瘴気の軍勢を撃破せよ!
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: ショート
危険 :相棒
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/04/05 20:16



■オープニング本文

 ●緊急依頼

 ●場所
 かつて魔の森に呑まれてしまった理穴の集落跡。
 魔の森が縮小したのに伴い、今回発見されたが大量のアヤカシが存在していた模様。

 ●敵兵力
 狂骨や骨鎧など、骨に瘴気が宿り生まれたアヤカシ系多数。
 中には首無しなどの、大型のアヤカシが数体含まれる模様。
 骨系のアヤカシは、100体以上確認されているため注意が必要。

 ●追記
 魔の森の縮小に従い、その加護を得られなくなったアヤカシはまとまって人里を目指している模様。
 迎撃は、集落跡にほど近い開けた平地で行うこととなる予定。
 
 敵の数が非常に多いため、今回は相棒の使用をはじめ、最大限の援護を行う。
 しかし、人員確保が難しいため、少数での大群撃破を行う必要がある。

 ※注意
 龍など飛行する相棒以外は、地上戦を行うことになるため、よりいっそうの注意が必要。
 現地付近までは、仲間の龍に同乗して行くかギルドによる移送によって移動することとなる。
 なお、ギルドの偵察に対しては骨系アヤカシによる矢の攻撃や、首無しなどによる投擲攻撃がみられた。

 さて、どうする?


■参加者一覧
緋桜丸(ia0026
25歳・男・砂
輝夜(ia1150
15歳・女・サ
皇 りょう(ia1673
24歳・女・志
珠々(ia5322
10歳・女・シ
アルネイス(ia6104
15歳・女・陰
シュヴァリエ(ia9958
30歳・男・騎
サーシャ(ia9980
16歳・女・騎
オルカ・スパイホップ(ib5783
15歳・女・泰


■リプレイ本文

●先手必勝
 アヤカシの大群出現という一報で、出撃する開拓者達7名。
 開拓者は数多く居れど、アヤカシの被害は収まることを知らない。
 それ故に、こうした危険な依頼に少人数で立ち向かわねばならないこともあるのだ。
 だが、開拓者達の顔の絶望は無い。
 知略をつくし、技と力を振り絞れば越えられない障害は無い。
 しかも今回は彼らだけではない。彼らが命を預けるに足ると信頼している相棒と共にあるのだ。
 7対100? 14対100? 否、数では計れない強さというものは確かに存在するのである。

「相棒との大きな戦闘は滅多に無いからな。少しはご機嫌取っておかないとなぁ」
 アヤカシの大軍を前に、けらけらと剛毅に笑みを見せるサムライが1人。
 緋桜丸(ia0026)は、大軍を前にしても動じずぽんぽんと相棒である龍の首筋を撫でれば、
「‥‥どんな奴らが待ち構えているやら‥‥おまえもワクワクするよなぁ」
 剛胆な緋桜丸の龍だけあって、炎龍の華龍王は轟と咆哮を上げて応えるのだった。
 そんな彼の後方に着陸する他の開拓者の面々たち。
 今回、龍を駆る開拓者は緋桜丸ただ1人だ。故に他の面々はギルドの手でここまでやってきた。
「ご武運を!」
 そう告げて、次々に離脱し退避するギルド職員たち。
 あくまで臨時の移送部隊であるために、戦闘力は無いに等しい。
 もし仮に開拓者達が倒れたとき、彼らが回収するのだろうが今は彼らが出る幕ではない。
 ずらりとそろった7名の開拓者とその相棒たちの戦いがいよいよ始まるのだ。

「じゃあ、作戦通りに行こう。まずは先行偵察だ」
 ひらりと華龍王の背にまたがる緋桜丸、飛行可能な龍による先行偵察がまず作戦の初手のようだ。
 それを見送った開拓者一行は、次なる準備に入った。アーマーの起動だ。
 アーマーケースから出現した鉄の巨兵がずらりと三体。
 今回だけは特別と、貸与されたアーマーケースを使用してここまで運んできたアーマーが勢揃いである。
 起動には熟練した騎士でも1分程度が必要だ。
 移送の時に開拓者に気付いたのだろう。アヤカシ達の群は徐々にこちらに向かってきている。
 作戦の成功のため、彼らは急いで陣形を整えて、行動に移るのだった。

