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■オープニング本文 武天のとある寂れた港町にて、最近奇妙なアヤカシの目撃情報が得られた。 それは、まるで魚のような外見的特徴を持った怪しげなアヤカシで。 幾度かギルドへと討伐依頼が出され、撃退されたのだが目撃証言は減らなかった。 そして、最近ついにその鬼立ちの本拠地が見つかったらしい。 聞けばその港町からすこし離れた海岸線。 そこには波の浸食によって出来た海底の洞窟があるらしい。 どうやらアヤカシ達はこの洞窟を拠点にして活動している模様であった。 その海底洞窟は、干潮になれば入り口は姿を現すようで。 しかし、問題が一つ。 内部は殆どが水上に現れると行っても、途中は数カ所水没しているらしく。 つまり、泳ぎながら奥に進まなければならないというわけだ。 武器ならば、蝋紙や油紙で包んだり、濡れてもあとで手入れすれば大丈夫だろう。 しかし、重い防具や泳ぐのに適していない衣服ならば動きにくくなることは自明の理。 その対策を取らねばならないというわけで。 ギルドは、今回の討伐のために我こそはと思う者を募集中とのことである。 さてどうする? |
■参加者一覧
葛葉・アキラ(ia0255)
18歳・女・陰
葛切 カズラ(ia0725)
26歳・女・陰
斑鳩(ia1002)
19歳・女・巫
摩喉羅伽 将頴(ia5459)
33歳・男・シ
亘 夕凪(ia8154)
28歳・女・シ
シヴ(ib0862)
27歳・女・サ
アリスト・ローディル(ib0918)
24歳・男・魔
牧羊犬(ib3162)
21歳・女・シ
繊月 朔(ib3416)
15歳・女・巫
リリア・ローラント(ib3628)
17歳・女・魔 |
■リプレイ本文 ●海にて 「魚のような奇妙なアヤカシ‥‥先日の廃村での出来事を思い出しますね」 斑鳩(ia1002)はそういって静かに海を眺めた。 彼女は以前、今回目撃情報にあるアヤカシと似たようなものに遭遇したことがあるとか。 「ふむ、たしかにあの奇妙な村の件が思い起こされるな。関連があるのかどうなのか‥‥」 そして斑鳩と同じ依頼で、そのアヤカシたちに遭遇したアリスト・ローディル(ib0918)もそういって。 アヤカシたちは単にその欲求に従い人を襲うだけではなく、いろいろと暗躍することもある。 高位のアヤカシによって統率されて動くこともあり、そうした可能性も考えられるというわけなのだ。 だがしかし、まずは眼前の目的を果たさねばならない。 「でも、まだ村には被害が出ていないみたいで、よかったですね」 そういって微笑むのは繊月 朔(ib3416)だ。 開拓者達一行は、目的地の洞窟に向かう前に、近場の港町を訪ねていた。 そこで、村での被害や詳細な話、そして洞窟の細かい様子を聞き込んできたのである。 斑鳩をはじめ、数名は洞窟内部の地図を探すのだが、あまりひとけの無い場所らしく地図は無く。 ただし、過去にそこを訪れたことのある人々の話では、それほど複雑な行動ではないとのことであった。 地図は手に入らず、結局は現地で直接調べるしかないわけで。 「被害が出る前に、排除しましょう!」 開拓者達は、意気揚々と洞窟へと向かうのであった。 時刻は昼過ぎ、太陽はまぶしいほどに砂浜と照らす。 肌を焼く日差し、砂浜のまぶしい照り返し‥‥とにもかくにも暑い夏の光景であった。 目指す洞窟は、海岸沿いの岩礁地帯の只中で、近くまでは小舟で近づくとのこと。 水上での活動となれば、重い装備をつけての行動は自殺行為。 ということで、開拓者達は思い思いの対処法を取っているようで‥‥。 「魚のアヤカシ‥‥です、か‥‥」 サメとかいたら、と幽かに震えて嫌な想像をかき消そうとしているのはリリア・ローラント(ib3628)だ。 先輩開拓者に混じって、緊張している様子の彼女は、ギルドから借りた水着姿であった。 そんな彼女が緊張しながら視線を向けた先には、 「‥‥って、しぇ、牧羊犬さん‥‥っ?!」 