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■オープニング本文 緊急と朱墨で書かれた一枚の依頼書。 それは、一刻も早く解決しなければ行けない依頼であることを知らせるものであった。 依頼の内容は、単純である。 武天の山地にて、アヤカシが発見されたのだという。 それだけならば、普通のことだ。だが、発見されたアヤカシが死龍となれば話は違う。 死龍、それは屍人と同じくアヤカシが死体に取り付いたことによって生じるアヤカシ。 だが、屍人らとは違い、翼をもち高い戦闘力をもった龍のアヤカシである。 その危険性は説明するまでもないだろう。 ということで、開拓者達は、緊急に現地へと向かうこととなったのだ。 なんと死龍の数は4体も確認されているという。 死龍は、山中の一角に陣取っていることが確認されているようで。 開拓者達は、その死龍をそれぞれの龍と連携して空から急襲。 同時に、地上からも龍やその他の朋友と連携して、逃がさぬように殲滅するのが目的である。 危険は高く、情報も少ないこの任務。 だが、ここでしくじれば、このアヤカシ達はさらなる被害と悲しみを振りまくのが明らかだ。 さて、どうする? |
■参加者一覧
神町・桜(ia0020)
10歳・女・巫
鈴梅雛(ia0116)
12歳・女・巫
橘 琉璃(ia0472)
25歳・男・巫
雲母坂 優羽華(ia0792)
19歳・女・巫
輝夜(ia1150)
15歳・女・サ
八十神 蔵人(ia1422)
24歳・男・サ
深凪 悠里(ia5376)
19歳・男・シ
シャンテ・ラインハルト(ib0069)
16歳・女・吟 |
■リプレイ本文 ●朋友と共に アヤカシは、いまだ多くの謎に包まれた存在である。 瘴気が形を為して個体となるものや、器物に取り付いてアヤカシとなり得るもの。 そして、死した生物に宿り、命無き化け物と化してしまうものまでいるのだ。 今回の敵は、龍の死骸に瘴気が宿りアヤカシと成り果てた死龍。 開拓者達は、それぞれの思惑を胸に、戦いの場へと急ぐのであった。 空を行く影は五つ、それは龍の背にまたがって往く開拓者達の姿で。 地を行く影は六つ、こちらは開拓者とその同胞たちが一団となって進む姿である。 両者は、速度を合わせ報告にあった死龍が陣取っているその場所へとやってきていた。 空から見れば一目瞭然、冬になり葉を落とした木々の下に数匹の死龍が陣取っているのが見えて。 死龍たちは、すでに生命活動を停止した龍である。 だがアヤカシと成り果てた彼らは、いつかは生者の血と肉を欲して動き出すのが必然。 それだけは止めねばならないと、寒風吹きすさぶ中、開拓者たちは決意を固めたのだった。 「死龍‥‥死したる龍にまでアヤカシは取り憑くのじゃな‥‥」 長槍を手に、駿龍・輝龍夜桜の背にあるのは輝夜(ia1150)だ。 死龍たちの上空を仲間たちとともに、弧を描いて飛び機をうかがいつつ。 思わず口をついて出たのは、そんな言葉だった。 眼下のアヤカシは、今現在自分が命を預けている自身の龍とかつて同じ存在だったのだ。 それが、死してなおアヤカシに取り付かれ、人に牙を向けるというこの状況。 そんな状況は、一刻も早く終わらせなければならない。 彼らは、死した龍たちの憐れな末路に終止符を打たんと、戦闘に移るのだった。 「‥‥輝桜よ、汝が眷属の者どもに安らかなる眠りを‥‥」 輝夜はそう呟くと、自身の龍を励ますように撫でて、一気に急降下を開始した。 それを援護するのは他の竜たちだ。 「さ、いきますえ、倚天」 同じ駿龍だけが出しうる速度で急降下するのは雲母坂 優羽華(ia0792)と倚天だ。 雲母坂はまだ飛び立つ前の死龍を牽制して機先を制す。 