「うーん、飲まなければ大丈夫とはいえやはりお酒の臭いは苦手です」
 アルネイス(ia6104)は、近づいてくるアヤカシの軍勢を横目に、ヴォトカを入れた袋を作っていた。
 混ざりものが少なく高い度数を誇るジルベリアの酒、それを使って火攻めの策というところで。
 この作戦の要は、この酒袋を敵陣に投下する危険な役目を誰がやるかということなのだが。
「‥‥ムロンちゃん、最初に袋を投げてから、泥煙幕で姿を隠してぶちかましだからね」
 アルネイスが呼び出したのは巨大なカエル、召還型相棒のジライヤだ。
 常に練力を送り続けてその姿を維持する必要があるが、知能は高く戦闘力もなかなか優れた相棒で。
「委細承知なのだ!」
 どむっと胸を叩いて請け負うジライヤのムロン。彼をまっすぐにアヤカシの群に向かって行くのだった。
 その背後で、起動準備を進めるアーマー三機。
 各部の動作、宝珠の起動、うなりを上げて体を持ち上げて、前部装甲をがしゃりと閉じて。
 いよいよ起動も最終段階、それぞれのアーマーは戦場に顔を向けるとそれぞれの武器を取って。
 ずしゃり、三機そろって第一歩を踏み出したのだった。

●戦場の趨勢
「‥‥うじゃうじゃ居やがる‥‥」
 風を切る翼の音を聞きながら、緋桜丸は小さく呟いた。
 上空で旋回しながら見下ろせばそこには白い白骨の群が。
 ところどころに見える頭の無い巨人は首無しだろう。
 それがこちらに向かって矢を放ったり、岩を投げてきたりするのだが、それでひるむ華龍王ではない。
「準備は出来たみたいだな‥‥行くぞ!」
 ちらりと地上の仲間たちを確認すれば、ムロンを先頭に追従する三機のアーマー。
 準備は出来たのだろうと、緋桜丸は華龍王を駆り、急降下を開始した。
 飛来する矢は大剣で弾き、地上に肉薄しては強烈な龍の蹴り攻撃。
 弱い狂骨や骨鎧をなぎ倒して、上空に跳ね上げれば、そこにまっているのは緋桜丸の大剣一閃。
 実は、急降下攻撃を繰り返しているのには目的があった。
 集団の外縁を削るようにして攻撃すれば目立つ龍に対して部隊はまとまるように密集する。
 そこに今回の策の要、ムロンの一撃が炸裂するのだ。

「ぐっわっはっはー、ムロンのパワーで押しつぶしてやるのだー」
 呵々大笑しつつ、突貫したムロン。酒入りの袋をていやっと投げると、そのまま煙幕からのぶちかまし!
 敵の前線にどっかりぶつかって、そのままムロンは蝦蟇張手で牽制しているのだが、そこに敵が押し寄せる。
 ムロンを回収するために意識を集中するアルネイス。しかし時間がかかってしまう。
 その一瞬が命取りになりかねない敵の猛攻なのだが‥‥。
 そこで、戦場を疾駆する影が2つ、いや4つあった。
「光鷹閃輝よ、これが汝の初陣じゃ」
 長大な刃を手に、駆け抜けるシノビは輝夜(ia1150)。
 サムライからシノビに転職した彼女の剣の冴えたるや、見事の一言。
 シノビの機動力を活かしてムロンの援護を行うと、斬竜刀の斬撃一閃、ぐるりと周囲の狂骨が崩れる。
 そんな彼女の周囲を飛び回り、援護するのは白い翼。彼女の相棒、迅鷹の光鷹閃輝である。
 光り輝く二対四枚の翼は純白、遠距離から放たれた矢を風斬波で蹴散らし、主人を守っているようで。
「‥‥初陣としては少々派手じゃが、臆する事無く我と共に戦い抜くのじゃ」
 輝夜がそう言えば、普段はあまり素直じゃないらしい光鷹閃輝も一声鳴いて、足並みをそろえ。
 彼女たちも連携して周囲の敵の薙ぎ払いうのだった。
 同時にもう一組、影のように戦場を駆ける姿が。
 珠々(ia5322)とその相棒の迅鷹だ。
 黒い体と羽に銀の風切り羽が微かに覗く迅鷹の嶺渡はまさしく影のよう。
 そして、爪や風斬波で援護する嶺渡と共に、手裏剣で骨鎧たちを牽制する珠々もまた風のように俊敏だ。
「正面から戦うのはシノビの仕事じゃありません」
 きっぱりとそういう彼女の役目も、また囲い込みであった。
 ムロンが酒の袋を投下した場所から敵が離れないように、緋桜丸と輝夜そして珠々が援護しているのである。
 そして援護の甲斐あって、ムロンは回収された。
 しかし、敵陣はもうすでに目と鼻の先まで来ている。
 いよいよアーマーたちが敵の先陣とぶつかろうというその時、アルネイスの策が成った。

