骨蛇の棲む洞窟
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: ショート
EX :危険
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/06/20 20:58



■オープニング本文

 アヤカシ、それはどこにでも現れるという。
 だからこそ、厄介でありまた根絶が難しいのだが、今回現れた場所はちょっと特殊。
 暑くなってくるこの時期、観光で多くの人が訪れるという名所の洞窟にアヤカシがでるのだというのだ。
 となれば、一刻も早く倒さねばなるまい。
 だが、いろいろと厄介な条件がある。
 まず一つ。洞窟に修復不可能な損傷を与えてはいけない。
 珍しいヒカリゴケやいわゆる鍾乳石と呼ばれる岩のつららが名物のその洞窟。
 鍾乳石がかけたりする程度の被害ならば大丈夫だが、洞窟の一部が崩落するほどの損害は厳禁である。
 そして二つ目。洞窟の一部はかなり狭い。
 通路は身をかがめるほどではないが、立って歩けるのは同時に二人まで程度の幅と高さだ。
 くねくねと曲がりくねっている上に滑りやすいその洞窟で戦うのは中々に難しいだろう。
 通常であれば、洞窟の端々に渡してある手すり代わりの縄を伝って進むその洞窟。
 だが、そこで貴方たち開拓者は戦わねばならないのだ。

 そして敵であるアヤカシだが、まだ余り情報の無い骨蛇というアヤカシだという。
 名前のその通り、骨で形成された蛇といった様相のアヤカシ。
 大きさはなかなか大きく長さは人の身長の二倍ほど。
 太さも細腰の女性の胴体ほどあるという。
 攻撃方法は単純な締め付けや噛み付き、骨で出来ているため動けばかしゃかしゃと音がするらしい。
 だが、接近を感知するのは用意でも、その骨を引っかけて天井すら這い回るという。
 それが数体。10体はいないだろうと言われているが、数体でも洞窟で戦う相手としては厄介だろう。
 我こそはと思う開拓者、通常より報酬は若干多めとなっているので是非、挑戦してほしい。

 さて、どうする?


■参加者一覧
緋炎 龍牙(ia0190
26歳・男・サ
水鏡 絵梨乃(ia0191
20歳・女・泰
鴇ノ宮 風葉(ia0799
18歳・女・魔
藤丸(ib3128
10歳・男・シ
ネプ・ヴィンダールヴ(ib4918
15歳・男・騎
マハ シャンク(ib6351
10歳・女・泰
巳(ib6432
18歳・男・シ
ユーナ・パルミー(ib6649
15歳・女・砂


■リプレイ本文

●いざ鍾乳洞へ
 武天は芳野の近隣にある景勝地、六色の谷。そこにある鍾乳洞、蒼芳洞が今回の舞台だ。
 集った開拓者は8名。
「これが鍾乳洞‥‥」
 入り口にて、ほうっと中を覗いているのはユーナ・パルミー(ib6649)。
 アル=カマル出身の彼女、鍾乳洞は珍しいらしく、どうせなら観光で来たかった、と言った様子。
 それはともかく、一同は鍾乳洞の入り口にて中の地図を確認しているのだった。
「やっぱり、観光地だとこういうおっきな地図があるんだね」
 しげしげと地図の立て看板を眺めているのは水鏡 絵梨乃(ia0191)だ。
 案内図としてそこに立てられている地図を一同は覚えたり、書き写したり。
 とりあえず、大まかな地図は得られたよう。だがしかし、内部はそこそこ広く枝道までは網羅していないよう。
「となると、やっぱり足で探さないといけないみたいだね」
 じゃあいこうか、と水鏡が言えば、他の面々も準備を整え、洞窟へと踏み込むのだった。

「涼みにきたってのに、意外と中は蒸してんのな‥‥奧に行きゃマシになんのかな?」
 ぷかりとふかしていた煙管をしまい込んで、ぐるりと洞窟内部を見回す巳(ib6432)。
 湿り気を帯びた洞窟の空気に眉をしかめつつ、仲間を振り返って。
 丁度仲間の開拓者達はそろって洞窟に踏み込むところであった。
 それぞれ灯りを用意したり、脚周りの装備を調えたり。そんな中に知った顔が。
「はっは、またお前と一緒か。ご縁でもあんのかね」
 けらけらと笑いながらそう言えば、応えるのは紅髪の青年だ。
「ご縁、ね。少し奇妙な感じもするが‥‥兎も角、宜しく頼むよ」
 緋炎 龍牙(ia0190)はそう言いながら、身に帯びた武器の具合を確かめて。
 そんな様子を眺める巳は。
「‥‥ああ、こちらこそ宜しく頼むぜ、道化さんよ」
 そう言って、にやりと微笑むのだった。

