義賊求む!
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/05/02 17:46



■オープニング本文

 開拓者ギルドには多くの依頼が舞い込む。それは、アヤカシ退治から近所の猫探しまで多種多様だ。
 だが時に、ギルドを経由しない依頼という物も少ないながら存在する。
 これはそんな依頼の一つである。

 武天のとある街、街道沿いに存在するその中規模の街は交易で栄え、多くの商人が居を構えていた。
 だが、商人の仕事は浮き沈みの激しいものだ。
 気候の変化や小さなしくじりから、店が傾きかけることも少なくはない。
 そして、商人たちも人それぞれ。人情に篤い人間から冷血な者まで様々居るわけで。
 商売の勘は鋭いが、人情の欠片もない冷徹な豪商が1人。今回の依頼はこの商人に関わるものである。

 ギルドを経由せず、開拓者達にひっそりと依頼を持ち込んだ依頼人は自分はあくまで使いであると名乗った。
 彼が告げる依頼内容は、とある豪商の倉から有る物を盗み出して欲しいというもので。
 聞けばこの商人、あくどいにも程があるという冷徹な男。
 苦境にある他の商人の弱みにつけ込んで店を奪い、相手が首をくくりそうな程追い込むことも多いとか。
 そんなことを繰り返し、肥え太ったその商人の唯一の趣味は美術品の収集とのこと。
 今回、彼が大切にしているそれらのお宝を全て盗み出して欲しいというのが依頼の内容だとか。
 盗み出した品は依頼主の手でひっそりと金に変えられ、この商人の被害にあった人に還元するとか。
 あくどい商人の店が傾くほどの被害は出ないだろうが、良い薬になるだろうという話である。

 あくまで表には出せない裏の仕事。といっても今回は殺生厳禁。
 秘密裏に、そして巧妙に盗みを成功させて欲しいというわけである。

 さて、どうする?


■参加者一覧
及川至楽(ia0998
23歳・男・志
九法 慧介(ia2194
20歳・男・シ
瑠枷(ia8559
15歳・男・シ
ルンルン・パムポップン(ib0234
17歳・女・シ
朱鳳院 龍影(ib3148
25歳・女・弓
万里子(ib3223
12歳・男・シ
アーニー・フェイト(ib5822
15歳・女・シ
後家鞘 彦六(ib5979
20歳・男・サ


■リプレイ本文

●正義だが賊
 義賊、正義の賊といえば物語でも人気であります。
 しかし賊は賊。悪漢を懲らしめ、正義を行うとしても、法を守らぬ悪であることに変わりはありません。
 それでも義賊が人気なのは、たしかな正義があると信じているから。
 今回も開拓者はそれぞれの正義を胸に、義賊としてあくまでこっそり活躍するのあります。
 決して日の当たらない秘密裏なお仕事のはじまりはじまり〜。

「いいねえ、やっぱりこういう仕事はまさにシノビの為の話じゃないか」
 そんなことを独りごちながら、ぷらぷらと道を行く姿がひとり。
 少年と青年の間のお年頃の男は、のんびりと歩きながら実はこっそり周囲の様子をうかがっていました。 
「しかも、殺し無しってのはサイコーだね」
 にっと笑みを見せて喜ぶ様子、彼はシノビの瑠枷(ia8559)という開拓者でした。
 現在は普通の姿でどうやら情報収集中の様子。実は彼が調べているのは逃走経路でした。
「しかし、本当に趣味の悪い奴みたいだな、屋敷まで趣味が悪いとは・・・・」
 依頼の舞台となる悪徳商人、金右衛門の屋敷を見て瑠枷はぽつりと。
 屋敷の門扉にはでかでかと金の縁取りの額が飾ってあったりと屋敷まで悪趣味な様子。
 そんな屋敷に辟易しながらも、しばらく道を確認した瑠枷は、ふらりとまた姿を消すのでした。

