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■オープニング本文 その日、ギルドの受付である二人の青年は春の陽気に誘われて、のんびりと無駄話をしていました。 こんな陽気な日は、悪事も避けて通るのか、その日は朝から何ごとも無くとても平和な一日で。 ここ数日の寒さが嘘のような、まさしく春がやってきたという風情の四月一日の話です。 「前回は不覚を取ったが、あの時ゃ火力で押し切られたってだけだからな、当然するんだろ? 再戦をよ」 煙管を燻らせて庄堂 巌(iz0099)が言えば、開けているかも分からない程目の細い青年、利諒(iz0030)が水飴を掬った匙をくわえたまま銜えたまま遠い目をします。 「むぐむぐ‥‥また、庄堂さんは酔っぱらって‥‥第一、勝負したからどちらの方がとかはないんじゃ‥‥」 僕たちが戦うわけでないんですけど、そんな風に利諒は言おうと既に庄堂の頭の中には計画が立ち上がっていたようで。 「でだ、前回は戦滅戦だったよな」 「そうですねぇ、いろいろと血で血を洗う大惨事だった気がします」 「そこでだ、フラッグ戦だ」 「聞いてませんね‥‥しかしフラッグ戦ですか、敵陣のフラッグを撃ち落とす、もしくは奪取すれば勝ちですか?」 嬉々として計画を話し始める庄堂は、微苦笑気味だった利諒がちょっぴり興味をそそられたのか尋ねるのに、にっと笑って言うのでした。 「センターフラッグ戦でいこうじゃねぇか」 春の夜の夢の如く、奇々怪々な武器まで手に入るという不思議な状況での戦いとなります 今まで経験を重ね、研鑽してこようが、知恵無き力は無力。 如何にして行動し、仲間と連携するかは重要となるでしょう。 もちろんこの度の戦いにて、武名・名声に傷のつく恐れはありません。 ●ルール 銃器の持ちこみ可。一人二つまで。同じものでも、違うものでも可能 拳銃などの片手持ち可能な銃を両手に装備することは可能だが、常識的な範囲で。 重すぎる対物ライフルのような武器であれば、二丁同時装備は不可能。 ただし、弾丸数を稼ぐ意味で、弾丸が尽きたら持ちかえるために同じ銃を二つ、という場合は問題ない。 銃器に関して詳細な型番、形式を記しても良いが、大別した種で扱い能力値の差は無いものとする。 拳銃、散弾銃、機関銃、突撃銃、狙撃銃、果てはロケットランチャーなども可。 銃器の特徴に応じた描写はするが、しっかりした計算式ではなくノリと勢い優先。 威力は実際の銃器と同じく、爆発・貫通するが殺傷能力は無い形で描写。 銃の弾数に関しては、低威力な銃器ほど多く、高威力な物ほど少ないとする。 拳銃程度であれば弾数無限。ショットガンなら数十発、マシンガンであればマガジン10個ほど。 一撃必殺な狙撃銃であれば、20発ほど。対物ライフルなら、10発。 建造物の破壊すら可能なロケットランチャーやグレネードランチャーなら5発程度とする。 ただしあくまで一応の目安。総て臨機応変に威力や影響力などを考えて判断する。 舵天照の世界観的に認められている技や能力も通常通り使用可能。 ただし、正確な能力値以上に、こういう事をしてみたいというような勢い優先。 散弾銃の弾幕を剣風で弾いたり、狙撃銃を心眼で感知して避けるなども可能かもしれない。 エイプリルフールとして、ある程度の範疇まではルールを無視して描写することもあり得る。 全てを、勢いとノリが優先する可能性あり。 ●フィールドに関して 戦場全体が無人の市街地。廃墟と化した街が今回の戦場となる。 東西両陣営はフィールドの東と西の端に設けられた自陣からスタート。 広さは、開拓者の全速ならスタート地点から5分で中央に到達可能程度。 今回はフィールド中央にある標的を奪いあうセンターフラッグ戦となる。 フィールドの中央には破壊不可能な小さな建物がある。 建物は東西南北に大きなドアがあり、その内部の一階中央に一抱えあるもふら人形が老いてある。 これが、今回奪い合うフラッグであり、人形を自陣に持ち帰ることが勝利条件。 