【四月】相棒チェンジ!
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: イベント
相棒
難易度: 普通
参加人数: 25人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/04/18 18:42



■オープニング本文

 ある朝、目がさめたら、貴方は貴方が愛する相棒と入れ替わっていました。

 龍を愛する貴方。
 目がさめると、貴方の肌は鱗の肌で背中には立派な翼。
 なんじゃこりゃ、と驚きの言葉と共に、ぼわっと火が出ました、口から。

 もふらを愛する貴方。
 春の陽気になかなか目がさめないのですが、昼過ぎにのんびり起きてみるとあら不思議。
 まるっとまろやか、貴方の体はもふら風。二度寝をするしかありませんね。

 土偶ゴーレムを愛する貴方。
 土偶ゴーレムが寝るのかどうか、そこは知りませんが、とりあえず目がさめたら土偶でした。
 巨大な体に陶器のお肌、ふははは力こそぱわー! 有り余るパワーに興奮を隠しきれません。

 人妖を愛する貴方。
 普段は、小さな同居人と仲良くやっていたと思います。
 ですが、普段と違う様子になってしまったら、はたして人妖はどう貴方と付き合うのでしょうか?

 ということで、いろんな変化が目白押し。
 相棒と中身が入れ替わるという変化の他にも、相棒と同じ姿になる。同種の姿になる。
 はたまた、相棒さんが人間風味、という不思議な現象も見かけられるとか。

 はてさて、春の夜の夢は現か幻か。とりあえず、楽しんでみましょう!

 ※このシナリオはエイプリルフールシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません。


■参加者一覧
/ 星鈴(ia0087) / 芦屋 璃凛(ia0303) / 羅喉丸(ia0347) / 小伝良 虎太郎(ia0375) / 酒々井 統真(ia0893) / 天河 ふしぎ(ia1037) / 礼野 真夢紀(ia1144) / 神凪瑞姫(ia5328) / アーニャ・ベルマン(ia5465) / からす(ia6525) / 和奏(ia8807) / ラヴィ・ダリエ(ia9738) / アグネス・ユーリ(ib0058) / アルーシュ・リトナ(ib0119) / 琥龍 蒼羅(ib0214) / 御陰 桜(ib0271) / 明王院 千覚(ib0351) / 不破 颯(ib0495) / グリムバルド(ib0608) / 琉宇(ib1119) / 狸毬(ib3210) / 宮鷺 カヅキ(ib4230) / 猪 雷梅(ib5411) / 光河 神之介(ib5549) / 篠月 藍香(ib6304


■リプレイ本文

●大混乱
 春の陽気が見せた夢。てんやわんやの大騒動の始まり始まり〜。

「夢だ、夢なんだ‥‥」
 布団をちょこんと乗せて、現実逃避中の炎龍が一匹。この炎龍、中身は篠月 藍香(ib6304)だ。
 現実逃避もそこそこに、はっと気付いたのは相棒のこと。
 自分が相棒の紅蓮の姿であれば、紅蓮は‥‥もちろん篠月の姿であった。
 とりあえずいつもの場所にいたのでほっと一安心。
 だが次の瞬間、愛刀をすらりと抜き放ち、その刃を興味深そうに見る自分の姿の紅蓮。
 紅蓮は、満面笑顔を浮かべ刀を持ったまま自宅玄関から外にダッシュしたのだった。
「ま、待てー!!」
 それを追う炎龍姿の篠月。そして、そんな光景は、この神楽で頻発してたとか。

