【氷花祭】祭りのお誘い
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: イベント
相棒
難易度: 易しい
参加人数: 24人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/02/18 20:35



■オープニング本文

 冬は寒いものである。
 寒くなれば、外に出ることも控えてしまうのが人の常。
 しかし、冬だからこそ、雪があるからこそ楽しめる祭りもあるのであった。

 武天の賑やかな街、芳野。そこで毎年行われる祭りがこの氷花祭である。
 芳野の街自体はそれほど雪が多いわけではないのだが、街の近くの山と谷には結構な雪が積もるとか。
 氷花祭では、その雪を使った様々な催しが行われるのである。
 主な会場は、気温が氷点下である、芳野からほど近い山の中腹。
 春の桜と秋の紅葉でしられる六色の谷という景勝地の上流に毎年祭りの会場が設けられるのだという。
 芳野の街からは乗合馬車が走り、観光客のために、六色の谷にある宿は準備を整えて居るようで。

 さて、その名の通り氷花祭は名の通り、雪と氷を見所とした祭りである。
 その一番の盛り上がりは、大小様々な雪像だ。
 街の人間を始め、飛び入り参加やこのためわざわざ遠方から訪れた芸術家まで様々が参加するようで。
 雪と氷で形作る儚い芸術は、毎年多くの観光客の目を楽しませるのだという。

 そんな賑やかな祭りに、開拓者の諸君も参加してみてはどうだろう?
 雪像作りは飛び入り参加も歓迎とのこと。
 もちろん、凝った作品は作れないだろうが、飛び入り参加のみでの人気投票もあるとのこと。
 人気の高い雪像には、賞金までもが支払われると言うから太っ腹である。

 また、普通に祭りを楽しんでももちろん良いだろう。
 大会会場には、毎年使われる六色楼という大きな建物が設けられている。
 三階建ての豪華な建物では、芳野の街の料理人たちが腕を振るっているとのこと。
 また、二階と三階は、雪像や雪を眺めてくつろげる座敷になっているのである。
 そして、今年は芳野の花街の有名な女郎たちが、給仕を交代で務めるとか。
 もちろん、普段とは違いただの給仕としてだが、その美貌は変わらない。
 六色楼にて、雪景色を愛でつつ、美女の給仕で熱い酒を飲むなんて贅沢も楽しめるようである。

 さて、どうする?


■参加者一覧
/ 天津疾也(ia0019) / 水鏡 絵梨乃(ia0191) / 劉 天藍(ia0293) / 奈々月纏(ia0456) / 志藤 久遠(ia0597) / 奈々月琉央(ia1012) / 礼野 真夢紀(ia1144) / 御樹青嵐(ia1669) / 弖志峰 直羽(ia1884) / ルオウ(ia2445) / 黎乃壬弥(ia3249) / 瀬崎 静乃(ia4468) / 倉城 紬(ia5229) / 珠々(ia5322) / 神鷹 弦一郎(ia5349) / 設楽 万理(ia5443) / ブラッディ・D(ia6200) / 雲母(ia6295) / からす(ia6525) / 天ヶ瀬 焔騎(ia8250) / 一心(ia8409) / 和奏(ia8807) / そよぎ(ia9210) / 夏 麗華(ia9430


■リプレイ本文

●のんびり気ままに
「姉様、ちぃ姉さま、今日は氷花祭というお祭りを見に行きました」
 六色楼の三階にて、手紙をしたためているのは礼野 真夢紀(ia1144)である。
 眼下の雪景色を見つつ、温かいうどんを食べた後の幸せな一時。
 まったりと筆も進むようである。
「そり滑りしたり、雪合戦したり、雪像作りに飛び入り参加してい〜っぱい雪兎作って‥‥」
 ふと下を見れば、自分が作った雪兎がちょこんとこちらを見上げているようで。
「‥‥ちい姉様なら雪見酒ですかね? 綺麗なお姉さん達が給仕してましたし」
 さて、そんな風に手紙をしたためる彼女が見つめる先は、雪像作りの会場であった。
 多くの開拓者たちも参加して、わいわいと賑やかに雪像が作られている。
 しかも僅かながら賞金が付くとあっては、なかなかの力作も散見されるようで。
「‥‥よし、完成だ」
 ぺたぺたと雪像の形を整え終わり、作品を見直して満足げに頷いているのは水鏡 絵梨乃(ia0191)。
 力作完成という面持ちで彼女は、六色楼に戻りお茶を受けとるとほれぼれと作品を見ていたのだが。
 そこにやってきたのは、どうやら雪像会場の係の人間で。
 作るのを見ていたのだろう、彼女の姿を見かけて近寄ってくると、
「あの、作品に一応看板をつけることになっておりまして‥‥それでその、あれは一体なんでしょう?」
 困った顔の係員、それもそのはず、雪像は、それは見事の横長真四角の雪の塊であったからだ。
 だが、困惑顔の係員もなんのその、水鏡はえへんと胸を張りながら、
「ん? あれが何かって? それはもちろん、芋羊羹に決まっているだろ」
 きっぱりと言い放ったのだった。
「どこからどう見ても、立派な芋羊羹だ!」
 確かに、言われてみれば芋羊羹の雪像である。まごう事なき立派な芋羊羹の雪像だ。
 そう言われて係員は、持ってきた板にさらさらと芋羊羹と書くと、それを芋羊羹雪像の前に設置。
 見れば、道行く人々は皆、雪像を遠くから見ると不思議そうな顔をして。
 そして近寄って、看板を見て なるほど という顔をして去っていくのであった。
「うむ、良い出来だ‥‥」
 そう言いながら、水鏡は芋羊羹を買い求め、もくもくと食べつつ満足げに雪像を見守るのであった。

