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■オープニング本文 ギルドは現在、緊急の案件を抱えて天手古舞いといった有様であった。 だがしかし、そんな時にもアヤカシの被害は止むことは無い。 そんな折、神楽のギルドに一つ遠方からの依頼が舞い込んだ。 それは、現在理穴の魔の森周辺を見張る小さな砦からの物であった。 理穴の魔の森近辺に存在するその小砦は、装備も貧弱で人数も10名ほどという小規模な砦だ。 その任務は魔の森との境界線になること。といっても、基本は哨戒任務である。 縮小傾向にあるとは言え、いまだ危険な魔の森を日々警戒しアヤカシの早期発見がかれらの任務なのだ。 だが、最近あまり動きの無かったその魔の森で不穏な気配が。 調査の結果、知覚の魔の森外縁部にて、いくつかのアヤカシの集団が見付かったとのこと。 数はそれほど多くない、しかし問題なのは様々な種別のアヤカシが複合的に群れ集っているという点だ。 飛行が可能な鳥形のアヤカシや、狂骨などの不死者系、そして鬼系のアヤカシ。 それほど規模が大きくないとはいえ、この陣容では砦の手に余るという判断が下された。 おそらく、戦乱の気配に応じて瘴気より新たに生じた小集団なのであろう。 しかし、放置しておくことはできない。 よって、開拓者達はその相棒を利用しての迅速な殲滅が期待されている。 基本は砦を利用しつつ、索敵と殲滅を繰り返すことになるだろう。 決して派手な任務ではないが、理穴の人々を守るための重要な任務だ。 さて、どうする? |
■参加者一覧
柊沢 霞澄(ia0067)
17歳・女・巫
水鏡 絵梨乃(ia0191)
20歳・女・泰
羅喉丸(ia0347)
22歳・男・泰
鬼島貫徹(ia0694)
45歳・男・サ
谷 松之助(ia7271)
10歳・男・志
浅井 灰音(ia7439)
20歳・女・志
シュヴァリエ(ia9958)
30歳・男・騎
琥龍 蒼羅(ib0214)
18歳・男・シ
ルンルン・パムポップン(ib0234)
17歳・女・シ
レティシア(ib4475)
13歳・女・吟 |
■リプレイ本文 ●集合 「ご助力、感謝しますぜ、開拓者さん方!」 「‥‥うむ、変わらぬ日々の中、粛々と任務をこなし、アヤカシを早期発見したその動きは見事」 山賊の親分風な砦の長を前に、鬼島貫徹(ia0694)はどーんと構えてそう言って。 「また半端な対応をせず、即座にギルドへと話を振ったのも良し。‥‥後は任せておけ」 にやりとそう笑みを浮かべると、鬼島は請け合うのだった。 「そ、そんな作戦で大丈夫なんですかい?」 慌てた声を上げているのは砦の長だ。 それほど時間の余裕が無いと言うことで、開拓者達はすぐに行動に移ろうとしていた。 だが開拓者達が取ろうとした作戦を告げられた砦の人間たちは目を丸くして驚いたのだった。 それもそのはず、開拓者達の作戦は『少数で出撃し、各個撃破』だったのである。 目の前に広がっているのはこの周辺の地図だ。 かつて開拓者に協力して貰い制作した地図は良い出来で、そこには今回襲来する集団が示されていて。 陸空混合のアヤカシ集団が通るであろう道筋と交差する地点には三つの駒。 鬼と狼の地上アヤカシ集団の通るであろう場所には、別の三つの駒。 そして、砦の場所には、四つの駒が置いてあった。 