沈黙の旅籠
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや易
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2009/12/26 17:42



■オープニング本文

 開拓者は全員が全員、個性的な格好をしているだろうか?
 ‥‥たしかに開拓者の中にはとても目立つ格好をしているものが多いのは事実。
 だが、普通の格好をしていれば一般の人と見分けが付かないのも真実である、たぶん。

 貴方は今回、なんの因果かとある街道の外れの旅籠に泊まっていた。
 その場所は、大きな川の前にぽつりと立っている旅籠で。
 偶然、ここ数日の長雨で川が増水、川を渡りたい人達は、足止めを喰らうことになった。
 そのため身動きのとれない人々が大勢その旅籠には滞在していたのだが。
 あなたは、偶然その旅籠に居合わせた開拓者達である。
 たまたま、それほど目立たなかったのだろう。
 周りの誰も、あなたが開拓者であると気付くこともなく。
 ただただ、ひっそりとその旅籠で、川の増水が収まるのを待っていたのだ。

「おい! 動くな!! 死にたくなかったら大人しくしていろ!」
 突然の怒声とどたどたという足音。
 まだ続いていた長雨の中、雨に濡れた外套を跳ね上げて、旅籠に踏み込んできたのは10数名の男達だ。
 手には刃物をぎらつかせ、身なりはいかにも盗賊といった出で立ち。
 見れば、入り口はおろか裏口にも人の気配と怒声が。賊たちは旅籠を囲んでいるようであった。

 さて、開拓者として死線をくぐったあなたには、優れた感覚や人一倍働く勘があった。
 盗賊たちが踏み込んでくる、その瞬間にとっさに身を隠したのだが。
 どうやらその選択は間違っていなかったようだ。
 あっという間に、大勢のお客たちは盗賊たちに脅されて、数カ所にまとめられているようだ。
 この大きな旅籠は単純な構造をしている。
 奧に長い長方形をした建物で、二階建て。
 正面は入り口と、板張りの玄関、そして階段があり、その脇からまっすぐ奧に1本の廊下が。
 廊下の左右には部屋が並び、現在人質となった客は、まず一番玄関に近いの大きな部屋に集められていた。
 廊下の奥には、台所と土間があり、そこから裏口が。
 この台所周辺には、宿の従業員が集められて。
 どうやら、客と従業員にはそれぞれ、4、5名ずつの見張りがついているようだ。
 残る数名の盗賊たちは、それぞれ二回を見回ったり、金目の物を探したり。

 そんな状況の中、あなたたち開拓者はなんとか盗賊たちの隙を突いて、人質を解放しなければならない。
 幸い、盗賊たちは食い詰め者ばかりで、志体を持っている腕利きもいないようだが、油断は禁物。
 上手く、事態を収拾して盗賊たちを倒し、客と従業員を解放すれば、謝礼を得ることが出来るだろう。

 さて、どうする?


■参加者一覧
鷲尾天斗(ia0371
25歳・男・砂
純之江 椋菓(ia0823
17歳・女・武
弖志峰 直羽(ia1884
23歳・男・巫
夜魅(ia5378
16歳・女・シ
秋冷(ia6246
20歳・女・シ
痕離(ia6954
26歳・女・シ
朱麓(ia8390
23歳・女・泰
山吹(ia8583
21歳・男・シ


