絆を深める小旅行
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: イベント
相棒
難易度: 普通
参加人数: 19人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/05/23 17:06



■開拓者活動絵巻
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神戸爾






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■オープニング本文

 武天の芳野という街にほど近い景勝地、六色の谷。
 そこに、この春やっと営業開始にこぎ着けた新しい温泉宿があった。
 珍しく開拓者を主な顧客として想定したその温泉宿。
 そこの売りは、ずばり、
「相棒と一緒に泊まって、温泉にまで入れる温泉宿」

 設備は、いろいろとよく考えられているようだ。
 まず、建物自体がかなり広め。大きく分けて二棟の建物部分は分かれている。
 向かって左側には小型の相棒とともに使える通常の宿。
 こちらは、普通の温泉宿と大して変わらないようで、人妖や忍犬程度までの相棒と共に使える様子だ。
 そして、目立つのは向かって右側の大きな棟。
 ほとんどが一階建ての、石造りの堅牢な建物で、部屋数はそれほど多くないのだが一部屋ごとが巨大だ。
 ここは、なんと龍と共に止まることの出来る部屋とのこと。
 それぞれの部屋が独立していて、中は石畳の上にわらが敷いてあったりと清潔で広い部屋になっているとか。
 ここでは、龍やもふらなど大きな相棒と共に泊まる場合に使われるようである。
 そして左右の棟の奥、谷側は水場となっている様子だ。
 近くの源泉から引いてきた高温の湯を使った露天の温泉と、川の水を引いた水場がある様子。
 温泉の方は、豊富な湯量を活かして、掛け流し状態。
 広い上に混浴なので、浴衣や湯帷子の着用が勧められているが、相棒と共に温泉や川遊びが楽しめるとか。

 なお、相棒たちでも食べることの出来る食事を用意する料理人もいるとか。
 今回は、開拓者たちに広く宿を知って貰うために、宿泊費はなんとただだとか。
 しかし、食事を作って貰ったりする場合は、ある程度の料金が発生する場合もありうるので注意が必要。
 自前で調理場を使ったりして用意するのも可能とのこと。

 戦いも激しさを増す昨今の開拓者たち。
 時には相棒と共に、のんびりと羽を休めるのも良いのではないだろうか?
 さて、どうする?


■参加者一覧
/ 水鏡 絵梨乃(ia0191) / 羅喉丸(ia0347) / 酒々井 統真(ia0893) / 礼野 真夢紀(ia1144) / 慄罹(ia3634) / 珠々(ia5322) / 鈴木 透子(ia5664) / からす(ia6525) / 和奏(ia8807) / 村雨 紫狼(ia9073) / 鞘(ia9215) / アルーシュ・リトナ(ib0119) / 琥龍 蒼羅(ib0214) / 御陰 桜(ib0271) / 不破 颯(ib0495) / グリムバルド(ib0608) / 琉宇(ib1119) / 无(ib1198) / 針野(ib3728


■リプレイ本文

●集い
 ギルドに申し込んだ突然の誘いに対して、数組の開拓者が来れば御の字と思っていた宿の主人。
 蓋を開けてみれば、予想を遙かに超える大人数。これには宿の主人も満面の笑みで。
 思い出すのは土地を買えば僻地で、大変だった宿の建設のこと。
 しかし、こうして多くの開拓者が訪れてくれるのであれば、きっと宿は繁盛するに違いありません。
 そんな予感とともに、宿の主人はやってきた開拓者を温かく迎えるのでした。
「ようこそお越し下さいました! ゆっくりしていってくださいね」
 ‥‥そんな言葉に応えたのは、開拓者達と、龍にもふらに人妖に忍犬に土偶ゴーレム‥‥。
 とにもかくにも、賑やかな小旅行になりそうです。