そして、鈴梅雛(ia0116)は信頼する龍のなまこさんに優しく、 「相手は、強敵です。なまこさん、頼りにしてます」 と声をかけながら龍の攻撃に備えて。 まず彼らが狙ったのは、龍への先制攻撃とおびき寄せだ。 彼らが駆る龍よりアヤカシと化した死龍のほうが、攻撃力や体力において遙かに勝るのは周知の事実。 たとえ開拓者と龍が協力しても、正面から全ての死龍と闘えば不利になるだろう。 相手は疲れを知らぬアヤカシの死龍だ。 数で勝るとは言え、分断と各個撃破を狙わねばならないと開拓者は考えたわけだ。 故に、危険を知りながら、輝夜と輝龍夜桜は急降下、そして、 「さぁ、死龍共! 勝負じゃ!」 咆哮と共に、先制攻撃の一撃を加え、再び空へと舞い上がるのであった。 輝夜たちを追って飛び上がる竜たち、うち一匹は雲母坂に牽制されているようだ。 だが、輝夜を追って重々しく二頭の死龍がぼろぼろの翼を広げて追いすがる。 その前に飛び出したのは橘 琉璃(ia0472)と、その龍・紫樹だ。 攻撃力に優れた炎龍の紫樹に、橘は 「さあ紫樹、思いっきり暴れても良いですよ」 そう声をかければ、紫樹はまさしく弾丸のように空を駆けて、戦闘の死龍へと躍りかかるのであった。 死龍の機先を制して主導権を奪いつつ、始まった空中戦。 その場に響いて、開拓者達を力づけていたのは楽の音であった。 「‥‥死した体を瘴気に乗っ取られた龍達、もう意識も魂もここにはない、でしょうけれど‥‥」 龍・ノクターンの背にあってオカリナの音を響かせるのはシャンテ・ラインハルト(ib0069)だ。 夜想曲の名の通り黒鱗のノクターンに乗る儚げな紫の瞳の楽士が奏でるのは鎮魂の調べだった。 飛び上がってくる龍を悲しげな視線で見つめて。 「‥‥続きは、解放してから、で。そうできるように‥‥いきましょう、ノクターン」 彼女たちも、戦場へと加わるのであった。 「怯えないように、潰されないように、皆様に‥‥‥高く、潔い魂の力を」 まずシャンテが奏でるのは騎士の曲。 勇壮な騎士の曲を奏でて、前線の仲間たちを援護する。 それを受けて、前線を構築するのは炎龍の紫樹、そして甲龍のなまこさんだ。 「なまこさんは、強い子です。ひいなも一緒ですから、頑張って下さい」 一対一では到底叶わないところなのだが、背に乗せた鈴梅を守ろうとするかのように。 甲龍の厚い装甲を活かしてなまこさんは死龍の一体を引きつけるのだった。 龍単体では太刀打ちできないだろうが、そこを援護するのは巫女の鈴梅。 手傷を負ってもそれをすぐさま回復させて、何とかかろうじて拮抗して。 そして、同じく一匹を引きつけている炎龍の紫樹と橘だ。 接近しすぎないように距離を保ちながら紫樹の炎で応戦するも、 「‥‥これは、やりづらい相手ですねえ‥‥素早いと言うか、動き止めないと駄目かな」 ただでさえ死龍と化して頑丈な上に、元が龍であるためかなりの素早さを誇る死龍。 空中戦担当の龍は五組いるといっても、その半数以上が巫女なので決定打に欠けているのだ。 だが、作戦に抜かりは無い。 仲間の援護と共に、再び急降下攻撃を仕掛けたのは輝龍夜桜と輝夜だ。 長槍を手にした輝夜は、橘と紫樹が炎で気を引いたその瞬間に死龍の翼を狙って両断剣を一閃。 死龍のぼろぼろの翼を長槍の一撃は見事に切り落とし、死龍は眼下へと落下するのだった。 倚天と雲母坂は高速回避を駆使して、一匹をまだ牽制している。 その間に、彼ら空中組が相手をしなければ行けないのは鈴梅となまこさんが相手をしていた一頭だけだ。 彼らは、シャンテが奏でる勇壮な曲の調べの中、一斉に包囲攻撃へと移るのだった。 ●地上の戦い 地上を進み、一頭だけ残った飛べない龍の近くにやってきた開拓者達。 