「何でもふ助になてるもふ〜!?」
 魂消る声を上げる一匹のもふら。目元涼しげなもふらのもふ助、中身は光河 神之介(ib5549)だ。
 いまにも二度寝したくなるのはもふらの体のせいだろう。そんな重い体を引きずって外を覗けば。
「神之介の体は動きやすいな〜! それにしても何でみんな避けて行くんだろ?」
 たったか神之助が往来を走っていた。中身はもちろん、もふらのもふ助。
 その姿を見て血の気がひく神之助、なぜなら外を行く彼の体はフンドシ一丁だったからだ。
「‥‥もふ助ー!!もふの体で何をする気もふかー!」
 慌てて追いすがる光河、だがもふらの体では追いつけるわけ無く。
「終わった‥‥もふの開拓者人生‥‥」
 まぁ、そうなったらもふら人生を謳歌するのも良いかもしれないと思う光河だったとか。
 往来を刀ぶんぶん振るって走る篠月がいたり、フンドシ姿の光河がいたり。
 大いに混乱中の神楽の都だが、混乱をさらに助長する面々もいたり。
 たとえば道を疾駆するわんこ二頭。
「相棒と同じ姿っていうのも楽しいねー」
 わんこの顔でにやりと笑みを浮かべてみせるのは狸毬(ib3210)だ。
 今は、相棒の小金と同じ忍犬の姿。小金は額の逆さにした小の字の模様がカワイイ小柄な忍犬だ。
 一方狸毬も似たような小柄な忍犬、どうやら主に女の子をターゲットにじゃれついているよう。
「ふっふっふー、中々これも楽しいものだねー、今度はあの刀をもった女の子にいってみようー」
 次なる目標は、篠月の姿の紅蓮だったとか。
 二匹でじゃれついていたら当の本人である紅蓮姿の篠月が空からやってきて紅蓮をつれていったりとか。
 びっくりして顔を見合わせる二匹の忍犬だが、すぐに次の目標を目指して走っていくのだった。

 いまだニコニコしてる篠月姿の紅蓮を連れて家に帰る篠月とすれ違って空を飛ぶ駿龍とその相棒。
 駿龍姿でおそるおそる空を舞うのは宮鷺 カヅキ(ib4230)で、その背中にまたがるのは宮鷺姿の柚准だ。
「‥‥なんぞコレ」
「それはこっちの台詞だ」
 不慣れな龍の姿で、いまだに混乱中の宮鷺だが、こっちの台詞だと返す柚准。
 といっても長いつきあいの一人と一匹、とりあえず戸惑いつつも順応したようで、目指すはいつもの場所。
 春の陽気が心地良い近くの草原へとふらり飛んでいって。
「‥‥いつもありがとうね」
 いつもとは逆に、龍の姿の宮鷺に体を預ける人の姿の柚准。
 相手の姿になって分かるそれぞれの苦労を感じ、どちらとも無く感謝を告げながらのお昼寝。
 のんびりとした時間が過ぎるのであった。そんな穏やかな草原には他のコンビの姿も。
 尻尾をぱたぱた振りながら、水辺で自分の姿をのぞき込む忍犬が一匹。
 傍らに、同じく忍犬のぽちを連れたその忍犬は、明王院 千覚(ib0351)だった。
 春の陽気からふと目がさめたら、いつのまにやら忍犬の姿に。
「ぽちも判らないんですね‥‥折角ですから、わんこさんの遊びを教えて下さいね」
 そう千覚が尋ねれば、わんと元気よく応えるぽち。
 昼寝をしている宮鷺らの横を、元気な忍犬が二匹、毛繕いしたり駆け回ったりと楽しんでいたとか。
 開拓者が人それぞれであるように、相棒たちの気質も様々だ。
「疾風、お前には感謝するぞ。立派な忍犬になれたのだからな」
 首元の紫の襟巻きが凛々しい黒い忍犬、名を黒紫電というらしいが、実は神凪瑞姫(ia5328)だ。
 彼女は相棒の黒疾風に忍犬のいろはを教わったようで。
「お役に立てて幸いです、主様いや、黒紫電。お困りみたいでしたがもう大丈夫ですね」
 しっぽをぱたぱたふって応える相棒の黒疾風だが、そんな彼がじっと見つめるかつての主様。
 黒い毛並みの凛々しい美人、もとい美犬である。そんな神凪を見て、黒疾風が爆弾発言。
「‥‥身も心も忍犬になったようだし、おいらとつがいになってよ!」
「断る! 疾風、そういう魂胆だったのだな‥‥」
 ぐるるとうなる神凪というか黒紫電。ぐわっと歯をむき出せば、しまったと逃げる黒疾風。
(おいらだって雄の端くれ、嫁さん欲しい!)
 そんな心中なのだが、とりあえず追いかけられて逃げ回る黒疾風。
 主も忍犬も、夢なら醒めてと思っていたとか。

