【四月】サバゲー西軍
マスター名：雪端為成
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| ■オープニング本文 その日、ギルドの受付である二人の青年は春の陽気に誘われて、のんびりと無駄話をしていました。 こんな陽気な日は、悪事も避けて通るのか、その日は朝から何ごとも無くとても平和な一日で。 ここ数日の寒さが嘘のような、まさしく春がやってきたという風情の四月一日の話です。 「‥‥おめえさん、さすがに俺の方が開拓者の見る目は上だろう、何せ俺も元はといやぁ開拓者だぜ？」 ぷかぁと煙管を銜えたまま、そういったのは庄堂 巌（iz0099）。 開拓者ギルドの依頼調べ役として働く彼は、鷹揚に構えつつ、ぷかりと紫煙を吐き出して。 「いえいえ、別に見る目をどうこう言っていたつもりでは‥‥あぁ、もう、庄堂さん、酔っ払っているんじゃないですか？」 微苦笑気味に言うのは、彼の隣でのんびりと煎餅をかじっていた青年です。 目を細めて――とはいえ元々開けているかも分からないぐらいに細い眼ではあるのですが、幾らこの陽気とはいえ飲み過ぎですよと窘める青年の名は利諒（iz0030）。 利諒は温かいお茶と煎餅を手に、先程から煙管に酒で利諒をからかっているのかただ単に絡んでいるだけか判断に難しい様子の庄堂に参ったなぁとばかりに頬を掻きます。 「人を見る目を疑われたんじゃあ引っ込んでられねぇ。一つ勝負といこうじゃねぇか」 「勘弁して下さいよ〜」 「おう、怖じ気づいたのか？ 男だろうに」 「だから何でそこで勝負に‥‥」 頭を抱える利諒に、面白いことを思いついたと思ったか、呵々と笑う庄堂。 勝負が行われる場所は神楽近郊、どこともしれぬ山野。 そこは桜が満開に咲く秘境の山、まるで話に聞く桃源郷を思わせる幽玄にして華やかな土地だとか。 行われる勝負の形式は『サバイバルゲーム』とかいうもの。 春の夜の夢の如く、奇々怪々な武器まで手に入るという不思議な状況での戦いとなります。 今まで経験を重ね、研鑽してこようが、知恵無き力は無力。 如何にして行動し、仲間と連携するかは重要となるでしょう。 もちろんこの度の戦いにて、武名・名声に傷のつく恐れはありません。 ※このシナリオはエイプリルフールシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません。 |
■参加者一覧
樹邑 鴻（ia0483）21歳・男・泰 
氏池 鳩子（ia0641）19歳・女・泰 
蘭 志狼（ia0805）29歳・男・サ 
キース・グレイン（ia1248）25歳・女・シ 
アルティア・Ｌ・ナイン（ia1273）28歳・男・ジ 
神無月 渚（ia3020）16歳・女・サ 
九十九 嵐童（ia9158）22歳・男・シ 
フィリー・Ｎ・ヴァラハ（ib0445）24歳・女・騎 |
| ■リプレイ本文 ●布陣 ターンと響き渡る一発の銃声は、一丁の狙撃銃が発したものであった。 無駄なく、無慈悲な一撃で速やかに標的を始末する。それこそスナイパーの究極的な目標である。 九十九 嵐童（ia9158）は、しゃこんとボルトを引いて排莢し、次弾を装填。 しかし次なる弾を打つことなく、スコープの向こう側にいた眼鏡の人物は倒れたのを確認して。 まずは一人目。 「合戦の時に見かけたジルベリアの銃とは細部が異なるが‥‥」 茂みに身を隠しながら、九十九は呟く。 「‥‥密かに隠れ目的を遂行する。シノビらしい戦法は‥‥有効だな」 そうして、彼は静かにゆっくりと移動しながら次なる狙いを定めるのだった。 体中に木の葉をくくりつけ、茂みの中に隠れて様子をうかがう彼の姿はおそらく対岸からは見えない。 隠れて敵を撃つ、それこそまさにシノビの本領発揮と言えるだろう。 「‥‥さて、そろそろ動くか‥‥」 硝煙くすぶる戦場は、ますます激しさを増していくのであった。 こちらの陣営は、非常に手堅い武器選びをしたようで。 「‥‥戦いに心は要らん。この身はこれより、一振りの刃であり一発の弾丸だ」 片手に自動小銃、片手には抜き身の刃を構えた偉丈夫が一人。 「唯、一直線に穿ち貫くのみ‥‥いざ、蘭 志狼、推して参る！」 