屍を越えて
マスター名：雪端為成
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| ■オープニング本文 開拓者には多くの仕事がある。 舞い込む様々な依頼の解決はもちろん重要な仕事だ。 さらに、遺跡の探索なども開拓者の仕事なのだが、今回は違う。 アヤカシの害に対する対策が任務なのだ。 昔、林の中に小さな村があった。 だが、ある時無情にもその村を疫病が襲ったのだ。 村人の多くは死に、その村は結果として放棄されたのだった。 だが少し前、開拓者ギルドに嫌な報告がもたらされた。 聞けば、その村は放棄されたあと、食い詰めものや罪を犯して故郷を追われた者たちの隠れ場所になっていたのだという。 だが、そうした山賊たちの噂もここしばらくはぱったりと途絶えていた。 それを聞いて、好奇心旺盛な開拓者が１人、旅がてらのぞきに行ったのだが、彼は命からがら逃げ帰ってくることになる。 村に狂骨と呼ばれるアヤカシが大量に彷徨き、襲われたのだという。 放棄された村、だれが依頼したわけでもなければ、迫った被害があるわけでもない。 だが、アヤカシたちは人とは相容れぬ存在。 いつ、そとに狂骨がさまよい出て人々を襲うかもわからない。 こうして、急遽、村にいる狂骨を退治するための依頼がギルドには張り出されたのであった。 さて、どうする？ |
■参加者一覧
水鏡 絵梨乃（ia0191）20歳・女・泰 
守月・柳（ia0223）21歳・男・志 
樹邑 鴻（ia0483）21歳・男・泰 
酒々井 統真（ia0893）19歳・男・泰 
巳斗（ia0966）14歳・男・志 
柊・忍（ia1197）18歳・女・志 
大蔵南洋（ia1246）25歳・男・サ 
喪越（ia1670）33歳・男・陰 |
| ■リプレイ本文 ●骨の群 「全く‥‥きりがないな」 乾ききった骨を叩ききる鈍い音が響き、崩れる骸骨を前にして、大蔵南洋（ia1246）はそういった。 群をなして、ゆっくりと近寄ってくる歩く骨の群。 声を上げず、響くのは奴らの脚骨が地を擦る音とたたき壊された骸骨が、がしゃりと崩れる音だけであった。 死者の骨に瘴気がとりつきアヤカシとして形を成すこの狂骨。 ただただ、生あるものを目指して歩み、うつろな眼窩からは空虚な妄執だけが感じられ。 「ふん、一匹も逃がすななんて、難しい注文かとも思ったが‥‥」 ふるわれる七節棍、鞭のように狂骨の脚をすくい、続いて短く持った棍で狂骨の攻撃を払い、返す右の一撃で粉砕して。 「勝手に集まってくるってことだな。ったく、それはそれで厄介だってのに」 樹邑 鴻（ia0483）は自在に、棍を振るって。脚を絡めて転ばせた狂骨はがしゃりと踏みつけて蹴りを一撃。 「‥‥それでも、こうして減らしていけばきっとそのうち‥‥」 巳斗（ia0966）は小さい体で、荒い息をつきつつも、視線はぴたりとまだまだやってくる狂骨向けて。 「彷徨える魂よ、大地へお還りなさい‥‥！」 祈るように呟き、放った矢は狂骨の頭を穿つと、がしゃりと遠方の狂骨は崩れ、 「うん、全員で力を合わせれば不可能ではない。気を引き締めていこう」 ひらりと水鏡 絵梨乃（ia0191）、弓を構える巳斗を守るために位置を変えながら、近寄る狂骨に鮮烈な蹴りを一撃。 がこんと頭蓋骨を横様に蹴り飛ばせば、蹴り飛ばされた頭は隣の狂骨に直撃して巻き込みながら崩れ。 一対一で退治すれば、さほど難しくない敵である狂骨も、いつ果てるともしれずわき出てくるようで。 退かず、ただ一匹一匹とつぶしていく中で、じりじりとつもっていく疲労だけが感じられる。 だが、それでも彼らは戦いを止めることは出来ず、より優位な場所を選んで動けば、ただ群れてくる狂骨を倒す、その繰り返し。 いつしか日も落ち、周りを照らすのは松明の投げかける朧な灯りだけ。 