「しかし、たった3人であの集団を相手するってぇんですかい? そりゃいくらなんでも‥‥」 危険すぎなのではと、声を上げる砦の長だったが。 「‥‥いや、たった3人ではないぞ、砦の長殿」 「へ? それは一体どういう‥‥」 長に声をかけたのは谷 松之助(ia7271)。彼は静かに彼に付き従う人妖の瑠璃を示して。 「我には瑠璃が。そして、鬼島殿にも水鏡殿にもそれぞれ相棒が居る。故に三ではなく六だ」 きっぱりと言う言葉に、砦の長は任せるしかないと決意を決めて改めて頭を下げるのだった。 「今回はよろしくお願い致しますね。それで、発見場所についてですが‥‥」 礼儀正しく挨拶したあと、早速さらに移動場所を絞り込む開拓者達。 そのなかで、地図を前に予測経路を考えているのはレティシア(ib4475)だ。 そこに飛び込んでくるのは、ひとっ走り調査に向かっていたルンルン・パムポップン(ib0234)。 「調べて来ましたっ! 飛行アヤカシの経路は予想通りですけど、こっちはちょっと東に寄ってて‥‥」 「‥‥なるほど、ではこれで大体絞り込めたようですね」 慌ただしく会議をして、それぞれの目指すべき場所を決める開拓者達。 こうして最終的な場所を予測し、いよいよ彼らはそれぞれの敵に向かうのだった。 ●散開 「フィル、みんな無事に任務が果たせるように応援しないとね‥‥〜♪」 悠々と砦の上空に弧を描きながら飛ぶ龍はフィル。レティシアの相棒だ。 レティシアはフィルの背で、伸びやかに歌を歌っていた。響くのは騎士の魂、仲間を鼓舞する勇壮な歌だ。 そんな歌声を聞きながら、急いで砦を飛び出す二つの集団。 片方は、大毒蛾と骨鎧たちによる陸空混成のアヤカシ集団を撃破するために。 そしてもう一方は豚鬼と怪狼の集団を迎え撃つために出立する開拓者達であった。 「絵梨乃姉様、ご武運を」 「うん、灰音も気をつけて。そっちの集団は任せたからね」 浅井 灰音(ia7439)が姉と慕う水鏡 絵梨乃(ia0191)に声をかければ、水鏡も応えて。 浅井は陸海混成集団に立ち向かうために、そして水鏡は陸上部隊を迎え撃つために。 知った仲だからこそ長々とした挨拶は不要。一言言葉を交わしただけでそれぞれ出発するのだった。 まず先行するのは霊騎の日高を駆る鬼島らの集団だ。 彼と同行するのは人妖の瑠璃を連れた谷と、迅鷹の花月を連れた水鏡。2人は徒歩だがその歩みは早い。 彼らが相手をする集団は、最も砦から離れているようで、それを迎え撃つために自ずと急ぎ足になるのだ。 「‥‥なにより避けねばならないのは、我等の目標集団とすれ違うことだ」 霊騎の日高を駆り、先行し偵察をする鬼島はそう言って。 だが、すでに目星は付いている上に、 「狼だけならともかく、豚鬼どもがいるならば、余り険しい道は選ばぬだろう」 「ふむ、確かにその可能性は高い。となれば、川沿いの道を重点的に‥‥」 と、谷が改めて道を確認していたその時、彼の相棒である人妖の瑠璃がはっと声を上げた。 『あ、あれを見て下さい主様!』 「む。あれは飛行アヤカシの群‥‥」 瑠璃の言葉に思わず彼方の空を見上げる三名の開拓者。 「‥‥どうやら報告より数が増えてるみたいだね。これは急いで戻らないと」 水鏡が言うとおり、飛行アヤカシはかなりの数がいるようで。 『主様、私、頑張ります‥‥』 「瑠璃。ありがたいが、余り無理するなよ」 谷はそういって瑠璃を宥めながら、改めて3人は目標地点に急ぐのだった。 