なおもふら人形はリュックのように背負うことができるが、重いので行動力が下がる可能性あり。 もちろん敵陣営が運ぶ途中の人形を奪い返すことも可能。 また、人形が動いた瞬間から30分経過と同時に試合終了、人形は大爆発する。 時間切れの場合、ゲームは引き分けとなる。 ただし、時間切れ以外では、人形は決して爆発することはない。 なお、今回は自分と同じ陣営の仲間の位置は互いに把握可能だとする。 トランシーバーと仲間の位置を示すマップがそれぞれのチームには見えている形。 もちろん、敵の位置は分からないが、もふら人形を背負った時点で、全員のマップに人形の位置が表示される。 マップはそれほど細かくないので、詳細な場所までは分からないだろうが、目星を付ける程度は可能。 東西の自陣から中央に向かう経路は三種類。 1 崩れた建造物の残骸で遮蔽物が多い平坦なルート。 おそらく一番早く移動することが可能で、遮蔽物があるとはいえ、狙われやすい。 特に遠方からの狙撃や、爆発系の攻撃には弱いと思われる。 2 崩れかけの建造物が中央まで立ち並ぶルート。 開拓者ならば、建物の屋根を飛び伝ったり、また普通に内部を進むことが可能。 ただし建造物は崩れかけ。高威力の銃撃、爆発を受けた場合崩れる可能性あり。 3 フィールド全域の地下に広がる地下水路。 暗く、入り組んだ地下水路を伝っていけば、時間はかかるもののこっそり目的地に接近できる可能性あり。 ただし、迷う可能性が非常に高く、迷ったらどこに出るか不明。また地下で敵と鉢合わせるかも。 フィールド中央の北には崩れかけの鉄塔群が。 ここは、戦場全体が見渡せるほどの高さがあるので、狙撃ポイントになり得る。 ただし鉄塔は崩れやすく、建造物内部の人間(ルート2・3)は狙撃できない可能性がある。 ※このシナリオはエイプリルフールシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません。 |
■参加者一覧
剣桜花(ia1851)
18歳・女・泰
上條紫京(ia4990)
24歳・女・陰
からす(ia6525)
13歳・女・弓
セラ・ルクレール(ib3540)
16歳・女・砲
リーゼロッテ・ヴェルト(ib5386)
14歳・女・陰 |
■リプレイ本文 ●探り合い 参加した戦士は5名。奇しくも全員女性と相成った今回のサバゲ。 どうやら参加した理由は人それぞれのようだ。 「遊びとはいえ、容赦も加減もしませんよ」 手にした機関銃に弾倉を装填、ロケットランチャーを肩に担いでセラ・ルクレール(ib3540)は言った。 砲術士の彼女にとって、銃を使った戦闘は専門分野、意地があるようだ。 「ふーん、面白そうじゃない。たまには羽目を外して遊んでみますか♪」 一方気楽に構えてそう言ったのはリーゼロッテ・ヴェルト(ib5386)。 手にした銃は突撃銃。特殊任務用に銃身を短くしたものと、サブウェポンにショットガンを選択。 楽しげに微笑みながらも、陰陽師の呪術武器も装備して。 どうやら彼女は、陰陽師の技との連携をいかして戦うようで、準備に怠りはないようだ。 「サバゲに行くと言ったら旦那に一晩語られましたけど‥‥泰拳士に狙撃手の立ち回りを言われても」 ひときわ楽しそうなのは剣桜花(ia1851)。 アサルトライフルには特製のGの絵があるものの、装備はオーソドックスなもの。 サブウェポンはアサルトライフルに装着する形のグレネードランチャー、攻撃重視の装備である。 「からすさんあたりに言って欲しかったです」 「ふむ、確かに狙撃手の立ち回りならば、私向きの話だったな」 こっくり頷いて応えたのはからす(ia6525)。装備は銃身の長くてゴツイ狙撃銃と、古風なマスケット銃だ。 「では、なぜ夫殿ではなく剣殿が参加したのだ?」 ふと聞いて見たからすに、剣はにっこりと笑うと。 「ダイエット〜♪‥‥じつは泰拳士に転職したら筋肉がついてしまって‥‥」 そんなことを言う剣の胸をじーっと見つめて、たしかに重そうだとこっそり思うのであった。 