諸肌脱いで、サラシ姿も凛々しく、豪快に戦場を突き進むのは蘭 志狼（ia0805）である。 大柄な彼は袴姿もなんのその、強引に藪を突っ切りまっすぐに橋へと向かっていた。 そして、そんな彼に合わせて、戦場を進む姿が。 「いっつしょーたーいむ！！」 手には優れた装弾数を誇る異形のサブマシンガンを持ち、口元には愉悦の微笑みを浮かべて。 戦場の興奮に高揚を隠し切れていないのは神無月 渚（ia3020）だ。 まだ、敵の姿の見えず、警戒しつつも足取りは軽く。 周囲を警戒しながら、彼女は蘭とともに先陣を切って突き進むのであった。 そしてその後ろをつかず離れず追随するのは援護役の氏池 鳩子（ia0641）だ。 彼女の手には、散弾銃。取り回しと出会い頭の制圧力の高さを買って散弾銃を選択したようで。 「‥‥こうやってカサコソと移動してると、黒いアレみたいだな」 たしかに、木々の間を縫って、敵に狙われないように移動する姿はそれっぽいが。 とにもかくにも、彼ら三名は一直線に橋へと向かうのであった。 橋を渡りきり、機動力でもって敵陣を制圧する。それが、西軍の基本戦略だ。 故に、橋を奪取することが、最大の焦点なのである。 同時にもう一団が橋へと急行していた。 １カ所に固まれば、大火力の火器で制圧されてしまう危険性があり、一方単独先行は包囲される危険が。 そのため、こうした戦場での行動は、小集団で行うのが常套手段なのだ。 「ＯＫ、とりあえず先に進もう」 その三名はお互いに死角を補うようにして、素早く橋へと向かっていた。 迷彩服とゴーグルで身を包み、先頭を進む女性はフィリー・Ｎ・ヴァラハ（ib0445）だ。 迷彩服の上からでも分かる、その豊かすぎる胸も凶器だが、今回はそれ以上の凶器が彼女の手に。 長い銃身を備えた重厚な機関銃がそれだ。本来ならば片手で軽々持てるものではない。 だが、そこは志体を持つ開拓者達だ。本来ならば、地面において使用するべき重火器だ。 それを彼女は腰だめに構えて撃つために持ち運んでいた。 そして、フィリーを援護するのは二名の泰拳士だ。 まるで風のように身軽に木々の間を移動しつつ、アルティア・Ｌ・ナイン（ia1273）は進む。 「やっぱり、橋での待ち伏せが怖いからね。急いで進まないと」 敵からの狙撃などを警戒しつつ、進むアルティアの手には、刀と古風なライフルが。 ボルトアクション式の古びたライフルが彼の得物であった。 時代遅れにも見えるその名銃は、打撃にも使える堅牢性と、優れた安定感で有名な古参兵の如き業物で。 「よし、それじゃあ、一気に進もう！ コイツでいっちょ暴れてみたいしな！」 対する樹邑 鴻（ia0483）の手には、最新鋭の銃器が。 プルバップ方式のその銃器は、見るからに新しさを感じさせるもので。 サブマシンガン並の装弾数でありながら、高速、高威力の弾を使用するまさしく新世代の火器である。 個人防衛火器の名をもつその銃を手に、樹邑は他の二人と協力して進み。 新旧の銃器の混成部隊は、一目散に橋に向かって進むのだった。 「‥‥まあ、訓練だと思えばたまにはこのようなものも悪くないな」 キース・グレイン（ia1248）はそう一人呟いて。 彼女も九十九と同じく、手に狙撃銃を構えて対岸をにらんでいた。 作戦の要は橋の争奪であり、速さが勝負の鍵。前を行く仲間を援護するのが、彼女のような狙撃手の役割だ。 彼女は冷静に、スコープをのぞいて対岸に敵の姿を探すのだが‥‥。 ●激突 高速で飛んでくるロケットが一発。 それは敵である東軍の放ったロケットランチャー、狙いは水津を倒したスナイパーだ。 着弾、轟く爆音、逆巻く爆炎。その迫力は思わず一同の心胆を震え上がらせる。 「ロケットランチャー‥‥派手だねぇ。おーけー、そんじゃあ、こっちも派手にやりますかぁ」 短機関銃を構えて呟いたのは、橋付近まで進んできていた神無月だ。 東軍には大火力のロケットランチャー持ちがいる。それが確認出来た。 それならば、こちらには遠距離からの牽制で対抗すればいいのだ。 援護があれば、一気に橋を渡ることが出来るはず。 橋の手前で大型機関銃を構えるのはフィリー。 九十九とキースら、二名のスナイパーは姿を隠したまま、狙撃で援護。 そして、アルティアは狙撃も可能な古風なライフルを手に対岸へと目を向けて。 