「前にいった所とは別に、一緒にお風呂に入れる宿みたいだから、楽しみだねー♪」
 相棒の駿龍、鈴麗に話しかけているのは礼野 真夢紀(ia1144)です。
 龍の大きな体を小さな礼野に寄せて、ぐるぐるとうなりつつ、どうやら鈴麗も楽しみな様子。
 そんなこんなでお財布と相談しつつ礼野はまず宿にやってきて温泉に向かうようです。
 聞けば、たくさんお客が来たのでお食事も無償だと聞いて、さらに喜ぶ礼野と鈴麗。
 喜び勇んで、とりあえずはと温泉にやってきました。
 浴衣が無いのでとりあえず、シャツで代用。
 まぁ、温泉は龍たちも入れるほど広いので、問題は無いでしょう。
 そんな感じで彼女たちが向かった温泉、そこはすでにいろんなお客さんで溢れているのでした。

「迅鷹の温泉‥‥やっぱり、水浴びのようにぱちゃぱちゃぱちゃー! とやって出てくるんでしょうか?」
 かっくり、首を傾げて相棒の様子をうかがうのは珠々(ia5322)です。
 その視線の先には、迅鷹の嶺渡。浴衣姿の珠々と嶺渡はすでに温泉の準備万端のようでした。
「‥‥文字通り、鴉の行水的に」
「ギーッ!」
 珠々の言葉に抗議する嶺渡、誇り高き迅鷹は、鴉という言葉がお気に召さなかったよう。
「では嶺渡、鴉が嫌なら、鴉ではない入り方‥‥こう、足先からゆったりお湯につかるとか」
 そう言われてなんとか頑張る嶺渡、迅鷹や小型の相棒用に作られた浅い温泉に浸かろうとして。
 しかし、哀しいかな迅鷹は水鳥ではありません。滑る岩場で水をばしゃばしゃ、ぎーっと慌てて。
「うん、構造的に無理ですね。のぼせそうだし」
「ギーっ!」
 再び抗議する嶺渡ですが、とりあえず珠々が手をさしのべれば、ひょいとそこに飛び乗って。
「まぁ、遊びもほどほどに。骨休めも任務のうちです。嶺渡、「休む」ことを覚えましょうか」
 水で乱れた嶺渡の毛羽立ちを撫でてあげて、二人は改めてのんびり温泉に浸かるのでした。

 そんな一人と一羽の横で温泉をのんびり楽しんでいたのは、鞘(ia9215)とその相棒の人妖、かたなです。
「宿泊費無料はいいこと」
「その上ご飯も無料になったしね。タダより高いモノはないっていうけど、タダはいいよね」
 さらっと無表情にいう鞘に、元気な人妖のかたな。性格は真逆といったところでしょう。
 ですがその二人は、とても良く似ています。ですが、大きさの違いは一目瞭然。
 背の大きさと、そしてもう一つ。胸の大きさでも、なにやら一目瞭然の違いだとか。
 ちなみに、自己主張の激しい胸の持ち主は小さな人妖のかたなの方。鞘の方は控えめです。
 どうやら胸の自己主張は、性格の自己主張と比例しているような感じのこの二人。
「いいお湯‥‥だけど、騒がしい。お風呂では静かに」
「いいじゃん別に。楽しければね♪」
「‥‥そろそろ上がるよ。お蕎麦作るんだから」
 そういって、元気な人妖は涼やかな主に連れられて温泉から退場していくのでした。

 さて、どうやらこの時間、温泉には女性客の姿が多いようです。
 といっても広い温泉、そこまで気にしなくて良いようですが、最初は控えめに行こうということらしく。
「浴衣じゃなくて、水着でもイイかしら?」
「わふっ!」
 温泉担当の女性従業員に、大丈夫ですよ、と許可を取り付けたのは御陰 桜(ib0271)と忍犬の桃でした。
 ということで、異国風にいうならば、ぼんきゅっぼんなないすばでぃの御陰。
 彼女はまず忍犬の桃をしっかり洗ってあげるようです。
「桃、気持ちイイ?」
 そう聞きながら、もみもみとわんこの体をもみほぐす御陰。思わず桃もわんっと応えて。
 そしてとどめは、桃の弱点のおなかだとか
「特にココがイイのよね♪」
「くぅーん♪」
 弱点のお腹をもふもふされて、普段はきりっとしている桃もデレデレになるのでした。