そして、カーキの兵士服に身を包んだ上條紫京(ia4990)は、狙撃銃と大型拳銃を手に、 「さて、それではそろそろ作戦開始のじかんですわ」 そう言って、最後の仕上げと山羊のお面を頭に付けて。 かしましく、賑やかで派手な戦いの幕がいよいよ開けるのだった。 対する敵軍。今回は開拓者たちではなく、有志の面々が集まったようだ。 指揮官として檄を飛ばしているのは武天の芳野という街の領主代行、伊住穂澄。 サムライである彼女の獲物は、アサルトライフルとロケットランチャーのようだ。 敵軍に陣容は、伊住の妹である紗弥と紗重の双子、武天の傭兵砦の若き傭兵暁丸。 そして、中務佐平次の5名である。 紗弥はスナイパーライフルと対物ライフルの破壊力重視の遠距離武装。 紗重は両手に大型拳銃を装備、なにやら銃を持って型を重視する不思議な体技を体得しているとか。 傭兵の暁丸は、サブマシンガンにショットガンの近距離重視。 そして砲術士で実験好きの佐平次は、対戦車ロケット擲弾発射機とグレネードランチャーという爆発仕様だ。 迎え撃つ準備は万全。穂澄はそれぞれの配置を決め、戦いの開始をいまかと待ち構えるのであった。 ●静かな始まり 依頼人の庄堂巌と利諒が、試合開始の号砲を鳴らし、いよいよサバゲーの開始。 それぞれ、広いフィールドで移動が始まるのだった。 開拓者達は、一気に散らばりそれぞれのルートで戦場を疾駆。対する敵軍はツーマンセルでの進行。 同じなのは、場所を目指して一気に移動するスナイパーの行動だ。 真っ先に鉄塔に向かうからす。といっても、すぐには登らず、周辺に罠を仕掛ける用意周到さ。 対する敵軍のスナイパー。鉄塔は危険と見て場所をかえるよう。 鉄塔に比べて狙える範囲は狭いものの、自陣近くの高い廃墟の窓から戦場を見下ろす構えのよう。 開拓者達は桜花がルート1を選択。 泰拳士の脚力を活かして、遮蔽物をいかしつつの高速機動。 そしてそのほかの3名はルート2を使って急ぎ目標を狙うよう。 では、対する敵軍の動きはどうだろう。 接近重視の暁丸と攻撃力爆裂の佐平次はツーマンセルを組んで迂回しながらルート2を使用。 狙うはフラッグではなく、それを狙う敵軍の人間のようだ。 一方、ロケラン装備の汎用装備の穂澄と二丁拳銃の紗重は、ルート1を選択。 こちらはフラッグを狙っての移動といった模様。 それぞれの思惑が絡む中、最初に放たれた弾丸は、それぞれのスナイパーのものであった。 ほぼ同時に響く轟音。 一つは軽い音、からすがルート1の穂澄と紗重を狙った一発だ。 もう一方は爆音。紗弥が放った対物ライフルの一撃は、廃墟の建物をぶち抜いてルート2狙いだ。 からすの一発は、穂澄を掠めて後方の壁を穿つ。1発目故に微妙な誤差があったよう。 すぐさま修正して狙うからすだったが、すぐさま身を隠した穂澄と紗重はすでに遮蔽物の向こうだ。 残念、とからすはまた静かに次なる獲物を狙うのだった。 対して紗弥の対物ライフルは、実は牽制の一発だ。 ルート1を選択した人間が少ない模様と見て、牽制のためにルート2の建造物を破壊。 数発しか弾丸が無いため、不利になるかも知れないが敵を燻り出すための英断だ。 壁をぶち抜いて建物を粉砕する凶悪な一撃は残念ながら被害無し。だがこの一発は戦場をうごかした。 (‥‥きっと流れ弾。位置は悟られてないはず) 粉砕された建物の近くに潜んでいた上條。ぱらぱらと降りかかる塵のなか、彼女は身動ぎも出来ずにいた。 建物内部ではなく路地を進む選択をしていた彼女は、その選択のおかげで命拾いをしたよう。 自分が捕捉されていないことを再確認すると、再び上條はゆっくりと動き出して。 彼女の目的はフラッグではない。あくまで仲間の援護のためと、静かに隠密行動を続けるのだった。 からすと紗弥が双方スナイパーとして戦場を見下ろす緊張の中、双方の前衛は小屋に肉薄していた。 先行する桜花と、それをレーダーで確認しながら急ぐセラ。 組んで行動しているわけではないが、セラは桜花のバックアップをするような形となったようだ。 対する敵軍の前衛は伊住と紗重、こちらはからすの狙撃に足止めされて思うように進めない模様。 