彼らは、改めて見る龍の巨大さに圧倒されていた。 ただでさえ龍は巨大だが、死龍は開拓者の駆る龍よりさらに一回りは大きいようで。 その体はところどころ崩れ落ちているのだが、それでもすさまじい威圧感であった。 「見るからに強そうなアヤカシじゃの‥‥十分気を付けねばならぬの」 大薙刀を手に、そう呟いたのは神町・桜(ia0020)だ。 彼女の横には猫又の桜花が、なんだかもの言いたげな顔で神町を見上げて。 「‥‥危険な依頼に我を連れてくるんでないにゃ」 といって、ぶーたれてみたり。 そんなこといわれてものう、と困った顔の神町に桜花は、あの二人をみてみろとばかりに視線を向けて。 その先は八十神 蔵人(ia1422)とその朋友、雪華だ。 雪華は珍しい人妖だ。ジルベリア風の鎧騎士姿の小さな姿の彼女は、なにやら感激した様子で。 「‥‥まあ♪ 心配してくださるのですか、旦那様がついに私の価値を‥‥」 ずいと一行の前に立ち大斧を構える八十神の背に向けて、身を揉みつつ雪華は感動しているようだ。 だが、そんな彼女の言葉に対して、八十神は。 「‥‥お前小さいからエサと勘違いされて持ってかれたら、連れ戻すのめんどいし」 「早く戦えチクショー!」 げしげしっとその背中を蹴りつけて、きーと怒る雪華であったり。 そんな様子を眺めて、思わず顔を見合わせる猫又の桜花と神町で。 そんな一同を見ながら深凪 悠里(ia5376)は忍犬の二葉の背を撫でて、ふっと微笑むのだった。 戦いを前にした小さな息抜きの一時、それは戦いに突入する前の儀式のようなものだ。 背を任せ、命を預ける仲間と朋友たちとの絆を再確認するかのような一時で。 ゆっくりと死龍へと近づきながら、彼らは最後に作戦を確認するのだった。 「空にはまだ3体か、持久戦は柄やない‥‥仕掛ける」 一匹は地に落とされたようだが、まだ二匹は健在で。八十神がそう一同につげれば、 「え‥‥初手から、いきなりですか?」 思わず人妖の雪華はそう言って。だが、八十神が頷けば、覚悟を決めるたようで。 「なら、まずは目の前のヤツからさっさと叩くとするかの。先手必勝‥‥かの?」 薙刀を握り直しながらそういう神町に、 「先手を取れるなら‥‥になるがにゃ」 と猫又の桜花が目を輝かせて言うのだった。 そしてそのまま気付かれないようにと慎重に、死龍へと近づく一行は間合いへと踏み込む。 死龍の攻撃は、その四肢や尾による攻撃と炎であると聞いている。 すでに一行は、少ない木々の影に隠れながら死龍へと攻め込める距離へと近づいたのだった。 策は十分、あとは勇気だけだ。 だが、仲間と朋友と共に戦場にあって、その勇気を出せないわけがあるだろうか。 「‥‥行こう、二葉」 信頼する忍犬の二葉を見つめて、深凪がそう呟けば二葉も琥珀色の瞳で見つめ返す。 時機は来た、いよいよ攻撃の時である。 はじけるように飛び出した二つの影は、深凪と二葉。 「二葉、散!!」 そして深凪の言葉に応じて、忍犬の二葉は深凪と真逆の方向に走り出した。 シノビと忍犬にのみ可能な高速移動は、死龍を攪乱。 死龍は前腕を振るってたたきつけるように攻撃するのだが、そんなものに当たる深凪ではない。 かるがると躱すと、飛苦無を放って。 死して崩れかけた死龍の体に次々に突き刺さる苦無、だが死龍は攻撃をものともせずに尾を振るう。 その猛攻の合間を縫って、接近していたのは八十神と神町だった。 本来であれば巫女である神町は後方支援担当がふさわしい。 だが、死龍の攻撃が一人に集中するのは危険すぎるということで、 「桜花! 援護は任せたのじゃ! わしは少し前にでる!!」 「毎度の事ながら言われないでもわかってるにゃ! 切り刻めにゃ! 鎌鼬!!」 猫又の桜花の援護の下、薙刀を手に進む神町は、 「‥‥負けぬ! 