「これでよし‥‥」
 手にしているのは、木と皮で作ったなにかの型。それを満足げに見やるのは設楽 万理(ia5443)。
 普段の薄着を封印して、今日はジルベリア産の最新流行であるロングコート姿の彼女。
 手に持った型を、むぎゅっと雪に押しつけると、そこには大きな雪兎が。
 あとは、持ってきた赤い実を目の所にちょんちょんとあしらえば、立派な赤い眼の雪兎が完成である。
 むぎゅ、ちょんちょん、二羽目。むぎゅ、ちょんちょん、あっというまに三羽目。
 そうして、あっというまに量産されていく雪兎の群れに、いつしか子供たちが集まっていた。
 そんな子供たちに、設楽は持ってきた型を渡してあげて。
 ますます量産の速度は上がっていくのだった。
 そして暫く経てば、祭り会場の一角にはいたるところに雪兎が大量発生。
 白い雪に映える赤い瞳が可愛らしい、雪兎の群れと相成ったのである。

 もちろん、こうした可愛らしい作品だけではない。
 自らの芸術性を発揮せんと、気合いを入れた参加者の姿もちらほら。
 雲母(ia6295)も、自分の器用さを行かして賞金のためにと今回は氷像作りに挑戦だ。
 雪を水や塩で固めつつ作る雪像は、ある意味粘土細工に近い作業だ。
 それに対して、氷像は、あらかじめ用意した氷塊を削り出す、言うなれば氷の彫刻で。
「溶けてしまうから幻想的であり儚い物だ」
 氷を、胡蝶刀でさくさくと削りつつ、煙管を横銜えにしたまま言う雲母。
 寒いのは嫌いと言いながらも、趣くまま豪快に削っていれば、いつしか観客が。
「これは‥‥すごいですね」
 思わず感心して声をあげたのは一心(ia8409)だ。
 細工物に興味があるのか、興味津々といった面持ちで氷像を見ていて、思わず質問をしてみたり。
「‥‥ここの部分とか、どうやってるんですか?」
「ん? ここは直接削ると割れてしまうから、あえて少量のお湯を使って‥‥」
 と思わず、細工話に花が咲いたり。
 そして、暫く経てば、ようやっと雲母の作品も完成して、それを満足げに見て一言。
「作品名は‥‥猫か」
 ずいぶんと単純な作品名だが、2匹の猫又を象ったなかなか見事な氷像が完成。
 周囲からは拍手が起きたのであった。

 さて、そんな風景を眺めつつ、のんびりとくつろぐ面々も居る。
 やはり寒い冬だからこそ、暖かいところで雪見も乙なものなのだろう。
「おまちどおさま、熱いですから気をつけて下さいね」
 六色楼にて、土地の者が出す店に混じって、独特な香辛料の香りを上げている出店が一つ。
 夏 麗華(ia9430)による泰国料理であった。
 本人も、色気を振りまきつつ、熱々で辛い料理はなかなかの好評のようで。
 なにやら、出張でやってきている花街の女性たちに、特に大人気のようであったり。
 さて、賑やかに騒ぎ熱い料理をほおばるのも祭りの花ではある、落ち着きが欲しいと気もあるだろう。
 そんなときは、二階に設けられた特設の茶席は如何だろう。
「冷えたろう。さあ、飲むといい」
 熱く冷えた濃いめの抹茶の香りが心地よく落ち着くそんな茶席の主はからす(ia6525)である。
 見た目は少女であるが、もてなしの心も十分で、こちらは祭りに来たご老人たちに大人気の模様。
 しかし、彼女は腕利きの弓術師でもある。
 眼下に、不届きな姿があろうものなら、鋭くうなりを上げて飛ぶのは特性雪玉。
 もちろん、雪玉で騒ぐ酔漢たちの目を覚まさせつつ、もてなしの心は忘れない。
「ああ、何でもないよ。もう一杯いかがかな?」
 平和な一時が恋しくなったら、是非来ると良いだろう。

