【武林譚】修行の日々
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/03/04 23:46



■開拓者活動絵巻
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■オープニング本文

「最近、修行に身が入っておらん!!」
 響く一喝に、思わずひっくり返ったのは、泰拳士の靖風だ。
 隣では、同じように修行をしていた妹の令蓉が心配そうに見守る中、のしのし歩いてくる姿が。
 靖風を一喝したのは師匠の厳芭であった。
 身の丈は六尺を優に超え、全身ハガネのような筋肉に被われた白髭の老人。
 頭はつるつる、白髭ふさふさ、寒い冬でも薄着の超人爺である。
 普段は笑顔の好々爺ながら、闘う姿は鬼のよう、そこで付いたあだ名が白老鬼神。
 かつては大勢の門下を抱える門派の長であったのだが、数名の優秀な弟子に跡目を譲ったらしい。
 そして、今では孫2人を相手に、のんびりと山奥で隠遁生活をしつつ修行の日々だとか。

 そんな厳芭老人が、基礎訓練中に心ここにあらずだった靖風の襟首をがっちり掴むと、
「基礎を軽んずる者は大成せんといつも言っておるだろうに」
 ぶらんと、決して小さくない靖風を仔猫のようにぶら下げつつ、やれやれと溜息をついて。
「おぬしは、また開拓者達の事を考えておるようじゃな。まだ早いと言っておるだろう!」
 ぶんぶんとそのまま靖風を振り回してみたり。
「ちょ、じ、じいちゃん、しゅ、集中するから、と、とめて」
「じいちゃんではない、修行中は師父と呼べと言っとるだろうが!」
「あ、あのおじいさま、じゃなくて、師父! 兄様も反省していますから‥‥」
「ほれ、令蓉にまで心配をかけて、兄として恥ずかしくないのか!!」
 さらに一喝して、厳芭はそのまま靖風をぶん投げれば、靖風は池にぽちゃん。
 ちなみに、池までかなりの距離があったのだが、さすが白老鬼神である。

 そして、厳芭はくるりと令蓉を振り返ると、
「‥‥まったく、修行はとりあえずここまでじゃ。靖風が戻ってきたら火に当たるようにいっておけ!」
「はい、師父‥‥」
 厳芭からどさっと体を拭くための布を受けとりつつ令蓉は頷いて。すると厳芭は
「‥‥あと、靖風に伝えておけ。こんど、ここに開拓者を招いて一緒に修行をしてもらおうと思っておると」
「おじいさま! ありがとうございます!」
「なに、若い頃は外に憧れるもんじゃ、話だけでも聞かせて貰えば、また身が入るようになると思っての」
 そういって、呵々と笑いながら去る厳芭であった。

 ということで、泰国は片田舎にある山奥の道場から、修行のお誘いである。
 謝礼は薄謝だが、泰拳士の修行を体験する良い機会である。

 さて、どうする?
 


■参加者一覧
恵皇(ia0150
25歳・男・泰
羅喉丸(ia0347
22歳・男・泰
柄土 神威(ia0633
24歳・女・泰
嵩山 薫(ia1747
33歳・女・泰
銀雨(ia2691
20歳・女・泰
慄罹(ia3634
31歳・男・志
仇湖・魚慈(ia4810
28歳・男・騎
サーシャ(ia9980
16歳・女・騎


■リプレイ本文

●出会いと始まり
「‥‥噂の白老鬼神、まさか本当に存在していようとは」
 思わず呟く恵皇(ia0150)のように、名を知るものも居たようで。
 とにもかくにも目立ちすぎる老人、それが今回の依頼人、白老鬼神こと厳芭であった。
「よくぞ来て下さった! ま、何もない山奥じゃが、しばしおつきあい願おうか!」
 呵々大笑しつつ開拓者一行を迎え入れる厳芭、その横で靖風と令蓉もにこやかに挨拶するのであった。
「よう、靖風〜。元気だったか? また令蓉に心配かけてんじゃねぇ〜だろうな」
「久しぶり、慄罹さん。‥‥まぁ、たぶんそんなに心配かけてないと思うよ」
 令蓉にじーっとにらまれて、頭をかく靖風に思わず笑う慄罹(ia3634)だったり。

