這い寄る大群
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや難
参加人数: 10人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/07/13 22:28



■オープニング本文

 その日、開拓者ギルドの依頼調役である庄堂巌は恐ろしい物を見た。
 それは山肌を埋め尽くさんと、現れる巨大なアリ型のアヤカシ。
 場所は街道から外れた武天の山の中だが、まだ被害がないと言っても放置することは出来ない。
 一刻も早く、奴らを倒してしまわねば、被害が出ることは自明の理であるからだ。
 そういうわけで、すぐさまギルドからアヤカシの群れの討伐依頼が出されることとなった。
 朋友を使っての大規模な殲滅作戦となるこの度の依頼。
 なかなか厳しい戦いが待っていることだろう。

 だが案内役として開拓者達を誘導する庄堂巌は、心配なことが一つあった。
 現地に確認に向かった折、周囲では土砂崩れが頻繁に起きていたようなのだ。
 おそらく、季節柄の雨と蟻たちが地中に穿った穴のせいで、地盤がゆるんでいるのだろう。
 開拓者の敵はアヤカシだけではなく、今回はそうした自然災害にも気をつけなければならないのだ。
 だが、逆にそうした環境を逆手に取ることは出来ないだろうか?
 そう庄堂巌は考えながら、討伐依頼に参加する開拓者達を待つのだった。

 さて、どうする?


■参加者一覧
崔(ia0015
24歳・男・泰
神町・桜(ia0020
10歳・女・巫
羅喉丸(ia0347
22歳・男・泰
八重・桜(ia0656
21歳・女・巫
葛切 カズラ(ia0725
26歳・女・陰
大蔵南洋(ia1246
25歳・男・サ
鈴木 透子(ia5664
13歳・女・陰
雲母(ia6295
20歳・女・陰
風和 律(ib0749
21歳・女・騎
ヤマメ(ib2340
22歳・女・弓


■リプレイ本文

●偵察と作戦
 さあさあと振る小雨を切り裂いて、空を行くふたつの影。
 それは、開拓者たちを背に乗せた機龍たちの姿であった。
「‥‥そろそろ雨が上がりそうだな」
 外套の表面をはねる雨粒を鬱陶しそうに払いながら、そう呟いたのは崔(ia0015)だ。
 彼は駿龍の夜行の背に乗って、先行偵察をしていた。
 同行しているのは陰陽師の鈴木 透子(ia5664)。
 両者は、あまり山肌に近づかないようにしながら周囲の様子をうかがって。
「山の上の方は岩肌が出ていますね。そこならば地滑りを心配しなくても大丈夫そうです」
 二人が調べていたのは、彼らが取る作戦に最適な場所であった。
「やっぱり、崩落も一緒に起きそうか?」
 そう、崔が問えば鈴木は、
「ええ、見たところ巣穴があるとおぼしき場所では木が結構倒れているようですし‥‥」
 そう言いながら、もう一度鈴木は眼窩を見渡し耳を澄ませて、
「それに、鳥の声がしません。アヤカシを怖れているのもあると思いますが‥‥」
「山肌が崩れるのも近いってことだな」
 そう崔は、鈴木の言葉に頷くのだった。
 そして、二人はそれぞれの駆る龍を翻すと、一度彼らの仲間たちが待つ場所へと戻るのであった。

「では、やはり当初の予定通り、地滑りさせるのは巣穴とおぼしき穴が点在している場所で決まりか」
 現場からすこし離れた山中の空き地にて、羅喉丸(ia0347)はそう言って地図を指さしていた。
 小さな天幕を張って、簡易の前線基地を作った開拓者達は最後の調整中。
 偵察をした崔と鈴木の情報から、地滑りや山肌の崩落が近いことは濃厚だった。
 その上で、開拓者達は地上と空中に別れて作戦行動を取ることとしたようで。
 地上部隊が陣取るのは、土砂崩れの危険の少ない山の上方、岩場部分。
 そこに地上部隊が陣取りつつ、まずは土砂崩れを人為的に起こしてから蟻たちの殲滅を行うというのである。
 ようやく雨は上がりつつあった。
 開拓者達は、外套や雨よけの笠を脱いで放り出すと、それぞれ装備の最終確認をして。
 そんな中で、とくに今回の作戦の要となる焙烙玉の準備には一同気をつけているようであった。
「庄堂さん、まだ蝋紙はあるかい? 雨は上がりそうだが、少しでも湿気は避けたいからな」
「ああ、大目に予備は持ってきているから使ってくれ。役に立つと良いんだがな」
 今回の先導役でもあるギルドの係員、庄堂巌はそういって羅喉丸に蝋で防水性を高めた紙束を渡して。
 開拓者達は、焙烙玉が不発にならないよう蝋紙で被ったり油を導火線に湿らせているようで。
 ちゃくちゃくと開拓者達は、それぞれの準備を進めていくのであった。
 もちろん、準備をするのは開拓者達だけではない。
 今回、その戦力と移動手段のためにと、開拓者達は朋友と連れだってこの依頼に参加しているのである。