●仲間と、恋人と共に
 さて、しんしんと降り積もる雪は、身も心も冷たくするものだ。
 だが、こうして祭りともなれば、雪は儚く美しいものに替わり。
 寒さだって、恋人と身を寄せる口実になるのだ。

 連れだって2人で雪像を見て回る姿。
 志藤 久遠(ia0597)は周りを物珍しそうに。
 そして隣のブラッディ・D(ia6200)は、そんな志藤をなんだか悪戯っ子の表情で見つめていて。
「‥‥隙あり、えいっ!」
「‥‥ブラッディ殿、悪戯が過ぎますよ?」
 と、志藤はブラッディに雪玉を投げつけられて、2人は巫山戯つつ雪合戦に。
 しばらく楽しげに投げ合っているのだが、ほどほどできりあげて。
「‥‥そろそろ、引き上げましょうか。風邪を引いてもなんですから、ね?」
 と志藤が言うのをブラッディも受け入れて引き上げて、わしゃわしゃと志藤に拭かれるブラッディ。
 だが拭かれ終わると、ふとブラッディは一大決心した様子で、志藤の額に口付ける。
「く、久遠‥‥俺は妹にはなれないし、今のままじゃいられない」
 固まる志藤、だが彼女もぽつりと応え、
「‥‥やはり、私の態度は酷でしょうか? 拒まないだけで、応えてはいないのですから」
 その言葉に、首を振るブラッディは
「俺も頑張るから‥‥ちゃんと前に進もうと思うから‥‥だから俺のことちゃんと見ていて」
 そして、志藤の手を取って笑いかけながら
「絶対好きになって貰うからな!」
 といったのだった。外は雪降る中、なかなかに複雑なようだが熱々な2人である。

 さて、恋人未満が居れば、しっかりばっちり恋人も祭りに来ていたりもする。
「さて‥‥評判だって言うけどどんな料理なんだろうな?」
「楽しみやね〜‥‥でもまだ、お料理きてへんよーやし、これ飲んで待ってよーか琉央」
 琉央(ia1012)と藤村纏(ia0456)は、六色楼の二階座敷にてまったり祭りを満喫中であった。
 頼んだのは2人用の鍋料理のようだが、その前にまず一献と雪見酒。
「そうだな。のんびり待ちつつ、まずは呑むか」
「なぁあ! う、ウチも飲んでええのん? ‥‥い、戴くわ〜」
 と、仲良しな様子である。
 そしてお酒も進み、料理も食べ終われば、あとは2人で外の景色なんかを眺めつつ。
 丁度眼下では、雪像作りの最中のようで、いろいろと作りかけの雪像が見られるようで。
「‥‥はわ、綺麗やね‥‥なあなあ、皆何を作ってるんやろかな〜」
「んー、あれなんかは猫っぽいなぁ‥‥ふあぁ」
 酒も入り、お腹が一杯になれば、暖かい室内は心地よく、いつしか琉央は藤村の膝枕で寝入っていたり。
 そんな彼氏の姿を見つつ、藤村ものほほんと祭りの日を楽しんで、ゆっくりと時は過ぎていくのだった。