そして同じ頃、陸空混成集団に向かう三名はすでに敵アヤカシを遠方から捕捉していた。 今回は奇しくも三名の開拓者が同種の相棒を連れているこちらの集団、彼らの利はその速度であった。 迅鷹を活用しての索敵で早々と確認した敵の姿、みればこちらも結構な数のようで。 「大毒蛾の数は増加していないようだが‥‥骨の数が多いな。油断は禁物か」 相棒の迅鷹、飄霖は水色の翼を静かに閉じて琥龍 蒼羅(ib0214)の肩にあって。 「さあ、レギンレイヴ。初めての実戦だけどやれるよね?」 浅井がそう相棒に語りかければ、もちろんとばかりに蒼い迅鷹は小さく喉を鳴らして。 そして、最後は忍鳥『蓬莱鷹』という名の相棒を連れたルンルン。 「行こう蓬莱鷹ちゃん、小指の骨一本近づけないよう、やっつけちゃうんだからっ!」 彼女の鬨の声と共に、3人は迅鷹と連携しながら一気に集団に襲いかかるのだった。 「蓬莱鷹ちゃん、アグレッシブモードです!」 ルンルンの声で、風斬波を放つ忍鳥『蓬莱鷹』。迅鷹たちの武器はその速度だ。 高速度で空を舞い、それぞれの主を援護して羽を振るう迅鷹たち。 まず3人の狙いは空を飛ぶ邪魔な大毒蛾、迅鷹たちは主の意志をしっかりと理解しそれを援護していた。 「届かない、か。レギンレイヴ、任せるよ!」 接近しようとした灰音。狂骨や骨鎧に阻まれて、そのまま短銃で牽制しながら骨に向かって武器攻撃。 そして同じく斬竜刀を抜き放った琥龍も骨の数に阻まれて接近できないのだが、 「‥‥毒は厄介だからな。まずは大毒蛾から片付けねば。力を借りるぞ‥‥、氷輪」 静かに構えた琥龍の斬竜刀にきらめく光となって、なんと飄霖が吸い込まれていくのだった。 飄霖がどうかした刃は、まるで氷で出来ているかのように青白く輝いて。 そして抜き放った刃は眼前の骨の群をなぎ払い、返す一刀は見事大毒蛾の羽を断ち切るのだった。 羽を失い、地上に落ちかかる大毒蛾の一匹、それを逃す灰音ではない。 武器で骨の群を蹴散らしながら、接近しレギンレイヴとの連携から短銃の一撃。 見事その一撃は大毒蛾の胴を貫いて、大毒蛾を瘴気へと返すのだった。 「む、私たちも負けてられませんね! マスター時代の名の下に、ニンジャ合身です、蓬莱鷹‥‥」 その様子を見ていたルンルン。何発か灰音の短銃を喰らって弱ったもう一匹の大毒蛾に狙いを定めて。 「‥‥ルンルン忍法ニンジャセイバー、光りの刃が悪を討つんだからっ!」 そんな妙なかけ声と共に、枝を足場に三角跳。そのまま影で大毒蛾を上から一撃して撃破。 残るは、格下の骨アヤカシばかり。彼らは一気にアヤカシを片付けるために攻勢に移るのであった。 「クハハ、狼と豚が仲良く連れ添って何処へ行くつもりだ」 霊騎を駆り、ついにアヤカシの集団を見つけた鬼島たち。 鬼島は、眼前のアヤカシ達を相手にそう挑発すると、じろりと睨め付けるのだった。 「さぁ、遠慮はいらんぞ、掛かってくるが良い、大たわけ共が!!」 咆哮のような大喝一つ。主に鬼島に向かってアヤカシ達の群は殺到するのだが。 「‥‥終わったら芋羊羹食べさせてやるから。行くよ、花月」 その集団に飛び込んだのは水鏡だ。 ふわりと酒の香りをさせながら、豚鬼の前に飛び出した水鏡。 もちろん、豚鬼はそんな彼女に武器を振り下ろすのだが、それをくらりとよろけて回避して。 水鏡は酔拳の使い手、変幻自在の動きで敵を幻惑しつつ、見事に武器を避け続け。 