「パーティタイムだ。景気良くいこうか？」 樹邑、蘭、氏池、神無月そしてアルティアの五名は一気に橋へと突き進むのだった。 眼前を橋に向かって一目散に逃げ戻る姿。 それは東軍の斥候、小隠峰烏夜であった。 こちらの陣営の様子を伺っていたのだろう。忍者の速力で撤退しつつ、リボルバーから銃撃を放ってくるのだが。 「悪いが‥‥すべて見えてると言わせてもらおう！」 樹邑は、リボルバーの弾丸を華麗な身のこなしで回避。 「チェェェェェストォォォ！！」 一方、蘭は手にした刀で、なんとリボルバーの弾を弾き防ぐのだった。 そして、返礼とばかりに今度は西軍の集中砲火が小隠峰を襲い彼女は橋下へと転落。 これで、東軍の脱落者は早くも二名、西軍は有利に戦いを進めている確信とともに一気に橋をわたり始めるのだった。 爆撃から九十九は辛うじて逃れていた。 要となったのは早駆。シノビで無ければ、あの一撃には巻き込まれていただろう。 九十九は、再び姿を隠して狙撃体勢について、対岸へと目を向けて。 するとそこにあったのはなんと防衛陣地。 いつの間にか出現した石の壁を備えたその拠点は、おそらく東軍の魔術師によるものだろう。 そして、そこから東軍の銃撃が開始されたようであった。 しかし、東軍の銃撃は散発的だ。どうやらそれほどの数はいないようだ。 そしてロケットランチャーを使うものがいることは確認されている。 どうやら敵は大火力の武器が多いようなのだが‥‥。 「‥‥ガトリング、だと？」 敵の石壁の向こうから姿を現したのは重厚な回転式の銃身を備えたガトリング。 あわてて、九十九らスナイパーは仲間の援護のために、狙撃しようと狙いを定めようとするのだった。 ●混戦 姿を現したガトリング使いは、東軍のディアデム・Ｌ・ルーンだ。 橋上を掃射されてしまえば、文字通り東軍の面々は蜂の巣となるだろう。 絶体絶命の危機、そこで飛び出したのはショットガンを構えた氏池だった。 うなりを上げて回転を初めたディアデムのミニガン、その狙いはもちろん橋を渡ろうとしている西軍だ。 だが、泰拳士の脚力をもって一気に距離を詰める氏池。 彼女はもっとも危険なガトリングの銃口の前に氏池は身を躍らせ、相打ち上等とばかりに銃口をめぐらせる。 「このあたし、ただでは倒れん！」 氏池は、言葉とともに、そのショットガンの銃口を、敵のガトリングの砲身へと向けてぶっぱなすのだった！ 轟音を上げて銃弾の嵐をはき出していたガトリング。 銃口の延長線上にあるものすべてを粉砕し、そのまま氏池を巻き込まんとしたそのときに砲身に着弾。 至近距離から砲身を散弾で攻撃されて、ガトリングはきしみをあげて停止するのだった。 氏池は、勝利を確信しかけたのだった。だが、それが一瞬の油断が命取りであった。 ミニガンを破壊されたディアデムは、即座に武器を捨てると、そのまま肉弾戦へ。 強化を重ねたハイヒールの強烈な蹴りを氏池にたたき込むのだった。 氏池は一瞬の隙を狙われ、崖下へと落とされてしまったのである。 だが、氏池の攻防で生じた戦いの空隙。その隙を逃すスナイパーではなかった。 キースのスコープは、すでにディアデムをとらえていた。 引き金を引き、高らかに響く銃声一発。スコープの向こうのディアデムはそれで倒れた。 だが、敵を狙う静かな狩人、スナイパーも時にはまた獲物となり得ることをキースは気づいていなかった。 キースが狙撃でディアデムを倒した次の瞬間、いままで姿を隠していた魔物が火を噴いた。 東軍の対物ライフルによる狙撃、しかも銃弾は焼夷弾だ。 地面に大穴があく凶悪な一撃と、吹き出した炎でキースは脱落。 もう一方の九十九も、巻き上がる土煙と炎で視界を阻まれ、狙撃は封じられてしまった。 次の瞬間、響いたのは東軍の誰かの声だ。 「橋を落とせ！！」 橋上の西軍は慌てて橋を渡りきろうと駆け出すのだった。 スナイパーの狙撃が封じられた西軍、対する東軍はロケットランチャーを構えて橋に狙いをつける。 なんと二名もロケットランチャーをもった東軍の姿が。 先頭を行く蘭と樹邑は、辛くも滑り込みで橋を渡りきった。しかし、後続はまだ距離がある。 そこで放たれるロケット弾。 「ＺＡＰＺＡＰＺＡＰＺＡＰＺＡＡＡＡＡＰ！」 