 そんな感じに賑やかな温泉。しかし、女だらけの楽しげな温泉の片隅では小さな叫び声が。
「ほーれ、いくよー。髪洗ってあげるからー」
「のおおおおおおお!?」
 針野(ib3728)がずりずり強制連行しているのは人妖の矢薙丸。
 オイラは恥ずかしいから、と渋る矢薙丸。それもそのはず、赤い髪の人妖矢薙丸は男の子です。
 ですが、主の針野はきっぱり、混浴だからあきらめなさいとのこと。
「ほらほら、もう温泉についたさー。ちゃんと肩まで浸かって、百数えなきゃ駄目なんよ?」
 そんな針野の言葉に、矢薙丸はその髪と同じぐらい真っ赤になりつつ堪え忍ぶのでした。

 その時、真っ赤になっている矢薙丸の前をすいっと泳ぐお魚の姿がひとつ。
 温泉に魚? 誰もがびっくりして思わずその姿を目で追ってしまいます。
「針野! 魚がいるぞ」「うおっ!? 本当さー!」
 びっくりする針野に矢薙丸。続いてその不思議な魚は、御陰と忍犬の桃の所に。
 桃も、思わずびっくりしてじっとお魚を眺めたりしつつ、最後にお魚が向かったのは、温泉の端っこ。
 そこにいたのはからす(ia6525)でした。
 からすはじっと魚を眺めると、
「‥‥琴音」
 とたんにぴたりと動きを止めるお魚。そんな様子をみて苦笑しつつからすは、
「食べられる前に退くんだよ」
 そういって、先に上がれば、ぽんと変身した姿から元に戻るお魚、ではなく人妖の琴音。
 悪戯をしてびっくりさせたみんなが見守る中、慌てて琴音もぺこりと頭を下げてから主を追うのでした。

 そしてそんな様子をほほえましく眺めつつ、駿龍のフィアールカと一緒に温泉の縁に腰掛けている女性が。
 アルーシュ・リトナ(ib0119)は、藍染めで桔梗柄の浴衣姿で、ゆったりと温泉に足を浸けていました。
 掛け流しの温泉の端では、川の水が温泉のお湯と混じって大分温くなっているようで。
 熱いのよりも水遊びが好きなフィーアルカは尻尾をおそるおそるお湯に浸して満足したようです。
 そんな相棒に合わせて、足湯気分のアルーシュ。
 のんびりと寛ぎながら、彼女は、残念ながら一緒に来られなかった思い人のことを思い浮かべるのでした。

●川遊び
 一方その頃、男達はというと、気心知れた相棒との小旅行を別の形で満喫していました。
「精進せい、羅喉丸。御主の腕に我らが夕飯がかかっておるぞ!」
 川面に釣り竿をたれる拳士と叱咤激励を飛ばす人妖。ただし彼女は仙人風の長袍をまくりあげて川遊び中。
 羅喉丸(ia0347)と人妖の蓮華は、釣りをしつつ羽を伸ばしている最中であった。
 ちなみに羅喉丸は、この蓮華を師匠と呼ぶのだとか。
「師匠、楽しそうですね」
「うむ、何ごとも修行ぞ、羅喉丸。ほれ見や、あちらでも修行に励んでいる者たちがおるぞ」
 えへんと胸を張る蓮華が指した先には‥‥
「‥‥やっぱ、いっしょに旨いもん食いたいよなっ。興覇、がんばってくれよ」
 棍を釣り竿代わりにしているのは慄罹(ia3634)、そして彼の言葉に応じて尻尾を振るう龍は興覇だ。
「ギャース!」
 気合い?一閃、尻尾の一撃はばしんと水中の魚を捕らえ、というか水ごと吹っ飛ばす豪快な魚取り。
「おお、良くやったぞ、興覇!」
 ギャスと応える興覇に思わず慄罹はその背を撫でようと手を伸ばすが、ふと気付いたのは羅喉丸たちの視線。
 どうやら、人前ではあんまり仲良くしたくない様子の慄罹と興覇。
 とっさにぷいっとそっぽを向きつつも、道中手に入れた山の幸や川の幸には思わず笑みがこぼれるのでした。
 そしてそんな面々をのんびり見ている姿が。
「‥‥魚は沢山いるみたいですね〜、颯はお魚食べたいかい?」
 颯と呼ばれる駿龍と共に、涼しい川縁でのんびりしていたのは和奏(ia8807)だ。
 こちらは釣り竿をたれるのではなく、のんびり足を水面に垂らして涼んでいるようで。
 同じく颯も、野生をすっかり忘れた様子でのーんびりと尻尾を垂らして。
 日の光で暖まった颯の毛並みは暖かく、魚釣りを眺めながら和奏は思わず昼寝してしまうのでした。