「今度は蟻退治かぁ、煙で燻すってわけには‥‥行かないよねぇ。アヤカシだから」
 相棒である駿龍のわさびにそう話しかけているのはヤマメ(ib2340)だ。
 背中に沢山の矢筒を背負いつつ、
「数が多いみたいだから矢筒は沢山持って行こう。ねぇわさび? 鞍に矢筒沢山つけてもいい?」
 と、そんなことを話しかけながら準備中のようである。
 開拓者とその朋友の関係は一様ではない。
 奇縁で結ばれた仲間であったり、兄弟のように育った同胞であったりと様々な関係があるようで。
 荒縄も持って行こう、それに焙烙玉も、とどんどん荷物を載せるヤマメに対してわさびはちょっと不服顔。
「はいはい、私も沢山持ってるんだからわさびも文句言わないの」
 しかし、そうヤマメがいえば、わさびはしかたないといわんばかりに、くるると喉を鳴らすのだった。

「お主にも話しておくべきであろうな」
 甲龍の八ツ目に話しかけているのは大蔵南洋(ia1246)だ。
 龍たちは人の言葉をしゃべることは出来ないが、愚かなわけではない。
 人の言葉の意味が全て分かるとは言えないのかもしれないが、しっかりと自分の主の言葉は分かるわけで。
「此度でたアヤカシは巨大な蟻と言って良い姿をもっておるそうだ」
 そう大蔵は良いながら、改めて自身の装備を調えて準備を済ませ。
「‥‥蟻さながらに一つの獲物に群がってくる性質まで持ち合わせていたなら‥‥」
 そして決意を込めるように八ツ目を見上げ、
「相当に厄介な戦いになるかもしれぬ」
 といえば、八ツ目は頼もしげにうなり声を上げて応えるのだった。

 そしていよいよ準備と作戦が整い、決行の時。
 開拓者達は自身の龍に乗り、あるいは仲間の龍に同乗し、一気呵成に戦いの舞台を目指すのであった。

●爆撃と災害
「とっても面倒そうな依頼にゃー‥‥」
「そんなこと言ってはならんのじゃ」
 神町・桜(ia0020)は、朋友の猫又、桜花の不満の声に応えながら山の頂上付近に降り立って。
 開拓者達は二手に分かれていた。
 先行したのは、身軽な飛行部隊。彼らは、蟻たちを誘導しおびき寄せるために、巣穴付近を旋回中だ。
 そして同時に、もう一方が一気に山の頂上付近にて、龍たちと共に地上戦の準備である。
「なんというか、大量のデカイ蟻がアレだけいると流石に気持ち悪いのぉ」
 地上部隊が降り立った頂上付近の岩場には蟻たちの姿はない。
 だが、眼下を見下ろして、遠くでうぞうぞとうごめく黒いアリの姿を見て、神町はそう言って。
「‥‥そんな気持ち悪いところに我を連れてくるんじゃないにゃ」
 神町の言葉に思わず猫又の桜花は抗議するのであった。
 そんな開拓者の元に崔が龍にのって飛び込んできた。
 駿龍の夜行に騎乗したままで崔は、
「とりあえず、誘導は上手くいった! こちらの合図に合わせて投下してくれ」
 そして、再び空に舞い上がりながら、
「とはいえ、崩しすぎると万が一ってこともある。効果を見ながら調整するから、1発目は適量でな!」
 そう告げて、崔と夜行は再び一気に山肌を下っていくのだった。

