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■オープニング本文 ●咲かないはずの桜 とある町のはずれに伝説に謳われるとされる桜があった。その伝説とはもし咲き乱れる桜に願いと託すと必ず叶うというものだ。しかし、その桜が咲き乱れるところは今現在生きる人間は誰一人として見たことがなかったのだ。だから伝説になったのだ。 町長のもとに1つの封書が届いた。その封書の内容はその伝説の桜が1週間後に咲き乱れているとの内容だった。ただ、出所が不明な上、内容も未来のことを指しており曖昧だった。桜がもし咲き乱れるのであれば、と思う町長でもあった。 「1週間後、開拓者の警護のもとでいってみようではないか」 と町長は切り出した。 「もし見れれば儲けものだな」 と賛同するものが4名。 「わしを含めて5人だな。5人の警護を依頼して来ようか」 ●依頼 「なるほど。それにしても遅咲きなんだな」 受付を終えた町長に信武が声をかけた。 「そうだな。普通ならそろそろ散り時か」 町長は少々考えながら答えた。 「なんにしても面白そうだな。開拓者の報告楽しみしてるぞ」 信武は小さく笑い町長の傍を離れていった。 |
■参加者一覧![]() 20歳・男・志 ![]() 18歳・女・泰 ![]() 23歳・男・志 ![]() 18歳・女・魔 ![]() 14歳・男・巫 ![]() 15歳・女・サ ![]() 18歳・女・泰 ![]() 14歳・男・サ ![]() 40歳・男・サ ![]() 14歳・女・泰 ![]() 24歳・男・弓 ![]() 18歳・男・志 ![]() 25歳・男・弓 ![]() 23歳・男・弓 |
■リプレイ本文 ●出発 「伝説の桜に差出人不明の手紙ねぇ。ロマンがあるねぇ。ところでこの手紙のも‥‥」 文字に見覚えあるやつがおるんか?と斉藤晃(ia3071)が訊こうとしたが、文字を見た瞬間に言葉を呑んだ。どう見ても今の技術では調べられないような字体だった。言うなれば、ただただ綺麗な字だった。人間では書けないだろうと言うくらいに癖がないのだ。まるで機械で書いたように精密だった。 「こりゃ訊くだけ野暮やな‥‥ここまで綺麗すぎると逆に怪しすぎやん」 晃は苦笑するしかできなかった。 その時、先行し調査していた四条司(ia0673)と桐(ia1102)が甲龍の茶々雀と歌月に乗って戻ってきた。見て回っただけではアヤカシの姿は一切なくただただ立派な桜が咲き乱れていただけのようだった。つまりは謎の封書の予言は外れなかったのだ。 そして司と桐と一緒に先行していた赤マント(ia3521)はより細かに調べておくために残ることにしていた。 時は少し遡る。 「一番乗り。さて、伝説の桜‥‥本当に咲き乱れてるね」 赤マントは駿龍のレッドキャップ、通称レッちゃんから降り、桜の物陰など様々な箇所を探索した。時には指を少し噛み切り血を垂らして様子を窺っていた。 「桜が咲き乱れる様子を見た人間は全員死んでる…とも言えるよね、この伝説。」 と呟きながら警戒を続けていた。そしてレッドキャップも桜の樹に接近していった。 「こらレッちゃん、桜にいたずらしちゃ駄目だよ〜」 赤マントはレッドキャップに告げると、レッドキャップは短く鳴き声をあげると、レッドキャップなりに少し慎重に調べるようになった。 結果としては、アヤカシや罠も潜んでいないだろうと言うことになった。そして、赤マントは出迎えるために林まで降りて待機した。 レッドキャップには空から警護するように伝えた。 一方、開拓者は5人を警護しながら伝説の桜を目指して歩を進めていた。 天津疾也(ia0019)は駿龍の疾風に乗り、桐の甲龍の歌月と輝夜(ia1150)の駿龍の輝龍夜桜、剣桜花(ia1851)の炎龍のベティ、今川誠親(ib1091)の駿龍のAlexanderはレッドキャップと合流し空中から警護をしていた。 開拓者の殆どは5人の側で警護している。中でも紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454)はもふらのもふ龍を、鴇ノ宮 風葉(ia0799)は人妖の二階堂ましらを、ルオウ(ia2445)は猫又の雪を、晃は炎龍の熱かい悩む火種を、神鷹 弦一郎(ia5349)は忍犬の威織を、赤鈴 大左衛門(ia9854)は猫又のにゃんこ師匠を不破 颯(ib0495)は駿龍の瑠璃を共に連れていた。 「今日も相変わらずぺったんですねっ!」 と桜花が風世花団団長の風葉に声をかけているところが見られた。もちろん風葉はコンプレックスである点を突付かれているためあまりいい気はしない表情をしていた。 