神無月は、飛んでくるロケット弾を狙ってなんとか弾幕を張ろうとし。 同じくフィリーも渡るのは間に合わないと、機関銃で弾幕を張る。 しかし辛うじて１発目の爆発に橋は持ちこたえるものを間髪入れず２発目が着弾。 橋は、真ん中からへし折れるのだった。 崩落する橋に巻き込まれて、身動きのとれなくなっていた神無月とフィリーは橋下へと落下して。 そして、最後に橋に残っていたのはアルティアだ。 崩れゆく橋を駆け抜け、縄の一端をつかむと、そのしなりを利用して空中に飛び出す。 そして、さらに彼は空中で足から気功波を放って加速。ぎりぎりで橋を渡りきるのだった。 はじめは優勢で試合を進めていた西軍、残されているのは半数の４名であった。 彼らは、東軍の陣地にて、最後の反撃を開始するのだった。 ●爆撃 西軍の生存者、最後の一名はスナイパーの九十九だった。 彼は、橋が落ちる最後の瞬間、虎の子の早駆を使って崩落する橋をかろうじて渡っていた。 だが、練力はほぼ枯渇。残されたのはたった一発の銃弾分だけであった。 彼は、慎重に周囲を伺うと、最後の一発で狙うべき獲物をしずかに探すのであった。 先行して橋を渡った接近戦特化の樹邑と蘭は、東軍の鷲尾を追って防衛陣地へと踏み込んでいた。 「やっぱりこういうところを狙ってくるよなぁ！？」 リロードのタイミングを狙って放たれた鷲尾のショットガンを回避し、足からの気功波で反撃する樹邑。 だがうまく石壁に鷲尾は隠れたようで、その不意打ちの一撃は当たらなかったようだ。 地の利は敵にある。だが、鷲尾が単独であるのに対してこちらは二人だ。 「効かん、効かんなぁ・・・・！」 鷲尾の放ったショットガンを、真っ向から刀で打ち落とす蘭。 ショットガンの散弾をもちろんすべてたたき落とせる訳ではない。 だが、蘭は多少の傷はものともせずに、ただ急所だけを守り鷲尾を追い詰めようとしていた。 そして、ついに決着の時。蘭がその射程に鷲尾をとらえたのだ。 「道を開けるか、開けさせられるか、二つに一つだ。好きな方を選べ」 だが、蘭が鷲尾の頭にぴたりと銃口を向けているのと同じように、鷲尾もショットガンを蘭に向けていた。 すわ相打ちか。だが、そこに駆けつけたのは樹邑だ。 鷲尾の負けは決まったのかと思われたのだが、 「Ｈａｓｔａ ｌａ ｖｉｓｔａｂａｂｙ」 にやりと笑みを浮かべた鷲尾がその引き金に力を込めて三人の間に緊張が走った次の瞬間。 三人は、防衛陣地ごと、ロケットランチャーの一撃でまとめて吹き飛ばされていたのだった。 鷲尾を巻き込んでまでの一撃はさすがに予想外で。 「・・・・ふ、悔い、無し・・・・」 最後の最後まで、テンション高く戦い抜いた蘭も樹邑や東軍の鷲尾とともに脱落である。 爆発する東軍防衛陣地。 アルティアはそれに紛れるようにして、東軍の残りを探してた。 そして案の定、油断なくロケットランチャーを構えている夏麗華の姿を発見。 「攻撃が当たらないならば、近づけばいい。当たり前のことだろう？」 森に溶け込む緑の人民服姿をその銃口で捕らえ、接近するアルティア。 彼は相手を自身のライフルの射程に収めると、銃を介して強化した気功波を放って。 それは狙い過たず、夏が装填していたロケット弾を貫いて大爆発。 だが強敵の一角を倒したとアルティアが思った次の瞬間、そこには待ち伏せが。 隠れ潜んでいたのは紬。惜しくもアルティアは紬の弾幕の前に倒されてしまうのだった。 爆発が二回。そして戦場は静まりかえった。 本人は知らなかったが九十九は残された最後の一人となっていた。 静寂が支配する戦場で、かすかな影をとらえたのはどちらが先だったか。 九十九と南風原は同時に狙撃姿勢についていた。 弾丸が銃声よりも先に相手に届く狙撃手の戦いは一瞬。 九十九の銃弾は南風原をとらえたのだが、彼の対物ライフルもまた九十九をとらえていて。 西軍最後の一人は、相打ちで脱落。これにて決着であった。 そして試合は終わり、谷底にて。 「・・・・このまま花見、というのも悪くはないか。生憎と酒は持ってきてないが」 谷を彩る桜と新緑をみて九十九がいえば、試合の発端の庄堂と利諒が手に酒瓶を持ってやってきて。 試合を終えた一同は、文字通り勝敗を水に流して、互いの健闘をたたえるのであった。 |