 崔と夜行が合流したのは、誘導を続けている空中班の面々だ。
「後々アリだーーーってパニックにならない様に、田舎で決着つけときましょ」
 そういうのは甲龍の鉄葎に乗った葛切 カズラ(ia0725)。
「さあ、今日も元気に頑張ろうです、染井吉野」
 こちらは駿龍の染井吉野に乗った八重・桜(ia0656)。
 そして、彼女たちを援護しながら、弓で散発的に地上のアヤカシを牽制しているヤマメと駿龍のわさびだ。
 ぐるぐると輪を描くようにして、空中を千回しつつ、十分にアヤカシを引き寄せた一同。
 地滑りを起こすため、まず放たれたのは龍たちの一撃であった。
「では、いきましょう。蝉丸、ソニックブームを」
 鈴木の龍、蝉丸は大きく翼を羽ばたかせると、山肌の巣穴周辺に向かって翼から衝撃波を放った。
 それに合わせるのは葛切の鉄葎と八重の染井吉野だ。
「ほら、カナちゃん、いくわよ」
「やるです! ソニックブームです!」
 連続して放たれた突風と衝撃波は、周囲の木々をなぎ倒し、雨でゆるんだ地面を抉る。
 そして、さらに底に投げ込まれたのは葛切や崔、そしてヤマメらによる第一陣の焙烙玉。
 それが投げ込まれると同時に、地上部隊の開拓者達も、次々にその爆弾を投下したのだった。
 ドドンと連続して響く爆音、雨で湿気た山肌だが上手いこと焙烙玉は爆裂したよう。
 だが、すぐには何の変化も見られなかった。
「‥‥上手く行かないものですね」
 そう鈴木が呟き、第二陣の攻撃を山肌に叩き込もうとしたときだった。
 ずるりとまさに山肌が滑るようにして、崩れ始めたのである。
 地表を山につなぎ止めているのは、強固な根を張る木々の力だ。
 その根の繋がりはアヤカシ達が掘り進めた穴によって断ち切られ、さらに雨は地表の土を緩めて。
 そこに、龍たちの放った衝撃波と焙烙玉の爆裂が加わったのである。
 焙烙玉それぞれの効果は弱い、だがそれでも数が集まれば、地表の要であった木や岩を動かすには十分で。
「上空へ退避!」
 ヤマメの一言とともに、龍たちは一斉に山肌から距離を取って舞い上がり。
 同時に、轟と響きを盾ながら一気に山肌が崩れ落ちていくのだった。

 それを眼下に見下ろす地上部隊の面々は、足下から伝わる振動を感じつつ、静かに時を待っていた。
 まるで地震のように地面が揺れるのが伝わってくるが、取り合えず頂上付近の岩場は安全なようで。
 平坦な場所が少なく、足場は悪いが危険は無いようだ。
 そして、地滑りと土砂崩れはすぐに収まって。
 蟻アヤカシの穴は見事につぶれ、なぎ倒された木々はアヤカシごと山の麓まで流れたようで。
 しかし、頑丈なアヤカシ達は、次々に土を跳ね上げ、地上に姿を現していた。
 穴がつぶれたことで後続は現れないよう。
 しかし、すでに地表に現れていた数十匹の蟻たちは、遮るものの無くなった山肌を一気に昇ってくる。
「押し寄せる大群を止める、騎士の本懐といわせてもらいたいところだが‥‥」
 大剣「ヴォストーク」を握りしめ、その様子を見ながら呟くのは騎士の風和 律(ib0749)。
 彼女の背後には、甲龍の砦鹿が身構えていて。
 眼下の蟻の数は、軽く開拓者達の十倍以上。いかも一匹一匹がかなりの大きさだと思えば。
「さすがに分が悪い、な。とはいえ‥‥前線に立つべき者が泣き言を言っても始まらない」
 そう覚悟を決めて、しっかりと足を踏みしめて剣を構えて、彼女は静かに決意を告げる
「勝つことで矜持を示すとしよう。騎士の不屈、貫いてみせるまで」
 その言葉には、朋友の砦鹿が咆哮を上げて、応えるのだった。

