|
■オープニング本文 どんな人間にも器というものがある。 それは、守るべき領分とも言い換えられるだろうが、それを超えた者には相応の末路が待っているもの。 そして、悪党の末路と言えばただ一つ。 今回、貴方たち開拓者は、その領分を守らず暴走するかつての仲間に裁きを下さねばならないのである。 開拓者の仕事は厳しい。 時には命を危険にさらすことを厭わずに、弱き者の為に戦わねばならないときがある。 だが、その見返りは大きい。 通常の生活であれば望めないような栄誉や報償を得ることも少なくないわけで。 そんな生活を繰り返している内に、心の弱さからか歪んでしまった者たちがいた。 彼らは、開拓者としてそれなりに長く活動を続けてきた。 いつも仲間同士で協力し、主にアヤカシ退治の依頼を多く請け負ってきたようである。 数は六名。毎回仲間同士で小隊を組んで依頼に当たるため、青巾衆の名がついたよう。 その名の由来は、全員が揃いの青い布を身につけているからとのこと。 はじめは、戦闘力の高い開拓者集団としてそれなりに名を馳せたのだが、彼らはやりすぎた。 依頼主との直接交渉によって、依頼料を値上げしたり脅したり。 または、周囲の迷惑を顧みない戦闘方法による周辺被害の増加や迷惑行為も増えたよう。 そして、開拓者として戦闘を積み重ねたその武力でもって、一般市民を脅かすこともあったよう。 ギルドから、再三再四の注意や警告は積み重ねられたのだが、彼らはそれを聞かず。 結局、彼らはギルドから除籍。今でも辺境で、直接交渉して依頼を受けているという話だった。 だが、その状況でも彼らはますますその暴虐の度を高めたよう。 このままではすでにギルドを除籍したといえどもギルドの名に傷が付くのは必定。 そんな最中、ついに彼ら青巾衆は一線を越えてしまった。 武天の辺境の村にて、アヤカシ退治を請け負ったらしい彼ら。 彼らは依頼の報酬が不満だと、その村を脅したのだが、村は彼らの要求をはねのけた。 その結果、なんと彼らは村に火を放ったのだという。 数十人いた村人は命からがら逃げ出したとか。幸い死者は出なかったものの、多くの怪我人がでたようで。 今では、彼ら青巾衆がその村の跡に居座っているようであった。 アヤカシよりも質の悪い開拓者崩れの集団。 ギルドはその重い腰をあげて、彼らを捕縛、もしくは討伐するために依頼を出すこととなった。 さて、どうする? |
■参加者一覧
梢・飛鈴(ia0034)
21歳・女・泰
静月千歳(ia0048)
22歳・女・陰
犬神・彼方(ia0218)
25歳・女・陰
紬 柳斎(ia1231)
27歳・女・サ
空(ia1704)
33歳・男・砂
鬼灯 恵那(ia6686)
15歳・女・泰
猪 雷梅(ib5411)
25歳・女・砲
計都・デルタエッジ(ib5504)
25歳・女・砲 |
■リプレイ本文 ●凶刃六つ ギルドの小さな部屋にて、開拓者8名の前には人相書きと数枚の資料が。 「こちらが今回の標的6人の情報ですね〜」 ギルドの係員から資料を受けとり広げているのは計都・デルタエッジ(ib5504)だ。 のんびりと眼を細めてしゃべりながらも、その笑みには何処か剣呑な雰囲気が含まれていて。 「‥‥好き勝手やるに致しましても〜、少々派手にやりすぎたようですね〜」 「フむ、何時でもこういう輩には事欠かンな、全く」 腕組みしてそんな計徒の言葉に応える梢・飛鈴(ia0034)。 「ンま、ナに考えてるか分からンアヤカシより、こっちのがやりやすいちゅー気もするアルが」 そんな梢に、一同は頷いて。 「では、作戦も決まりましたし〜、煩くなる前に〜、消えて頂きましょうか〜」 にっこりと眼を細めていう計都の言葉に、一同はそれぞれ同意するのだった。 ある者はただただ静かに頷いて。また有る者は微かに闇を帯びた笑みを浮かべて。 どうやらこの依頼、頼もしくも恐ろしい面々がそろったようである。 依頼の村に向かった開拓者一行は、準備万端に備えて時を待っていた。 狙うのは明け方。敵の警戒がもっとも緩む時間だろうという想定のもとでの決定だ。 だが、敵も元開拓者だ。こちらの策を予想していることも考えられる。 