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■オープニング本文 人とは本来競い合うモノで。 様々な競争があるなかで、とくにわかりやすい基準、それは強さである。 ということで、今回は誰が一番強いのか決めて貰おう。 参加者は10人。形式は、バトルロイヤル。ルールは一切無し。 武器も、策も、卑怯な技もなんでもあり。 最後まで立っていたヤツが最強だ。 さて、どうする? ‥‥と、それだけでは少々説明不足なので、細かいルールを記しておこう。 闘う場所は闘技場。 隠れる場所は無いだだっぴろい空間で、足下はしっかりした地面。 灯りは十分にあるので、視界を妨げるモノは無い。 戦闘開始と同時に、10人全員が闘技場へ登場するバトルロイヤル形式。 闘技場の周囲は高い壁で被われており、その壁には等間隔で10の門が。 そこから、参加者たちは同時に闘技場へと降り立つのである。 仲間と協力するのも可能。 ただし、最終的には1人を選ぶ戦いなので、仲間との戦いは必然となっている。 なので、単独で参加するほうが良だろう。 なお、戦いにおいては武器防具を使っても、術を使っても良い。 罠を張ったり、持っている道具を使って特殊な戦い方をしてもいい。 しかし、あまり大量の道具を持ち込むことは不可能となっている。 さて、改めて聞こう。 この戦いで勝利を収めても得るものはない。富も名声も望むことは出来ないのだ。 だが、それでもなお、最強を目指したいと思う者は参加すると良いだろう。 ※このシナリオはエイプリルフールシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません。 |
■参加者一覧
緋桜丸(ia0026)
25歳・男・砂
月夜魅(ia0030)
20歳・女・陰
朝比奈 空(ia0086)
21歳・女・魔
六道 乖征(ia0271)
15歳・男・陰
ラフィーク(ia0944)
31歳・男・泰
九法 慧介(ia2194)
20歳・男・シ
秋桜(ia2482)
17歳・女・シ
景倉 恭冶(ia6030)
20歳・男・サ
朱麓(ia8390)
23歳・女・泰
春金(ia8595)
18歳・女・陰 |
■リプレイ本文 ●戦いの始まり 名も無き闘技場。 まだ薄暗いその闘技場の円形の外壁に等間隔に設けられた10の扉。 それが一斉にがらがらと引き上げられると、暗く伸びた通路の奧から10名の戦士が姿を現した。 姿は様々、来歴も様々、老若男女色取り取りの姿である。 しかし彼らの目的は一つ。最後まで勝ち残り、自らの最強を証明することだ。 眼光鋭く、ずらりと居並ぶ一同。 門と門の間は絶妙な間隔だ。視線は通るが、戦いの間合いに踏み込むには少々遠い。 そんな環境にあって、全員はいよいよ始まる戦いの予感に身を震わせたのだった。 「よ、宜しくお願いします!」 試合開始を前に、響き渡った声は月夜魅(ia0030)の挨拶だ。 自分がどこまでいけるかを試してみたいと思ったという彼女。 どこか緊張しているようなその挨拶に、応えるものも居れば応えないものもいるのだが。 否応なしに戦いの始まりはやってくるのだ。 そして、ごーんとどこからか響き渡る銅鑼の音とともに、試合開始が告げられれば。 闘技場は一気に明るく照らされて、いよいよ戦いが始まったのである。 ●待つ者、仕掛ける者 戦いの始まりとともに、一同は行動を開始する。 ある者は周囲の様子をうかがい待ちに徹し、ある者は狙いを定め牙をむく。 その中で、真っ赤な傘をばんと広げ、大見得をきる一人の少女が。 赤い傘と漆黒の扇を手に、顔には狐の面。 ぐるぅりと周囲を見渡して、その小柄な体に似合わぬ堂々とした態度で見得を切り。 「最強を決めるこの一戦、負ける気は無いのじゃ。華麗に戦い抜いてみせようかの♪」 仮面の下の口元に笑みを忍ばせ、春金(ia8595)はそう言い放ったのである。 その言葉に突き動かされたように、状況はにわかに動き出すのであった。 術者は本来であれば、前衛に守られて闘う者である。 