●地上と空中
「殲滅戦、掃討戦、迎撃戦‥‥やはり戦場はいいものだなぁ」
 口の端に、煙管を加えたまま、笑みを浮かべて矢を放つ雲母(ia6295)がそう言えば。
 呵々大笑で応えたのは彼女を守るように前衛を務める土偶ゴーレムのマスターだ。
 開拓者達の地上部隊は、包囲されないように頂上付近の岩場に陣取り、善戦していた。
 地滑りによって、分断され流された蟻アヤカシたちは、今だ混乱しているようで。
 もとより、知能の高そうではないアリ型のアヤカシたちは、散発的に攻撃を仕掛けてくるだけであった。
 山の麓から這い上がってくる蟻アヤカシ達を迎え撃つのは前線を構築する開拓者と龍たちだ。
「八ツ目、たたき落とせ」
 冷静に自身の朋友に指示しているのは大蔵だ。
 その声に応じて、甲龍の八ツ目は大型のアヤカシにスカルクラッシュ。
 頭鉄甲に被われた八ツ目の強烈な頭突きを喰らえば、アヤカシ達はなすすべ無くはじき飛ばされ。
 そこに更に叩き込まれる八ツ目のクロウで、アヤカシ達は麓へと落とされていくのだった。
 そして、もちろん八ツ目の攻撃を援護する大蔵。
 蟻アヤカシの噛みつき攻撃を十字組受でがっきと受け止めれば、そのまま両断剣。
 大太刀の「水岸」で放たれた真っ向からの一撃は、見事にアヤカシを真っ二つに断ち割るのだった。
 同じく前衛を張る騎士の風和も、甲龍の砦鹿と連携して前線を構築。
 砦鹿は、主の風和が包囲されないように低空飛行をしつつ牽制、回り込む蟻に襲いかかって撃退し。
 一方の風和は、大剣を巧みに扱い、攻め寄る大型の蟻を蹴散らしていた。
 蟻たちの機動力を支えているのはその強靱な脚部だ。
 昆虫型の蟻たちは、その大きさが巨大化するのに比例し、強固な外皮と膂力をほこっているようで。
 険しい山肌を難なく昇ってくるのだが、そこを狙うポイントアタックの一撃。
「この巨大さは厄介だが‥‥巨大であるが故に狙いやすい」
 牛ほどもある大型の蟻アヤカシの攻撃をかいくぐり、あるいは装甲で受け止めつつ。
 風和が肉薄するのは蟻アヤカシの脚部、それを剣閃一撃で斬り飛ばす。
 関節を斬り飛ばし、脚部を失えばさすがのアヤカシといえど機動力は失うわけで。
 そこを砦鹿と風和は連携して仕留めていくのである。

「我が歪みに消えるのじゃ! アヤカシ!」
 力の歪みを放つのは巫女の神町。果敢に攻撃し、小型の蟻アヤカシを蹴散らす大活躍だ。
 しかし、やはり数が多い。
「面倒にゃー。数が多いのが面倒にゃー! 帰りたいから速攻消えるがいいにゃ! 鎌鼬食らうにゃ!」
 ぶーぶーと不平を言いつつ、猫又の桜花も援護。
 強力な術を操る猫又の攻撃力はなかなかで、鎌鼬は小型の蟻アヤカシを見事に蹴散らすのだが。
 前線を努めるのが大蔵と風和、そして土偶ゴーレムのマスターだけではさすがに全員は守りきれない。
 そんなときに包囲網の綻びから、一気に現れた小型のアヤカシ達が神町に殺到。
「危ないにゃ!」
 とっさに猫又の桜花が放ったのは閃光、しかし相手は虫型のアヤカシ、一瞬ひるんだだけ。
 しかしその一瞬で駆け付けたのは、崔とその龍夜行だ。
 普段はおっとりとした夜行もこのときばかりは駿龍の高速飛行を見せて一気に肉薄。
 そして、夜行が小型のアヤカシを蹴散らしつつ飛びすぎれば、飛び降りてきた崔は一気に蟻のど真ん中に。
 七節棍を鞭のように振るって小型の蟻を蹴散らせば、
「大丈夫か神町! とりあえず包囲を蹴散らすぞ」
 そう言って、短く七節棍を崔が構えれば、のっそりと現れる大型の蟻アヤカシ。
「‥‥牛並みの蟻とか‥‥ホント訳解んねえぇぜ瘴気‥‥」
 そう言いながらも、崔は果敢に間合いを詰めると、破軍で威力をあげた強力な一撃を叩き込む。
 如何に強固な外皮を誇るアヤカシといえど、足場が悪い山地にて強烈な発勁を喰らえば転がり落ちる。
 しかし、足場が厳しいのは開拓者も同じだ。
 蹴散らして、たたき落としても次々に這い上がってくるアヤカシの群れ。
 総力戦の構えと相成ったのである。