「全てはこの為の布石、さぁ行きなさい! ピノタージュちゃん!」
 アルネイスが放ったのは、火炎獣。隷役によって強化された火炎獣が生み出したのは火を吐く猛獣‥‥。
 ではなく、巨大な深紅のカエルだが、威力は変わらない。
「焼き尽くすゼ! ピノタージュファイヤー!!」
 妙にノリノリに術を放つアルネイス。
 隷役で強化されたその猛火はかなり強力で、一瞬周囲を明るく照らすほどの猛火が一直線にのびて。
 そしてそれが狙ったのは、ぶちまけられたヴォトカの場所だ。
 幸い、春先の季節柄で冬に立ち枯れた燃えやすい枯れ草が残っていたこと。
 そして、岩の多い土地柄、地面にしみこむより敵に付着した酒が多かったためだろう。
 その猛火は一気に燃え広がって、巨大な炎を生み出したのだった。
 炎でひるむアヤカシではない。敵は死した白骨に瘴気が宿った不死のアヤカシ達だ。
 だが、燃え広がった炎は確かに敵を焼き、弓弦を燃やして敵の歩みを止めるには十分だった。

 そして、燃え広がった爆炎が緩やかに消えかけ、煙がくすぶっている戦場にて。
 その煙の幕を突き破って、敵の集団に突進したのは三機のアーマーだった。

●殲滅戦
 煙で視界が悪くなった戦場にて、その煙を突っ切って現れたアーマーの威力は凄まじかった。
 今回、人数が少なくしかもアーマーはその稼働時間に問題がある。
 非常に短い時間しか行動できないとあれば、取るべき策も限られてくるわけだ。
 だが、開拓者達はその戦術において最良の選択をしたといえるだろう。
 それは、敵を混乱させた状態での最強戦力よる強烈な突破。
 まさしく奇襲的な火炎の煙幕で敵の機先を制し、速力で敵を突破するという電撃戦の理想型であったのだ。

 中央を行く白い機体は、サーシャ(ia9980)のミタール・プラーチィ。
 本職の騎士が駆る白い機体の右手には巨大なクラッシュブレードに左手にギガントシールド。
 足を踏み出せば、炎に巻かれて崩れ落ちそうな狂骨を踏みつけ、右手を振るえば骨鎧が弾け飛ぶ。
 三者の中でもっともアーマーの扱いに熟達しているサーシャは、先陣を切って敵をなぎ払うのだった。
 そして、長大な刃を振り回す強烈な半月薙ぎの一撃。
 わらわらと周りによってきていた骨鎧が一撃で吹き飛ばされて。
 あっという間に十体以上を屠ったアーマーはさらに敵陣深く侵入するのだった。
 サーシャのミタール・プラーチィの右を固めるのはシュヴァリエ(ia9958)だ。
 彼のアーマーの名はヴァーチュー。
「ここで食い止めなければ民に被害が出る。それだけはあってはならない事だ」
 シュヴァリエは剣だけではなく左手のナックルコートで固められた拳でも狂骨をなぎ倒してサーシャに続く。
「鬱陶しい、纏わり付くな」
 そう言いながら拳を振るえば、燃えかけて弱った狂骨はばらばらになって。
 そして、そのまま彼が向かう先には巨大な姿、アーマーと同じほどの大きさの首無しだ。
「‥‥ほう、これは骨のありそうな奴だな。骨だけに」
 ずしゃりと剣を構えるシュヴァリエ。突っかかってくる首無しを、ヴァーチューはひらりと回避する。
 アーマーと一体となった騎士は、まさに人鎧一体。そしてそのまま首無しの膝裏に向かって剣戟一閃!。
 足をへし折られ、崩れた首無しに容赦なく踏みつけるシュヴァリエはそのまま首無しの胴を薙いで。
「これで動けまい」
 腰を砕き、そのまま首無しにとどめを刺すのであった。
 そして、二機のアーマーに続くのはオルカ・スパイホップ(ib5783)とそのアーマー、マハだ。
 僅かに残った弓使いの骨たちの矢も何のその、装甲とガードで凌ぐつつハンドカノン一撃。
 爆音とともに砲弾を放ち、そのままカノンをパージすると駆鎧の鋸刀を振るって敵に詰め寄るのだった。
 オルカは騎士ではないため、通常より多くの練力を消費する。
 だが、騎士より練力が豊富な泰拳士だ。その差を少しは埋められるはずと、戦場を突き進んで。
「そうか、大きいアーマーだと、移動するだけで攻撃になるんだね! ひきつぶせー!!」
 騎士2人のアーマーを観察し、その動きを真似て敵を踏みつけるオルカ。
 黒く禍々しい雰囲気を漂わせるマハは、まさしく戦場の死に神として闊歩するのだった。