 そんな瑠枷の後ろ姿をこっそりと伺う人物が一人。
 じつは、開拓者の仲間が一人すでに屋敷の中に忍び込んでいるのでした。
「人情の欠片もない商いするなんて、本当の商人じゃありません・・・・絶対、許せないんだからっ!」
 ぷんすかと怒りながら、金右衛門の屋敷に潜入していたのはルンルン・パムポップン(ib0234)です。
 彼女はのほほんとした外見ながらも実は歴戦のシノビ、そつなく潜入するとこっそりと聞き耳。
「げひひひ、おぬしもワルよのう、万金屋」
「うひょひょ、あなた様ほどではありません」
 ちらりと覗いた屋敷の奥では、今回天誅を食らう予定の金右衛門が、なにやら悪巧み中だったり。
 そんな様子も含めて、ルンルンはしっかりと情報を集めると、
「後でお仕置きなんだから!」
 ぷんぷん怒りながら、警備状況や巡回経路の情報を手に、仲間たちの元に帰るのでした。

 そのころ、仲間たちは準備に奔走しておりました。
「みんなでこうして準備するのは、なんだかちょっと楽しいんだよ♪」
 おがくずで一杯の木箱やら大八車やらを準備しつつ、そういったのは万里子(ib3223)です。
 彼はくるくるとまさしくネズミのように動きながら準備を進めているよう。その周りには仲間たちの姿が。
「悪徳商人からお宝を盗んで苦しめられている人々に返す・・・・浪漫だね!」
 にこにこと人の良さそうな顔に微笑を浮かべて喜んでいるのは九法 慧介(ia2194)。
 一回やってみたかった、と楽しみな様子で準備に当たっています。
 そしてそうこうするうちに、準備も整った様子。一同はこっそりと変装しつつ、作戦決行を待ちます。
「そうだ、万里子さん。普通のよりもこっちの方が音が届くと思うんで、よければ使ってくれ」
「わ、ありがとう。ありがたく使わせて貰うよ♪」
 及川至楽(ia0998)が万里子に武天の呼子笛を渡せば、これにて準備万端。
 一同は夜を待って、作戦を開始するのでありました。

●仮面の陽動 こっそり強盗
「あくどい事をやっていればそのうち正義の鉄槌が堕ちるものじゃ。そしてその鉄槌は私らという訳かのう」
 ぐふふふと笑いながら、先頭を行く覆面の女性は朱鳳院 龍影(ib3148)です。
 覆面をしていても、その体型やらなにやらで素性がばれそうな気がしますがそれはそれ。
 彼女をはじめに、4名の開拓者はこっそりと待機していました。
 彼女たちの役割は陽動、いよいよと言うときまで姿を潜めていなければならないのです。

 一方、肝心要の潜入班の方はというと。
「にしし。義賊なんつーのはあたしの柄じゃないけど、せーぜー稼がせてもらうよ」
 こっそりと塀を伝って進むのはアーニー・フェイト(ib5822)です。
 身軽さなら任せろと、潜入班の面々は裏口にこっそり忍び寄っているところでした。
 裏口には見張りが一人。どうやらどきそうもありません。そうなれば手は一つ、
「・・・・っぐ!」
「安心しな。ミネウチだ‥‥なんちゃって」
 先頭のアーニーが見張りをびしりと忍刀で気絶させて、一同はこっそりと屋敷に潜入するのでした。