歪みよ、我が前の敵を屠るのじゃ!!」 術を織り交ぜつつ、果敢に接近して攻めるのであった。 死龍一体への集中攻撃によって、戦いは開拓者有利に運んでいた。 忍犬の二葉は棘蹄鉄によって、一撃しては飛び退る攻撃を加え続け。 深凪は、死龍の死角へと移動し、装甲の弱いところを狙っての攻撃。 神町は接近しすぎないように中距離を維持し、力の歪みを中心に牽制し。 八十神は、危険を顧みず接近しての大斧での一撃だ。 それを援護する回復役は人妖の雪華、そして的確に術で攻撃する猫又の桜花。 だが、相手は痛みを感じぬ死龍であり、いくら攻撃を加えようともその勢いはなかなか止まらず。 そして、大斧を振るって、死龍の前腕を一撃した八十神は気付いた。 いつの間にか、死龍の口がこちらに向けて大きく開かれていることに。 口の奧には、炎の色。死龍は痛みも疲れも無い体を活かして、反撃の炎を放とうとしていたのだ! 「危ない、旦那様!!」 そのことに気付いて、思わず悲鳴を上げる人妖の雪華。 だが、開拓者達は諦めなかった。 「桜花、足下を狙うのじゃ!! 歪みよ!」 「わかったにゃ! 土隆衝!!」 桜花がぺしんと前足で地面を叩けば、どうと地面が盛り上がり死龍の体勢を崩しつつ一撃。 それにあわせた神町の力の歪みが死龍の体を支える足を破壊する。 そして、神町と桜花に呼応するかのように、深凪が水遁を放てば死龍は水柱の直撃でさらに揺らいで。 それらの攻撃にも負けずに放たれる死龍の炎。しかしその死の吐息は、八十神の僅か横を通過する! ちりちりと全身に熱を感じながら、八十神は紅蓮紅葉によって赤い燐光を帯びた大斧を振り上げて。 「これで仕舞いや!!」 巌流による強烈ななぎ払いの一撃は、見事死龍の体を両断するのだった。 ずずんと地響きを上げて崩れる死龍、さすがの死龍といっても体を両断されては終わりだ。 その体からは瘴気が消えて、後の残るのは憐れな龍の死骸だけであった。 ほうと息をつく開拓者の一行。 だが、忍犬の二葉は耳をぴくりと動かすと、ワンと大きく吼えて一行の注意を引く。 みれば、こちらにゆっくりとやってくるもう一頭の死龍、空中組にたたき落とされて一匹だ。 それを前にして、一同は再び戦闘態勢を取る。 「良く気付いたな、二葉。偉いぞ」 深凪はわしわしと二葉を撫でて、再び刀を抜き放って。 「ええい、近づいて来るにゃ! お主は趣味ではないのにゃ!!」 「そう言うでない。援護は任せたぞ!!」 いやそうな猫又の桜花を神町は慰めつつ再び前に出て。 そして、今度も八十神は最初から全開、武器に紅蓮紅葉の赤い燐光を宿しつつ構えて。 「もー‥‥1日2回が限度なんですよ、それ」 「どうせ敵は4匹や、2匹仕留めりゃ半分。充分、大金星やろ」 にやりと笑みを浮かべて、心配する雪華に応える八十神なのであった。 ●戦いの趨勢 精霊達へ、旋律をもって、この願いを‥‥。願いを込めたシャンテの精霊集積が響く。 その音は、龍の背の巫女たちの力となって、炎龍の紫樹と合わせるように浄炎を放つ橘。 その攻撃に一頭の死龍はまともに突っ込むものの、それをものともせずに突進してくる。 だがそれを阻むのは、鈴梅と甲龍のなまこさんだ。 硬質化で防御を固めて、敵の一撃を受け止め、そして反撃を加えて。 一方、雲母坂とその龍・倚天は高速回避を活かしてもう一頭の龍を引きつけ続けていた。 地上に縛り付けるのはさすがに限界だった。しかし彼女らを、輝龍夜桜と輝夜が援護する。 輝龍夜桜は一度大きく飛び上がると、翼を畳んで急降下。 風斬爪による衝撃波で牽制し、続いて龍自身の爪による攻撃と輝夜の槍の一撃。 頑丈で体力のある死龍を相手に、連携することで空中班は互角以上の戦いに持ち込んでいるのだった。 