■リプレイ本文

●始まりは唐突に
 ざあざあと止まない雨の中、ぽつりと灯りのともる旅籠にて。

「向こう岸へ渡れないのは困りましたが‥‥こうしてゆっくり雨音を聴くのも、たまにはいいですね」
 自分の部屋にて、静かに寛いでいたのは純之江 椋菓(ia0823)。
 長雨に足止めされながらも、待てば海路の日和ありとゆったり構えている様子で。
 彼女を始め、この宿には数名の開拓者が足止めされていた。
 そして、開拓者達はみな志体を持つが故に、常人を凌駕する感覚を備えている者も多いのだ。
 それ故に、開拓者達は気付いた。風情ある雨音とは違った剣呑な物音が近付いてきていることに。
 こんな雨の中、急ぎ足で旅籠へと近付いてくる足音が、しかも複数聞こえている。
 その音には、明らかに武装していると思しき金属のふれあう微かな音も混じっていて。
「‥‥如何やらゆっくりもしていられぬらしい‥‥」
 呟いたのは秋冷(ia6246)、外套を纏うと窓からひらりと外へ。
 そして屋根の上に登ると、そこには先客の姿が。
「‥‥おや、秋冷殿。まさかこんな所に遭遇してしまうなんてね‥‥」
 そう秋冷に言って苦笑を浮かべたのは痕離(ia6954)だ。
 そうして2人のシノビが屋根の上で、顔を合わせたときにちょうど、男達は旅籠へと踏み込んでいったのであった。
「‥‥あれ、何か騒がしいような」
 そう純之江が雨の中でも感じたのは、盗賊達の大声、客や従業員の悲鳴が聞こえたからだろう。
 ちょうど玄関先で案内して貰おうと思っていたときに、襲撃があり逃げまどう人に押し流されて、混乱のなかで食器棚の影に身を隠したのは朱麓(ia8390)。
 賊達は裏口からも同時に踏み込んだようで、逃げようとした人々は次々に引っ立てられ脅されて連れて行かれるようだ。
 その様子を窺う朱麓は、機を窺っていた。
 今はまだ混乱の最中、動き出すにはまだ早い。
 そして、同じように機を窺う影がもう一つ、こちらは二階廊下の天井裏だ。
 面倒なことになりました、と状況に対して頭を悩ませながらも、
「今日事を起こした賊が不幸なのか、居合わせてしまった私が不幸なのか‥‥どっちもですね」
 そういって覚悟を決めれば、すでに瞳には決意と氷の鋭さが。
 夜魅(ia5378)はシノビの頭に思考を切り換えて、冷静に様子を窺っていた。
 二階には、数名の客が残っていて、新たに引っ立てられていく銀の髪の女性がいたり。
 実はその女性は女装したシノビの山吹(ia8583)で。
 どうやら策があるようで、賊達は全くそのことに気付いていないようで。
 そしてそんな中でも、何事もないかのように酒を呷る男の姿もあって。

「やれやれ‥‥折角のんびりしていたって言うのに」
 傍らに置かれた槍は、総身鉄作りの業物、長槍羅漢。それを前にどっかと構えて酒を呷る男は鷲尾天斗(ia0371)だ。
 まだ賊達は自分たちの作戦の成功を疑っていなかった。

●展開は激しく
「‥‥何か外がめっちゃ騒がしいんですけど‥‥」
 空きっ腹を抱えて、こっそりと外を窺い見れば、廊下にも外にも怖い顔の盗賊達がぞろぞろと。
 そんな様子を見て、はぁーと深い溜息を零すのは弖志峰 直羽(ia1884)だ。
 何の因果か、たまたま雪隠に入ったところで襲撃があったようで。
 雪隠から出るにでれないこの状況。いかんともしがたい事態であった。
 だがそんな中でも、生きているならお手洗いには行くものだ。
 ふらりと賊が、雪隠に入ろうとしたところに向けられたのは、術であった。
 力の歪み、援護や回復が専門である巫女のもつ数少ない攻撃の術である。
 弖志峰が放ったその術は、気を抜いていた賊に直撃すると、賊は揺らぐ空間に節々を捻られて転倒。
「用を足す時、風呂に入る時。それは人間が最も無防備になりやすい時なのさ」
 弖志峰が言うとおり、予想もしない場所で仕掛けられた反撃の一撃。
 これが、開拓者達の巻き返しの最初に一手となったのであった。
 まだ賊達は、自分たちが狩る側から狩られる側へと切り替わったことに気付いていないのである。