そして、その反撃は花月と同化し威力を増した蹴りの一撃だ。 豚鬼はその鼻っ柱に見事な一撃を入れられてぶっ飛んで。 あっというまにこの集団は大混戦となるのだった。 「一度崩れてしまえば脆いものだな。‥‥瑠璃、前には出ないようにな」 狼の一撃を受け流すのは谷。背後に従う人妖の瑠璃を気遣いながらの戦闘だが、そこには余裕が。 敵陣に躍り込んだ酔拳使いの水鏡の攪乱と、鬼島の咆哮。 そのまま鬼島が霊騎の背にあって、大斧を振りかざして敵を撃破していて敵は散り散りであった。 そして谷の仕事は敵の後ろを突くこと。この策は見事に成功したようだ。 たった三名といえど、攻守両方に優れた三名の連携であっという間にアヤカシは撃破されていくのだった。 そして逃げ出した豚鬼を霊騎の高速走行で追った鬼島が倒せば、あっという間にアヤカシは全滅して。 「‥‥とりあえず、仲間も汝も無事でよかった」 『主様こそ、ご無事で‥‥お怪我はありませんか?』 ぱちりと谷が刀を納めて、瑠璃の笑顔に目を向けて。 この調子ならば、何とか他の所も上手く行っているだろうと思った次の瞬間、高らかに呼子笛が響いた。 まず二回。これはおそらく灰音の部隊から、敵別集団の発見の報。 そして、続いて長く一回。こちらは戦況が不利という報。 顔を見合わせた鬼島と谷、そして水鏡は急ぎ仲間の援護に向かうのだった。 灰音は呼子笛をもう一度繰り返して吹くと、静かに手を掲げた。 その手首に静かに留まる相棒。 「‥‥我が剣に宿れ‥‥汝の名はレギンレイヴ!」 煌めきの刃を使用して武器に相棒を宿す灰音。 「ジュゲームジュゲームパムポップン‥‥ニンジャの光りで今、忍者戦士ルンルン、メイクアップです」 珍奇な呪文と共に金剛の鎧として相棒を防具に宿すルンルン。 彼らの眼前には、倒した骨アヤカシを飲み込んだ骨巨人が立ちはだかっていた。 思わぬ強敵の出現、しかし仲間が駆け付けてくれることを信じて彼らは立ち向かうのだった。 「‥‥飄霖、もうしばらく援護を頼むぞ‥‥みんな、散れ!!」 轟と振り下ろされた骨巨人の豪腕の一撃を、琥龍の声に従って散った開拓者達は回避して。 新しい戦いが始まるのだった。 ●守護 「皆さん! もうすぐ敵集団は到着するみたいです!!」 柊沢 霞澄(ia0067)は櫓の上に構えてそう声を上げて。 彼女の相棒である炎龍の紅焔は悠々と彼女の頭上を舞っていた。 彼女は今回相棒に騎乗せずに指示を飛ばすよう。 そんな彼女の周りには、不安げな砦の弓術士たちが居た。 「‥‥大丈夫ですよ。紅焔は少し気性が荒いけど頼りになる私の友達‥‥」 そういえば、紅焔はばさりと見張り台の側に降りてきて首を伸ばして。 その紅焔にほほえみかける柊沢、 「紅焔、一緒に頑張ろうね‥‥」 その言葉に応えるように、轟と紅焔は雄々しい雄叫びを上げるのだった。 現在、狭い砦の中庭には3種類の龍が降り立っていた。 柊沢の指示を待つ炎龍の紅焔に、羅喉丸(ia0347)の相棒、甲龍の頑鉄。 そしてシュヴァリエ(ia9958)の相棒、駿龍のドミニオンだ。 最後の一頭、レティシアの相棒のフィンブルヴェルトはすでに空中で。 彼らは作戦のために静かに機会をうかがっていた。 遠くに見えていたアヤカシ達の姿もいつの間にかすぐ近くまで飛来して来て。 大怪鳥が二羽いるのは変わらないが、雑魚飛行アヤカシの数は大分増えているようであった。 だが、それを前にしても開拓者達は揺るぎなかった。 