わたわたとリリアがするのも当然であった。 彼女の視線の先の牧羊犬(ib3162)は、水練用の褌姿だったからである。 筋肉質で細身の肢体を晒す牧羊犬は、神威人らしく潮の香りに顔をしかめつつ。 「妙な匂いがするな‥‥あまり好きではないかもしれない。‥‥ん、どうなされた、ローラント様」 きょとんとリリアに応える牧羊犬であったり。 「‥‥水に入らねばならないとは‥‥致し方ない。だが手帳も持ち込めないとは‥‥」 ぶつぶつと文句を言いながらローブを抜いで、服の袖を纏めているのはアリストだ。 普段から肌を晒すのを嫌っているアリストにとっては今回のような依頼は鬼門のようで。 だが、ふと見やった先には知ったる人物の水着姿で。 「‥‥智者たる者、常に冷静でなければならぬ‥‥」 思わず咳払いをするアリストなのであった。 そんな彼の視線の先は、葛葉・アキラ(ia0255)だ。 目をそらして咳払いをしているアリストに気付いて、どうしたのとばかりに首をかしげてみたり。 そんな彼女の横で、えらく大胆な水着姿なのは葛切 カズラ(ia0725)。 アリストと葛葉の様子にくすくすと笑いながらも。 「干潮の時だけに入れる洞窟ね〜‥‥観光で来るなら良い場所になるんじゃない?」 と言っていたり。その言葉に頷くのは繊月だ。 「観光出来るようになると良いですね。‥‥そういえば、水着って初めて着るかもです」 ふと繊月は、自分の姿を見ながらくるくると回ってみて。確かに泰国発祥の水着はまだ珍しいものであった。 「泳ぐのも小さい頃に川遊びした時以来かも‥‥水着、似合ってるかなぁ?」 「あら、なかなか可愛いわよ? もうちょっと大胆でも良いと思うけどね」 「う、さすがに葛切さんみたいなのはちょっと恥ずかしいかも‥‥」 と、繊月は葛切の姿を見て、思わずそう答えたり。 「ミズチの水着なら水中でも快適さね」 水着談義にそう言いながら加わったのはシヴ(ib0862)だ。 「にしても、水着ってのは胸のトコがきついのな」 「確かに、なんだかきついですね‥‥葛切さんみたいなのだったら楽そうですけど」 シヴに同意するのは斑鳩だ。 ふたりして、水着の胸の所がぱつぱつだったりするのは、水着のせいではなく、本人の資質かと思われるが。 そんな様子に思わずはぁと溜息をつきつつ、 「‥‥可愛い娘達の水着姿は、どうせなら遊びの時に眺めたいもんだねえ‥‥」 思わず本音がこぼれたりする亘 夕凪(ia8154)であった。 別段そういった趣味があるわけでは無いが、確かにこの眺めはなかなかに壮観である。 今回の依頼では、何の因果か女性開拓者が多く、見た目にも華やかで。 「‥‥それに比べて、年増の水着姿ってえ破壊力は‥‥この際置いておくか」 そう言ってふっと笑った亘は、得物の戦篭手をぎゅっと握りしめるのだった。 小舟に乗って、干潮で水上に顔を出した洞窟に集結した開拓者達。 今回の依頼では、水に潜ることを見越して全員軽装または水着姿で挑むこととなっていた。 手にしているのは最低限の武器だけ。己の五体と技で乗り切らねばならないのだが‥‥。 「この夏に水辺の依頼とは何とも助かるものでござるな!」 水練用の褌姿は10名の開拓者の最後の1人、摩喉羅伽 将頴(ia5459)だ。 確かにこの厳しい暑さの中、水辺であれば涼しいことは確実である。 そんな風にとらえれば、水着姿で危険なアヤカシ退治も悪いことばかりではないようで。 「では、皆の衆。アヤカシ退治と参ろうか!」 摩喉羅伽の号令と共に、開拓者達はそれぞれ水に飛び込んでいくのだった。 ●水底超えて 一行の先頭を行くのは摩喉羅伽。 シノビのもつ鋭敏な感覚で周囲を警戒しながら洞窟の入り口を目指していた。 それに加えて、斑鳩の瘴索結界が周囲を警戒する。 あらかじめ示し合わせてあった陣形を保ちつつ、水中の洞窟を進む一行は注意深く進んでいた。 入り口をはじめ内部は干潮によって水上に現れているのだが、いまだ一部には水がたまっていて。 