だが、陰陽師や巫女が単独で闘えないと誰が決めた? 全体的な戦闘力や、継続戦闘能力は確かに接近戦型に劣るのかもしれない。 だが、全員志体を持つ超人である開拓者達だ。 彼らは持てる力を最大限に使って、勝ちを得るために罠を張るのである。 「あー‥‥突っ立ってるのも何だし、あたしと一勝負どうだい?」 仕掛けたのは朱麓(ia8390)、槍を手にずいっと突き進む先は陰陽師の月夜魅だ。 外周を回り込もうとしていた月夜魅は先手をふさがれた形となってその綺麗な顔を幽かに曇らせる。 だが、 「わ、わ。‥‥そ、そうですね。それではお相手いたしましょう!」 覚悟を決めた月夜魅は、言葉と同時に掌中の小瓶を投擲。 それを、危なげなく槍で砕く朱麓。だが、彼女は砕かれた瓶から飛び散った液体の匂いに気付いた。 「これは‥‥酒か!」 慌てて飛びすさり距離を取る朱麓。そこに、 「ごめんなさいっ! でも、簡単に負けれませんのでっ」 月夜魅が放った術は火炎獣、ごうと一閃する火炎には周囲の地面を濡らす強い酒に次々に引火して。 「はっ、こりゃ簡単には買えてないようだねぇ」 燃えさかる炎の向こうで術の準備をする月夜魅を見ながら、朱麓は槍を構えつつそう呟くのだった。 まるで戦いの始まりを告げるかのような豪快な火炎を視界の端に治めつつ。 他の面々の間でも次々に戦いは繰り広げつつあった。 「‥‥何とも、恐ろしい戦いぶりだな」 周囲に視線を配りつつ、燃え上がった炎を見て呟いたのは九法 慧介(ia2194)。 もちろん彼も戦いの備えを怠っているわけではない。 周囲には巻菱を巻いて、手には弓を構え狙いを絞っていたのだが。 はっと、気付いた瞬間、九法は弓を手から話てこしの刀の柄に手を置いていた。 ‥‥戦いにおいてもっとも重要なものはなんだろうか? それは、判断力だ。迷いは死につながる。 九法は視界の隅で、自分を狙っている弓矢の存在に気付いたのであった。 とっさの判断で弓を手放し、居合一閃。飛来した矢を見事に斬り飛ばす。 すぐさま、矢の飛来した方向をみれば、すでに射手の姿は移動したようでとっさには分からず。 火炎と煙に紛れて、さてどうしたものかと思った次の瞬間。 またしても、とっさの判断で九法は巻菱を唯一巻いていなかった壁方向へ身を翻した。 そこに飛び込んできたのは金の迅雷。 泰拳士独自の高速体術、瞬脚で距離をつめたラフィーク(ia0944)の一撃をとっさに躱したのである。 初弾を避けられたものの、すぐに次の一撃のために距離を詰めてくるラフィークと迎え撃つ九法。 だが、九法もさすが。すでに武器は鞘に収まり万全の構え。 みるみるうちに表情は消えて、互いに冷徹な視線のみを向かい合わせて。 「‥‥‥参る」 ラフィークは瞬脚からの鉄山靠、迎え撃つ九法は居合・雪折の構え。 肩口を斬られ、鎧の大袖を破壊されながらも間合いに踏み込んだラフィークは、不完全ながらも密着し。 どんという踏み込みとともに、鉄山靠の一撃。 居合を振り切った形の九法は、まともに一撃を受けつつも後ろに自ら飛んで威力を減らし。 それでも、強烈な体当たりの一撃にぐらりとふらつきつつ、再度刀を治めて居合の構えを取るのだった。 そんな九法とラフィークの様子を冷徹にうかがう二人の視線があった。 一つは、最初九法に矢を放った緋桜丸(ia0026)。 乱戦となれば、狙う隙もあるかと思ったが、やはりめまぐるしく移動する二人を狙うのは至難の業。 さらに、狙いをつける間は無防備になるだろう。 そのために、再び周囲を伺って、戦場の状況を確認すれば、ゆらりと近づいてくるサムライの姿が。 奇しくも同じく二刀同士、その相手は体中に鎖を巻いた景倉 恭冶(ia6030)であった。 対峙する2人は、同じようににやりと笑みをうかべて、 「派手にやろうぜ!」 「おう、派手にいこうや!」 最初に仕掛けたのは景倉であった。 走り込んでからの払い抜け一閃。刃の影も見えぬ高速斬撃を見舞うが、それを緋桜丸は壁を蹴って回避。 強烈な脚力で壁を蹴って駆け上がると、その手には二刀ではなく矢が。 