警戒しながら進む桜花だったが、瞬脚による高速移動をなかなか捉えきれない敵スナイパー。 小屋のフラッグへと一番乗りしたのは桜花だった。 おそるおそるフラッグに近づく桜花、トランシーバーで仲間にそのことを伝えれば、 「現在周辺はクリア。スナイパーもそこならば狙えません」 セラが周辺警戒をしつつ援護に向かえば、 「からすの狙撃が出来ない場所にいる敵は私が足止めするわ、一気に行くわよ!」 リーゼロッテは人魂を使用しての広域索敵。仲間の援護と共に一気に開拓者チームは勝ちを狙うのだった! ●激戦 桜花は大きなもふら人形を背中に背負うと、タイマースタート。 三十分以内に自陣に持ち込まなければ爆裂必死の時間制限を思い出して、桜花は一気に瞬脚を使用。 といっても瞬脚は練力を消費するため、そうそう乱発は出来ない。一気に小屋から抜け出そうとするのだが。 「そうはさせるか!」 声と同時に突貫を仕掛ける敵軍、紗重と穂澄のコンビが、一気に廃墟を突っ切って桜花を目指す! 彼女たちは無防備にもルート1を突っ切る構え、ならばからすのスナイプの餌食と思いきや。 「佐平次さん、よろしくお願いします!」 リーダー穂澄の言葉と同時に連携の妙。佐平次は、暁丸の援護の下、擲弾とランチャーを鉄塔に乱射! 敵軍の強みは、高い連携力だ。 からすの狙撃を防いだその時間を利用して、レーダーに現れたフラッグのダッシュを狙ったのである。 敵軍からすればフラッグを奪われたのは痛手だが、逆にフラッグがレーダーに現れるという好機。 佐平次が嬉しそうに乱射し、次々に崩れる鉄塔。佐平次を狙うものは紗弥と暁丸がフォロー。 一気に戦場は激しい爆炎に包まれたのである。 「甘いな」 鉄塔を破壊され、あわてるかとおもったからす。だが準備は万端、逃走経路は確保済みであった。 だが、急がなければ仲間の危機である。 鉄塔からロープを伝ってルート2に位置する建造物の屋上に移動したからすは再び狙撃の構え。 埋伏りを使用して再び身をかくしつつ、戦場を眺め、静かにタイムロスを歯がみするのだった。 彼女が戦場をスコープで覗くと同時に、そこに移されたのは桜花の姿。 見れば、穂澄と紗重に狙われて絶体絶命の様子だ。 逃げようとする桜花であったが、二人組の銃火にさらされてはそれは適わず。 狙撃の不可能な遮蔽の影で一瞬の交錯、激しい戦いが繰り広げられる予感である。 「台所番剣桜花‥‥って輜重兵でも戦えるんですよー」 逃走を放棄した桜花、グレネードで迎撃するもそこを突っ切り回避する敵軍二人。 先行する二丁拳銃の紗重に、桜花はグレネードをうち尽くすと銃を構えたまま迎え撃つ構えだ。 紗重は拳銃を手に速攻の構え、アサルトライフルであれば、取り回しは拳銃が上。 銃撃を仕掛けようと構えた次の瞬間、桜花が動いた。 瞬脚で距離を詰め、破軍で気力を全開、そこから絶破昇竜脚! 雷鳴のような轟音が響き、放たれた強力な蹴り、それは紗重を捉えた!! ‥‥かに思えた。 咄嗟に穂澄が放った数発の銃弾にかすかに体勢を崩された桜花、強引に放つ絶破昇竜脚。 起動が僅かに逸れて、直撃せず。代わりにぶちぬいたのは紗重の背後の廃墟であった。 粉砕される壁の粉塵を縫って接近する紗重、銃を用いた型の舞うような動きの連続発砲。 それを泰拳士の体術で躱す桜花、わずか瞬き一つの攻防で、うなる銃撃に体術の極意! だが、それを制したのは、練力で余裕のあった紗重であった。 単独行動の桜花に比べ、ツーマンセルの有利が働いた形で、紗重の銃弾が桜花を撃破。 だが、次の瞬間、紗重の足を遠方から打ち抜くスナイパーの一撃! 「‥‥攻撃の後の一瞬が好機‥‥大人しく寝ていてくれ」 からすの一撃は、この瞬間を狙っていたようだ。 続くスナイパーの攻撃を警戒しつつも、紗重を助けようか迷う穂澄。 そこにやってきたのは、リーゼロッテとセラの二人だ。 「姉さん、私に構わずにフラッグを!」 足を撃たれ行動不能の紗重は、姉の穂澄に全てを託してフラッグを拾い渡して。 それを受けた穂澄は、今度は追われる側となって逃走開始。