危険な登山依頼
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/12/20 21:50



■オープニング本文

 大規模作戦の成功により魔の森縮小以後、再開発の進む理穴。
 そうした再開発で重要となるのは、地理情報である。
 以前は人の住まう土地で会った場所でも、魔の森に被われればそこは人の住まわぬ土地となる。
 故に、すでに数年、数十年誰もその場所のことを知らない場所が多いのである。
 そんな場所のアヤカシを退治し、再び開拓する最中で、開拓者向けの依頼が一つ。
 それは、周辺の地理情報を一気に得るために、高い山に登って地図を作ってくれという話だった。

 理穴にて。かつて魔の森であったとある地方にそびえる峻険な高山があった。
 緑のしげる森の中に、姿を見せるのは白い峰だ。
 その地の古老が言うには、その山は古くから白剣山と呼ばれていたとか。
 まるで剣のように伸びる鋭い白い峰からそう呼ばれているとのことで。
 森の広がる森林地帯にあるその山の山頂に登ることが出来ればさぞかし遠くまで見えることだろう。
 まだ魔の森の影響力の残る地である。
 危険なアヤカシが居るかもしれず、そうでなくても山は峻険だ。
 相応の準備をして昇る必要があるだろう。

 さて、どうする?
 


■参加者一覧
天津疾也(ia0019
20歳・男・志
万木・朱璃(ia0029
23歳・女・巫
ブラッディ・D(ia6200
20歳・女・泰
オドゥノール(ib0479
15歳・女・騎
モハメド・アルハムディ(ib1210
18歳・男・吟
黒翼竜哉(ib5350
27歳・男・巫
剣影弥(ib5352
25歳・女・騎
リーリン・リーシュ(ib5353
14歳・女・魔


■リプレイ本文

●備えあれば憂いなし
「いやいや、助かったわ。地図だけやなく、食材まで融通して貰えるとはな〜」
「ギルドさんからは、その分も含めて頂いていますから」
 天津疾也(ia0019)は、依頼出発地の村にて、小さな店で買い物をしているようであった。
 これから登るのは、肌寒くなってきた季節の峻険な山だ。備えは十分にしなければならない。
 そう思って、彼はいろいろと手に入らないか交渉したのだが、
「なにせ、開拓者の皆さんにはお世話になっていますからね。折角ですしもう少し干し肉なんかを」
 どうやら、理穴のこの地方では開拓者に対して非常に好意的なようで。
「お、そんなら頂いとこか。おおきに」
 にっと笑って、干し肉や食料を山盛り受けとる天津であった。

「いろいろと役に立つお話、ショクラン、ありがとうございました」
 異国の言葉を交えつつ、村の古老に頭を下げているのはモハメド・アルハムディ(ib1210)。
 開拓者達は手分けしていろいろと準備を進めているらしく、彼は山についての情報を集めたよう。
 そして、ついでに彼は天津が行っていた店と違う店に足を向けて。
「失礼、ここではいくつか甘味を扱っていると聞いたのですが‥‥」
 彼がやってきたのは、お菓子を作っている小さなお店であった。
 店に入れば、ふわっと香る甘い香り。実は理穴は菓子作りでも有名なのだ。
 そして、数十分後。吟味して彼が買い集めたのは干し柿や季節の果物類に、干菓子の類をいくつか。
 全員分以上にたっぷりと買いこんで、彼は仲間たちのもとに戻るのだった。

「地図作りも、何ごともまずは一歩から、というやつですね」
 のほほんと気楽に万木・朱璃(ia0029)はそういって。
 しかし彼女は山を舐めているわけではない。その証拠に彼女は何かを作っていた。
 村で手に入れた植物の蔓や細い材木や縄を浸かっててきぱき何かを作る彼女。
 そんな万木を不思議そうに見ているのはブラッディ・D(ia6200)だ。
「‥‥冬の山は寒いからあんまり好きじゃないけど、なにかを一から作るのって楽しそうだよな」
 そして、万木の手元に視線を向けて。
「朱璃、何作ってるんだ? 蔓を束ねて丸めて‥‥保存食?」
「食べ物じゃないですね〜。ふふ、何だと思います?」
 万木は村で仕入れた頑丈そうな蔓を組み立てて、まるい輪を作っていた。
 そしてそれを縄で補強し、輪を横切るように縄を渡したり蔓を編み込んだり。
 と、そこに戻ってきたのはオドゥノール(ib0479)、彼女もまた村で情報収集なんかをしていたようで。
「‥‥それは、かんじきですか?」
「おー、なるほどー」
 詳しいね、とブラッディが言えば、たまたまですとオドゥノール。
 彼女もまた冬山への備えとしていろいろなものを買いこんできたようで、その手には珍しい野菜が。
 それはどうやら唐辛子のよう、野菜の豊富な理穴では非常に辛い唐辛子が栽培されているとかで。
「へー、これをつま先に入れてるとつま先の霜焼け防止になるんだ」
 といいつつ、どれくらい辛いんだろうと、ブラッディは唐辛子のさきっぽを囓ってみたり。
「‥‥〜〜〜っ!!」
「おや、これは何の騒ぎや」
 戻ってきた天津が驚くほど、ブラッディはその辛さで悶絶したり。