 さて、そんな彼らの上空を悠々と飛ぶ龍が一頭。
 その龍が落とした影に、思わず和奏や慄罹らが見上げれば、それは藍色の駿龍でした。
 龍の名は陽淵、琥龍 蒼羅(ib0214)をその背に乗せて、遊覧飛行の真っ最中です。
 今回の宿は直接龍で行き来することも可能だとか。
 彼らは一度直接宿を訪れて、その後空の旅を楽しんでいるようで。
 ゆうゆうと暮れなずむ山々の夏の姿を楽しんでから、ゆっくりと宿に帰る琥龍と陽淵。
 戻って早々に琥龍が向かったのは調理場でした。
「ご主人、調理場は自由に使って良いんだったな?」
「へい、一応手前どもでも料理は用意しておりますが、それぞれ好みもありますので‥‥」
 主人曰く、開拓者の相棒たちの好みは千差万別なので、自由に対応できるための計らいとのこと。
「ふむ、となればあとは材料だが‥‥」
 川で魚を現地調達するか、と琥龍が思案顔を浮かべたところ、やってくるのは先ほどの慄罹や羅喉丸だ。
 羅喉丸の手には、泰国の包丁と鍋、そして慄罹の手には先ほどの釣りの成果がてんこ盛りで。
「‥‥籤で拾い物をしたと言っておったが、それか?」
 ぴっと羅喉丸の人妖、蓮華が包丁と鍋を指さして言えば、
「ええ、我が火工の腕を存分にお見せしましょう」
 笑って言う羅喉丸。そんな様子を見て、琥龍は
「ふむ、材料に料理人までそろったな。俺は焼き魚に、それに合いそうな品をいくつか作るとしようか」
 と、一同は相談を始めるのでした。
 奇しくも羅喉丸だけではなく慄罹も同じように泰国の料理が得意とか。
 肩を並べて泰国の料理を作ろうとする2人。そこにさらなるお客がやってきました。
「人妖も蕎麦で平気なの? あ、食事に蕎麦作りたいんだけど、厨房貸して貰える?」
 人妖のかたなと一緒に現れたのは鞘で。さらにもう1人。
「おや? 調理場が大繁盛のようだね。私がつかう場所はあるかな?」
 こちらは人妖の琴音とからすです。
 どうやらみんな厨房を使って仲間や、自分の相棒のためにご飯を作りたい様子。
 それをみて、はたと宿の主人が考えたことは、次のようなことでした。
「‥‥皆様、各自食事を作るようですし、ここは一つお願いが御座います」
 それは、それぞれの料理を大目に作り、それも晩ご飯に加えると言うことでした。
 宿でも様々な種類の料理を用意されていたようで、それにさらに開拓者の料理が加わるという形のようです。
 そのかわり、材料費や雑費はすべて宿側が負担するとのこと。
 というわけで、料理好きな開拓者達が集まった結果、晩ご飯はいわゆる食べ放題形式になったのです。