 逃げる忍犬に追う忍犬、そんな彼らの横を必死で走る少年の姿が。
 小伝良 虎太郎(ia0375)は、行方不明になった相棒の龍太郎を捜しているらしい。
 いつものように訓練に行こうとしたら見付からず、慌てて探す虎太郎。
「龍太郎、どこ行ったんだろう‥‥お腹空かせてないと良いんだけど」
 仲の良い相棒がいないとなれば気が気ではないよう。だがそんな虎太郎に声をかける青年が一人。
「兄ぃぃーー!!」
 小柄な虎太郎に飛びかかってくるデカイ青年、片手にはどんぶり飯。
「兄ぃ、ワイだよワイ。龍太郎だよ!」
 へ? と吃驚して見上げる虎太郎、確かに髪の色は龍太郎の面影がある青緑色だが半信半疑。
「‥‥本当に龍太郎なら『アレ』をやって見せてよ」
 だがそんな要求ににやりと微笑む、自称龍太郎。
「『アレ』ね‥‥兄ぃの修練をいつも見てきたワイにはよぉーくわかるで!」
 ざっと構える龍太郎、そして繰り出す切れのあるポーズは、荒鷹陣!
「そ、その荒鷹陣は‥‥! お前は龍太郎!」
「分かってくれたんだね、兄ぃーーー!」
 と賑やかな二人であった。一方、こうした混乱に動じない人もいるようだ。
「‥‥あ、この苺大福というのも美味しいです、甘い餡と苺の組み合わせが」
「やっぱり、人の体なら味判るだけ食べれるしね。都食べ歩きに来て正解だったね♪」
 次は何を食べたい? と幼女の手をひく礼野 真夢紀(ia1144)。見たところ仲良しの姉妹という感じだ。
 ところがどっこい。礼野の隣の幼女、普段は駿龍の鈴麗の変化した姿だとか。
 黒髪で巫女服のよく似合うカワイイ女の子は、青い飾り紐で結ばれた髪を弾ませつつ興味津々。
「一度全部まゆと同じものが食べたかったんですよねぇ。何時もは果物以外違う物でしょう?」
 喧噪も何のその、二人の少女の食べ歩きはのんびりと続くのであった。

 そんな礼野と鈴麗とすれ違う一組。こちらは白髪の少女と黒と茶のまだら髪の少年の組み合わせだ。
「くんくん‥‥こっちのおにくよりも、あっちのおにくのほーが、しんせん〜なニオイなのですっ」
 先ほどの鈴麗と同じような年頃の少年が、店先で鼻をくんかくんかとさせていたり。
 実はこの少年、ラヴィ(ia9738)の相棒のシリウスである。
 元忍犬なので人の姿でも鼻が利くよう。興味深げに店先を眺めていれば、
「きゃっ!」
 ラヴィの後ろを走り去る人影。遠くでどろぼーと叫ぶ声がするところを見るとひったくりのよう。
「くんくんくん‥‥わるいひと、あっちにいったですよ! ぼくがつかまえてきます!」
 と、追いかけようとするシリウスだったが、
「しっ‥‥シリウスは行かなくて大丈夫ですわ!」
 さすがに小さなシリウスにそんな危険なことはさせられない、そう慌てて引き留めるラヴィであった。
 さて、ひったくりがどこに向かったか。
 道の先で人混みにぶつかったよう、上がる怒声はすぐにとっくみあいの大げんかに。
 だがそこにやってきたのは任侠風の姉御が一人。
「‥‥お嬢」
 姉御がお嬢と呼びかけたのはからす(ia6525)だ。彼女は一つ頷いて許可すると応え。
「オラァ! 喧嘩は堅気に迷惑かけない余所でやりなァ」
 ひったくり共々ぶっとばされたとか。この姉御、からすの相棒のジライヤ、峨嶺であった。
 堂々とした様子の姉御であるが、たった数時間前は
「おはよう、お嬢‥‥」
 ぼさぼさ頭でのんびり起き出して、
「‥‥おはよう峨嶺。とりあえず朝食でも如何かな?」
「いただく‥‥ふぁ」
 と主人であるからすを2秒ほど絶句させたとは誰も思うまい。
 そして、無事騒動を鎮めると峨嶺とからすは、
「いやぁ、やはり人型は動きやすくて良いねぇ」
「うむ、こんな機会はあんまりないからな」
 と談笑しつつ、お茶を飲みつつのんびりしているのだった。
 そして、そんな彼らの後ろにやってきたのはラヴィとシリウス。
 ひったくりが無事捕まったのを見て安心してから、二人で家に帰れば、シリウスは疲れたのかおねむで。
「むにゃむにゃ‥‥らびーちゃん‥‥りっぱなニンケンさんになって、まもってあげるですよ」
 普段と一緒だなと、ラヴィはシリウスの頭をくしゃくしゃ撫でるのだった。

