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■オープニング本文 天儀、神楽の都。開拓者達が住まう街。 そんな都は、長雨の真っ最中であった。 しとつく雨に外出もおっくう、しかし部屋に籠もっていれば心身共になんだかじめじめ鬱陶しい。 かといって外出するのも大変だ。もちろん、依頼に出るなんてもってのほか。 こう暑ければ、やる気も起きず食欲もわかない、ああまったく暇で腐ってしまう‥‥。 そんな開拓者の皆さんに朗報。 丁度偶然、美味い具合に良い依頼がころりと転がってきたようだ。 向かう先は泰国の海沿いの街。そこにおわすとある裕福な女商人が依頼人だとか。 彼女は毎年夏の暑い時期には、自分が所有する沖の小島に出かけるのだ。 普段は無人島のその島は、数十分も歩けば一周してしまうほど小さな島だという。 そこにはこぢんまりとした過ごしやすい別宅が一つ、そして白い砂浜が見事との話。 今回は、開拓者は一週間ほどその島に滞在して、島の見回りと別宅の整備などをやってほしいとのことだ。 食料は日持ちするものをあらかじめ持ち込んで貰うとのこと。 つまり、島には開拓者達だけ。五月蠅い見張りも居ないし仕事以外は羽を伸ばしたい放題。 別宅は整備と片付けをちゃんとすれば使いたい放題だし、砂浜だって独占可能。 さらには三食昼寝付きの美味しい依頼というわけだ。 ギルドの係員は自分が開拓者なら飛びつくのに、という顔で貴方たちをにらんでいたりするとか。 しかし、いつもは死線をくぐって苦労している開拓者、たまには良い思いをしてもいいのでは? さて、どうする? |
■参加者一覧
鈴梅雛(ia0116)
12歳・女・巫
水鏡 絵梨乃(ia0191)
20歳・女・泰
リエット・ネーヴ(ia8814)
14歳・女・シ
リュミエール・S(ib4159)
15歳・女・魔
シルビア・ランツォーネ(ib4445)
17歳・女・騎
猪 雷梅(ib5411)
25歳・女・砲
赤い花のダイリン(ib5471)
25歳・男・砲
泡雪(ib6239)
15歳・女・シ
ラティオ(ib6600)
15歳・女・ジ
サガラ・ディヤーナ(ib6644)
14歳・女・ジ |
■リプレイ本文 ●依頼にわくわく 天気は快晴、波は穏やかでまさに夏本番といった気持ちの良い日差し。 そんな泰国の小さな港町に開拓者達の姿があった。 「美味しい話には裏が有るっていうけど、裏表無く美味しい話も有るもんだね〜」 夏らしく薄着で、立派な胸を見せつけているジプシーのラティオ(ib6600)は海を眺めて伸びをして。 一同は、依頼人である女商人の代理人から運び込む食料やその他諸々の手配をして貰っているところであった。 船の準備は出来たよう。いざのんびりとした骨休めに出発! そんな開拓者一行は、なんとうら若き女性ばかりだった。 だがその中に、なんだか微妙に引きつった笑顔を浮かべた男が1人。 話は少し前にさかのぼる。 「‥‥魔槍砲関連の資料に、報告書の写し‥‥と、次にお呼びがかかるまでこれで勉強だな」 ギルドにて、資料集めをしていた赤い花のダイリン(ib5471)。豪快な外見のわりに几帳面である。 そんな彼の後ろをふらっと通りかかった猪 雷梅(ib5411)はダイリンを見つけて、 「おう丁度良かったぜ、ダイリン! 次の依頼よろしくなー」 「は? 依頼? ‥‥申請した覚えないぞ」 突然そんなことを言われて首を傾げるダイリン。ぽかんとした彼の顔を見てけらけら笑いつつ猪は、 「面白そうな依頼見つけたからよぅ、ついでにお前の名前でも申請しといた! 感謝しろよぅ?」 「‥‥はあああ!?」 ということで今に至る。ダイリン、予定が大いに来るってじとっと猪に視線を向けてみたり。 しかし依頼は依頼、開拓者10名を乗せて船は行く。目指すはすぐ近くの小さな無人島。 荷物満載でどんぶらことこぎ出せば小一時間ほどで島へと到着、まずは荷物の積み降ろし。 暑い日差しが照りつける中、開拓者達は協力して荷物を島に運び込むのだった。 「‥‥あっぢぃ‥‥だりぃ‥‥なぁなぁ、私の分までやってくんねぇ‥‥?」 