司は1つの問題を考えながら警護に専念していた。1つの問題とは出所不明の封書のことだ。だが、今は警護だと言い聞かせるかのように専念していた。 そして出所不明の封書についての疑念を拭えない開拓者はたくさんいた。紗耶香もその1人だ。もふ龍と疑念を相談しているかのような様子だった。そして紗耶香の背には道具が背負い込まれていた。全てが調理するための道具。花見をしながら料理を振舞うために準備してきたのだ。 「また随分と怪しげな話に乗ろうとするものですわね」 と猫又の雪に関心されるルオウの姿もあった。ルオウは興味のままに依頼に応じたのだ。興味は主に出所不明な封書と伝説の桜の樹だ。 「すごい興味あるんだよなー。なんだか面白そうじゃん」 にかっと微笑みルオウは雪に返答していた。 「何十年も咲いてねェ上に差出人も分からねェ文でも見に行きたくなっちまうたァ、よっぽど立派な桜なンだスなァ。本当に咲くなら、是非ワシも見てみてェだス。‥‥あいやにゃんこ師匠、分かっとるだス。護衛もけっぱるだスよ!」 大左衛門はにゃんこ師匠に話しかけていた。 「けンど誰ぞの悪戯ならええだスが、そうでねェ方が大事だスな。もしアヤカシの仕業なら、人の気持ちっつモンを理解出来る頭のええ手強い相手かもしれねェだスから、気ぃつけねェといけねェだス」 と、もちろんアヤカシの予測と警戒も忘れていなかった。 「伝説の桜ねぇ。とても楽しみだが、さて鬼が出るか蛇が出るか。何もなけりゃ最高なんだけどなぁ。しかし一週間後に云々ってのは怪しさ大爆発だねぇ」 颯はへらへらと苦笑いしていた。もちろん颯も出所不明の封書とその内容を気にしているのだ。 (「咲き乱れる伝説の桜ですか‥‥。真意はともかく夢があって良いですね」) 誠親は巨大な機械弓のアーバレストを携え警護を1番に考えるかのように周囲を警戒していた。 一方、空を翔る疾也は、 「咲いたところを見たことがない伝説の桜が咲くっちゅううんか、ずいぶんとまあ面白そうな話やな。ほな、俺らも見させてもらおうかいな」 と、呟いていた。願い事を考えているような様子も見えたが、疾也の両目に銭の印が見て取れるような様子だった。もちろん、考えていることは金儲けの一点だった。 そうこうするうちに、何事もなく赤マントと合流することになった。 到着した全員は桜の美しさに目を奪われていた。満開の伝説の桜は本当に何かを祝福するかのように、あるいは何かを呪うかのように美しいものだった。関心の声は漏れるが、感想を述べるのが失礼と言わんばかりにみんな桜に見入っていた。 ●花見 周囲に対アヤカシの罠を仕掛ける開拓者や、アヤカシを探知するための仕掛けを施す開拓者も中にはいた。殆どは警護と花見を両立させるべく花見の準備を開始していった。 依頼主である5人はまず桜に町の繁栄と個人の願いを願っているようだった。それに釣られるように開拓者も願い始めた。 「金儲け。金儲け」 疾也は颯爽と守銭奴丸出しで願っている。表情はややニヤついているようにも見えた。 「私も風葉様がもうちょっと女の子らしい体型になれるよう微力ながらお祈りさせていただきますっ!何せ今のままでは‥‥元服前の男の子と何度間違われたことか‥‥彼氏と一緒に歩いていて性別を逆に思われた事数知れず‥‥というかやんちゃ坊主とお目付け役の美少年にしか見えません!‥‥いや‥‥何も言わなくて良いです。今までありとあらゆる豊胸手段を拒否し続けてきた団長の胸…オカルトじみていても桜に祈ることで大きくなるのであれば…というその乙女心よーっく理解できますっ!」」 桜花が哀れみ100%で持てる者の優越感をプラスした視線を風葉に送ってから、口に出して願った。 するとその後ろへ 「いい度胸してるね‥‥」 風葉が怒りを露にし、仁王立ち。両手には炎を灯していた。 一方、その隣で、 「天儀一の兵法者に成れますように」 大左衛門がぱむぱむと拍手と礼、黙祷。 「天儀の平和を‥‥」 誠親は伝説の桜に祈りを捧げていた。 願いや祈りをする人がいる一方、紗耶香は食事の用意を始め、司は『花より団子。団子より仕事』と言わんばかりに警戒を続けていた。輝夜は開拓者名物(?)の焼ネギを振舞い始めた。 「さすがに今回は屋台は持って来れぬからの」 とやや残念そうに。 「伝説の桜を見ながら花見酒ときたもんだ。」 晃は花見の雰囲気を味わうため、少量を酒を呑んでいた。弦一郎も静かに酒を呑んでいた。開拓者のパートナーたちも各々に騒ぎ盛り上がっていった。 そして数時間わいわいと花見は続いたが、時間も時間で、帰宅することとなった。 「楽しませてもらいました。これも開拓者たちのおかげです」 町長は礼をし、帰る準備を終え、帰宅を始めた。 ●掃討 「おや?もう帰ってしまうのかい?」 と、綺麗な男の声が桜の方から聞こえた。 「誰だ?」 輝夜は振り向かずに問うた。 「僕はこの桜の主、かな?」 ふふっと小さく笑い答えた。 同時に疾也と弦一郎とと颯と誠親が振り返り、理穴弓、五人張、アーバレストから矢が放たれた。 しかし、男に届く前に矢が小さく爆ぜた。 「なっ!」 4人は驚くしかなかった。 「危ないですね。僕には遊ぶつもりはありませんよ」 にかっと笑い指をぱちんと鳴らした。すると、足元から骨の腕がドドドドドと現れた。 「なっ‥‥」 開拓者はもう驚くしかなかった。隠れているにしても足元にいるとは思っていなかったからだ。だが、焦っているわけにはいかなかった。アヤカシを呼び出したということはあの男もアヤカシと言うことだ。 次の瞬間には男のいた場所を見るが、誰もいなかった。 「迷う前に戦う方が今はいいんじゃないか?」 ルオウの声が迷いを断ち切った。 輝夜とルオウと晃の咆哮が骨の騎士の姿をしたアヤカシを集めた。そして、ルオウの回転切りと晃の両断剣が炸裂した。紗耶香が次々と骨法起承拳を決めていった。もふ龍はアヤカシの不意をつき頭突きを入れていった。 司は依頼主5人を守るためアヤカシを足止めに徹した。篭手払でアヤカシにカウンターを決めていた。 風葉は風世花団の面々を束ね、瘴索結界で周囲の位置を知らせた。傷ついた仲間を閃癒で癒した。人妖の二階堂ましらも風葉を多少面倒に思いながら、援護を続けた。 「面倒だけどこの状況だと手伝うしかないか‥‥」 同じ巫女である桐は晃を援護していた。神楽舞「瞬」で晃を加速し、浄炎で攻撃支援。 「おらおら。てめぇらの相手はこっちやで。」 晃はそう言うと大斧「断割」で骨の騎士を粉砕していった。 そして、更に巫女でである桜花は、白薔薇の騎士を自称し白兵戦で足止めをしていた。徐々に依頼主を後退させていた。 弓や機械弓を持つ疾也と弦一郎とと颯と誠親の4人は骨の騎士を次々と射抜き依頼主5人には近づけなかった。が、それでも装填の隙を突かれ接近を許してしまった。 「ここはワシに任せるダす!」 大左衛門が防盾術で割り込んだ。そして、槍「猛」で弾き、追撃をした。そして依頼主5人と弓と機械弓を持つ4人が後退を続行した。 「もう帰ってしまうのかい?もう少し遊んでいくといい」 そういう男の声が聞こえた瞬間、司の心眼がその男の気配を捉えた。 「そこだな!」 司は短刀を男の方へ投げ、即座に斬りかかった。 「良く見つけましたね」 男は小さく微笑み紅い刀身の長刀で受け止め弾き返した。司の体は簡単に宙に打ち上げられたが、くるりと回りきっちりと着地した。 そこに追い討ちをかける赤い旋風の姿があった。 「これが僕に宿る‥‥赤の力だ!」 紅砲の連打で男を狙い撃ちした。 「くっ‥‥!小賢しいッ!」 男は紅い長刀で受け止めるが1発受け切れなかった。それを確認した赤い旋風―赤マント―が天呼鳳凰拳を小さな傷に捻じ込んでいった。 「ふむ。この程度ですが‥‥少々期待はずれです」 鞘から刀を出すような動作で柄を引き上げた。―――が、そこには刀身がなかった。それでも赤マントの天呼鳳凰拳を静止していた。 「なっ‥‥!」 赤マントの炎が完全にその透明の刀を超えることができなかったため、ただ男を吹き飛ばすだけになった。 骨の騎士を開拓者がほぼ一掃を終えた。 「そろそろですね。俺は月宵と申します。以後お見知りおきよ」 一瞬にして月宵と名乗ったアヤカシの男は姿を消した。 少しして骨の騎士のアヤカシは抵抗虚しく一掃された。 「なんだったんだ?今の野郎は」 ハルバードを肩に担いだ晃が問うた。 「分からないけど、アヤカシに間違いないよ。見た目が人間と大差なかったから判断が難しい。名前は月宵って言うみたい」 赤マントが簡単に説明をした。 「それにしても骨のアヤカシも好戦的でしたね」 桐がそういう場所、つまりは一掃が完了した場所は林に入ってしばらくするところだった。月宵が去った場所が林に入る少し前だったためそれなりの距離を追ってこられていたということになる。 「ひとまずみんな無事でよかったんじゃねーか?」 ルオウがそう言うとみんな納得し、町に帰ることになった。 ●事後談 「桐のぼんはなんぞ願いごとをしたんけ?」 桐と依頼の後の酒を交わしていた。 「あ、願い事は忘れてました」 と苦笑いする桐。 「斉藤さんはどういった願いを?」 聞き返す桐。 「世界がちっとでも平和になりますようにかね?‥‥まあ、今は皆の願いが叶うことを願ってるわ」 と晃は言い酒をぐいっと呑んだ。 そして、数日の間、その町にアヤカシは現れることはなかった。だが、そこへ ―――1通の封書が届いた‥‥ 続 |