 開拓者たちは修行に参加しつつも、その思惑は様々だ。
 名のある泰拳士の技を見たいという好奇心、我が身に少しでも力をという向上心。
 もちろんそれぞれが現役の開拓者であるからには競争心や反骨心もあるだろう。
 とにかく、それぞれの思いはよそに、修行の日々は始まるのだった。
「白髭鬼神の御勇名は先代の嵩山、我が師より聞き及んでおりました。此度はお目通り叶い光栄ですわ」
「ほほう、ということはお主は嵩山流の所の娘さんだったか、わざわざ丁寧な挨拶、ありがたいことじゃ」
 嵩山 薫(ia1747)の言葉に応える厳芭、彼らは早朝の準備運動中であった。
 準備運動でまずは体をほぐし暖めて。志体を持つ開拓者といえど、基本は大事。
 その後はまずは立ち方の基礎から始まったのである。
 基本的な立ち方の練習から、呼吸法や様々な型の基礎、動きの再確認がまず最初のようで。
 姿勢や筋骨の使い方、全身を使った動きは慣れてこそ使えるようになるというのが厳芭の言葉で。
「お主ら開拓者は、すでに一流の技術を持っているからのう」
 新しく変える必要は無く、さらなる発展のために技を学んでいくと良い、と言うのであった。
「はは、こう言うの何か懐かしいですね」
 仇湖・魚慈(ia4810)はどうやら攻めの力加減が苦手なようで。
「なれば、十分な力を身につけた上で、繰り返し反復訓練をすれば精緻な力加減も可能になるじゃろう」
「「『人は常に未熟、才能は無いのが普通』なんだそうですね」
 そう仇湖は厳芭に応えて。
「基礎ができ、技が染付き、それが分かればようやく始まりです、と」
「うむ、その通りじゃ。わしもこの年まで基礎を延々と続けたからこそ、こんな体格なんじゃよ」
「‥‥おじいさま。茶化さないで下さいまし」
 なんだか自信ありげな厳芭老にそう突っ込む令蓉だったり。

「お師匠様がいて、修行して‥‥フフッ、何だか昔を思い出します」
 令蓉と型の確認を兼ねた寸止めの組み手をしつつ、巫 神威(ia0633)が言えば。
「確かにそうね。こういう地道な修業も久し振りかもしれないわ‥‥初心忘れるべからず、ね」
 同じように嵩山も感じていたようで、そう応えて。
 現役の開拓者として活動している彼らにすれば、修行していたのは過去のことである。
 もちろん今でも鍛錬を欠かさずにいるのであろうが、こうした修行の生活というのは久しぶりのようで。
 そんな会話をしている開拓者達に、そうなんだと視線を送る靖風であったり。
 そんな視線に気付いたのは羅喉丸(ia0347)で。
「どうした、靖風殿‥‥そんなに我々が鍛錬を嬉々としてやってるのが珍しいのか?」
「ああ、いや。技が鈍らないようにするのは大事だと思ってたんだが‥‥実戦が一番じゃないのか?」
 そんな靖風の言葉に、同じ構えから繰り出す型の確認を何度も繰り返す羅喉丸。
 黙々と、自分の動きを確認するように繰り返してから。
「ふむ、積み重ねた功夫は己を裏切らない。最後に頼れるのは積み重ねた功夫だけさ」
 そう告げるのであった。