しおらしく、上目遣いで猪はダイリンにお願いしてみたり。といっても、台詞の前半で台無しなわけで。 そんな上目遣いの猪にダイリンはにっこりと笑顔を向けて、すっと手をさしのべて。 がっちり頭を捕まえて、拳でごりごりごりごり! 「‥‥サボろうとすんな!」 「あだだだ!! ちぇ、ケチ」 仲良しなんだかなんなんだか。とにかく、ほほえましく周りの仲間たちに見られつつ作業は進むのであった。 さて、到着した別荘はなかなかに立派な建物であった。 10名の開拓者が泊まり込むには十分な部屋数。地下には立派な食料庫、厨房までも完備。 「メイドのプライドにかけて、これはやりがいがありますね!!」 泰国の暑さも何のその、汗一つ見せない鉄壁のメイドっぷりを見せるのは泡雪(ib6239)だ。 だが、片付けを前にすることが。 「ほら泡雪。片付けも大事だけど、まずはみんなで島の安全確認でしょう?」 「あら、そうでしたわね♪ それでは皆さん一緒に参りましょうか」 友人の水鏡 絵梨乃(ia0191)に諭されて泡雪はそうでしたと手にしたフル装備の掃除用具を置き直し。 荷物を運び込んだ一同は、島の安全確認へと出発するのだった。 ●島をてくてく 夏らしい季節の島を風が吹き抜ける。空気は乾燥していて、木陰なら涼しく良い島であった。 そんな中をてこてこ歩く10名の開拓者達。 「面白い依頼ですよね。でも、おかげでボク、初めて海を来られたんですよ♪」 鼻歌交じりで言うのはジプシーのサガラ・ディヤーナ(ib6644)だ。 初めて見た海の大きさにちょっとはしゃぎつつ、潮の香りも何もかもが新鮮だ。 「お仕事が終わったら、泳ぎに行けましょうね。ひいな、水着持ってきたんですよ」 手には依頼人から貰った島の地図を手に、サガラとならんでてこてこ歩くのは鈴梅雛(ia0116)だ。 2人に、お仕事終わったら遊んで良いんですよね? と見つめられた他の開拓者達。 思わずもちろん、と応えつつ笑顔が浮かんでしまったり。 そして鈴梅が結界で調べても島にはアヤカシは姿形もなく、平和そのもの。 せいぜい小鳥やら小動物が居る程度で。 「これといった問題は無さそうですね」 鈴梅が言うように、何の気兼ねなくのんびり出来そうであった。 ということで、とりあえず島の隅々まで見て回ろうということになって、綺麗な小川を超えてぐるりと一周。 そんな中、ふらふらっと木々の向こうの景色に引き寄せられるリュミエール・S(ib4159)。 「‥‥むぅ、あっちには何があるのか‥‥」 木々の向こうにふらっと行きそうになる彼女の耳をきゅっと掴んだのはシルビア・ランツォーネ(ib4445)だ。 「まったくもう。目を離すとすぐにふらふら行っちゃうんだから!」 「痛い痛い、耳引っ張らないでよう‥‥でも、ありがとうね♪」 のほほんと応えるリュミエールにシルビアはぽふっと真っ赤になると、 「ほ、放っておいたら絶対迷子になるから‥‥べ、別に心配とかじゃないんだけど!」 うむ、実に可愛い反応である。 さて、そんなこんなで暢気な散歩気味だった安全確認も無事終了。 あとは手分けして、作業に入ることとなったのである。 早朝に島に渡った甲斐あって、まだ午前中。 暑くならないうちに外の作業を済ませようと張り切る開拓者達だった。 「私は鬼っ、鬼だ! 草刈の鬼になるじぇえ!! オニオニ!」 長袖長ズボン姿、虫除けのために首回りには手ぬぐい詰めて、顔には白猫の面。 珍奇な姿ながら、実は日焼けと虫対策万全を期していたのはリエット・ネーヴ(ia8814)だ。 両手を広げた謎の構えでぷちぷち草むしり中だ。草刈りの鬼というよりは草むしりの仔猫さんである。 「オニオニ〜♪」「オニオニ〜♪ なんだか楽しいですね♪」 なんだか受けているようで、ラティオやサガラもオニオニ歌いながら草刈り中。 別荘には草刈り鎌やらもあったようで草刈り草むしりは快調。 そして、同時に別荘の点検に修繕や運び込んだ食料などの設置と別荘の掃除が進行中であった。 別荘内部では、男手として重宝されているダイリン。高い背を活かして天井の雨漏りを修繕中。 