 さて、一行は静かに洞窟の中を進み出した。
 灯りはユーナが掲げる松明、それが暗い洞窟を煌々と照らせば、ところどころに鍾乳石が。
 明かりが不思議な陰影を作りつつ、微かに響く水音がどこか神秘的な洞窟を進む一行。
 先に進めば、湿気は替わらないが、空気もどこかひやりと涼しげで。
 そんな鍾乳洞の中の景色に、少々目を奪われながら一行はすすむのであった。

「さっさと、アヤカシ退治して、デートなのですよ!」
 張り切っているのはネプ・ヴィンダールヴ(ib4918)だ。
 ぴこぴこと自慢の尻尾を振るいながら、どうやら依頼の後にデートの約束をしているようだ。
 その相手というのが、ネプの隣を進む鴇ノ宮 風葉(ia0799)だとか。
 彼女を守ると息巻いているネプなのだが、ちょいと足下が心許ない様子で、
「はぅ‥‥滑る‥‥です。気をつけないとなのです。‥‥って、はぅっ!? ‥‥あぅ。痛いのです」
 湿気で滑る岩肌を踏んで見事にすっころんだ様子。そんな様子を、はぁと溜息ついて眺める鴇ノ宮。
「まったくもう。はしゃぎすぎて、洞窟を傷つけたら、あたしはあんた放って変えるからね?」
 そう言われてしょんぼりするネプ。世話が焼けるんだからと、鴇ノ宮は足下を照らす夜光虫を発動したり。
 そんな様子を見ていたのは、水鏡だ。彼女はこの二人の共通の友人だとかで、
「‥‥風葉、なんだか不機嫌だね?」
「ふん。洞窟を傷つけちゃいけない依頼だなんて、そりゃ不機嫌にもなるわよ」
 ネプが転ばないように気をつけてやりながら水鏡に応える鴇ノ宮。
「折角の火力が宝の持ち腐れじゃないの‥‥ったく!」
 と、どうやら派手な技が出来ないのが不満のよう。それはともかく、一行は奧へ奧へと進んでいくのだった。

●地の下で
 周囲を警戒しながら進む一同、先頭を進むのは藤丸(ib3128)だ。
「あー、たしかに見事だこれ。傷つけちゃヤバイよな、うん」
 観光のお邪魔をしちゃいけないし、と周囲の様子を眺めつつ準備は万端のようだ。
 鴇ノ宮の夜光虫やユーナが掲げる松明の明かりで藤丸は地図を見つめて。
 どうやらもう少し先には、ひときわ狭い場所があるとのこと。
「んー、そんなところで襲われたら厄介だしね。‥‥みんな、この先狭いところがあるみたいだよ」
 小声で仲間たちに藤丸はそう伝えて。
「気付かれないように、静かに進もう」
 そんな提案に、一同は首肯してことさら静かに彼らはすすむのだった。
 ちなみに藤丸は同時に超越聴覚を発動していた。聴覚を鋭敏にするこの技はシノビの真骨頂だ。
 今回の敵である骨蛇は動くときに音がするという。となればこれで敵の接近は把握できるはず。
 一行は、そろそろと狭い場所を息を殺して通り過ぎるのだった。