●交流と戦い
 さて、基礎修行はもちろんみっちりと行うわけだが、時には違う修行も行われるものだ。
 今回はわざわざ他流の開拓者達が沢山いるならば、是非とも交流の組み手をというわけで。
 では、だれから試合をどういう組み合わせでしようと考えていたところで。
「‥‥のう、わしが希望を出して良いかのう?」 
 切り出したのは白老鬼神その人であった。そして彼が示したのはなんと、サーシャ(ia9980)で。
「おじいさま! 相手は女性ですよ? ‥‥確かに体格でいうなら一番近いですけど」
 令蓉が言うように、なんとサーシャは身の丈でほぼ厳芭と同じぐらいという女性で。
 だが、令蓉の言葉を遮って、厳芭は令蓉と靖風の2人に、
「まあ、良いから見ておれ。外の世界というのは広いものじゃ。様々な戦い方がある」
 良いか? と厳芭がサーシャに問えば、私でよろしければ、全力でお相手致しますとサーシャも返し。
「お主らでは、おそらく彼女も全力を出せまい。なかなかに特殊な鍛錬を積んでおるようだからのう」
 そういってにやりと笑う厳芭老であった。
 さて、サーシャは訓練時もにこにこと穏やかであった。
 だが、戦いを前にして、厳芭と向かい合えば、すっと細い眼を開いて本気の様子。
 そして、令蓉のはじめ! という合図とともに両者は真っ向から向かい合い。
 続く攻防に、経験豊富な皆もあっけにとられたのであった。

 真正面から向き合う2人は、がっちりと正面で手を合わせ、手四つに。
 ぎりぎりと力と力のせめぎ合いの結果、もちろん勝利したのは厳芭に見えた。
 だが、即座にサーシャは力を受け流すと、思わず厳芭はぐらりと体勢を崩し、前のめり。
 即座に手四つを解いたサーシャ、前傾した厳芭の腰で掴むと真っ逆さまに持ち上げた!
 そのまま飛び上がって開脚しつつ真下にたたきつけたのである。
 もちろん地面は硬い土で、遠慮無く厳芭老を背中と首からたたきつけたのだが。
 真っ向から喰らった厳芭老はひょっこり起き上がると、
「おうおう、さすがじゃのう! 見たところ投げや関節が得意と見えたが、ここまで派手とは!」
 嬉々として再び向かい合って、続く攻防もすさまじいの一言。
 厳芭の首と足を掴んでサーシャが後方に捻り投げれば、厳芭は空中で身を翻し着地して見せたり。
 最後は、サーシャが渾身の力で厳芭を持ち上げると、そのまま押しつぶすように倒れ込む大技で。
 地面がくっきり厳芭の形に凹むほどの一撃なのだが、それでも厳芭は起き上がり
「いやはや、これ以上受け続けたら、さすがに腰に来そうじゃ!」
「はい、良い練習になりました」
 そういってサーシャは、そのうち厳芭から掴み技を習う約束を取り付けるのであった。
 そして、まだ驚愕から抜けられていない一同を前にして。
「さて、それじゃそろそろ修行はしまいにして、飯としよう。休むのも修行のうちじゃぞ?」
 けろっと言う厳芭に、改めてその怪物っぷりを再確認する孫たちと開拓者であった。

「どうだ? 工夫次第でこんなにうまくなるんだぜ。開拓者になるなら何でもできねぇ〜となっ」
 慄罹が手伝ったようで、久々に華やかな食卓を囲みつつ。
 ワクワクとした様子の靖風と令蓉に開拓者達は、体験談なんかを聞かせていた。
「私が初めて相手にしたのは幽霊アヤカシでしたよ。幽霊でも殴ったりできたので良かったです」
「‥‥そうなんですか。てっきり霞のようにふわふわしたものだとばかり‥‥」
「アヤカシですからね。瘴気の集合体以上、泰拳士の拳も通用すると言うことでしょう」
 巫の話に、お化けとか怖いものが嫌いらしい令蓉が身をすくめながら興味津々だったり。
「‥‥でな、その時こう言ってやったのさ。『すっこんでろ、ドサンピン!』ってな」
「いやはや、気迫で相手を呑むというのは真に大事じゃよ。これ靖風、浮かれすぎじゃ!」
 恵皇の話に、それでそれでと盛り上がりすぎの靖風に拳固で厳芭が応えたり。
 依頼での体験談や、それぞれの技に対する取り組みなど、話は尽きず。
 普段ならば静かな山中の道場も、久々の賑わいを見せるのであった。