届かないところは、猪を肩車して作業しているようであった。 そして、てきぱき泡雪が掃除と食料準備の陣頭指揮。水鏡やリュミエールらを指揮して八面六臂の大活躍だ。 別荘周辺の草刈りや掃除も進行中。オニオニとラティオやサガラが大活躍。 一方草むしりの仔猫さんはというと。 「う?! 蛙さん、みっけ‥‥そか。食べ物豊富でも、暑いから大変じょ」 何故か水辺で蛙さんと会話中であった。 「‥‥お仕事はきちんとしないとです」 「そうだぞリエット。遊んでないで、ちゃんと手伝わなきゃ」 鈴梅に、めっと怒られて、さらには水鏡にも諭されたリエット。 「怒られちった♪」 とまぁ、悪びれてない様子だが、とりあえず作業再開したようで、すぐさま別荘周辺の雑草は一掃。 協力して水をまいて土埃を抑えて。周辺のゴミも片付ければ見違えるように綺麗になった別荘。 良い調子で作業は進んでいるようであった。 そして初日の正午前。 大掃除とか修繕作業は進行中、その合間に足りない資材や食材を求めに買いだし班が結成されたようだ。 「え、シルビア行くの? 私も行く行くっ、何でも持つから〜」 「‥‥リュミエール、さっき重いもの持てないとか言ってなかった?」 とりあえず中心はリュミエールとシルビア、そして猪とダイリンあたりが買い出しに向かったようで。 「大丈夫! ついでにあそ‥‥ごめんなさい睨まないで」 思わずリュミエールの本音がぽろり。じろりとそれをにらむシルビア。 とりあえず、リュミエールの暴走を上手く抑えつつ、買い出し班は資材と食材を買いに出発するのだった。 ●砂浜でわいわい 昼過ぎ、もっとも暑い時間。 「絵梨乃様、こちらの布団で最後ですよ♪ お疲れ様でした」 「ん、泡雪もお疲れさま〜」 どうやら別荘内部の掃除と布団の片付けなどは一通り終了したようだ。 といってもまだまだ細かい掃除洗濯片付けはあるだろうが、とりあえず初日は終了。 暑い時間、働き続けても効率は上がらない。となればすることは一つ。 「海だじぇ〜〜!」 ぴょいんと飛び込んだリエット。そう、作業も大事だが息抜きも大事。 丁度買いだし班も戻ってきたところで、夕方まではしばしの休憩だ。 リエット自身仲間と協力して流木やゴミを綺麗に掃除した白い砂浜を駆け抜けて、ドボンと飛び込み。 暑い日差しに水が冷たく心地良い。それを見て、他の女性陣も次々に水着に着替えて海に行くのだった。 「水が冷たくて、気持ち良いです」 波打ち際で水遊びをしている鈴梅、そんな彼女の横でおそるおそる海の水を舐めてみるのはサガラだ。 「わっ、しょっぱい! ‥‥海って本当に塩辛いですね〜」 不思議ですね〜と2人はのほほんと波打ち際で楽しんでいたり。 「私も海は初めてなのよ♪ 2人は泳げる?」 とこちらはラティオ。全力で泳ぎ回ったりと元気いっぱいの様子。 そんな彼女たちの横をてくてく行くのは、買い出しから帰ってきて海に直行した2人。 「よっしゃー! 泳ぐぞ〜!」 ぷかぷか浮き輪で浮きながら、波に揺れているのはリュミエール。赤いパレオ付きビキニがまぶしい。 そんな彼女に誘われて、 「いや、あくまでリュミエールがしつこく誘うからよ?」 ぶつぶつとシルビア。 「確かにジルべリアじゃ海で泳ぐ機会なんて無いけど‥‥」 「もー、何ぶつぶつ言ってるの? ‥‥水着かわいいねー」 リュミエールに言われたように、実はシルビアもすでに水着姿であったり。 そしてすましたシルビアにリュミエールがぺたぺたスキンシップ。 「‥‥別に、本当は泳ぎたかったとかそういうのじゃないから!」 「そうなの? でもとりあえず一緒に泳ごうよ。ほらほら」 ぺたぺたぺたぺた。もちろん、次の瞬間すぽーんとリュミエールはシルビアに投げ飛ばされたのであった。 波打ち際を歩く2人の女性。 「よく似合ってるわね、泡雪」 「絵梨乃様こそお似合いです」 時刻はそろそろ日が沈みつつある夕方だった。しばらく泳いだりみんなで楽しんだ2人。 今はちょっと休んで、夕日を眺めていたり。 しばし流れる2人だけの時間。泡雪の頬が赤いのは、夕日のせいか、それとも‥‥。 そこに、すぽーんと飛んでくるリュミエール。