攻守交代であった。 一方その頃、もう一つの戦いが行われていた。 「‥‥佐平次さん、暁丸さん、周辺に一人、潜んでいるはずです。気をつけて下さい!」 紗弥の声が飛び、警戒する二人。そこに影のように現れたのは上條だ。 横っ飛びに逃げて遮蔽物に隠れる暁丸、だが重量級の佐平次は一瞬戸惑って、 「これで、一匹」 呪縛符に捕らわれた佐平次は、最後の一発を見当違いの方向に放ちつつ、スナイパーライフルの餌食。 この一撃、潜伏していた上條の中距離からの一撃だ。 上條の姿を捉えられない暁丸。ここはひくべき所と一旦距離をとり、狙うは穂澄との合流。 数では三対四で開拓者有利、だがフラッグは敵軍の手に。いよいよ戦いは佳境となるのだった。 「持ち帰らせはしません‥‥」 ボルトアクションの狙撃銃で狙いを付けた上條は暁丸の姿を狙って。 だが、そこで視界を遮る爆風、佐平次の最後の一撃が建造物を破壊して狙撃は不可能に。 ここが正念場と拳銃を抜き放ち、上條は敵に肉薄するようだ。 逃げる穂澄は、なんとか暁丸と合流。このまま逃げ切れば勝ちだ。 こちらはスナイパーがまだ健在、追っ手を足止めしてくれれば勝率は高まる。 からすは鉄塔からの移動のタイムロスがあるが、そろそろ危険。 次の瞬間、先手を取ったのは敵軍だった。敵スナイパーによる狙撃、狙われたのはセラだ。 強烈な対物ライフルの狙撃、余波だけでぐらつく体に揺らぐ視界。 だが、砲術士の彼女は敵の居場所を見逃さなかった。 「ただで終わるとは思わないことですっ」 狙いを周囲しての紗弥の第二射、それはセラの単動作によるロケランの高速射撃と同時だった。 撃たれるセラ、だが反撃のロケランは同時に紗弥の潜伏場所を破壊。 セラは我が身を犠牲に、敵スナイパーの紗弥を撃破したのであった。 残る敵軍は、フラッグを抱えた穂澄に、援護する暁丸。 対する開拓者は、追いすがるリーゼロッテに身を隠した上條、そして狙撃手のカラスだ。 ここで狙撃手にカラス復活。 数秒だが穂澄と暁丸を足止め。そこに追いつくリーゼロッテ。 「ふふ、ただ銃で撃ち合うだけが能じゃないのよ」 なんとリーゼロッテの切り札は、毒蟲だった。なんと穂澄がそれを直撃されてしまった。 穂澄は身動きが取れず、そこを狙うからすの狙撃、なんとコレが最後の一発。 穂澄はフラッグを手放してついに撃破されてしまうのだった。 「‥‥意外と重いのねこれ」 残されたフラッグはリーゼロッテの手に。だが、穂澄はただで倒れたわけではなかった。 自分が毒蟲でやられたときに、暁丸に潜伏の指示。 フラッグのもふら人形を手に入れたリーゼロッテは、潜んでいた暁丸の銃弾を受けて撃破される。 勝利は敵軍の手に?! だが、潜伏に駆けては、上條の方が一枚上手であった。 狙撃銃を捨ててまで身を隠していた上條。拳銃のみでこっそり接近すると、全て暁丸に叩き込む! これにて、敵陣は全員撃破され、勝利は開拓者のものとなるのだった! だが、どうやらタイマーは作動中のようで、一人生き残った上條の目に映るのは、のこり数秒の表示。 次の瞬間、斃れた仲間たちを巻き込んで、大爆発に巻き込まれる上條。 勝利は勝利だが、結局みんな仲良く吹っ飛んだとか。 ●終わりよければ 「‥‥体重減ったかな?」 実際はどうかしらないが、疲れたのは確か。しかし戦いは開拓者の勝利で幕を下ろした。 そして戦いが終われば、もう敵と味方ではなくノーサイドだ。 折角の春だしと、利諒と庄堂巌の二人が用意した宴会に一同は招かれているようであった。 爆発の魅力を語る佐平次に、静かに頷くからすや、疲れたとのんびり休むリーゼロッテ。 「ふう‥‥中々こんなことをする機会もありませんでしたけど、やってみると楽しいものですね」 宴席にて、桜を見上げながらそう呟くのはセラで。 「やはり春はいいものです」 「ああ、これで去年の雪辱は果たせたし、来年もやりたいもんだな」 セラの言葉に、庄堂がいえば、利諒は思わず嫌そうな顔を浮かべたり。 そんな様子に一同は楽しく笑いつつ、これにて賑やかな春の戦いは終わりを告げるのであった。 |