 ともかく、一行は入念に準備を整えて山に向かうようで。
 村で借りたしょいこには荷物をしっかりと積んで、武装も整え。
 まだ日の高い午前に、かれらは山に踏み込むのであった。

●山を往けば
 いかに身体能力に優れた志体持ちの開拓者達といえども、自然の脅威を軽んじることはない。
 特に、山であれば滑落の危険をはじめ、遭難すれば生きて帰ることは難しいだろう。
 さらにいえば、この周囲は最近まで魔の森の影響下にあったため、アヤカシの類がいるはずである。
 そんな環境を進むに当たって、十分な準備が必要になるのはもちろんで、
「‥‥ヤー、天津さん。飴はいかがです?」
「おお、ありがとさん。やっぱり甘いもんがあると元気が出るもんやな」
 十分すぎる程準備をし、装備を固めた一行に隙はないようで、山登りはとても快適な模様であった。

「冬山はただでさえ危険というし‥‥道を見失わないようにせねば」
 途中の休憩にて、オドゥノールは皆で集めた情報によって作った地図を見つつ、行程の確認をしていた。
 すでに登山のための道は無く、分かるのはあくまで出発した村と目的地の位置関係だけ。
 その道無き道を進むに当たって、周辺環境や遠くの目印を駆使しつつ、行程を定めるのは至難の業だ。
 だが、野外活動に慣れた開拓者達であればお手の物らしく、危なげなく一行は進んでいた。
 そして、余裕が生まれればいろいろと時間的に手も空くもので。
「‥‥天津さん、どこに行ってたので? もうすぐ出発しますが」
「堪忍堪忍、ちょいと晩飯のために野草をさがしとったんや。おかげで仰山見付かったで」
 にっと浮かべて天津が手に入った野草の束を見せれば、
「あら、そんなに沢山あると腕が鳴ります。この季節でも探せばあるものですね」
 嬉しそうに万木が応えるのだった。

「なー朱璃、さっきの野草だとどんな料理が出来るんだ?」
「そうですね〜。あんまり道具も無いので汁物の具にするか…水が豊富に見付かれば、湯がいて和え物に‥‥」
「ふんふん、生で食べるのは駄目なのか?」
「あくが強いものが多いですからね‥‥茸なんかもあると、料理の幅も広がるんですけど」
 そんな風に言われたブラッディ、それならば茸が無いかときょろきょろ周りを見回して。
 すると、少し先の岩陰に茸らしきものが。
「ノール、ちょっと見てくるからちょっと待ってて!」
 そういって、ひょいひょい身軽に岩場を進んでいくブラッディは、少し先の岩場の影に進んで。
 そして、何種類かの茸を抱えて猛ダッシュで戻ってくるのだった。
 彼女を追いかけてくるのは狼のような姿のアヤカシの群。
 どうやら、たまたま鉢合わせてしまったようで、不意の遭遇戦と相成ったわけである。

 だがしかし、ここでもまた開拓者の準備万端っぷりが発揮されたのであった。
「これが普通の獣なら、晩飯の具になるんにな。アヤカシは腹の足しにならんのがいややな」
 レンチボーンを構えた天津が射撃でびしばし遠距離からアヤカシを狙撃して。
「はいこれ茸! じゃ、俺はアヤカシの方に行ってくるな−!」
 持っていた茸をぽいと渡したブラッディは、そのまま方向転換して、身軽に剣を振るって敵をなぎ倒し。
「足場が悪いので気をつけて」
 オドゥノールは、足場の悪さを逆手にとって敵をガードするとそのままはじき飛ばして崖下に落とし。
 あっというまに、はぐれアヤカシの群は撃退されたのだった。
 本来、八名の参加を見越した今回の依頼だったのだが、人数が少なくても彼らにはたいした影響もなく。
 経験を重ねた高レベルの開拓者の貫禄を見せつけるたのだった。