何度投げられたのかは謎だが、水鏡の近くに着水。 「‥‥あ、えりのんだ、お久しぶりねー」 「お、りゅ〜みん。可愛い水着だし、身体検査をしてやろう♪」 「ってわきゃ、ふああシルビア助けてー」 そんな様子におもわず笑ってしまう泡雪と投げ飛ばしたリュミエールを追ってきたシルビア。 本当に仲の良い面々であった。 一方その頃、砂浜からちょっと離れた場所で、向き合う2人。 「ったく他の奴と海にでも行きゃいいだろうに‥‥ま、やるからにゃ勝つつもりでいくぜ!」 「本気でこいよ? 手ぇ抜かれっとつまんねえから、よ!」 ダイリンと猪は、模擬戦の最中であった。 棍で接近戦を仕掛けるダイリンに、猪は銃撃で応戦。間合いに入られれば銃身を使っての接近戦だ。 火花散らす戦い、だが接近戦にはダイリンの棍が僅かに有利で、手から銃をはじき飛ばされる猪。 「なんだよ! なんで勝つんだよお前ぇ! つまんねー!」 「つまんねーって何だよ! 折角付き合ってやったのに!」 ぎゃーすと喧嘩するほど仲の良い2人であった。 そして、長柄の武器の扱いを学び直すかねと、思案するダイリンに、猪が、 「どりゃー! 勝ち逃げはゆるさねぇぞ!」 「だー!! 何でおまえはやたらと引っ付いて来るんだ! 暑いだろうが!」 「けけけ、やだねー!離れね‥‥うぉっ?!」 ごろごろと転がる2人、どこをどうなったのか猪がダイリンにのし掛かった体勢になったりしたのだが。 「‥‥何してるんだじぇ?」 「あらあら、お邪魔でしたかしら?」 丁度そこにやってきたのは、海で遊んでた女性陣。 しゅぱっと年少の鈴梅やリエットの目を塞ぐ水鏡と泡雪、さすがの早業である。 「さぁ、みんなー ご飯の時間だー」 「私が腕を振るいますわ〜」 そして水鏡と泡雪はみんなを急かしてくるりと撤退。ラティオやサガラも首を傾げつつ、みんなで退散。 「いや待て落ち着け! あんたら変な勘違いを‥‥待てええええ?!」 「‥‥何そんな騒いでんだ?」 ダイリンは大慌てで弁解しようとするが、猪を上にのっけたままじゃ説得力無し。 でもまぁ、年少のリエットや鈴梅には見られていなかったのが救いで‥‥。 「猪とダイリンは仲良しなんだじぇ」「犬猿の仲じゃなくて、猪猿の仲ですね」「らぶらぶだじょ」 ばっちり見られてた上に誤解全開だったり。 ●宴会でどんちゃん そして夜。明日からも作業は残っているが、とりあえず今日は一日終わりだ。 「氷、まだ必要なら言って下さいね」 鈴梅が作る氷は酒や果汁を冷やしてみんなの喉を潤して。 海岸沿いに宴席が設けられて、一同は潮騒を聞きながらわいわいと楽しい宴会を始めるのだった。 料理に給仕に大活躍なのはもちろん泡雪だ。 「サガラ様の作った一品も、美味しくできていますよ」 「えへへ、泡雪さんにそう言って貰えると嬉しいな♪」 サガラをはじめみんなで手伝って作った大盛りの料理は、作業でつかれた体に染み渡るおいしさ。 ジルベリア料理に天儀の料理、アル=カマルの料理に泰国のものまで目白押しだ。 盛り上がる宴会に華を添えるのは、ラティオやサガラの舞と歌。 そんな盛り上がりに手拍子で応えつつ。そして酒を飲めるものは飲み、大いに骨休めだ。 「なんだよダイリン! お前飲んでねぇじゃねぇか飲め飲め!」 「まったくお前は‥‥ああ、飲むぜ飲むぜ!」 と、いろいろ疲れた様子のダイリンだが、良い気晴らしにはなったかなと盛り上がり。 「えりのん、お酌をしてあげるよー‥‥てぃっ、海でのお返し!」 「やったな、りゅ〜みん‥‥今日は無礼講だけど、お返しのお返し〜!」 水鏡とリュミエールはいつもの様子で、シルビアや泡雪たちの笑いを誘い。 「これ、美味しいの♪ 梅鈴ねーも食べてみる?」 「本当に美味しいですね。これ、サガラさんが作ったんですか?」 「うん、今踊ってるから、後で作り方聞きに行こう〜。‥‥明日も一緒にあそぼーねー♪」 リエットは鈴梅ににっこりと笑いかけて、サガラとラティオの踊りに拍手喝采。 2人の踊りと歌に手拍子の音と笑い声。10人の開拓者で貸し切りの島での休暇は始まったばかり。 どうやら楽しい数日になりそうだと、みんなは心の底から楽しく笑いあうのだった。 |