それでも、音も立てず意志もなく、虚ろな視線だけを投げかけてくる狂骨が群れ集い。 しかし、彼ら開拓者はあきらめもしなければ引きもしない。 彼らには、時と才能が育んだ力があり、その力を駆動するアヤカシに対する強い意志があり。 「‥‥もう少しで、合流だ。そうなれば、すこし休めるかもしれんな」 強く太刀を握りつづけ、感覚も薄れていくような手を一度離して、再び太刀を握り直す大蔵。 まだ夜は明けず、終わりは見えず。 だが、彼らの戦いは続いていた。 ●一歩目 話は少し戻る。 かつん、からころからから。 響く涼やかな音は、古びた茶碗を転がる賽子の音 「‥‥っとピンゾロでアラシ、良い出目だな」 にっと笑みを浮かべるのは赤い髪の女、柊・忍（ia1197）だ。 手に入れた古い地図を見つつ、いよいよこれから村へと向かう途中の小休止の風景である。 開拓者の一行は、村の近くまでやってきて、手に入れた情報からこれからの行動を再度確認していた。 まずは狂骨と呼ばれる、骨に瘴気が宿って生まれるアヤカシの力を試すのだが。 「‥‥倒せた‥‥か？」 守月・柳（ia0223）が長脇差しで狂骨の胴体を一閃すれば、骨を叩き切られた狂骨はがしゃりと崩れ動かなくなり。 どうやら一匹一匹の力はそれほど強くないようだと開拓者は判断した。 その結果、彼らは当初の予定通り、二手に分かれ、村の周囲を一度めぐることにしたのである。 甲班と乙班の二手に分かれ、進む開拓者達。 はじめは順調だったのだが‥‥。 「疫病に侵された大気、大地を捨てる人々、残されし物達‥‥どいつもこいつも、いい気分はしなかったろうな」 村の周囲をめぐる乙班、その中でつぶやくように言うのは喪越（ia1670）だ。 「そんな所に現れるなんて、あのアヤカシ達はまるで、森羅万象の『捻じれ』そのものみてぇじゃねぇか‥‥」 朽ちるままの村、人の骨を依り代するアヤカシ、そうした現実は揺るぎようのないもので。 そして、彼らはその現実に立ち向かう開拓者である。 喪越の言葉が消えると同時に、がさがさと草をかき分けるようにしてゆっくりと現れる狂骨が目に入れば。 喪越はぐっと一口、ひょうたんに詰めた酒を煽ってから 「っしゃ、一丁ヤってやるか！」 その言葉と同時に、彼ら乙班の面々も配置について、群れ集って来た狂骨に視線を向けたのだった。 「おらぁ！！ どーだホネ野郎、膝をたたき割られちゃ動けねぇだろう？ 小魚でも食え！」 はっはっは、あでぃおーす と笑いながら喪越が振るうのは六尺棍で。 近寄ってきた狂骨の膝を叩き折れば、動けなくなった狂骨は他の面々が即座に撃退し。 「おらぁ！ てめぇの骨より俺のげんこつの方が堅いみてぇだな！」 酒々井 統真（ia0893）は速度で戦いの場をかき回して。 狂骨は統制をとって襲い来るようなことは出来ず、ただただまっすぐに開拓者を目指してくるだけだった。 それに対しては、酒々井のように速度で勝る泰拳士は優位を取って戦えているのだ。 跳ねるように駆け抜けると、後ろから腰に蹴りを一撃、腰骨を砕かれてぐしゃりと崩れる狂骨をそのままに。 横合いの一体が手に持った粗末な農具を振るうのを体をひねってかわし、相手の手を掴むと引き寄せながら交差で面に拳を一撃。 一方刀を振るう面々はというと。 立木や、邪魔になるようなものが多い村周辺、柊は刀をしゃらんと抜き放つと、骨の継ぎ目を付くように突きを放ち。 「はん、骨になっても急所はかわらねぇしな‥‥バリバリ全開でやるぜ！」 にやりと笑みを浮かべると、ぞろぞろとやってくる狂骨を、突き、払い、叩き斬り。 「‥‥こうしたアヤカシの巣くう場所は、不穏な空気だな、やはり」 長脇差しで一閃、狂骨の首を切り飛ばした守月、しずかにそうつぶやくと再び両手でしっかと武器を握りしめて次なる相手に目を据えて。 「しかし、絵梨‥‥じゃねぇ、甲班の連中もうまくやってるかねぇ？」 