●それぞれの想いと拳
「‥‥へんな修行。意味あんの?」
 銀雨(ia2691)はどっしり重心を落とした構えで、呼吸法の訓練をしていた靖風にそういって。
「‥‥内功の修行は重要なんだ。筋力以外にも五臓六腑を鍛えているんだ!」
 へーと、興味なさそうに反論を聞き流す銀雨、どうやら彼女は生粋の実戦主義のようであった。
 もちろん、彼女も一流の泰拳士であり、厳芭の用いる技術や身体操法には好奇心を見せているのだが。
 どうにも甘いところの抜けていない靖風に対して、思わず一言言ってしまうようで。
 続いて型の訓練を繰り返す靖風に対しては、
「‥‥こんな型じゃ、変な形したアヤカシにゃ通じねー」
「‥‥ぐっ。そういうのは型の訓練をしっかりと修めたあとに修行すればいいんだ!」
「ふん、そんな悠長なこと、いざ実戦ってときに言ってられねーと思うけどな」
 そんな感じに火花を散らす様子を、厳芭は面白そうに見つめていたり。

 もちろん、修行の日々は続いていた。
 今日も今日とて、しっかりと基礎訓練の後は組み手のようで。
「‥‥やっぱりそうだとおもったが、全く歯が立たないな。交代だ」
「では、今度は俺が‥‥死中に活を。全力で参る!」
 恵皇に続いて羅喉丸が挑んでいるのは厳芭老である。
 さすがに武の世界に長く身を置く白老鬼神は開拓者達よりはまだ高いところにいるようで。
 といっても、開拓者達も超人である。
 彼らの攻防は、常人から見ればそれだけですさまじいものであるのだが。
 羅喉丸は、靖風に対して己の命を託せる練達の技を持つのも良いと説いていた。
 そして、組み手の中で彼が繰り出したのは、相手の弱点を狙い穿つ一撃。
 鍛錬に鍛錬を重ねただけあって、その全力の拳は、見事厳芭老の水月に突き刺さるのだが。
「見事じゃ! 礼に、わしも技を見せてやろう!」
 その一撃を受けてもなお厳芭老の勢いは止まることなく、足捌きの妙技で即座に羅喉丸の後ろに回り込む。
「なんだ、老師のあの動きは‥‥正直、アレは参考にならないな‥‥」
 思わず恵皇が呟くのだが、やはり技においても練達の白老鬼神には一日の長があるようで。
 かろうじて、反撃の一撃を羅喉丸は回避するのだが、一撃の余波で吹き飛ばされるのだった。

「力じゃ敵わないし、頭つかわねぇ〜と‥‥老師、ご指南よろしくお願いします」
「折角なので、私も一緒に‥‥たとえ2人がかりでも勝てる気がしませんけどね」
 慄罹と仇湖は、2人で協力してどこまで厳芭老を追い込めるかとの練習のようで。
 慄罹は六尺棍、そして仇湖は素手での戦いのようで、対する厳芭は慄罹の希望で同じく棍を手にして。
「ふむ、これはなかなかに強敵じゃのう。ほれ靖風に令蓉、お前らもちゃんと見ておけ」
 役割分担と協力がこれからは大事になるんじゃぞ、と厳芭は言って組み手が始まるのだった。
 攻撃は慄罹、そして防御は仇湖という役割分担の上で、厳芭は2人と良い勝負を繰り広げていた。
 仇湖が心眼すら活用して、かろうじて白老鬼神の一撃を受け流せば、やっと隙が生じて。
 その隙に慄罹は背後へと回り込み、六尺棍の取り回しの良さを活かして近距離からの強烈な一撃。
 だが、背後からの確実な一撃と見えたのを、なんと厳芭は足の裏で受けて見せて。
「おう、今のは危なかったのう‥‥仇湖殿の瞳に慄罹殿の姿が映っとらんかったら、喰らっとったわ」
 これまた非常識なことを言いつつ、改めて協力の重要性を孫たちに教えるのであった。