 潜入班が潜入するとほぼ同時に、それを確認した陽動班の面々は行動を開始しました。
 屋敷の正面にやってくると、どかんとみはりをなぎ倒し、扉を大きく開くと一気に屋敷の中に。
 そして、ざわめく屋敷の警備たちを迎え撃ちにながら、彼らはどたばたと屋敷内を引っかき回すのでした。
 慌てて飛び起きた屋敷の主人金右衛門、ぷよぷよの体でぜいぜい息を切らして彼らの元に。
 そんな金右衛門を見据えて、びしっと言い放ったのはもふらの面をした賊でした。
「やいやいやい、お天道様からごまかせてもこの流れの風来坊の目はごまかせないぜ!」
 後家鞘 彦六(ib5979)は峰打ちで護衛の手下たちを倒しながら大きく見得を切って、
「散々あこぎな事してきたんだ、今生でもあの世でも償ってもらうよ!」
「くっ! 賊の分際で小賢しいことを!! 奴らをとらえるんだ!!」
 口角泡を飛ばして、叫ぶ金右衛門。護衛たちは一気に開拓者をとらえようと殺到するのでした。

「我は龍王。そして正義の空賊じゃ。金右衛門、正義の龍王の名において、お主を成敗する」
 竜王だけど虎の面で朱鳳院がそういえば、
「ごきげんいかが、万金屋さん。地獄よりお迎えにあがりましたよ」
 あざ笑うかのように、のらくらと言うのは及川。こちらは狐の面で薄く笑みを浮かべて金右衛門を狙います。
「色々悪いことしてるそーじゃないの。俺にもちょっとコツ教えてくださいよ、っと」
 及川は金右衛門の命を狙うふりをして、巧妙に立ち回れば、それに踊らされる金右衛門。
 右往左往と陽動班につられるように屋敷の警備と金右衛門らは、屋敷の正面周辺にあつめられるのでした。
 そして、黒子頭巾で顔を隠した九法は、淡々と護衛たちを峰打ちで倒しながら時間を稼いでいるようすで。
 殺生は現金と、手加減していたのですが、現れたのは志体持ちの護衛とおぼしき大男。
「・・・・あっちの皆は大丈夫かな」
 押されたように演技をしながら、敵の攻撃を受け流しつつちらりと心配する九法。
 どうやら陽動班の作戦は問題なく進みそうでありました。
 そしてちょうどそのころ潜入班も重要な局面にさしかかっているのでした。

 潜入班が裏口からこっそり潜入すれば、ちょうど正面で陽動開始。
 屋敷の警備たちは皆、作戦通り正面におびき寄せられました。しかし、倉には見張りが残っていたのでした。
 しかしそれも想定内。
「ん、ここはルンルンのニンジュツに頼るのがイチバンってね」
「任せて! ルンルン忍法ニンジャザワールド・・・・そして時は動き出すのです」
 アーニーに言われて炸裂するルンルン忍法。ルンルンが夜を使って見張りを気絶させ一同は無事倉の前に到着。
 瑠枷が周囲を警戒し近づく護衛がいないか見張る中で、万里子が鍵を開けようとします。
「んー‥‥っと、よし、鍵は開いたみたいだね。音は聞かれてないかな?」
 無事に成功する破錠術、がちゃりとあいた鍵の音を心配する万里子でしたが、
「だいじょーぶだよ。さあ、この趣味悪いものをダイハチグルマに積み込まないとな」
 アーニーがそう請け負って、一同は急いで荷物を運び出して積み込むのでした。

●逃走失踪大脱走
「御命頂戴!!」
 しゅっと投げつけられる手裏剣は見事に金右衛門の着物の裾を縫い止めて。
 手裏剣を放ったのは、陽動班に合流した瑠枷でした。
 狐の面をかぶって瑠枷も陽動として援護しつつ、巧妙に倉の方へ敵が向かわないようにします。
 瑠枷が合流したことで、作戦が上手く運んでいることを確信した陽動班の面々。
 さらに勢いに乗って、挑発をしたり敵を引きつけたりと思う存分丁々発止の大活躍です。
 そしていよいよ作戦も大詰め。最後の仕上げの時となったのでした。