 端の小部屋にて、賊の1人が金目の物を捜して踏み込めば、薄ぼんやりとともる行灯の明かりと敷かれた布団が。
 どうやら、布団の盛り上がりから見るに、小柄な人物が寝ている様子。
 ゆっくりと賊が近付くと‥‥‥ぽんと肩に手が。
 はっとした次の瞬間、ぐるりと回る天地。
 脳天から畳に打ち付けられたその賊は、声も上げずに気絶させられたのだった。
 純之江は、叩き伏せた賊を見下ろしながら、
「‥‥いきおい倒してしまいましたが‥・・さてどうしましょう」
 と首を捻っているのだが、ころがる賊をみていてふと気付いたことが。
 見れば、この賊は覆面をしていてさらに純之江と同じぐらいの背格好である。
 となれば、作戦は一つ。
 数分後、縄でぐるぐる巻きにされた賊は押し入れに放り込まれ猿ぐつわ。
 純之江は、盗賊の衣装を着込んで、偽装をしてから、廊下に顔を覗かせるのだった。
 するとちょうどそこに、同じような黒尽くめの外套を着た他の賊が。
「おお、おまえか。どうだ、なんか金目の物はあったか?」
 いけしゃあしゃあと聞く賊に対して、賊の振りをした純之江は、こくんと頷いて、手招き。
 そうかそうかとついていくのんきな賊は、部屋に連れ込まれては、うっと一言呻いて。
 どうやら当て身で気絶されられ、そのまま押し入れに追加されたようであった。
 こうして、内部でもこっそりと数が減らされていく賊なのだが、まだ賊たちは異変に気付いていないようであった。

 二階の一番奥の部屋にて。
 どやどやとふみこんだ数名の賊はぎょっとした。
 なぜなら、すでに他の部屋でも大いに騒ぎを起こして、しばらく経っているのに。
 その部屋にいる男は、堂々と部屋のど真ん中で酒を呷っているからである。
 どうやら部屋の男、鷲尾の剛胆な態度に気圧されているようである。
「よう、俺の部屋に何しに来たんだい?」
 鷲尾はそういって、賊達に視線を向ける。
 そして、
「折角来たんだ、ほら」
 ぽいと杯を盗賊達に向かって放った次の瞬間、賊の1人の胸からは槍の柄が。
 座ったままで、武器を振るう座敷払の技をもって、目にもとまらぬ早さで槍で貫いたのである。
「なっ‥‥」
 言葉も出ない他の賊達を前に、
「俺は今非常に機嫌が悪い。だから‥‥少し教育してやる。お前らの正しい所と間違いを教えてやろう」
 そういって、更にもう1人賊を槍で打ち据えるのだった。
 直ぐに響き渡る、賊達の怒号と剣戟の音。その事に賊達は俄に騒然となった。
 そんな混乱の最中、今度は玄関に新たな影が。
 だが、賊達は気付いていなかった。
 この混乱の最中、影のように現れては、賊達の数を減らしている者がいることに。
 それなりの広さがある旅籠で、うろうろと動けば賊も単独行動になることもあって。
 そんなときに、不意に天井裏から滑り降りるように飛び降り、早駆で瞬時に背後を取って一撃。
 膂力が無くとも、鋭さと早さを備えた打撃であれば、一打にて相手を無力化するには十分で。
 そうして次々に賊を刈り取っていったのは夜魅であった。
「油断しすぎです‥‥ふぅ‥‥後どれくらいでしょうかね」
 そうして混乱のなか、再び夜魅は影に消えていくのだった。

