息だ。気絶するなよ!」
 と幻十郎の声が響いた。と同時に琴織を狙う刀を龍の腕が受け止めた。
「なんとか間に合ったか‥‥」
 と鉄龍が。
「わわっ!」
 琴織は驚いた。それは、幻十郎が琴織のことを肩に担ぎ上げたからだった。
「‥‥ん?ずいぶん軽いな、ちゃんと喰ってるか?はっはっはっは」
 と、陽気に仲間の元に走っていった。その中で、
「ちゃんと食べてるよ!」
 と、叫んでいた。それを聞いて開拓者たちは少し安堵した。
「さて、疲れているところすまないが、もうひと働きしてもらうぜ?」
 と、幻十郎が言うのに、琴織は即答した。
「いいよ。でも、もう錬力は尽きてるけどね」
「状況を教えてもらえますか?それとこれをどうぞ」
 遥平は恋慈手を使用し、薬草と岩清水を差出だ。
「ありがと。今の状況は―――」
 琴織は一通りの状況を伝えた。
「なるほど。では生存者の避難を頼む」
 鉄龍がそう言うと、琴織はオカリナをしまい、了解とひとこと言うと、駆け出して行った。

「さて、私たちの相手はあれか」
 右京は今到着した開拓者の姿に変貌しているところを見据えていた。
「姿や能力を真似るアヤカシか。じゃが、積み重ねてきた経験がなければ使える能力も無用となるのじゃ」
 と龍影が、
「見た目が同じでも全てが同じということもあるまい」
 と鉄龍が、
「まあ、鏡は鏡や」
 と晃が評価していた。
「それでは行きますよ!」
 青楼が自分たちの斑の出発の号令を告げた。
「では拙者たちも参ろう!」
 凛が続いて出発の号令を告げた。

●己の意地
「これで最後だっ!」
 と、幻十郎が殲刀「朱天」を振り下ろした。
 決まった、と思ったその瞬間、幻十郎の姿をしたアヤカシが左腕を差し出した。その左腕に殲刀「朱天」が絡まり、斬撃は角度を歪まされ、地面に落ちた。
 その次の瞬間に、幻十郎の胸板から紅い飛沫を噴いた。
「ぐあっ!」
 ギリギリで重傷までには至らなかったが、十分に痛手を負うことになった。だが、幻十郎の姿をしたアヤカシの捨てたものも大きかった。左腕を肘から下の機能を全て失っていたのだ。だが殲刀「朱天」を右手だけで持ち駆け出してきた。だが、結果は見えているも同然だ。
「その腕じゃもう勝負は見えたな」
 と、幻十郎は胸の傷を気にすることなく向かっていった。

 肩に大きな傷を負った右京の姿をしたアヤカシは致命傷ではないと判断したのか気にする様子もなく斬竜刀「天墜」を手放さなかった。それどころかより強く握るようにも見れた。
「さすがは私を写しただけはある。しかし、それだけでは私に敵わない」
 2人の右京が正面からぶつかり合うかのような形になった。
 そして、1振りの斬竜刀「天墜」と血飛沫が飛んだ。

「‥‥参る!」
 凛は理穴弓を置き、業物を構えると、自分の姿をしたアヤカシを狙うように走った。
 そして、凛の姿をしたアヤカシも業物を構え迎え撃った。しかし、今となってはアヤカシは不利でしかなかった。先ほど遥平の姿をしたアヤカシはシャテンのスプラッタノイズによって混乱した状態の凛の姿をしたアヤカシに断ち切られたばかりである。そのため、援護を受けることができないのである。
 凛はシャテンや琉宇や遥平の援護があることを見越して接近戦を仕掛けたのである。
 思惑通り、凛の姿をしたアヤカシは苦しそうな表情を見せていた。主に琉宇の偶像の歌と心の旋律の影響だろう。戦闘中に語りかけられては集中ができないのはアヤカシも同じだったようだ。
 凛は次々と斬撃を繰り返した。それを防ぐ余地はアヤカシにはなかったのだった。

 一方、もう1班は剣戟を繰り広げていた。
 一足先に自分の姿をしたアヤカシを倒した鉄龍は晃と龍影の援護に向かっていた。
 アヤカシの吟遊詩人は1体欠けたことに気づくと即こちらの斑を援護するようになったからである。
 琉宇の姿をしたアヤカシは琉宇の策略の通り無害と言ってもいい状態だったが、シャテンの姿をしたアヤカシのスプラッタノイズが主に龍影と鉄龍の2人の判断を狂わせるのだった。しかし、援護に回っていたシャテンの再生されし平穏によってすぐに解除されるのだが、やはり少し遅れをとり、青楼の姿をしたアヤカシに回復されている状態だった。
 しかし、青楼も負けず、瘴索結界のおかげで安定して回復することができているため、戦闘は拮抗していたが、ひょんなことから形勢が傾いたのだった。

●事後談
 拮抗していた剣戟は、右京が弾き飛ばした斬竜刀「天墜」が、運良くシャテンの姿をしたアヤカシの首を刎ねることになったからである。しかし、それと同時期に青楼の錬力も尽きたため、一方的な戦闘となったからだ。
 剣戟を終えて、遥平は幻十郎の負った胸の傷を恋慈手によって癒していた。もちろん青楼も怪我を負った開拓者たちの回復を行った。

 そして、琴織が請け負っていた村人の救出は成功だった。すでにアヤカシに喰われた人は全人口の1割に満たなかったが、死者は出ている。
 死者は全員、弔われることとなった。命を散らしていった10人の開拓者たちも一緒に。

「己を知らずは危うからず‥‥かね」
 晃は戦闘後そう呟いていた。強いアヤカシと戦ってきた彼だが、自分自身と戦う機会などなかった。いや、普通はありえないことだ。そのため今回のアヤカシとの戦闘は1つの教訓となったのだろう。

 しばらくして戦場となった村は復興し、元の賑わいを取り戻していっていた。剣戟によって齎された傷痕を残しながら‥‥。





     了