●小さな隣人
「ただでさえ背が低いの気にしてんのに‥‥嫌がらせか、これ。普段は何気ない段差もきついな」
 朝起きたら人妖サイズで、苦労している様子なのは酒々井 統真(ia0893)だ。
 そんな彼を助けるのは人妖の雪白。人妖姿になれない主の酒々井を励まして、
「人妖歴はボクの方が長い。頼るといいよ、我が主」
 なんていいつつも、段差を登るのを助けていたのだが、ちょっとした悪戯心がむくり。
 急に力を抜いて、体を預けてみたり。同じ姿になって分かるその柔らかさに、どきりとする酒々井。
「‥‥おや、顔が赤いね。ほら、大きいの、わかる‥‥」
「こら、あんまりからかうんじゃ‥‥むぐっ」
 離れようとする酒々井、だがそれを捕まえて、胸にぽふっと抱きしめる雪白。
「それとも、この方が気持ちいいかな‥‥」
 慌てて離れた酒々井に、ふっと笑いかけると、
「あはは、からかい過ぎたか。まあ、普段の感謝の印だよ」
 くすくす笑う雪白であった。仲良きことは美しきかな。そんな光景が、神楽の都ではちらほら見られたとか。

「起きろ、羅喉丸」
 眠そうに目を開ける羅喉丸(ia0347)を見下ろす妙齢の美女が一人。
「‥‥夢か、寝ぼけていると見える」
「起きんか、羅喉丸。だから御前はアホなのじゃ」
 げしっと鉄拳一撃。美女の正体は人妖の蓮華であった。
 普段は少女だが人の姿になるついでに成長したようで。
「春と言えばなんじゃ」
「‥‥‥桜か?」
「うむ、正解じゃ。なので、花見と洒落込もうではないか。くるしゅうない、供をすることを許そう」
 そういって羅喉丸を連れて花見に出発するのだった。もちろん荷物持ちは羅喉丸。
「弟子が師のために尽くすのは当たり前であろう」
 きっぱり言い放つ蓮華は、酒の入ったひょうたんだけをふらりと手に持って、
「所詮、この世は胡蝶の夢よ。楽しまなければ損というものじゃ」
 楽しそうにお花見に向かうのであった。そんな様子を見て羅喉丸も、悪くないと思ったとか。