 さて、そんな中、もうすぐ依頼の期間も終わりとさしかかったある日の午後。
「手合わせと言えど本気でいきますよ」
 巫は令蓉と組み手をしつつ、その横で嵩山は厳芭と指導方法なんかの話をしていた時のこと。
「‥‥そこまで言うなら勝負だ! 私の修行が無駄でないと示してやる!!」
「ふん、そこまで言うなら相手してやるよ」
 銀雨の言葉についにぷっちりと靖風が切れたようで。
 どうしたものかと心配げな令蓉を厳芭はそっと止めて、それなら試合をしたらよかろうと言い出すのだった。
「真剣勝負じゃが、目突きと噛みつき、あと金的は勘弁しとくれ」
 えーとちょっと不満そうな銀雨だったりするが。
「では、はじめ!」
 その言葉と同時に、一同が見守る中、試合は始まったのである。

 初弾は銀雨、鋭く放たれた連打のうち一発が、見事靖風の顔に決まる。
 だが、靖風とて実戦経験は殆ど無いが、訓練は欠かさずに行ってきた。
 その一撃に揺らぐことなく、銀雨に対して軸足払いの蹴りの一撃。
 体勢を崩した銀雨は慌てて跳びすさり、体勢を立て直すが、そこには靖風の回し蹴り。
 かろうじて防御するが、勢いは殺せず、はじき飛ばされてしまう。
 おそらく実力が拮抗していたのだろう、両者の攻防は一進一退。
 怒りに血が上っていた靖風も戦いが長引くうちに、銀雨の腕前に感心をし始めたようで。
 だが、それでもお互いに振り上げた拳を降ろさないわけには行かず。
 疲弊した中で、相打ち覚悟で両者は拳を放つのだが。
「‥‥そこまでじゃ。まあ、これだけ闘えばいいじゃろう?」
 いつの間にか厳芭が両者の拳を掴んで止めていたのだった。
 結局、靖風は銀雨の腕前に感心し、しかも彼女が見よう見まねで訓練を始めたのだと聞いて驚いたようで。
 少しばかり、自分の恵まれた環境に思い至ったようであった。

 そして修行の日々も終わりに近づいて。
「開拓者だって万能じゃないさ。‥‥でも、そう言うのを少しでも減らす為に修行するのは本当に大事だ」
 恵皇に開拓者というものが華やかなだけではないと説かれ。
「‥‥お二人とも、どうかお師匠様を大事になさってくださいね」
 巫は、自分にはもう出来ないことだから、と改めて師の大切さを教えられ。
「非常に興味深い数日間でした。また、こういう機会があればいいですね」
 サーシャをはじめ、一同は再開を約束して修行の日々は幕を閉じるのだった。

「今度こそ、決着をつけましょう」
「ああ、靖風。こっちも望むところだ。ちゃんと修行しとけよ」
 思わず靖風がそう言えば、銀雨はにやりと笑顔でそう応えて。
 そんな様子を見ながら、厳芭はぽつりと言うのだった。
「やはり開拓者はいいもんじゃの。‥‥お前らの修行がもう少し形になれば、一緒にいくかの」
 えっという顔で驚く一行は余所に。
「なあに、お前さんたちも分かっているだろう? 我々の敵には人だけじゃなくアヤカシもいるんじゃ」
 だからこそ、人を倒せる力を得てもなお鍛えるのだと白老鬼神は豪語して。
「またどこかで会えるといいのう」
 今度は酒でも飲もうぞ、と厳芭は恵皇たちに笑いかけて。
 もしかすると開拓者たちの一員として、厳芭に靖風、令蓉の姿を見る日も近いかもしれない。