さすがの死龍、その頑丈さは並ではなく、龍も開拓者達も疲弊する。 だが、決定力に欠ける反面、巫女が多いことで援護と回復は万全だ。 鈍重で、賢くはない死龍を相手ならば、負ける要素はなかった。 何度目かの輝龍夜桜と輝夜の攻撃が直撃し、死龍が地上へと落下していく。 それを見て、鈴梅はなまこさんの首をめぐらすと、 「ひいなは、下のお手伝いに向かいます」 大きくそう告げて、地上組へと合流するために地上に向かうのだった。 そして残った最後の一頭を4頭の龍は囲み。 「ほな、一気にいきますえ」 雲母坂が告げるように、一斉攻撃を開始するのだった。 接近しながら攪乱するのは二頭の駿龍。 雲母坂は力の歪みを放ちながら、敵の攻撃を回避する守りの要。 そしてもう一頭、輝龍夜桜と輝夜はその合間を縫って一撃離脱の攻めの要だ。 炎龍の紫樹と橘は、浄炎と炎で中距離攻撃。 いくら頑丈な死龍といえど、これだけの攻撃には太刀打ちできず。 シャンティは、疲れの募る仲間たちが力を振り絞れるようにと奏でる曲が響かせて、 「‥‥これが、私なりの、得意の曲。騎兵の行進、とでも‥‥」 よりいっそう勇壮なその調べに、開拓者をはじめ龍たちも奮い立ち。 一気呵成の攻めで、最後の一頭の死龍は、地上にたたき落とされて倒されるのだった。 そして地上では、1匹目と同じく戦いが続いているのだが。 「蔵人、上に注意! 二葉、引け!!」 深凪が一行に呼びかけると同時に、空から舞い降りたのは焦げ茶の龍だった。 死龍へと、勇猛に飛びかかったのは鈴梅の龍、なまこさんだ。 龍の参戦もあって、続く二頭目も開拓者達の連携で素早く倒されて。 さすがに全員練力は限界近くだ。 だが、練力が尽きかけても連携することで、一匹相手なら十分優位に戦いを進めることが出来る。 そうして、最後の龍も地上と空中両方からの連携攻撃によって倒されたのだった。 大きな怪我を負うこともなく、強敵の死龍四体を退治した一行。 しかし、これは非常にギリギリの勝利だったと言えるだろう。 空中と地上のどちらかにもう少しでも死龍が集中していたらどうなっていたか。 一対一では太刀打ちできないところでその天秤が崩れたとなれば、戦いは一方的に不利となっただろう。 戦いを終えて、全員無事だったとはいえ練力は尽き、全員ぼろぼろで。 「皆さん、お疲れ様でした。しかし、皆さん、ボロボロですねえ」 思わず呟く橘は、 「生き残れただけ、マシでしょうか」 そういって、戦い抜いてくれた龍の紫樹をねぎらうように撫でてやるのだった。 ●死龍の墓 「戦闘は疲れるし面倒だから嫌だにゃー」 まるっと神町の懐に潜り込んで丸くなる猫又の桜花を抱えつつ、 「さて、怪我してるものはおるかの?」 神町は、皆の怪我を治療していた。 といっても、全員練力は限界で、大きな怪我をある程度癒すだけが限界で。 特に、空中で龍に接近戦を仕掛け続けた輝夜や、地上前衛役の八十神の怪我は重く。 龍や忍犬たちも大小様々の怪我を負っていたのだが、一同の顔は晴れやかであった。 「あーまたー明らかに錬力の無駄遣いだったじゃないですかー」 最後まで全開で、練力も気力も消費した旦那様、もとい八十神に対して、不服そうな人妖の雪華は、 「節約するより一極集中が好みやねん‥‥と。あー疲れた、じゃあわしはこれで」 「まだ帰るなバカー!」 と、まるで夫婦漫才のようなやり取りを繰り広げたり。 そして、開拓者達は最後に、鈴梅が死龍たちの亡骸を葬るのを皆で手伝うのだった。 「‥‥どうか、安らかに眠って下さい」 手を合わせてそう祈る鈴梅。 そしてシャンテは、改めて死龍と化してしまった龍たちの憐れな魂に向けて鎮魂歌を奏でて。 ぼろぼろになりつつも、全てを解決した開拓者は心穏やかに帰路につくのだった。 |