「向こうも、迎え撃つ準備は万端なのでしょうね」 静月千歳(ia0048)が言うように、依頼を受けた開拓者達は、それを含めて策を立てていた。 つまり、こちらの動きが読まれていることを想定した上で動こうというわけなのだ。 向こうが策を読んでいても効果を発揮できるような、真っ向勝負の策。 お互いの策の読み合い仕掛け合いの結果は、存外に単純な結果に帰着するものなのかもしれない。 「‥‥もっとも、こちらを警戒して無駄な力を使ってくれる様な相手なら、苦労はしないのですけどね」 静月はそういって村の様子を遠巻きにうかがうのであった。 「‥‥見た感じ、罠は見あたらねェ。家に気配はあるが、警戒してるのは感じるがな‥‥」 今回唯一のシノビ、空(ia1704)は偵察から戻ってくるとそう言った。 開拓者達は罠を警戒していたようだが、罠は見あたらなく。 だがそれは警戒を怠ったことを示しているわけではないようだ。 経験豊富な空の印象では、生半可な罠を仕掛けるよりも自分たちの実力に自信があるといった感じで。 「‥‥見張りは見あたらねぇし、そろそろ時間だ。腹を決めて仕掛けるとしようや」 そういって空はにやりと笑みを浮かべて。 静かに、開拓者達は作戦に移るのだった。 ●決行 「悪党にゃぁそれに見合った最期がある‥‥それぇが牢屋か死か、選ぶのぉはあいつらだぁがね」 無骨な十字槍を手に、待ち構える長身の女性の姿、前衛担当の犬神・彼方(ia0218)。 そして彼女に並んで待つのは紬 柳斎(ia1231)だ。紬は、犬神の言葉に頷くと 「侠の世界に生きる者が浅ましく堕ちゆくのは哀しいものだが‥‥せめて止めてやるのが人情だな」 なぁ、親父殿と、犬神に呼びかけて。2人は静かに機を待つのだった。 開拓者達は大きく分けて二つの組に分かれていた。 犬神と紬は敵が潜伏する家の正面を見据えた場所に、他の開拓者達と。 こちらは仲間が燻りだした敵を真っ向から受け止める予定の前衛組である。 もう一方は家の裏手や別口から逃げ出すのを警戒した挟撃用の組だ。 時刻は明け方。まだ肌寒いこの季節、山々の稜線にゆっくりと朝日が覗き村を静かに照らした。 それを始まりの合図として開拓者は行動を開始するのだった。 最初に動いたのは梢、手にした焙烙玉を敵が潜む家めがけて投擲! 狙い過たず、家の中に転がりこむ焙烙玉、続いて鈍い爆音が響き、前衛が距離を詰める。 だが、家の中から漂う煙を割って、正面から逆に飛び出してくる姿が3つ。 「とうとう来たかギルドの犬らめ! そうそう我等が首、討ち取れるなと思うなよ!」 吼える男は人相書きで見た首魁、蟻原だ。 居合の構えのまま、先頭をきって走り、隣に並ぶのは槍を持つ巨漢、大共兄弟の兄の姿が。 その背後にいるのはおそらく巫女職の老人、奇扇だろう。 その3名は、真っ向から前衛に立ち向かっていくのであった。 どうやら焙烙玉の火力では被害を与えられなかった模様。 屋敷内部の机を盾に爆風の直撃を避けたあとに、すぐ正面から飛び出してきたようであった。 重装備の大共兄に立ち向かうのは同じく長物使いの犬神。 そして、軽装の蟻原を迎え撃つのは紬だ。奇しくも戦い方のかみ合った物同士。 槍の穂先が絡み合い火花を散らし、同時に居合の刃を紬が刃の一閃で弾き。 朝焼けの中、激しい金属音とともに戦いは一気に激しさを増したのであった。 屋敷の裏口、わかりにくい扉を蹴り破って飛び出すもう1人の姿。 それは見たところ陰陽師の御野だ。 彼女を狙う姿は二つ。泰拳士の梢と陰陽師の静月がすぐさま御野の姿を捉え、追いすがった。 梢がまず焙烙玉投擲。だが、それを斬り飛ばしながら現れたもう1人の敵の姿が。 それは大共兄弟の弟の姿。兄と同じく長柄の槍を手に、梢の行く手を塞いで立ちはだかる。 梢は瞬脚で距離を詰め御野を狙うが大共弟の槍がその機先を制し、次の瞬間今度は御野が焙烙玉投擲。 狙うは静月、彼女は御野を狙おうとしていた斬撃符でそれを迎撃。 粉々に砕かれた焙烙玉が一瞬視界をくらませた瞬間、御野は術で牽制しながら出てきた家へ逆戻り。 どうやら家を突っ切り、正面と合流するつもりのよう。 梢の渾身の膝蹴りは大共弟が槍で受ける。 