そういった場所での立ち回りにこそ、今回開拓者達はもっとも警戒していた。 水中での行動に長けたアヤカシとあえて水中で敵対しないこと、それが今回の作戦の要だ。 シノビの摩喉羅伽や牧羊犬が周囲を監視し、亘は殿で挟撃を警戒。 さらに斑鳩による結界が周囲のアヤカシの動きを監視して、水中での攻撃を未然に防ぐ。 もし、こうした作戦がなければ、彼らは苦戦していただろう。 しかし、たとえ水中の戦闘を避けられたとしても、この洞窟はアヤカシ達の巣である。 なかなか一筋縄ではすまないようであった。 「捌いても食えぬようでは意味がなし! 瘴気に還るがよいでござる!!」 待ち構えていた魚面のアヤカシに刃を振るう摩喉羅伽。 戦闘の彼はまず敵を自由に動かせないようにと機動力を活かして距離を詰めたのだ。 距離をつめながら、飛苦無での牽制。それに続いてナタのように分厚い刃ので一撃でたたみかけて。 摩喉羅伽がそうして足止めをした隙に、次々に水面から這い上がる後続の開拓者達。 「ありゃなんだぁ〜、話にはきいていたが、魚のような蛙のような顔さね〜」 暢気にそんなことを言いつつ、鋭く槍を突き出すのはシヴ。 狭い洞窟内では、槍を振り回すのは至難の業、故に突きの一撃でアヤカシ達を縫い止める。 そして、ようやく全員が水から這い上がり、洞窟中程の空洞に集合したのだが。 「参ったねえ。どうやら後ろからも来たみたいだよ‥‥術師の皆は下がってな!」 殿の亘はそういってがちんと戦篭手を打ち鳴らして臨戦態勢を取るのだった。 広い空洞のそこかしこには闇が満ち、その暗がりからはぞろぞろとアヤカシが沸いて出て。 そんな中、陣形を汲んだ開拓者達は文字通り背水の陣といった様子であった。 しかし、開拓者達はなんら恐怖を感じては居なかった。 連携の作戦はすでにきっちりと決まっている。それに従えば、個々の力で劣るアヤカシは恐るるに足らず。 「‥‥さらに来ます! 警戒して下さい!!」 斑鳩の瘴索結界は更にアヤカシの来襲を捉えたようで、警句を発しさらに戦闘は激しさを増すのだった。 「急ぎて律令の如く成し万物悉くを斬刻め! ‥‥んー、ぬるぬるは嫌いじゃないけど魚はねぇ‥‥」 なにやら不穏なことを言いながら、斬撃符の一撃を放つのは葛切だ。 彼女ら攻撃系の術師は陣形の中央に居た。 「ま、こいつらを退治したら、ここも遊び場として使えるかしらね? 申し分ない場所だしね〜」 前衛が足止めに努めるところを術によって仕留める。それは強力な攻撃系術師が多くいて成り立つ戦術だった。 「雷よ!」 サンダーによってアヤカシを仕留めているのはアリストだ。 こちらも的確に前線が足止めしたアヤカシを仕留めていく攻撃力の高さで。 「確実に、かつ迅速に‥‥我が脳漿をもってすれば当然のこと」 そう言いながら、さらにサンダーで攻撃し、前衛が間に合わないと見ればフローズで足止めをするのだった。 そんなアリストの横で、おっかなびっくり術を放つのはリリアだ。 同じ魔術師であるアリストの作戦行動を参考にしているのだろう。動きを見て取りながら、必死で援護をして。 しかし、やはり予想外の方向から突然現れるアヤカシ達に対して、前衛もなかなかに苦戦中で。 突然横合いの潮だまりから飛び出してきた一匹は、攻撃の要のアリストを狙ったのだが。 「アリストちゃん、危ない!!」 身を挺して飛び込んできたのは、前線を援護していた葛葉だった。 巫女ながら果敢にカッツバルゲルをかざして敵のツメの一撃を受け止めようとする葛葉。 しかし力不足か大きく弾かれて転がる葛葉、それをとっさに受け止めるアリスト。 間近にいたリリアは、とっさのことで動けず、 「あ、あ、ごめんなさいっ」 思わずそういって固まってしまうのだが、次の瞬間、投じられた槍がそのアヤカシを串刺しにしたのだった。 「だいじょうぶさね。さ、ちょっとコレもっといてくれ」 手にした松明をリリアに渡しながら、その横を駆け抜けたのはシヴだった。 愛用の槍を投じて、アヤカシを足止めし、さらに抜き放ったシーマンズナイフで直閃で追い打ち。 