●山頂に向かって
「今日はこの辺で野営ですね。山頂に向かって明日は山頂付近で一泊と‥‥」
 一日目の夜に早めに野営地を求めた一行は、森林限界に近い地区で足を止めて。
 そこで、まず活躍したのはアルハムディだった。
「ほー、こりゃ見事な手際やな。やっぱり、屋根があると無しとじゃ大分違うもんやしな」
「ショクラン、ありがとうございます。これも旅商時代の知恵でしてね」
 彼は手近な木々の枝に縄を結びつけるとそれを引っ張り下げて、そこに布を掛け渡し簡易の天幕を張って。
 本当なら丸太の簡易小屋を作れば良いのですが、と言うアルハムディだが。
「いやいや、これだけしっかりしてれば雨風は凌げそうだし、快適に眠れそうだなー」
 そうブラッディが言うように、布の上には落ちた枝葉を摘んだりと中々立派な天幕が出来たようだ。
 そして、天幕の中にはオドノゥールをはじめ皆で持ち込んだ防寒用の毛皮やらが満載されていて。
 早くもブラッディはその中に埋もれてみたりするのだが。
「晩ご飯、できましたよー」
 万木の言葉に、一同は待ってましたと夕食の席に着くのだった。
 十分すぎる程持ち込んだ材料や途中で見つけた野草に茸のおかげでなかなかに豪華な夕食。
 しっかりと防寒対策のために、持ち込まれた唐辛子も使われた辛めの味付けは身も心も暖めるようで。
 満足した一同は、交代で見張りにつきながらも、しっかりと身体を休めて次の日に備えるのであった。

 次の日、早朝から出発しようと一同はまだ朝早いうちから起き出して。
 朝ご飯も十分に食べて、いよいよ山頂に向けての出発である。
 数刻も山頂に向かって進んでいけば、木々の植生が変わり、高木は灌木に移り変わり。
 そして、徐々に寒さも厳しくなって、岩場が増えてくるのであった。
 ここで活躍したのは万木がつくっておいたかんじきである。
 時に雪が分厚くつもった場所を通ることもあり、そういうとき身体が沈まないようにとかんじきが活躍し。
 助け合いつつ苦労して進んだ一行は、なんとか昼前には山頂が目視できる場所までたどり着いたのだった。

「‥‥地図作りが目的ですが、ここからの景色も絶景ですね。時間を忘れてずっと見ていたくなります」
「うん、確かに凄い景色だけど‥‥やっぱり寒いー」
 山頂に向かうルートに視界を遮るものは何もなく、周囲を眺めれば見事な景色で。
 思わず感嘆の溜息を漏らした万木に、同意しつつもブラッディは寒さに震えてみたり。
 すでに遮るものの無い山頂は吹く風も冷たく、一行はなんとか苦労して山頂にたどり着くのであった。

●地図作り
「おー絶景かな、絶景かな。こういうのを見ると思わず叫びたくなるものやな」
 やっほーと天津が眼下を見下ろし山彦を待ってみれば、
「ヤッラー‥‥確かに叫びたくなるのもわかりますね」
 ちょっと個性的な山彦を聞いているのはアルハムディだ。
 そんな感じで、下界の景色を楽しみつつ、一行は地図作りに取りかかるのであった。
 時刻はまだ昼頃、丁度天気も良いようで眼下の景色は一望できる好機であった。
 今日半日と明日の早朝から昼ごろまでを地図作りの時間として決めた一同は早速作業を開始。
 まずは、大まかに役割分担を決めてそれぞれ眼下の景色のスケッチからである。
 大まかにそれぞれが調べて、さらにみんなで協力しながら細かい注釈を付け加えて精度を上げて。
 重点的に、かつての拠点後や、他の山々との位置関係を記した簡単な地図が続々とできあがるのであった。
 測量を伴ったものではないが、これから先の理穴の再開拓においてこうした地図は役立つことだろう。
 身を切るような寒さながらも、毛皮を羽織ったり火に当たったりしながら一同は任務をこなして。
 夜は近くの岩場で野営して、次の日の昼前にはしっかりと仕事を終わらせたのであった。

 山頂から見下ろした周囲の地形や山河の位置。かつての村や拠点の後、そして遙か遠くの地形まで。
 しっかりとした地図をそろえて、一行は山を下ることにするのだった。
 おそらく途中で日が暮れるだろうが、その時は初日に野営した場所を使えば良いだろう。
 こうして開拓者一行は、非常に効率よく依頼の任務を果たして、村へと帰るめどが立ったのである。
「何時かまた‥‥ここから景色を眺めたいものです」
 万木の言葉に一同は頷きつつ、山頂を後にするのだった。