 一方、そんな足取りの軽い羅喉丸と蓮華の隣を行く人妖と開拓者が一組。
「‥‥‥笑っちゃ駄目なんだぞ、ああやっぱりって顔‥‥別に恥ずかしくなんかないんだからなっ!」
 肩の上に乗っかって身もだえしてる女性の人妖は天河ひみつ。
 そして、その様子を面白そうに見ているのは、天河 ふしぎ(ia1037)だが、中身は逆のようで。
 そっくりな顔ながら、性別は男と女。
 美少女に間違われるのが悩みのふしぎが本当の美少女になってしまったのである。
 ちなみに、朝起きたときのふしぎの第一声は、
「むっ‥‥胸がある!」
 だったとか。そんな様子をみてにっこりしている普段は人妖のひみつは。
「きっとグライダーや女子にかまけて、妾をほったらかしにした罰と、妾へのご褒美なのじゃ」
 とのこと、今日はふしぎ兄の体を堪能するのじゃ! と二人でお散歩中なのであった。
「ふしぎ兄! 折角だし、お花見に行くのじゃ!」
 そしてそんな彼らとすれ違うのは双子、いや双子と見まごうほどよく似た二人組。
「どうやら皆混乱してるようだな。大きな騒動は起きてないようだが‥‥」
 口の中で呟く琥龍 蒼羅(ib0214)を見て、首をかしげる隣の青年は駿龍の陽淵だ。
 はじめは、何が起きたんでしょうと首をかしげていた陽淵と琥龍だったが、どんな姿でも陽淵は陽淵。
 そう割り切った琥龍は、のんびりと散策中のようだ。
 まるで双子のような隣の陽淵だが、違うのは目の色と翼のような外套だけで。
「主、どうかしましたか? 特に被害は出ていないようですが‥‥」
 そう尋ねる陽淵に、折角だしもうすこしこの様子を楽しもうと決めた琥龍は、
「流石にずっとこのままと言うのは困るが‥‥少しぐらいはこんな体験も悪くは無い、か」
 そうぽつりと言えば、表情の乏しい陽淵もどことなく嬉しそうにするのだった。
 そして二人が歩いて行けば、道の先ではどうやら騒動が。
 そこは賭場があるという噂の場所だったのだが、そこから逃げ出すのは明らかにごろつきたちだ。
 何ごとだろうと見守る琥龍と陽淵の前に、出てきたのは青年と白髪の老人だ。
「はっはっは、口ほどにもないなごろつき共がっ!」
 巨大な剣を手にしているのは、実はもふらの風信子、隣の青年は不破 颯(ib0495)だ。
 朝起きた当初は、何じゃコレはと驚いていた風信子だったが、
「へ〜人間な風信子かぁ。やっぱ爺さんだったんだな髭が白いぜあっはは〜!」
 と爆笑した不破を、五月蠅いわ小童がっ! としばき倒して賭場に繰り出したよう。
 なんだか、荒稼ぎの後にごろつきたちと一戦交えて完勝したとかで。
「では、酒場に繰り出すとするか!」
 呵々大笑する風信子であった。

「天気もイイしお花見日和ね♪」
 そんなことを良いながら道を行く桃色の髪のシノビと黒髪の少女。
 御陰 桜(ib0271)とその相棒の忍犬、桃が人になった姿のようで、二人はお花見に向かっていた。
 といっても桃にとって主の桜の服はだぶだぶ、とくに胸の辺りが余っているようで。
「桃に似合う服も買わないとね♪」
「は、はい‥‥」
 ちょっとしょんぼり気味の桃、じつは一緒に修行したかったようで。
「なに、しょげてるの。お花見したら、そのあと修行ならいいでしょう?」
 と桜が言えば、尻尾があれば振らんばかりの様子で。
「はい!」
 応える桃、二人はまずは服を買いにと商店街を目指すのだった。

 そして買い物を終えた二人が向かったお花見は宴もたけなわ。
 そこには、楽器を弾いている吟遊詩人とその相棒の龍があった。
「‥‥るうくんのすがたになっている? わぁ、うたえる、がっきがえんそうできる!」
 嬉しそうに楽器を奏でる琉宇(ib1119)、中身は相棒のろんろんだ。
 音楽好きなのに、駿龍の身。哀しいことに楽器は弾けない体だったが今は違う。
 琉宇の体に染みついた技能の故か、見事に楽器を弾くろんろんに皆拍手喝采で。
 そんなろんろんのあとを
(ちょっと待ってー、駿龍の姿にまだなれてないんだよー)
 とおっかなびっくりついていく琉宇だったが、嬉しそうに楽器を弾くろんろんを見れば幸せなようで。
 まあいいか、と二人で桜の中、音楽を楽しむのであった。