不意打ちをかましたアヤカシはその攻撃で瘴気へと還るのだった。 「大丈夫か、アキラ」 「うん、平気だよアリストちゃん」 アリストは葛葉の無事を確認すると、彼女を不意打ちしたアヤカシが出てきた潮だまりに目を向けて。 するとどうやらそこは潮だまりではなく、水中の通路となっていたようでさらに数匹が出てこようとしていた。 「ほう、水面に顔を出したな! 纏めて凍り付かせてやろう」 先頭の一匹がシヴによって倒されたことで、纏めて襲いかかろうとしたアヤカシは、引き返すことも出来ず。 ブリザーストームが生み出した猛吹雪によって纏めて凍りつかされたのだった 狭い洞窟内を吹き荒れる極寒の冷気は、他のアヤカシ達にも影響を与えたようで、一瞬動きが止まる戦場。 その隙を逃す開拓者達ではなかった。 「みんながんばってね! 私の舞でみんなに力を!」 繊月の舞は前衛のサムライやシノビ達を援護して。その援護を受けた亘は 「これ以上は近づかせないよ」 敵の一撃を、戦篭手の十時組受で受け止めると、そのまま反撃の拳の連打で。 強固な鱗で覆われたはずのアヤカシ達も、拳型にその表面を凹まされて吹っ飛ばされて。 そして、同時にシノビの摩喉羅伽は傍らの牧羊犬に向かって、 「忍の骨頂は遁術にあァり!! 合わせるでござるよ、牧羊犬殿!!」 「承知した‥‥で、ござる‥‥摩喉羅伽様!」 同時に2人が放ったのは牽制の火遁であった。猛吹雪の一瞬の冷気に続いて猛火の一撃。 これには、アヤカシ達もひるんだと見えて、火炎が起こした濛々たる湯気の中で右往左往として。 その瞬間に、その湯気を断ち割って突貫していく開拓者達。 摩喉羅伽が刃を振るって敵を蹴散らせば、混乱するアヤカシ達を鉄爪の一撃で屠りさる牧羊犬。 槍を取り戻したシヴが突きの一撃を見舞えば、亘は拳の連打で敵を押し返す。 「癒しの風よ、傷を癒して! 大丈夫、葛葉さん?」 「もう大丈夫、ありがとう!」 繊月が神風恩寵で葛葉を癒せば、 「今度はこっちの番ね」 「ええ、派手にイきましょう。急ぎて律令の如く成し生命精気を奪い吸え!!」 葛葉は斬撃符、葛切は妖艶な笑みと共に吸心符で術攻撃。 そして斑鳩のあと少しとの言葉に励まされながら、 「先頭を狙うぞ!」 「はい、アリストさん!!」 アリストとリリアは連携してサンダーを打ち込んで敵を次々に倒していくのだった。 そして短いながらも激しい戦いは終わりを告げて。 「‥‥どうやら、アヤカシ達は倒したようですね。結界にはもう反応がありません」 斑鳩の言葉に、ふうと皆は疲れたように座り込むのだった。 ●戦い終えて 「何もないところにアヤカシが集うものなのだろうか」 牧羊犬は、ざばりと水から上がりながらそう言えば、応えるのはシヴだ。 「何かあると思ったんだがね。へんなタコの彫像とかあればあれで、たのしそうさね」 彼女らは戦闘のあとも調査を続けたのだが、収穫は無かったようで。 「‥‥以前見た巨大な姿‥‥あれに関連あるような証拠がみつかるかと思ったのですが」 「ふむ、もしかすると我々ではいけない水の底になにかあるのかもな」 いかなる生態だったのか興味があるのだが、とアリストが言えば確かにと斑鳩も頷くのだった。 残念ながら、さらなる関連性をうかがわせる証拠は見つからなかったようだが、ともかく目的は果たした。 「んー、ともかくこれで依頼は解決ね。空の無い海もこういう趣向なら乙なモノじゃない?」 「そうですね。でも、今度はアヤカシ関係なく海で泳ぐのもいいかもですね」 洞窟を名残惜しげに見ながらいう葛切に思わず繊月はそう答えるのだった。 「なら、拙者は新鮮な海産物でも探してこようかのう」 笑いながらそういう摩喉羅伽に一同はそれもいいかもと顔を見合わせるのであった。 一行は再度慎重に潜って小舟に戻り、無事アヤカシ達は退治されたことを伝えて。 これにて依頼は解決したのだった。 もちろん、まだ分からぬ事は多いが、それはまた違う依頼にて解き明かされるのかもしれない。 |