 そして新たな混乱が起きていた玄関先。
 最初は、怪しげな笛の音が聞こえてきたのであった。
 何事かと見に出た見張りは、瞬時に駆け寄った影に一撃で仕留められ。
 戻ってこない見張りをいぶかしんだ他の賊が顔を出せば、そこに投げかけられたのは外套だ。
 秋冷が投げつけた外套を被って視界を塞がれた瞬間、当て身を一発。これも一撃であった。
 そうして2人は、玄関近くの大部屋へとやって来る。
 ここには、気配からも分かるように多くの客が集められているようであった。
 故に、見張りも多かったのだが、鷲尾が二階で起こした混乱などで随分と数が減ったようで。
 それを見た秋冷と痕離は即座に部屋に踏み込む。
 賊は咄嗟に、近くにいた女性客を人質に取ろうとしたのだが。
 次の瞬間、その賊は腕を強烈に、つぶてのような物で打たれるのだった。
 そのつぶては、痕離が放った賽子、どうやら、女性客を傷つける行為が痕離の怒りに油を注いだようだった。
「少々おいたが過ぎた様だね‥‥お仕置きだ」
 痕離は早駆で瞬時に間合いを詰めると、鉄拳制裁の一撃で鼻っ柱をぶっ飛ばすのだった。
 そして、もうひとり部屋に残っていた賊は、その痕離へと斬りかかろうとするが。
「おい、動くな。死にたくなかったらな」
 背後から投げかけられた声と、喉元にひやりとした感触が。
 いつの間にか背後に回った秋冷は、背後から刀をぴたりと賊の喉元に当てていたのだった。
 あっという間に無力化された入り口付近の賊たちは、縛られるのだった。
 だが、どうやらまだ裏口近くに、賊達の頭目格を含めた男達が残っているとのことであった。

「‥‥やあ、こんにちは盗賊さん方」
 妖艶な笑みを賊に向ける朱麓、彼女は機を窺っていたのだが、混乱に乗じて数名の賊を引きつけて裏口周辺の攪乱に成功したのだ。
 周りを囲むように動く賊を前に、余裕を崩さない朱麓。
 そして更には、
「死にたい奴には悪いけど、あたしはあの人と同じで無駄な殺生はしないって決めてるからさ‥‥だから峰打ちだけで勘弁しとくれよ」
 そういって、わざわざ薙刀の刃を返せば、挑発と感じた賊達が斬りかかるのだが、あっさりとそれをあしらう朱麓。
 刀の一撃を受け流して、そのまま一回転した薙刀の石突きでみぞおちをしたたかに打ち据え。
 あっというまに、引きつけた数名の賊を地に這わせるのだった。
 そしてその彼女のところに集まるようにしてやって来たのは、姿を消していた鷲尾だった。
 鷲尾は雨に隠れて朱麓の背後から近付こうとした賊を槍で一撃して。
 どうやら、宿周囲の見張りも倒しきったよう、残るは裏口に集められた人質たちの所にいる賊の頭目達である。
 そこを目指して2名の開拓者は来た道を戻るのだった。