 六色楼で楽しんでいるのは恋人たちばかりではない。
 1人旨い酒を傾けつつ、のんびりと眼下の雪像作りを楽しんでいるのは天津疾也(ia0019)だ。
「おーおー、寒いのに元気やなあ。まあ、俺らはこっちでうまい酒でも堪能させてもらおうか」
 彼の視線の先、寒そうな外では気合いの入った雪像作りが進んでいたり。
「よーし、気合い入れていくぜ〜!!」
 どんどん雪を積むのはルオウ(ia2445)、力仕事は任せろと、あっというまに大きな雪の山が完成。
「そこ、積み過ぎです、もうちょっとこっちに」
 指示を出しつつ、ぎゅうぎゅうと雪を固めているのは瀬崎 静乃(ia4468)だ。
「えっと、ここはこんな感じでしょうか?」
 ためつすがめつ、慎重に雪の塊を削って形を作っていくのが倉城 紬(ia5229)。
「おお‥‥これは良い雪だ」
 普段の仏頂面は封印して、細工道具を総動員しつつ細かい装飾をしているのが神鷹 弦一郎(ia5349)だ。
 そして彼らが作る大きな雪像の周囲に、ちいさな雪兎を量産しているのがそよぎ(ia9210)。
「これですっごくかわいくなったの」
 はてさて、何が出来たのかというと、おおきなおおきなもふらさまであった。
 倉城と神鷹が丹念に作り上げた細工によって柔らかくも神々しいもふらさまの大きな像が完成し。
 その周囲には、ルオウや瀬崎にそよぎが作った小さな雪兎がわんさかと可愛らしく。
 そして、なかなかの評判となった雪像を作った一行は、完成を祝いつつ六色楼で、一息。
「はー、お茶があったかくてすごくおいしいの。お腹もすいちゃったから何か食べたいな」
「そうですね、それじゃみんなでご飯にしましょうか」
 そよぎが言えば、その通りだと頷く倉城。
 こうして、もふら制作組の面々は、賑やかに宴会へと突入するのだった。
「いやー良いのが出来たな! 皆で力と知恵だしあったからこそだし、嬉しいよな!」
「うむ、まったくだ。こういうのは皆でやるからこそ面白いのだ」
 ルオウの言葉に頷く神鷹、そしてその横では、倉城の膝の上で撫でられつつ、ぬくぬくしている瀬崎が。
 そんなみんなでそよぎのどこか調子はずれながら楽しげな笛の音に合わせて、盛り上がるのであった。
 もちろんそんな宴となれば、周囲の人間も巻き込むものだ。
「お、飲み比べか? そんなら受けて立とうやないか」
 先ほど、彼らをみつつ酒を飲んでた天津なんかも巻き込みつつ。
 そしてぱたりと酔いつぶれた天津は、美人の給仕さんに開放されたり。
 とにもかくにも、賑やかな宴会であった。

●夜更けに
 この氷花祭は数日間続くわけで、夜間も火が絶やされることなく。
 雪見と月見を一変に楽しもうなんてお客もちらほらといるなか、雪像の間を進む影が。
「‥‥今宵の月は、欠けているが――‥‥悪く無い」
 手にした酒を呷りつつ、そう呟いたのは天ヶ瀬 焔騎(ia8250)である。
「今年の雪も、良い雪花を咲かせたな‥‥」
 誰も見る者は居ないが、まるで舞台役者のような彼は、ふと思い立った。
「よし、皆が驚くものでも作ってみよう。たまに創作意欲に燃える志士、天ヶ瀬だってコトで、な」
 というコトらしく、徹夜で作業が開始されたのであった。
 そして、空が白む頃、気合いと根性で作られた作品が完成したのである。
 そんなところへ丁度やってきたのは、和奏(ia8807)だった。
 朝日にきらきらと照らされて輝く雪像を見ていれば、なにやら新作が一つ。
「‥‥これは‥‥」
「もちろん、俺の姿だ」
 きっぱりと天ヶ瀬、その前には、たしかになんとなく彼の胸像っぽい雪像が完成していた。
 といっても、雪像なので細かいところはつぶれているし、ちょっと愛嬌がありすぎる姿で。
「‥‥雪だるまや雪うさぎ以外にも色々作れるのですね」
 思わず和奏は、雪像と天ヶ瀬の姿を何度も見比べてみたりするのであった。
「‥‥‥芸術ですね」
 ぽやっと呟く和奏には、どうやらちょっと前衛的すぎるようである。

 そして、祭りものんびりと進むわけで。
「天さん、耳をつけると可愛くなりますよ」
「そうか、それならここをこうしてっと‥‥」
 ぺたぺたと雪だるま作りをしている姿は、珠々(ia5322)と劉 天藍(ia0293)だ。
 劉はなかなか凝り性なようで、適当な雪だるまもなんだかいつしか立派な雪像に。
 だが、そんな彼の後ろの忍び寄る影があった。こっそりと近づく弖志峰 直羽(ia1884)である。
 彼はどっさりと雪を救うと、それを劉の背中にぽい。
「うぉわ!! ‥‥直羽っ! お前の仕業だな!!」
「はっはっは、油断してる天ちゃんがが悪いんだぜ!」
 ということで、2人は雪合戦開始となったのである。
 遊び半分とはいえ、志体持ちの開拓者2人の雪合戦は、なかなかの迫力。
 それをじっと見ていたのは珠々だ。友人同士の雪合戦を止めるつもりなのだろうか。
「‥‥ふむ、なるほど‥‥雪ではああやって遊ぶんですね」
 違った。混ざるつもりだ。
 ということで、ここはシノビの真骨頂、お互いの攻防に一生懸命な劉と弖志峰に忍び寄る珠々。
 彼女は、両手に構えた雪玉をしゅぱしゅぱ投げると、2人をあっというまに雪まみれにしていくのだった。
 だが、白熱していけば、いろいろと手元が狂うもので。
「えやっ! シノビの投げを見せてさしあげ‥‥あ」
 本気で珠々が投げた両手の雪玉は、素晴らしい速度で六色楼の方に。
 誰かに当たったら大変とばかりに、慌ててそれを追いかける3人であった。