●組み合わせの妙
 そして、こういう機会だからと親しい共と一緒にいることを選択する面々も多いようだ。
「お久しぶりです、風さん」
 微笑む紫色の着物がまぶしい武士娘はぺこりと頭を下げて。
「ふふ、この姿でお会いするのですし、初めましてという方が正解かもしれませんね」
 相手は額に傷のある泰国風の大男だ。強面ながら何処か優しげな印象のその青年は。
「まぁ、そうなるな‥‥風さんか‥‥それじゃ、フェンと呼んで良いか」
 なにやら親しげな様子のこの二人、女性は駿龍の風剣で男性は甲龍の風絶であった。
 龍の姿であれば適わないデートもこれこのとおり。二人はのんびりと春の買い物を楽しむようだ。
 だが、そんな二人の後をこっそり尾行する星鈴(ia0087)と芦屋 璃凛(ia0303)。
「‥‥なぁ視線が、気になるんだが‥‥これで良いのか」
 思わず問う風絶に笑みを向ける風剣。自然と会話もそれぞれの主人たちのことになるよう。
「璃凜とは、拾われた赤子の頃からの付き合いだ。相棒というよりは、妹だと思って居る」
「‥‥私も主とは幼い時分から御一緒です、お気持ちは分かります‥‥でもだからこそ信じられますよ」
 そんな言葉に、深く風絶も頷いて。
「あいつの盾ならいくらでもなってやるつもりだ、それが俺の役割だからな」
 と、龍たちの本音で話し合って。
 まぁ、そんなことを知ってか知らずか、ちょっと嫉妬混じりに仲良し2人を眺める主人たちだったとか。
 
「アーグーネースー!」
 走る黒スーツ姿のイケメン。猫又ミハイルは念願適って人間の姿になったのだ。
 目指すは恋するアグネス・ユーリ(ib0058)の所。相手と同じ人間姿ならばと熱い思いと共に走るのだが。
「あらミハイル♪ イイ男になってるじゃなーい」
 出迎えたアグネスは、なんと猫又姿。がっくり膝をつくミハエルだったり。
 そして、ミハイルの後ろからぴょんと飛び出て、人間姿になった人妖のエレンに飛びついたのは猫又。
 こちらの猫又はアーニャ・ベルマン(ia5465)だ。
「にゃにゃにゃ、一度猫になってみたかったんですよね〜」
「不思議だね、この姿、妙に懐かしい気がするんだ」
 応えるエレンに遊ばれて楽しげな主のアーニャ、ミハイルさらにがっくりのようで。
「なんだそれー! 夢の中では逆かよ!」
 しょんぼりしているミハイルに、ぷっと吹き出しつつアグネスはそっとミハイルの膝に乗って。
「ときどき、猫になってみたいって思ってたのよね。こうやって日向ぼっことか、気持ち良さそう‥‥って」
 そう言いながらすぴーと眠るアグネスに、そんなに悪い気のしないミハイルだったとか。

「ウルティウスさんが居るから大丈夫ですよね? グリム?」
 はらはらしながら物陰で見守るアルーシュ・リトナ(ib0119)、視線の先には少女と壮年の紳士が。
「‥‥大丈夫だろう。ウルは俺には怖いけど、君たちには優しいからな」
 応えるのはグリムバルド(ib0608)だ。
 視線の先の少女はアルーシュの相棒、駿龍のフィアールカだ。
 といっても今の姿は菫色のショートカットが可愛い少女で。
「ウル、おじさん? 人間のおじさんもやっぱり大きい、ね」
 にっこり微笑む相手は、グリムバルドが親父と慕う駿龍のウルティウスで。
 ウルティウスは、少女のフィアールカの頭をくしゃりと撫でるとひょいと抱きかかえて。
「アルーシュが作ってる温かいお茶、あれ、私も作ってみたい。頑張るから おじさん味見、して?」
 そんな少女の言葉に、頷くウルティウス。こうして、4人は春のお茶会をのんびりと楽しむのだった。

 そして、普段とは違う形ながら、気心の知れた相棒だからこそ話せることもある。
「猪。お前はまだ辰が好きなのか?」
 酒場にて、猪 雷梅(ib5411)にそう問うたのは相棒である霊騎の春雷だ。
 突然の発言にぶほっと酒を吹き出す猪。今は人間姿の春雷が急に猪の初恋相手の話をすれば当然で。
「図星か‥‥私は心配なんだ。いつまでも未練がましいのはよくない。その内貰い手がいなくなるぞ」
「うっせぇ! よけーな世話だバカ野郎!」
「あぁ、私は馬だが、鹿はどこだろうな?」
 しれっと言う春雷に、赤面しつつ応える猪は、ぷいっと顔を背けて。
「ちっとも面白くねえ!さっさと馬に戻りやがれー!」
 そう吼えつつ、酒場でさらに酒を呷るのだった。

 こうして大混乱の日は暮れて、相棒の違う一面が見れたり、本音が出たり。
 全ては春の夢だが、とびきり楽しい夢であった。