●決着は堂々と
「お、なーんだ。ちゃんと勇者様いるじゃん♪」
 そういって、他の開拓者の活躍を眺めているのは弖志峰だった。
 入り口付近の人質を解放した秋冷と痕離、そして二階で大立ち回りを演じた鷲尾は目立っていたのだろう。
 だが、まだ事件は解決したわけではなく、弖志峰も裏口近くまで隠れながら進んで様子を窺ってみて。
 すると、どうやら賊達のまとめ役は数名いるようで、それらが罵りながらも周囲を伺っていた。
 いつのまにか手勢は減って、連絡も取れず、残るのは目先の利益と保身の欲だけのようで。
 怒声を上げて、少ない部下を失跡しながらも、なんと人質として女性客の首筋に匕首を突きつけているのだ。
 さすがにそれには手が出せないだろう、と賊達は思っていたのだろう。
 だが、そんなことは開拓者にとっては予定の範囲内であった。
 弖志峰は気付いた、玄関からまっすぐにこちらに向かってくる2人の足跡に。
 明らかに賊とは違う気配の味方の足音に。
 そして、人質と、賊の1人も明らかになにかを狙っているようで。
 そこで弖志峰はひょっこりと顔をだすと、残された賊達に言い放った。
「世の中善い事が必ずしも成功する訳じゃないが、悪事も簡単に働けるたぁ思わない方がいいと思うぞ、盗人サン」
 そういってにやりと笑みを浮かべる。
 こっちには人質が‥‥そう言いたかったのだろうが、盗賊達には次の言葉を継ぐ余裕は無かった。
 まず、うろうろとしていた手下に襲いかかったのは2人の影。
 玄関の人質を解放した痕離と秋冷が矢のように飛び出すと、それぞれ一撃で賊を1人ずつ打ち倒し。
 弖志峰自身も力の歪みを使って、1人を無力化。
 これで、残ったのは人質に刃を突きつけている三名の頭目格と賊が1人だけ残された。
 そして、賊の1人がするすると頭目の1人に近付くと、ぱしりと腕をとって。
 なにをする、という頭目格の言葉も待たずに、捻り上げて投げ飛ばす!
 もちろん、投げ飛ばしたのは賊の振りをして接近していた純之江であった。
 彼女は覆面を取ると、
「貴方達の悪事もここまでです! 覚悟しなさい、不心得者っ!」
 一喝するのであった。
 もちろん、まだ2人の頭目は人質の喉元に匕首を向けたままなのだが。
 片方の憔悴しきったように頭をたれていた女性は、ひょいと袖口を上げれば、そこから飛び出したのは鎖分銅だ。
「残念だったな」
 最初から女装して客の振りをしていた山吹は、自分に匕首を突きつけていた頭目を分銅で一撃。
 人質から攻撃されるとは予想していなかった頭目は物の見事に顎に一撃を受けてもんどり打って倒れて。
 そして最後に残った頭目は、客に紛れていた夜魅が放った手裏剣の一撃を手に受けて匕首を取り落とすのだった。
 だが、最後の悪あがきとばかりに、裏口から外に逃れ出ようとする頭目。
 手裏剣を受けた手を押さえつつ、必死で逃げ出そうとしたその賊の頭目を迎えたのは、槍の一撃だった。
 胴を見事に貫いた槍を掴みながら、ぐらりと地に膝をついて
「‥‥な、なにを‥‥間違えたんだ‥‥」
 失敗したことが口惜しいのかそう呟く頭目であったが、それに応えたのは鷲尾だ。
「お前らの行動は全く正しい。所詮この世は弱肉強食、強き者は弱者を糧にして生きる。全く正しい」
 命の火が消えようとしている頭目はその言葉を聞いて、ならば何故とばかりに見返すのだが
「だが、二つ過ちを犯した。ひとつはここに開拓者が居るのを知らなかった。そしてもう一つは‥‥」
 槍を振って、頭目からその穂先を引き抜けば、どっと賊の頭目は地に崩れ落ちて、
「俺の前に立った。他の奴だったら命は拾えたかもしれんが、俺は優しくは無いからな。俺の糧になれ」
 そういって高笑いを上げる鷲尾であった。
 この圧倒的な戦力差、そして覚悟の差には生き残った賊達も反撃する気力すら失われたのである。
 虚をついて、完璧といえた作戦も開拓者を前にすれば、あっというまに覆された。
「皆さん、大きな怪我はありませんか?」
 夜魅がそう聞けば、
「もう大丈夫だ‥‥大変だったね」
 痕離もそういってみんなを安堵させて、人質達を解放すれば、旅籠は歓声に包まれたのであった。
 大きな怪我をしたものはいなかったようで、軽い怪我なら弖志峰が癒し。
 きっと人質達には生きた心地のしない時間だろうが、それも過ぎてしまえば過去のこと。
 まるでそれを忘れようとするかのように、大きな宴が開かれるのであった。
 見れば、漸く雨は上がり始めたようで。
 長かった夜が明ければ、空は晴れ、久々の太陽が旅籠と照らしていた。
 賊達は、命のあった者はみな引っ立てられて、開拓者は旅籠の皆から感謝を受けて送り出されるのであった。
 一件落着、無事、開拓者は旅籠の皆の命を救ったのである。