 さて、丁度そんな時、早めに温泉に向かっていた男性開拓者達御姿がありました。
 いまなら温泉も空いている、というわけで。。
 さて、その一人目は不破 颯(ib0495)です。相棒の風信子はもふら、今日も今日とてのんびりな様子。
「温泉で羽を伸ばせるなんて、贅沢だねぇ」
 へらりと笑う不破、温泉にのんびり浸かっていれば、気心しれた相棒に悪戯してみたくなるのも人情です。
 とりあえず浅いところでのほほんと温泉に浸かっていた風信子をすっぽりと風呂盥を乗せてみたり。
「ほぉ〜ら船遊びだよぉ?」
 ぷっ、と盥船に乗せられてしまった様子に思わず吹き出す不破。ですが帰ってきた答えは予想外で、
「楽しいかも‥‥なんて思うか、この若造が!? 儂が乗るより貴様がかぶりゃ〜!!」
 と、やっぱり予想通りの反撃で、がっつり不破は盥に頭をぶつけたりして。
 そんな2人も、しばらくのんびりすれば、そろそろご飯の時間。
 熱燗で飲み直すのは、ご飯の後にしようと温泉を後にするのでした。

 二人目は、のんびりとやってきた酒々井 統真(ia0893)。
 彼は、後で入るとのこと、つまり彼と彼の相棒である人妖の雪白は別々に温泉にいくようでありました。
 そんなわけで、人妖の雪白が一人でてくてくと温泉にやってきてみれば、丁度人がいないようで。
 龍すら入れる大きな温泉に雪白一人。なんとも贅沢に温泉を満喫する雪白でした。
「‥‥大事な朋友を1人で湯浴みに行かせるなんて、困った主だね」
 くすくすと笑いながらも、どこか思い詰めたような酒々井の様子を思い出して雪白は小さく首を振って。
 しかし、もちろん彼女は唯々諾々と言うことを聞いているだけではない。
 ゆったりと温泉に浸かって良い考えが閃いたのか満面の笑顔を浮かべて、ご飯だよと迎えに来た酒々井に、
「全く構われないというのも少し癪だし、食事の時には、お互いに食べさせ合いっこを所望してもいいかな?」
 にっこりと可愛い笑顔でそういわれて、酒々井は困った顔のまま、頷くしかなかったようでした。

 そして、酒々井と雪白が去って数分が経ったころ、がらんとした温泉にやってきたのは2つの人影。
 それは村雨 紫狼(ia9073)と土偶ゴーレムのミーアでした。
 土偶ゴーレムながら、人間に似せたというミーア。
 そんな相手とともに小旅行することに対して、村雨は人知れない葛藤があるようですがそれはそれ。
 とりあえずは仲良くしているのですが。
「ちょーどいいや、背中を流してくれよ!」
 そう頼んだ村雨、それが運の尽きでした。わかりましたマスターと応えたミーアはなぜかドリル装備のままで。
 ぎゅんぎゅん回るミーアのドリル。背中どころかいろいろと大変なめにあう村雨で
「だー、これ以上はやーめーろーーーー!! っアーーーーーー!!」
 はてさて、村雨が一隊どういう目にあったのかは目撃者がいなかったので不明です。
 叫び声からすると、大分大変な目にあったのだけは確かでしょう。

●くつろぎの宿
「何が出てくるか楽しみですねー」
 龍と一緒にのんびり出来る部屋にて寛いでいるのは礼野です。
 お風呂上がりの礼野と鈴麗はほっこりと晩ご飯の料理が運ばれてくるのを待っているようすで。
 そんな2人の元に、やってきたのは人間用の料理をえっちらおっちらと運ぶ人妖の姿でした。
 しかもなぜかメイド服。持っていってくれとからすに言われた琴音が奮戦している様子であった。
「どうぞ」
 と、差し出された料理は、どうやら多国籍料理の様子。
 聞けば、料理好きの開拓者達も料理を手伝い担当しているうえに、お代わり自由だとかで。
 泰国の塩竃焼きのお魚やお蕎麦なんかは人間用で。
 あらかじめ果物が良いと希望を出していた鈴麗には、宿で用意してあったのだろう果物の盛り合わせが。
 びわにすいかになつみかんとこの季節の果物もしっかりと用意してくれた様子で。
 あとで、一緒に食堂の方も見に行く? と礼野は鈴麗に尋ねてみたりするのでした。