 そして、そんな一団にあって、他者を興味深げに眺めているのはマハ シャンク(ib6351)。
 一目で分かるその姿、龍の獣人であることを堂々とさらしている彼女は泰然と構えていて。
 どうやら、あんまり他人に興味が無いようだ。
 恋人同士や友人、同じ小隊に所属する仲間といった他の面々を静かに人間観察しているようで。
 丁度一行は、狭いところを抜けてすこし開けた場所に出たようだ。
 洞窟の深いところまで来たようで、しんと静まりかえる洞窟。
 その中で灯りを照り返してぼんやりと浮かび上がる無数の石筍の長めは壮観だった。
 それを見てぽつりと呟いたのは緋炎だった。
「‥‥いやはや、見事なものだねぇ。見入ってしまいそうだ」
「見事、ねぇ‥‥。随分らしくねぇこと言ってんじゃねぇか」
 そんな緋炎を混ぜっ返すのは友人の巳。そんな言葉に、緋炎は、
「いくら僕でも人の子だ。綺麗な物は綺麗だと感じるさ」
 と、友人の気安さで応えるのだった。
 さて、そんな小声でのやり取りも響くような静まりかえった洞窟を更に進む一行。
 しばらく進んでいる最中に、その異音に一番最初に気付いたのは藤丸だった。
 さっと頭を巡らせて、音の方向を探る。どうやら音は複数の方向から聞こえてくるようだ。
 藤丸の動きで開拓者一同も勘づいたよう。さてどうすると考えていれば、
「少し先に、開けた場所があるようです! そちらの方が戦いやすいと思うのですが‥‥」
 手にした地図を見ていたユーナがそう言って示すのはさらに洞窟の奧。
「こっちだね! こっちからは音が聞こえないから、今なら間に合う!」
 行こう、と藤丸が仲間を誘導して一同は一気に先に進むのだった。

●鍾乳洞での戦い
 向かった先に広がっていたのは、広い空洞であった。
 高い天井は鍾乳石で被われ、開拓者の持つ灯りでは全てを照らせほど。灯りの動きで影がゆらゆらと揺れていた。
 だが、広さは十分なようだ。とりあえずそれぞれが邪魔になるほど狭くはないよう。
 そんな場所で待ち構えようとする一同であったが、そんな眼前に突然がしゃりと影が。
 今回の敵、骨蛇の一体が回り込んでいたようだ。
 どうやら鍾乳洞の影にある狭い隙間や横道を縦横に移動して回り込んだのだろう。
 一瞬足が止まりかける一同、だがそんな中でもっとも早く動いたのは巳だ。
「毒のない萎れた蛇なんざ面白くねぇ‥‥」
 言葉と共に早駆で飛び込んで、両手の刃をがっきりとその骨の大蛇に打ち込んで。
「‥‥骨の蛇か、奇遇だな。俺も“ヘビ”だ」
 そう言いながら、にたりとまさしくヘビのように金の瞳を笑みの形に歪ませる巳。
 彼が骨蛇を引き受けたその隙に、一行は広い空洞へとたどり着くのだった。

 体に一撃を入れられてのたうつ骨蛇。だがその長い胴は厄介であった。
 長い体をくねらせて、骨だらけの体で絡みつこうとする骨の蛇、触れれば怪我するほどその体表は鋭い。
 巻き付かれてしまえば、かなりの被害を受けてしまうだろう。
 巳が攻撃した一体もからだをのたうたせて、巻き付こうとするのだった。
 だが、ぐるりと巳の背中に回り込んで噛み付こうとしていた骨蛇の頭を捕まえる手が。
 一気に接近していたのはマハだ。瞬脚で接近し、巳に絡みつこうとしていた骨蛇を掴んだのだ。
 暴れる骨蛇を捕らえたまま、小柄な体からは信じられない膂力を発揮して押さえ込む。
 そして、そのまま巳の攻撃で弱っていた骨蛇の顎を掴んで真っ二つに引き裂いたのだった。
 破軍を使用して、気力を高い攻撃力へと変えたのだ。
 これでまず一匹。だが、骨蛇たちはかしゃかしゃと気味の悪い音を立てて集まってきていた。
「入り口から二匹‥‥あと、左の岩場の影からももう一匹!」
 声を飛ばして仲間を援護するのはユーナ。砂漠において砂迅騎が仲間を指揮し援護する技、戦陣だ。
 まだ、開拓者としての経験は浅いものの、仲間の配置や機を見て指揮をすることで戦闘を援護しているようで。
「姿は、目で見えなくても、音で視れば‥‥っ!」
 そう懸命に仲間と連携をしながら、手にした大砂蟲の手斧を振るうのだった。