移動しながら、次々に群集まってくる狂骨をただただ殲滅しつつ、酒々井はそうつぶやいて。 両班とも、実際の所、ほとんど被害は受けていなかったのだが、数に押され、移動速度は落ちていた。 その結果、予定よりだいぶ遅れつつ、やっと村の中央で両班は合流を果たすのであった。 ●決戦 やっとのことで両班は村の中央付近で合流を果たした。 時刻はすでに、夜半、月が煌々と照らすなか、いくつも開拓者達が掲げる松明が灯りを投げかけていた。 ぞろぞろといまだに尽きず、集まってくる狂骨たち、しかしやはり最後にものを言うのは知恵の有り無し、頭の使い方であった。 矢を散発的に鋳掛けながら移動する巳斗、それを守るように付き従うのは２人の泰拳士、水鏡と酒々井だ。 速度に優れる泰拳士２人で護衛しつつ、巳斗が矢で牽制、ぞろぞろと群る狂骨は、１カ所に集められるように誘導されていた。 おそらくは過去には村の倉庫としても利用されていた頑丈そうな建物、その周囲にはすでに他の開拓者が配置について。 その倉庫の柱のいくつかには鉞によって切り込みが入れられていて、持ってきた縄が結びつけられていた。 そもそもが倒壊寸前のその倉庫に、巳斗と酒々井、水鏡が飛び込めば招き寄せられるように、ぞろぞろと追いかける狂骨。 そして囮役の三名を迎えたのは、大蔵だ。 壁の一面を指さすと、大蔵は壁に向かって太刀を渾身の力でたたき込み、 「おらぁ！ よし、ここから逃げるぞ！！」 切断されてもろくなった壁の一面を拳の連打で酒々井が破砕、そこから４名は飛び出して。 そうすれば、その倉庫の中にはぞろぞろと招き寄せられた狂骨の群。 「よぅし、アミーゴ！ 今だっ！！」 喪越の号令に従って、柱の内、片面二本だけを引っ張れば、見事柱はへし折れて、そのまま倉庫は梁がばっきりと崩れれば。 「おお、意外とうまくいくもんだ‥‥」 守月がつぶやくように、見事倉庫は倒壊、多数の狂骨はそのままつぶされたのだった。 だが、守月が心眼を使えば、それでもまだまだ残りはいるようで。 「‥‥長い夜になりそうだな」 ばしんと拳を打ち合わせる樹邑、彼はじゃらりと七節棍を手にして、近寄ってくる狂骨に対して振るいつつ。 まだまだ終わりまでは長いようだった。 ●朝が来て 「ふぅ‥‥小腹が減った時はこれに限るな」 荷物から、持ってきた食料をもきもき食べている水鏡、集合した彼ら開拓者はすこし小休止をするだけの余裕があった。 あるものは、短い間だけでも体を休め、睡眠をとり。 食料を他のものに渡したり、喪越が怪我をしたものの手当をしたり、数人交代で集まってくる狂骨をつぶしながら、何とかしのいでいた。。 するといつのまにか、ぼんやりと当たりを照らすのは松明の明かりと、月の明かりではなく稜線を照らす日の光で。 遠い空が薄く紫に染まり、その色は徐々に朝焼けに。そしてゆっくりと日が昇り。 「おぅ、夜番を買って出た甲斐があったってなもんだな‥‥」 その景色を見て、まるで記憶にとどめようとするかのように周囲に視線を向けるのは喪越。 開拓者達は、まる一昼夜にわたるほどの戦いの終わりが近づいてきたことを感じるのだった。 小屋を倒壊させて巻き込んだのを含め、ほとんどの狂骨は撃退が出来たようで、残るのは後始末だけで。 「そういや、こいつら‥‥何故にこの村に留まってたんだろうな？」 首をかしげる樹邑をはじめ、皆その質問に対する答えはわからなかったが、わかるのは放置しておけばいずれ他にさまよい出て被害がでただろうことで。 「もしこのアヤカシが、疫病に掛かった村人達だったらと思うと‥‥心が痛みます」 心眼を使いながら、残る狂骨を倒しつつ、巳斗がそういって。 その後、彼らは狂骨を倒した後の亡骸をなるべく、集めてにどとこうしたことが繰り返されないように荼毘に付し。 「これで終り、だな」 守月が、たなびく煙を見ながらそうつぶやいて。 こうして、無事に彼らは依頼を完遂したのであった。 |