「サムライが近距離だけって誰が決めたんだい?」 にやりとそう嘯く緋桜丸、そして交差しながら上空からの矢に意識を引きつけて。 最初に炸裂したのは、景倉の足下に転がっていた焙烙玉であった。 景倉が走り込んでくる瞬間、緋桜丸は足下に焙烙玉を置き去りし、壁に向かって跳躍。 壁を足場に、跳ね上がってギリギリで景倉の一撃を交わしながら矢での牽制をして。 そこで、本命の焙烙玉が爆発したのである。 だが、景倉も凡庸な剣士では無かった。 爆風を喰らいつつも、それを背に受けて加速。 矢を引き絞る緋桜丸に向かって突進する推進力としたのである。 とっさに矢を放つ緋桜丸、それを頬の皮一枚でかろうじて交わす景倉。 翡翠と桜をそれぞれに散らした美麗な二刀を振りかざし、緋桜丸を再度襲う景倉の二刀。 とっさに、緋桜丸も二刀を抜き放ち受けようとするのだが、一瞬間に合わず。 だが鞘から引き抜きかけた二本の刃で辛うじて景倉の刃を受け止めるのであった。 爆風の勢いのままに、緋桜丸を吹っ飛ばす景倉。だが彼も無傷ではなく。 お互い、今の攻防で距離が開いた次の瞬間、そこに踏み込んでくるもう一つの影があった。 顔を隠した女中姿の泰拳士、秋桜(ia2482)は両者の攻防の狭間を好機とみたのだ。 狙いは、はじき飛ばされ体勢を崩しつつある緋桜丸。 緋桜丸が景倉に視線を向けていたのを良いことに、大振りな一撃で仕掛ければ。 体勢を立て直した緋桜丸、 「女性に手をあげるのは、少々気が引けるが‥‥そんなことは言ってられねーな」 楽しければ全て良しと、覚悟を決めて向かい合えば、 仕掛けてくる秋桜の一撃を、刀の柄で受け止める玄人技。対する秋桜も体術の冴えで攻撃を躱し。 そんな新たな攻防の一方で、いつのまにか女性が苦手な景倉は姿を消していたのであった。 ●激戦、乱戦、大混戦 「同じ事を考えてる人がいるとは‥‥あなどれませんね」 朝比奈 空(ia0086)は、混戦模様のラフィークと九法に向かって酒の小瓶を放り投げて。 そしてそれを火種で着火。 めまぐるしく移動している2人は炎をかぶることはなかったが、ますます闘技場は燃え広がっていった。 そんななか、彼女に向かって飛来したのは円月輪の一撃だ。 放ったのは六道 乖征(ia0271)。 「‥‥‥‥んー、なんとなく‥‥こっちにする‥‥」 距離をとりつつ、術者同士が対峙して。 円月輪の一撃を抜き放った業物で弾き落とした朝比奈。 彼女は扇をひらりと振るうと、お返しとばかりに精霊砲の一撃を見舞う! 狙う先は、六道。だが六道は分かっていたとばかりにひらりと交わせば、彼の背後に人の姿。 そこには傘を掲げて周囲を伺っていた春金の姿が。 六道は、斜線上に上手く春金を誘い込んでから朝比奈の一撃を待っていたのである。 「わっ! ‥‥んふふ、受けて立つのじゃよ!」 春金はそれを宣戦布告と受けとって、 「風の刃、受けてみるのじゃよ!」 扇を広げて斬撃符の一撃を朝比奈に見舞う。それを精霊壁で強引に防いで朝比奈も対する構え。 見れば、巫女と陰陽師の違いはあれど、両者とも術と刀の両方を使う形のようで。 「ほう、ならば本番じゃ‥‥‥一気に片をつけましょうか」 すぅっと身に帯びた雰囲気すら変えて、春金は傘を放ると腰の刀を抜き放ち。 そして、斬撃符で巻菱を蹴散らしながら、朝比奈に向かって真っ向から刀を振るうのであった。 春金の振るう業物「河内義貞」、それを朝比奈は業物でがっきと受け止めて。 幾閃もの攻防、その最中視界の端の動きに気付いたのは春金であった。 攻防の合間に、蹴りを一撃。それを受けて距離を取る朝比奈。その両者を見舞ったのは別の術だった。 放ったのは、機をうかがっていた六道。 「‥‥とりあえず‥‥喰べちゃえ」 魂喰の一撃は2人を狙った絶妙なものであったが、それを真っ向から精霊壁で受ける朝比奈。 三つどもえの戦いとなったと思われたその瞬間、さらなる闖入者がそこに。 それは、緋桜丸と秋桜の所から離れた景倉であった。 春金は突然、別方向から攻撃されて慌てた次の瞬間、眼前にふらっと見知った顔が洗われて驚いていた。 