「‥‥焦るな。大丈夫だ、お前には俺が付いている。そして俺にはお前が付いている。今日も頼むぜ、相棒」 相棒のドミニオンに向かって愛称のドミノと呼びかけ、その首筋を撫でるシュヴァリエ。 今回、彼らはそれぞれの命を預ける事の出来る信頼すべき相棒と一緒なのだ。 刻一刻と迫るアヤカシ達の群を前に、龍たちと共に開拓者は攻勢に移る機をうかがっているのだった。 「皆さん、来ましたよ!!」 透明な歌声を高らかに響かせていたレティシア。彼女は敵の接近を見て、ついに声を上げた。 その声に従って、地上にあった三頭の龍は一斉に飛び上がって。 そして、唯一地上に残された開拓者の柊沢は、砦の弓術士らと共に身構えて。 「‥‥良し、野郎共! 開拓者さんたちに良いところ見せてやるぜ!! 弓、構えっ!!」 砦の長の号令で弓術師たちはきりと弓を構えて。 そして、ギリギリまでアヤカシ達を引きつけてから、 「‥‥っってぇ!!!」 一気に敵の群めがけて弓を放ったのだった。 敵陣の先頭に次々命中する矢、だが如何せん数が多い。 そのまままっすぐ砦に高速接近するアヤカシたち、だがそれを迎え撃つのは四頭の龍だ。 レティシアとその龍、フィルを先頭に一度高く舞い上がっていた4頭の龍は、急降下を開始。 そのまま、敵陣に真っ向からぶつかるようにして突貫したのである。 先頭を進むのはレティシアとフィル。レティシアは高らかに歌声を響かせながら風を切って。 彼ら開拓者達は、経験的に連なって飛べば体力や速度の消耗を抑えられることを知っていた。 その技を使い、速度に優れるフィルが先頭。白銀の鱗をきらめかせて一気に群を突っ切った。 といっても攻撃力がそれほど高くない駿龍のフィルとレティシア。 2人は、すいすいと群を突っ切り仲間たちの道を作る役割を果たしたのである。 続いて飛ぶのは地上の柊沢の指示通りに飛ぶ炎龍の紅焔だ。 フィルが突っ切って出来た道を進みつつ、紅焔が放ったのは龍の火炎。 雑魚のアヤカシはその炎だけで次々に墜ちて。あっという間に敵の群を切り開く。 そして、炎龍だからこその攻撃力でアヤカシ達を蹴散らせば、続くのは本命の2人。 「頼むぞ相棒」 静かに相棒に語りかける羅喉丸。彼は最後尾で静かに力を貯めて。 そして、頑鉄の前を行き、紅焔に続いて火炎を放って道を造るのはシュヴァリエとドミニオンだ。 フェイスガードを下ろし構えるシュヴァリエ。それに応えてドミニオンはさらに力強く翼を羽ばたかせて。 シュヴァリエの手には斧槍「ヴィルヘルム」。長柄の武器を手に、シュヴァリエが狙うのは大怪鳥である。 炎の幕を突き破り迎え撃つ大怪鳥に向かって武器を振るうシュヴァリエ。 そのまま、何度も行きすぎて大怪鳥と交差して、そのたびにシュヴァリエは大怪鳥を攻撃して。 「‥‥いい加減に、墜ちろ!!」 そして、ついにはオーラショットと斧槍の一撃が大怪鳥の翼を落とすのだった。 愛龍のドミニオンは、高らかに雄叫びを上げて急上昇。 そのまま、2人は次なる獲物を狙って空を駆るのだった。 もう一匹の大怪鳥は一気に砦の近くまで近づいて。 懸命に矢を放ち応戦する砦の兵達。だが矢はその羽風にはばまれて仕舞うのだった。 だが、そんな大怪鳥を次の瞬間一気に襲いかかる影が。 それは、頑鉄と羅喉丸。彼らは一度急上昇し、捉えにくい太陽を背にした位置から急降下したのだ。 翼を畳み速度を上げる頑鉄はまるで巨大な岩の塊で、さらにその背には力を貯める羅喉丸。 