「・・・・これで全部、かな?」
 倉から運び出した悪趣味なお宝の数々をおがくずの詰まった箱に詰めて、万里子は確かめるのでした。
 見たところ倉にあった悪趣味なお宝の大概は運び出せたよう。
 ルンルンもアーニーも大丈夫ということで、万里子は借り物の呼子笛を、思いっきり吹くのでした。
「ピーーーーーー!」
 この音に反応したのは、正面の陽動班の面々でした。

「あらら、ばれちったか・・・・またね、ごきげんうるわしゅー」
 笛の音を聞いて、逃げ出そうとする及川、といってもコレも作戦のうち。
 安心した様子の金右衛門に、ていと酒のはいった瓶を放り投げて、
「はい、テンチュー」
 と最後までおちょくるのを忘れない。
「ぐふふ。これで少しは懲りたじゃろうて」
 朱鳳院は、退路を確保するため周りを囲もうとしていた金右衛門の部下たちを蹴散らしながらそう言って。
 そして、最後に後家鞘は、
「今回は引くが、今回だけだと思うなよ。お前が悪さを働く限り何度でも、いつでも狙ってるからな」 
 そういって金右衛門の心胆を震え上がらせるのでした。
「胸に良く刻んでおくんだな!」
 そう言い捨てながら、九法をしんがりに陽動班は撤退。そして追おうとする部下に対しては、
「おっと、追いつかせないぜ!」
 瑠枷が手裏剣を投げつけて、追いかけようとした部下の帯を切って転ばせたりと援護。
「さってと。じゃ、もうそろそろ消えさせて貰おうかな」
 そして援護した瑠枷もひらりと塀を伝って姿を消して、こうして陽動の面々は無事逃げ延びるのでした。

「ふう、危ないところじゃった! まったく、身の程をわきまえない賊どもが・・・・そうじゃ、倉は無事か!!」
 慌てて部下を連れて倉へ向かう金右衛門。
 もちろん、彼の目の前に広がるのは、宝を盗まれてがらんとした倉で。
 慌てて、走り去っていく大八車を追おうとする金右衛門とその部下でしたが、
「今、悪徳のツケを払うのです!」
 邪魔な護衛はルンルンの夜で動きを止められて排除され、
「にしし。見送りゴクローさんってね。次もいーもん仕入れといてくれよっ」
 そして大八車に乗ったアーニーは、銃と煙遁で追ってくる金右衛門を妨害。
 行方をくらました大八車は、合流した陽動班たちによって、あっというまに遠くに消え去るのでした。

 無事盗みは成功、誰一人殺すことなく依頼は成功するのでした。
 そして、とりあえず盗んだ成果の確認をする開拓者たち。
「うひょー、趣味わるっ」
 目がやられそ、と及川が手に取ったのは、趣味の悪い金箔が貼られた人の像。
 どうやら金右衛門自身を模しているようで、脂っこい笑みがますます不気味です。
 そんな様子を笑いながら九法は見ているのでしたが、
「こっちも趣味が悪いねえ。こんな作りの茶器、初めて見たよ」
 金箔だけじゃなく、宝石までちりばめられた派手すぎる茶器を眺めつつそういって。
「なんとも、悪趣味・・・・心根も悪いわけだよ」
 そんな様子をみた後家鞘の言葉に、一同はうんうんとうなずき会うのでした。

 そして、無事依頼で盗み出したものは依頼人に渡されて、彼らは報酬を手に。
「やっぱさ、被害者に還元するのが醍醐味だよね♪」
 義賊ならばと、万里子の言葉に賛同しつつも、今回の彼らの働きは秘密にしなくてはならないわけで。
「あー、被害にあったヤツらのトコにゃ顔出してみっかな。商売再開してるってんなら、何か買ってやるよ」
 秘密の任務故に、功績を自慢することは出来ませんが、それならばせめてと一同は連れだって。
 アーニーと一緒に、自分たちの行いの成果を確かめにいくことにしたようです。
 これにて無事依頼は終了。開拓者たちはしっかりと任務を成功させたのでした。