「アヤカシごときに、鴇ちゃんには触れさせないのですよ♪」
 ずいと前に出て、健気に盾を構えるのはネプだ。這い寄ってくる骨蛇を盾で受け止めて刀で反撃中の様子。
 大きく刀を振れば、鍾乳石や仲間に影響があるかと考えてのことだろう。
 盾を構えながら突きを中心に、なかなか巧みな立ち回りだ。
 だが、そんな彼に向かってユーナの声が。
「‥‥っ?! 上です!」
 咄嗟に上に向かって盾を構えるネプ。そこに向かって天井の鍾乳石を伝ってきた一匹が飛びかかってきたのだ。
 今まで相手をしていた一体が、さらにネプに向かって飛びかかろうとする。
 危ない、と思った次の瞬間、割り込んだのは鴇ノ宮だ。
 身を挺して盾になるのか? いや違う。彼女は咄嗟にそのまま後ろに下がった。
 すると、飛びかかってきた骨蛇が、鴇ノ宮のいた場所を通過。そこで発動する地縛霊。
 咄嗟の行動でなんとかネプは二匹に挟まれることなく、切り抜けたのだった。

 そして飛びかかって、絡みつこうとする骨蛇を紙一重で躱し続ける姿は、古酒の香りを纏う水鏡だ。
 じゃらっと音を立てて足に絡みつこうとした骨蛇を飛び上がり回避。
 そして、地面から跳ね上がって噛み付こうとする骨蛇を、ふらりと後ろに倒れるようにのけぞってさらに回避。
 二匹の骨蛇を相手に、躱し続ける水鏡。彼女が待っていたのは反撃の切っ掛けだ。
 そこに飛び込んできたのが藤丸。あえて、ソードガントレットに包まれた手に骨蛇の攻撃を受けとめての反撃だ。
 漸刃で敵の姿勢を崩させて、そのまま忍拳で一撃。
 逃がさないように、そして洞窟に被害が出ないようにと、足下に叩きつければやっと骨蛇は沈黙するのだった。
 そして、一匹を藤丸が引き受けたことで、反撃に転じる水鏡。
 躱しざまに、足裏で踏みつけるようにして蛇の胴体を蹴り落とす。
 そのまま地面に踏みつけ動きを制限。そして反撃してきた蛇の頭に強烈な踵落とし一閃。
 さらに一匹の骨蛇が粉砕され、瘴気へと還るのだった。

 そして残る一匹と対峙していたのは緋炎だ。
「‥‥君達アヤカシに好き勝手されるのは癪なのでね」
 先ほどまでの好青年な様子とは打って変わって、静まりかえった瞳の底には燃える炎が。
 まるで修羅のように、ただただアヤカシを屠るために彼は武器を振るっているようであった。
 両手に持った二振りの忍者刀で、骨蛇の攻撃をいなして返す刀で自由自在の反撃。
 周りに注意してか、待ち構えて反撃狙いだが、骨蛇に緋炎の受けを突破することは出来ないようであった。
 そこで、骨蛇も捨て身の攻撃。尾で地面を凪いでからの、飛びかかり攻撃を放ったのだが、
「‥‥甘いな。散れ、月光閃‥‥」
 緋炎は軽く飛び上がって回避、そのまま蹴りで押さえつけると、払い抜けで一気に骨蛇を一撃。。
 二つの刃がまるで牙の如く、骨蛇の頭をかみ砕いたのだった。

 からんからんと、崩れた骨蛇の一部が地面に転がる音が響いた。
 数は全部で8匹いたようで、その全てが襲いかかってきたようだ。
 だが、今残るのは瘴気へと戻りつつある骨の塊だけで。
「ふん、終わりか」
 つまらなそうに言うマハだったが、とりあえずこれにて骨蛇の討伐は無事完了するのだった。

●依頼の後に
「さっ! 鴇ちゃん、早く行くのです!」
「はいはい、押さない。駆けない。はしゃがない」
 不思議なのです、と目を丸くしてデート中なのはもちろんネプと鴇ノ宮。
 まぁ、鴇ノ宮の方は、転んだりしないでよね、と微妙に保護者気分のようだがそれはそれ。
 そんなカップルの後ろのほうでは、今度は改めて観光とユーナがやってきていた。
「ちょっと湿気がきついけど‥‥うん、綺麗」
 改めて心を落ち着け洞窟内部を見やれば、小さな地底湖や鍾乳石の並びと見所は沢山のよう。
 しかし、他の開拓者の心はまた別な興味へと向いているようであった。
「よし、終わった終わった‥‥さて、美味いもんでも食うとしようぜ」
 洞窟から出てきて、空を眺めつつやっと一服した巳。
 彼はどうやら緋炎と一緒に、芳野の街まで出て旨いモノ探しといった様子なのである。
 水鏡や藤丸はどっちについていこうかなと思案中の様子だったり。
 そんな一同を、マハは興味深げに見ているのであった。