彼は気力を殆どつぎ込んで破軍発動。ただ攻撃の一瞬を見据えて龍の背で構えて。 そして、交錯の一瞬、 「‥‥我等が一撃に砕けぬものなし」 頑鉄のスカルクラッシュと同時に羅喉丸が放ったのは渾身の玄亀鉄山靠だ。 爆発的な気を帯びた強烈な一撃の、それが頑鉄の渾身の一撃を同時に叩き込まれたのだ。 なんと巨大な大怪鳥は、その攻撃ただ一発だけで粉々に砕け、瘴気とかしてしまうのだった。 残るは小物の飛行アヤカシばかり。 「‥‥精霊さん‥‥皆さんの怪我を癒して‥‥皆さん、あと少しですから」 地上で援護する柊沢の癒しも受け、一同は追撃戦へと移るのだった。 ●撃破 苦戦を強いられている骨巨人戦。 だが、対する琥龍、ルンルンに灰音の3人は奇しくも迅鷹を連れた三名だ。 機動力とその速度において優れる三名を、骨巨人は捉えることが出来なかった。 そうなれば、あとは時間の問題。 「いまだ、飄霖!」「行くぞ、レギンレイヴ!」 琥龍と灰音が同時に放った迅鷹の牽制、それは仲間の攻撃の援護のためであった。 ルンルンが骨巨人の注意を引いた瞬間、その後ろから足を抉る強力な一撃。 「皆! 間に合ったようだな!!」 巨大な斧を振るって足を一撃したのは鬼島だ。 そしてその後ろから瞬脚で飛び込んだ水鏡は、酔拳をつかってさらに骨巨人の注意を引いて。 その隙に、人妖の瑠璃が谷と共に、琥龍ら3人の怪我と毒を癒すのであった。 あっという間に戦線を立て直した一向。こうなってしまえば、たった一匹の骨巨人は話しにならず。 「さて、今度はこっちが攻める番だね。花月、あと一回お願い、あとで芋羊羹上げるから」 反撃に転じた水鏡ら開拓者達に一気に倒されるのだった。 「‥‥皆さん大丈夫でしょうか? 先ほど、危機を知らせる笛があったように思いますが‥‥」 砦にて、心配そうに首をかしげる柊沢。 砦の開拓者達は、何とかアヤカシを全滅させ、救援に向かうべきか協議中で。 だが、そんな時に響く呼子笛の音。今度は素早く三回、笛が響いて。 「ふむ、どうやら向こうも首尾良く片付けたようだな‥‥」 灰音が吹いた笛の合図を聞いたシュヴァリエは、そういってやっと一息とばかりに龍に声をかけるのだった。 「‥‥よく頑張ったな、ドミノ。お前は俺の誇りだ」 戻ってくる仲間たちを迎えるように飛んでいったのはレティシアとフィルだ。 彼女とその龍は、歌声を上げて無事任務を果たした仲間たちをねぎらって。 そして、砦では無事任務の成功を祝って小さな宴会が開かれるんだった。 種々様々な相棒ともに戦う開拓者達。その姿はますます砦の兵達の心を引きつけたようで。 レティシアがフィルをいいこいいこと撫でてやれば、嬉しそうにフィルは眼を細め。 「うむ、万事上手く行ったようだな」 どっかりと腰を下ろしてくつろぐ鬼島、その相棒霊騎は静かにその側に付き従っていた。 霊騎の姿は年かさの兵達の人気のようで。 その一方、年少の兵達に人気なのは大人しい龍だ。 頑鉄にゆっくりと話しかけながらその労をねぎらう羅喉丸。 そんな羅喉丸に、年少の兵達は頼み込んで、龍の背にまたがらせて貰うのだった。 「‥‥お疲れさまって、痛っ! まったく、折角珍しく褒めてあげたのに!」 そして花月に芋羊羹を上げつつ、同じようにねぎらっていた水鏡は、何故か花月に頭を突かれて。 いろいろな形で開拓者と相棒たちは絆を深めているようで。 ゆっくりと慌ただしい一日は過ぎていくのだった。 |