「鍛えなおせし我が奥義、その身に刻んでみるか!」
 三叉戟「毘沙門天」を構えた羅喉丸は大型のアヤカシを真っ向から受け持って。
 相棒の頑鉄は多少の接近もなんのその、強固なその装甲を活かして蟻たちの攻撃を受け止めていた。
 さらに硬質化した鱗で敵の攻撃を受け止めるのは甲龍の真骨頂。
 そのまま、尻尾の一撃で雑魚を蹴散らし、間合いを保ったまま羅喉丸は三叉戟で必殺の一撃。
 そして、大物相手には玄亀鉄山靠の強烈な一撃。
 人龍一体の攻防で、押し寄せる蟻たちをなんとかしのぎ続ける羅喉丸と頑鉄であった。
「ますます楽しそうになってきたなぁ、そうだろうマスター」
 そう良いながら、土偶ゴーレムのマスターに駆け寄ったのは雲母だ。
 手にした弓から矢を放って、即座に弓を背負うと手にするのは山姥包丁。
 マスターの背後から攻め寄っていた小型の蟻を一撃で叩き斬ると、
「ま、今は派手に蹴散らせば良いんだろう、なぁ? マスター」
 場違いに哄笑を上げ続けるマスターの肩に昇って、雲母は再び弓をとって矢を放ち始めるのであった。
 大蔵と風和だけではなく、泰拳士の羅喉丸や崔、そして土偶ゴーレムで前線を作る開拓者。
 彼らの強力な反撃は蟻たちの進行を押しとどめ、龍たちの援護でそれを押し返した。
 そこを狙うのは、空中に居る仲間たちだ。
「わさび、急降下準備、包囲を崩す」
 淡々と龍のわさびに告げるヤマメは、一気に急降下。
 地上部隊の反撃で押し戻されたアヤカシ達に向かって反撃の一撃だ。
 騎乗しつつ、連続して放たれる矢がまず大型の蟻アヤカシの関節に突き刺さる。
 そして、低空飛行しながら、その群れの只中に突っ込むわさびは、ツメと牙の連続攻撃で蹴散らす。
 地上部隊の反撃と、急降下攻撃でかき乱された蟻たちの包囲。
 そこに続いて叩き込まれたのは、再び空中からの攻撃だ。
「ただいま戻りました。では一気にいきましょう」
 仕掛けたのは蝉丸と鈴木だ。
 瘴気回収で練力を回復させた鈴木は、魂喰を放ち駿龍の蝉丸はそこにソニックブーム。
 大型の蟻アヤカシは術の集中砲火で弱らせて、そこを龍の大技で追い打ちだ。
 そこにさらに叩き込まれる仲間たちの援護。
「もっと威力と衝撃を‥‥カナちゃん、対地防御のまま、一気に仕掛けるよ」
 葛切は龍の鉄葎とともに接近し、斬撃符で攻撃、そしてさらに甲龍の装甲を活かして対地攻撃。
 どどんと地上に降り立って、鉄葎が一瞬攻撃を引き寄せた次の瞬間、葛切が放ったのは蛇神。
 巨大な独眼の蛇がさらに一気に蟻をなぎ倒せば、再び鉄葎は空に飛び上がり。
「私の必殺技! 力の歪み。‥‥そしてソニックブームです!」
 地上部隊を狙う大型アヤカシを、空から蹴散らしたのは八重。
 力の歪みで足止めし、そこに駿龍・染井吉野の衝撃波でとどめだ。
 地上部隊はお互いに支え合いながら、耐え凌ぎ反撃し、それを空中部隊が援護することしばし。
「これでおわりにゃ! 黒炎破喰らうにゃ!!」
 猫又の桜花が放つ黒炎破が蟻を焼き尽くし。
「最後だ」
 八ツ目がはじき飛ばした大型の蟻アヤカシを唐竹割で真っ二つに分断する大蔵。
 強烈な一撃を受け、斬り飛ばされながら瘴気に返るアヤカシを見送れば、やっと敵は全滅したようで。
「やっと‥‥おわったか‥‥」
 ふうと、息をついて崔が座り込めば、皆一様に疲れた様子で一息つくのだった。

●索敵と警戒
「一件落着です、いい事です。えっへん!」
 そう胸を張るの八重だ。飛び続けていた染井吉野をねぎらいつつ地上に降り立って。
 彼女は怪我の治療と、毒への備えを警戒しているよう。
「よくやった、砦鹿」
 朋友の甲龍をねぎらうのは風和、疲れた様子の砦鹿をねぎらいつつ、彼女も満身創痍ながら満足げで。
 そんな中を、最後の調査とばかりに降りたって、鏡弦を使用するのはヤマメだ。
「‥‥とりあえずは近くには居ないみたいだけど‥‥」
「うむ、後日の調査と監視はこちらで受け持とう。定期的な調査もせねばならぬしな」
 そう応えるのは同じく降り立ったギルド係員の庄堂だ。
 土砂崩れによってアヤカシ達が出現した穴は埋まり、気配は消えたよう。
 とにもかくにも依頼はひとまずの終了のようであった。
「ふむ、これで作戦完了かの。流石に疲れたのじゃ」
「さっさと帰ってまったりするにゃ」
 猫又の桜花は疲れたのかすっぽり神町の懐に入って丸くなっているようで。
「なんか最近こんなことばっかりしてるよね。しばらくのんびりしようか‥‥わさびはどこ行きたい?」
 ヤマメはそうわさびに声をかけて。
 こうして皆はそれぞれの相棒を労い、無事に依頼が終えられたことを喜び合うのだった。