「さあ、もっともっと焼き尽くすゼ! ピノタージュファイヤー!!」
 アルネイスはそのアーマー立ちの援護として、火炎獣を使っていた。
 今回の戦術の要はその迅速さ。
 火炎獣の一撃で多少でも被害を与えれば、次なるアーマーの攻撃には耐えられないはずなのだ。
 なので、少しでも被害を与えていれば、進軍速度は上昇。
 アルネイスは、危険な戦場をアーマーたちの後背を追うようにして進んでいるのだった。
 もちろん、術者の彼女を無防備にする仲間たちではない。
 彼女に近寄ってくるまだ無事な骨鎧。刀を振り上げて肉薄しようというその時に、
「閃輝よ、アヤカシどもに我等の力を見せつけてやるのじゃ」
 光鷹閃輝とともに駆け付けるのは中衛兼遊撃として機能している輝夜だ。
 光鷹閃輝がきらめく光と成って斬竜刀に同化。煌きの刃を発動しての強打一撃。
 なんと鎧ごと、骨鎧は真っ二つ。返す刃で輝夜はアーマーの一撃を受けてぐらついた首無しを一閃。
 シノビの妙技、影の一撃を受けて、胴の中心から瘴気を吹き上げ消える首無し。
 輝夜の援護があるからこそ、アルネイスは術を使い仲間と助けることができるのだった。
 そしてもう1人のシノビである珠々、戦場を縦横に駆け抜けていた。
 敵の数が多いことは、それすなわち予想外の方向から攻められる危険性があるということだ。
 意識しているところ以外から攻撃されてしまえば人は弱いもの。
 それは、アーマーも同じだ。だからこそ、全体を見て一撃離脱戦法を取り得るシノビは重要なのだ。
 まだ無事な敵が多い場所には焙烙玉、遠方の敵を牽制するには北条手裏剣による颯。
 敵との距離を一気に詰めて、刀で薙いで、次の瞬間には早駆で一撃離脱。
 まさしくシノビの理想の戦い方を続ける珠々だったのだが、彼女の眼前に大物が。
 まだ傷の浅い首無しがあらわれたのだ。
 その巨躯はアーマー並。しかし他のアーマーたちは離れていて、なおかつ活動限界も近い。
 ならば逃げるのか? 否、彼女は嶺渡を呼び戻すと、煌きの刃を発動。
「‥‥正面から戦うのは仕事じゃありませんが、シノビが正面から戦えないわけではないんですよ」
 まだ少女としか見えない珠々だが、その実力は本物だ。歴戦のシノビのみが持つ気迫で首無しに相対し。
「参ります」
 言葉だけを残して彼女は影となるのであった。
 奔刃術、それはシノビのみがなし得る走りながらの高速戦闘だ。
 一所に足を止めないシノビの妙技に首無しは対処不能。巨大な腕を振り回しても当たらない。
 そして、幾度も同じ場所に刃が叩き込まれれば、水滴が岩を穿つように攻撃は深く鋭く敵を抉り。
 とうとう、足と腕をたたき落とされた首無しはその場に倒れ込み。
 そこに飛来したのは、シュヴァリエのアーマー、ヴァーチューの鉄鎖腕砲。
 鎖で繋がれた腕を大砲のように射出する荒技で、首無しは撃破、瘴気と化すのであった。