「‥‥恭冶さん!」 だが、見知った顔といえども今日は敵味方だ。 とっさに取った行動は、こっそりと「じゅ・ば・く・ふ♪」で動きを縛り、なんと抱きつき攻撃だ。 女性が苦手な景倉の特徴を知っているからこその隠し技。 だが、結果は予想外であった。 「のっほほ、女性嫌いは大変じゃな‥‥っと、おぉぉお?」 「ぅぅう、うううウケケケケケケ!!」 身に纏った鎖をうねうねと動かして、なんと呪縛符を破った景倉。 眼光鋭く、いや眼光妖しく、薄笑いを表情で、奇妙な哄笑を上げて。 「マずハ、おマエだッ!!」 うじゃーっと妖しげな触手が如く、鎖をうごめかして春金に襲いかかる景倉なのであった。 「わわっ! なんですか、あれ!」 月夜魅は、春金に襲いかかる鎖のお化け、景倉の動きに唖然として思わず声を上げ。 対する、朱麓もそれを見れば、 「‥‥ふん、あっちが先決のようだね」 こちらに向かってくる鎖の蛇たちを見て、朱麓は月夜魅に背を向けると景倉に槍を向けるのだった。 なぜか女性ばかりを狙う景倉の鎖は、緋桜丸と対峙していた秋桜の元へもやってきて。 しかし泰拳士の彼女は背後の気配に気付いてこれを迎撃。 緋桜丸と闘いつつ鎖の乱入に意識を乱すことなく、攻防を続けようとしたのだが。 そこを狙ったのは六道だった。 「‥‥ん、引っかかった」 三つ目の乱入に一瞬、判断のおくれる秋桜、そこに見舞うのは六道の毒蟲の一撃だった。 身軽さを身上とする泰拳士には生命線を立たれたに等しいその一撃。 思わず大振りになるその攻撃に好機と六道は砕魂符を叩き込むのだが。 秋桜はそれを喰らいつつも、起死回生の転反攻を六道に見舞うのだった。 結果は、両者共に戦闘不能。 「あ‥‥そう‥‥失敗したんだ」 六道は、そう呟いて降参するのだった。 そして、妖しげなことになっている景倉。 その鎖を地面に縫い止めているのは一同の武器であった。 一同の刃に鎖を止められた景倉は術の集中砲火でこんがりと焼かれてあっさり戦闘不能。 だがこの攻防は、一同の練力を大いに消耗させたのだった。 結果、戦いは一気に終局へと向かって行って。 ラフィークは景倉の暴走の最中、炎に巻かれて九法の姿を見失っていた。 そして今対峙しているのは朱麓。あと一歩の所まで朱麓を追い詰めて、ここでとどめの鉄山靠の構え。 だが次の瞬間、朱麓は降参とばかりに。 「ああ、もう良いや。あたしの負けだ負け! ‥‥何つってね」 だが、これは罠。迷いから一瞬動きが止まったラフィークを狙った座敷払いの一撃。 朱麓はこの一撃でラフィークを打ち倒したのだった。 しかし、そこを狙って放たれたのは鋭いカマイタチ。 九法が放った桔梗突の一閃で、今度は朱麓がその槍を手からはじき飛ばされて降参。 されど、まだ攻防は続く。 九法を穿ったのは、朝比奈の精霊砲の一撃。疲弊した朝比奈はそれでさすがに戦闘不能。 だが、朝比奈も、疲労困憊の体ながら金春が放った呪縛符で動きを封じられて降参し。 「んふふ、ついにこのときが来たのじゃ! わしこそが最強なのじゃよ!」 拳を振り上げた春金は、刃を手に残された月夜魅に向かうのだった。 だが、その2人の間に立ちはだかった姿が。それは緋桜丸だった。 朱麓との攻防の果てで、ぼろぼろになっていた月夜魅を思わず庇ってしまった緋桜丸。 春金の一撃を、さすがのサムライ、十字組受で止めると刀をはじき飛ばして。 さすがにサムライを前に、練力の枯渇した春金は降参するしかないのだった。 そして、緋桜丸は 「怪我はないかい?」 と優しく月夜魅に声をかけたのだが、 「‥‥あ、あのごめんなさい! そこにわたしの仕掛けた地縛霊が‥‥」 踏み込んでしまった緋桜丸は、その一撃を受けて戦闘不能となるのであった。 さて、この戦いで定まった勝者は、 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!!」 と謝っている月夜魅である。 いろいろと大混乱な戦いも、一応決着を見て、これにて閉幕。 強さとはかくも計りがたく、複雑なのだ。 |