 さて、時間を少し戻してみよう。
 3人がわいわいと雪だるまを作ったりしているのが見える六色楼の一角にて。
 のんびりとくつろぐ2人の姿があった。
 花街のきれいどころの酌を受け、旨い鍋と上等な酒を楽しむ大人の姿。
 黎乃壬弥(ia3249)と御樹青嵐(ia1669)である。
「‥‥やっぱり、むずかしいものですか?」
「ああ、見た目程簡単じゃないぞ‥‥まぁ、ありゃいい子は産めると思うが」
 どうやら御樹の相談に黎乃が応えているという様子である。
 まぁ、なにやら黎乃の方は、それ以外の邪念もあるようで。
 なにかを掴むようにわきわき手を動かしているのはご愛敬。
 といっても、その様子には御樹が首をかしげつつ、ははぁ、肝に銘じましょうなんて応えて。
 さすがにその様子には、黎乃もふっと苦笑して。
 (ああ、俺にもこんな若い頃があったなぁ)
 思わず遠くに視線を向ける黎乃、先輩が後輩を教え諭す格好の良い場面であった。
 だが、黎乃の視線の先から、ひゅるひゅると飛んでくるのは雪玉だった。
 あっというまに、すぱーんと顔面ど真ん中に命中。
 しかもご丁寧に雪玉は二個で、となりの御樹もど真ん中に命中したようで。
「‥‥すいませぇーーん‥‥雪玉当たりませんでしたか〜‥‥って青ちゃん」
 慌てて駆け寄ってきた弖志峰は、雪玉が命中したのがよりによって、友人の2人だと気付いたようで。
「‥‥雪も綻ぶ、イイ男ですね?」
「また、お前か直羽〜〜〜!」
 御樹がまず弖志峰を追いかけて走り出せば、黎乃も俺も混ぜろと参戦して。
 凄い勢いで弖志峰が2人を引き連れて走って戻ってくるのをみた珠々は改めて雪玉を作りつつ。
「‥‥‥当たっちゃってましたか」
 ということで、再び雪合戦が再開されるのであった。

 途中、珠々がすぽっと消えたので、シノビの技かと思ったら単に雪に埋もれただけで。
 ぼふっと腰まで雪に埋まってわたわたしている珠々を皆が笑っていたら、反撃の乱れ投げを受けたり。
 いつの間にか他の開拓者が混じって、からすたち弓術師の狙撃雪玉が大戦果をあげたり。
 旗取りの雪合戦大会に発展したりと、大いに盛り上がったのである。
 そんな中で、発端となった劉と弖志峰は、黎乃と御樹からしこたま雪玉を受けて。
 その後、一行は冷えた体で六色楼へと戻ってくるのだった。
 迎えるのは、暖かい空気と美味しそうな香り。
 夏の屋台で泰国料理なんかを買いつつ、一息ついて。
「‥‥うーん沁みるように美味いな」
「甘酒、おいしいです‥‥」
 ほうと劉が息をつけば、珠々も甘酒をすすりつつ。
 熱燗を幸せそうに煽る大人たちをじっと見る珠々に、弖志峰が
「タマちゃんも、年頃になったらこの美味さが分かるよ♪」
「む、タマちゃん呼び、禁止です!」
 と、珠々に怒られてみたり。そしてますます御樹に怒られる弖志峰。
 そんな光景を見つつ、お互いに笑いあうのであった。

 開拓者の幸せな休日の一時。
 恋人や仲間と共に、もちろん1人でも、それぞれが自分自身なりに楽しみを見つけていて。
 危険な開拓者稼業も、時にはこんな息抜きも必要だ。
 こうして、幸せで楽しい雪の祭りの日々はすぎさっていったのであった。