 温泉につかり、部屋で寛ぎ、そして食事に顔を出してみれば、蕎麦から泰国料理まで絢爛豪華。
 思わず来て良かった、と思うのは水鏡 絵梨乃(ia0191)でした。
 これならお金を出しても惜しくはない、と思いつつ、いろいろと味を比べてみていれば、ごつんと衝撃。
「痛っ‥‥やったな花月!」
 どうやら迅鷹の花月が水鏡の後頭部をくちばしで一突きと下様子。なにやら言いたげな視線です。
 芋羊羹をわしわしと食べていた花月だったのですが、彼が目に止めたのは慄罹が作った泰国のお菓子でした。
 それは芋羊羹と似た甘い香りの立ちこめるお芋の飴がけ。
 それを狙ってくちばしを伸ばす花月、しかし主である水鏡はそれをなんと箸で阻止。
 きしゃーと怒って飛びかかってくる花月に迎え撃つ、水鏡。
 他のお客の開拓者達からすれば、仲の良いじゃれ合いに見えるのか、周りがほほえましく見守る中。
「んー‥‥のんびりしたかったんだけどなぁ」
 遠い目をした水鏡は、しばし花月と一暴れするのでした。

「なるほど、料理をあらかじめ多数用意しておけば、どういう相棒でも対応できるというわけだな」
 感心しているのは无(ib1198)です。
 彼が連れているのは管狐のナイ。本来なら管狐は人語を解し、言葉をしゃべるのですが、ナイは無口なようで。
「‥‥さて、肝心の味の方はどうかな?」
 みれば、料理の中には開拓者仲間が作った物もいくつかあるようで。
 慄罹と羅喉丸による泰国料理や鞘による蕎麦、からすの料理や琥龍の魚料理なんかがそれらのようです。
 だが、それ以外にもいろいろな相棒に合わせて、草食雑食肉食と対応できるように料理が用意されていた様子。
 管狐は雑食のようで、いろいろと目移りしながら食べているナイをみつめて、
「ふむ、美味しいとのこと。では、とりあえず献立を記しておくか‥‥」
 ずらりと並んだ沢山の料理の記録を丁寧に取る无は、しばらくその作業に没頭しているようです。
 そして、やっと終わって一息ついて。お酒をのんびりと傾けながら。
 満足げなナイの様子をみて、
「ちょっと息抜き。これはこれで、いいもんさ‥‥今度は留守番の風天もつれてくるか」
 そう小さく告げるのでした。

 そして賑わう食堂の座敷の片隅で、人妖相手に食べさせてあげるのを苦戦する酒々井の姿がありました。
 なんといっても人妖は小さく食べさせてあげるというのは大変ですが、なんとか頑張っている様子です。
 

●月夜に
「あはは、ろんろん、気持ちいい?」
 ぐるると喉の奥でうなる大きな龍の背中を擦ってあげているのは琉宇(ib1119)です。
 彼はのんびりと月夜の下で、相棒のろんろんとのこの一年を振り返っているのでした。
「そういえば、最初に参加した依頼でも、ろんろんと演奏したんだね」
 ろんろんも歌う? と温泉の端っこで、琉宇とろんろんは思い出話をしながら音楽を奏でるのでした。

 そんな楽の音が響く中、みんなはそれぞれ思い思いの形で寛いでいました。
 温泉に入り直す姿もちらほら。風信子と不破は、お酒を飲んでいたり。
 いつもの感謝と、温泉の後慄罹は興覇の背中に丁寧に櫛を通してあげていたり。
 時には命を預ける事もある相棒たちとの連携はやはり不可欠です。
 みんなは思い思いの形で絆を深め、小旅行を楽しめた様子なのでありました。