だが、続いて違う角度から放たれた変則の蹴りは大共弟を捉えた。 重装備故に致命打ではないが、それなりの手応え。 だが、次の瞬間、梢に飛来するのは針の穴を通すような鋭い御野の術の一撃だ。 咄嗟に気合いでその一撃に抵抗する梢、砕魂符の一撃に辛うじて抵抗するが、その隙に大共弟も逃走。 両者は正面で戦っている蟻原らと合流を果たしてしまうのだった。 だが、ここまでは予定の範囲内だ。 数で勝る開拓者一行、挟撃することに成功すればこちらが有利という心づもりだ。 しかし、開拓者一行と青巾衆では一つ差があった。それは回復役の存在だ。 「‥‥どうやらアンタもアタシに近い人種のようじゃない? ギルドの言いなりでいいの?」 戦闘開始とともに、巫女の老人、奇扇を狙おうとしていた空は敵の気配で咄嗟の回避。 そこに突き刺さる手裏剣の雨、どうやら潜んでいたシノビの黒主は空を狙って出てきたよう。 覆面で隠した顔の中、目だけを笑みのように歪ませて言う黒主に空は、 「は、命運尽きた輩の甘言に乗る気はないねェ」 そういって、ゆらりと構えると抜き放ったのは刺突専用の鋭い刃。 「冥界等何処にも無い。貴様達が行きつく所はただの虚無」 投げつけられた牽制の手裏剣をひらりと避けて続ける空。 「痛みも誇りも何も無く、この世の門から追い立てやらァ‥‥ッ、ッヒヒヒ」 そして、はじけるように笑い出すと、一気に黒主に襲いかかるのだった。 「全部だ全部全部全部全部全部誰一人として残さず紅色に染め上げてやる!」 距離をとる黒主、追いすがる空、シノビ2人は戦場を移しながら熾烈な戦いを始めるのだった。 同時に主戦場でも変化があった。 正面に結集した青巾衆5名。盾役が大共兄弟二名で、2人とも重装備。 対して攻撃役はこれまた2人、居合の蟻原と陰陽師の術で援護する御野だ。 一方開拓者の前衛は数的に有利な4名。 「ダメだよねぇ、悪いことしちゃ。こうやって斬られることになるんだから」 くふふと艶やかに笑う鬼灯 恵那(ia6686)は、正面と合流した大共弟を狙って。 「はっ、お嬢ちゃんみたいなのが俺たちを狙うとは焼きが回ったか? なあ兄者」 「は、女ばっかりとはな。頭がここは切り抜けろって言うんじゃなきゃ、1人2人持って行きたいもんだぜ!」 轟と音を立てて振るわれる槍をひらりと回避する鬼灯、返す刀で強烈な一撃。 受け損ねた大共弟の鎧の隙間からは血がしぶいて。 「‥‥ちょっと肉が固いみたいだけど‥‥ね、兄弟がいる者同士、仲良くしようよ」 にっこりと微笑む鬼灯に、同じく大共弟も好戦的な笑みを浮かべて応えるのだった。 大共弟には鬼灯、大共兄には犬神、そして首魁の蟻原には紬。 ほぼ前線は拮抗状態にあるといえるだろう。 腕前でいうならば蟻原が僅かに紬に勝り、他の二つはほぼ同格。 だが、こちらには自由に動ける泰拳士の梢がいる。 梢が狙うのは陰陽師の御野。攻撃力の要である御野を、梢と静月が連携しつつ狙う。 しかし、それを阻むのは敵前衛の面々だ。 敵後衛である奇扇老人と御野は巧妙に前衛三名の防御に隠れてなかなか隙を見せなかった。 連携した戦術ではやはり場数で勝る敵の有利、しかも一つ問題があった。 敵には回復手段が存在するのだ。 こちらの手数は勝るが、奇扇老人は練達の巫女であるらしく、回復と援護にそつがない。 そのため手傷を与えてもそれで押し切れずに戦いは拮抗。 だが、その拮抗は危うい物であった。 なぜなら開拓者側には回復手段が無い。手傷を負えばそれはじりじりと不利になってしまう。 戦いが始まってまだほんの数分、だが開拓者達は急ぎ決着を付けねばならないことを悟るのだった。 そしてその決意に応えたのは、二つの兇弾。巧妙に位置を変えながら敵を狙う2人の砲術士である。 「笑わせるよなあ。何が開拓者だ、立派なチンピラだよお前らは」 へらへらと笑いながら、前線近くまで出てきてそう宣うのは猪 雷梅(ib5411)。 拮抗状態の戦線に影響を突き崩そうと、危険を承知で距離を詰めながらの銃撃は熾烈。 だが、その銃撃も前衛が体で止める。そしてそれを巫女が癒してなかなか決定打にはならない。 それは、同じく銃を構える計都にとっても同じであった。 