●限界の先に
 アーマー三機による苛烈な電撃戦は成功した。
 三機の蹂躙戦術は敵陣深くまで突破し、残るのは骨ばかり。
 だが、敵の数は多く、まだ全てを倒しきるその前に、限界はやってきた。
「おっとと、もう限界だ〜! 強制排除!!」
 泰拳士が操るアーマーらしく、軽妙に動き回っていたオルカとマハであったが練力がまず最初に尽きた。
 そこで、周囲のアヤカシからの猛攻が。
 だが、そのための機構がアーマーにはある。前部装甲をはじけさせ強制排除でオルカは外に。
 同時に他の二名のアーマーも練力が枯渇。同じく強制排除で外に出ようとするのだが、
 周囲にはまだ数十体のアヤカシが集っている。
 そこに単身飛び出せば危険は高い。練力が尽きた3人の搭乗者は危機的状況にあった。
 だが、そこに飛び込んできたのは赤い龍の姿。
「時間を稼ぐ! そのうちに体勢を整えろ!! ‥‥どんどん掛かって来いよ」
 空からの援護と遊撃を担当していた緋桜丸は、華龍王を急降下させると同時に炎の攻撃。
 地面を舐める火炎が敵を退け、同時に飛び降りた緋桜丸は、火炎に巻かれた首無しを真っ二つに断ち割った!
「今日はいつもの愛刀じゃないが‥‥」
 そういって、掲げる刃は無骨な大剣。怒りの名を冠したその刃は真っ赤に染まっているようで。
「たっぷり喰らえ。 緋剣弐式‥‥牙朧穿!」
 裂帛の気合いと共に放たれた一撃は、地を割る強烈な衝撃波。
 アーマーから飛び出す三者を援護しながら、緋桜丸は敵陣を一気に押し戻したのだった。

 動かないアーマーを中心に陣形を立て直す一同。
 術者のアルネイスを真ん中に、練力の尽きた面々もまだまだ戦意は高いようだ。
「‥‥まだ終わらんよ」
 アーマーから飛び降りざまに、ハルベルトを振り回し雑魚をなぎ払うシュヴァリエ。
「あとは体力の続く限り斬って斬ってきり捲るだけですね」
 大剣を振るい、大型の骨鎧を叩き斬るサーシャ。
「村のピンチを救うためには、全部倒さないとね〜♪」
 禍々しいアーマーから飛び出して、陽気に拳を構えるオルカ。
 満身創痍で、練力は尽きかけ、だが彼らはまだまだ士気高く気力を失っていなかった。
「これだけの数の骨がいるとなると、もう笑うしかなさそうじゃの」
 そういってまだまだ残る骨のアヤカシ達をみる輝夜だったが、すでに戦いの趨勢は決していた。
 大型の敵はほぼ全滅し、残るのは数が多いといえども、ばらばらに孤立したアヤカシだけだ。
 しかもその多くは狂骨や、平凡な骨鎧程度。
 まだまだ戦意が高く、連携して戦闘出来る開拓者たちの敵ではない。
 辛い戦いは続くが、それもあと僅か。開拓者達は一気に片付けるため、最後の力を振り絞るのだった。

●戦いの後
「これ、全部片付けたのですか‥‥信じられません」
 開拓者達を迎えに来たギルド職員は戦場跡をみて目を丸くして。
 アヤカシといえども骨に瘴気が宿る狂骨らは骨が残る。
 その数は、ざっとみてもどうやら最初の報告より大分多かったようで。
 だが、満身創痍ながらも、足った7名、否7組でその全てを全滅させた開拓者の戦闘力。
 そのすごさにギルド職員は、改めて感服するのであった。

 戦場を見下ろす高台にて、彼らはいま応急処置の真っ最中であった。
 練力が切れたアーマーはケースに回収し、疲れ切ってはいるものの、晴れやかに笑いあって。
「はい、ムロンちゃんにはとりあえずご飯として非常食の干飯をあげましょう♪」
 にっこりわらって残り少ない練力でムロンを呼び出しご褒美を上げるアルネイス。
 それを終えて彼女は、薬草と包帯でとりあえず怪我の応急手当に移ろうとするのだが、
「あら? この龍さんも応急手当が必要ですか?」
 なんと、いの一番に首を伸ばしたのは緋桜丸の龍、華龍王で。
「おい、こら! 俺を差し置くな! ‥‥すまんな、お嬢さん」
 思わずツッコミを入れる緋桜丸に、我関せずとアルネイスをはじめ女性陣に甘える華龍王で。
 そんな様子をみて、戦闘の疲れも忘れて、一同は笑い声を上げるのだった。

 苦しい戦闘も無事終了。見事依頼を成し遂げた一行は、満身創痍ながらも無事に帰路につくのであった。