「巫女の老人は〜、巧妙に逃げますね〜‥‥」 計都も果敢に銃撃するが、決定打にはなり得ず、練力の枯渇と共に戦場は緊張を増すのだった。 ●決着 「‥‥アホな理由で村燃やす所とか、特にチンケな小者の臭いがプンプンすらぁ!」 挑発しながら、銃撃を繰り返す猪。そんな彼女の視界の隅に移ったのは空と黒主だ。 屋根を飛び移り手裏剣で距離を取りつつ中距離戦の黒主。 距離を詰めて近距離に持ち込みたい空は間合いを取られて苦戦中であった。 これ以上戦闘が続けば、こちらが不利という状況で後衛の計都と猪はある賭に出た。 「梢さん〜、先にシノビを落としましょう〜」 「空っ! じじいを先に仕留めるぞ!」 計都と猪がそういえば、咄嗟に反応する2人。 そして次の瞬間、2人の砲術士は単動作からの即射撃。狙ったのは屋根上の黒主だ。 咄嗟の銃撃に思わず回避するシノビの黒主、さすが歴戦のシノビ、なんと両方とも回避成功。 だが、あくまで2人の砲術士の銃撃は布石、そこでやってきたのは梢だった。 回避力や機動力で勝るシノビとはいえ、瞬脚で距離を詰められてはどうしようもない。 梢は、御野に叩き込もうとしていた連打を標的を変え、シノビの黒主に叩き込んだのだった。 外套を翻し視界を一瞬くらませ、間合いに踏み込む。 そのまま、足を踏みつけ膝蹴りから絶破昇竜脚! それを防ごうと放たれた御野の術は一瞬遅く、梢は気合いで抵抗。 装甲の薄いシノビはその一打で致命打、一気に戦場の趨勢は変化するのだった。 前衛の隙間を縫って、忍び寄る影。標的を変えた空は秘術・影舞で姿を消すと老巫女に接近。 気付いたときにはもう遅い。気力を込めた影の一撃は老人を心の臟へと吸い込まれて。 もちろん深く前線に踏み込んだ空もただではすまない。 実は接近戦も可能な御野の刃を受けて、後退。だが、追撃を封じたのは猪の銃弾だ。 しかし敵も諦めてはいない。 シノビの援護と巫女が崩れた瞬間、大共兄弟と蟻原は最後の死力で反撃に転じるのだった。 命知らずの猛撃で、詰め寄る大共兄弟。 弟が体躯で劣る鬼灯に対して一気呵成に攻めに転じて、あわや反撃の刃がと思えたが、 「こちらもお仕事ですから。元開拓者なら、お分かりでしょう?」 静月の援護、斬撃符が大共弟の体を抉り、次の瞬間鬼灯の刃が大共弟の首を薙いでいた。 「‥‥普通に開拓者してても貴方たちみたいなのが出てくるから飽きないんだよねー」 楽しかった、と刃を振り切ったままそう鬼灯は言うのだった。 「貴様らっ! よくも弟を!!」 猛る大共兄、だがそれを受ける犬神はこの熟練の面々の中でも最たる腕利きだ。 「こっちだってぇ仲間がいるんだぁぜ? さぁ、抑えてる間ぁにとっとと倒しちまってぇくれよ」 豪腕が振るった槍の一撃を絡め取りがっちりと受け止めて。 犬神が全身の傷から血を流しつつも生み出した隙、そこに放たれたのは猪と計都の銃弾で。 何発もの銃弾に大共兄も地に伏すのだった。 そして、残る二名。 倒れたシノビの黒主がどさりと屋根から落ちるのと同時に、鬼灯と犬神がまずは首魁の蟻原に接近。 蟻原の攻撃を凌ぎ、全身傷だらけになっていた紬は、最後とばかりに力を奮い起こして、 「やはり惜しいものだ。どれほど素晴らしい剣技であっても、それはもはや誰の心にも届かぬのだから」 ぎりと刀を握りしめて、反撃の一閃。 鬼灯と犬神に挟撃されて守りを崩された蟻原はなすすべ無く紬の一撃を受けるのだった。 「‥‥無念」 「驕らなければもっと道もあったであろうに」 地に伏ながら、最後の吐息と共に蟻原が呟く一言、紬は僅かな悲しみを込めてそれを見やって。 そして残るは最後の1人、陰陽師の御野は愛する男であった蟻原が斃れたのを見て、 「これまで、か」 それだけ言うと、彼女は自分の喉に刃を突き立てた。 満身創痍の開拓者一同は、どさりと斃れ伏す御野を見、無言のままそれぞれの武器を拭うのだった。 依頼は無事に成功。満身創痍ながらも何とか勝ちを拾った開拓者達。 今回は上手く戦い方がかみ合ったため、勝てたのだろうが、危うい勝負であったともいえる。 だが、勝ちは勝ち。見事青巾衆を倒した開拓者一行は、やっと帰路につくのであった。 |