|
■オープニング本文 開拓者ギルドと国々の協力によって、大アヤカシは討たれた。 あくまでも数多くある魔の森の一つに打撃を与えたというだけであるが、これは紛れもない功績である。 その功績をもって、開拓者ギルドは各国と協議し一つの決定を下した。 それは、天儀において重要な移動・運搬手段である竜の使用を開拓者に解禁するということである。 貴重な竜は、各国がその確保に躍起となっており、軽々しく運用できるものではない。 だがしかし、開拓者たちが信頼の置ける者たちであるという認識が、合戦の功績においてなされ。 その結果として、ギルドは竜の運用を開始すると決定したのである。 開拓者と竜の関係も様々である。 竜は基本として氏族やギルドによって管理される貴重な存在である。 だが、開拓者の中には、自分の氏族に属する竜と幼い頃から交流があるというものもいるだろう。 そうした竜を、ギルドでは一元管理し、それぞれ開拓者事に担当の竜を一匹と定めて運用していくのだ。 ということで、各国のギルドや関わりのある施設はにわかに忙しくなっている。 神楽の街を拠点とする開拓者は、そこからそれぞれ自分の竜を連れて各地に移動することになる。 そうなれば、各地の街では竜のための設備を整えねばならないわけだ。 竜も、人と同じく生きた動物であり、寝る場所も必要であればご飯も食べる。 また適当に町中で発着すれば、いらぬ騒動を招くということもあり、ちゃんとした乗降所の整備も必要だ。 ということで、今は各国が急いでそういった設備を整えることに奔走しているのだが。 だが、事件は時を選ばず起きるもので。 まだまだ設備は万全と言えない現状で、開拓者と竜を必要とする依頼が持ち上がったのだ。 発端は、武天の山中にある村からの依頼で。 急に寒さの厳しくなった昨今、その村では流行病が広がってしまったのだという。 幸いにしてすぐに近くの街から医者が急行、だが不運にも治療のための薬草が足りなくなったのだ。 早速竜の運用試験とばかりに、開拓者達に依頼が出された。 それは、武天の芳野という街から、その村まで薬草を運ぶこと。 芳野の街では、早々と竜の乗降所が整備されたため、出発のためには問題はないだろう。 だが、いざ実際竜を使って現場へと急行し、また戻ってくればいろいろと不具合が見つかるかもしれない。 つまり、依頼の本分は薬草を届けることであるが、ついでに芳野の街にて、竜の運用試験をしてほしいのである。 さて、どうする? |
■参加者一覧
斎賀・東雲(ia0101)
18歳・男・陰
野乃宮・涼霞(ia0176)
23歳・女・巫
井伊 貴政(ia0213)
22歳・男・サ
劉 天藍(ia0293)
20歳・男・陰
羅喉丸(ia0347)
22歳・男・泰
橘 琉璃(ia0472)
25歳・男・巫
戦部小次郎(ia0486)
18歳・男・志
椿 幻之条(ia3498)
22歳・男・陰
スワンレイク(ia5416)
24歳・女・弓
流星 六三四(ia5521)
24歳・男・シ |
■リプレイ本文 ●翼ある友と一緒に 竜は古来より、人々と共にある相棒である。 今のように、宝珠による飛行船の開発が進む前は、数少ない高速移動手段であり。 また同時に、その速度と竜自体の攻撃力のために、とても貴重な存在であった。 だが、開拓者達はそんな竜を友としているのだ。 それぞれの状況は違うだろう。 氏族が管理していた竜をそのまま友としていることもあれば、数奇な縁に結ばれていることもある。 だが、とにもかくにも、今回のこの依頼には10名の開拓者と、そして10頭の竜が集ったのである。 さて、この度やっと竜の使用が解禁となった。 もちろん、竜がしっかりと管理されることは替わらないのだが、開拓者達が一定の信頼を勝ち得たという証拠だろう。 依頼は竜の使用を必要とする緊急の依頼である。 そのため、芳野の街に集った開拓者たちはてきぱきと準備を進めているのだが。 それでも、久しぶりに自身の友である竜たちに出会えたのは嬉しいようであった。 「‥‥よろしくな、相棒」 自分の相棒を見上げながら、感慨深げにつぶやく劉 天藍(ia0293)。 だが、どうやらその言葉を聞いていた綺麗な銀の竜、凛麗は気に入らなかったようで、首をめぐらすと不満げに天藍を突いて。 「っと、悪いな。凛麗と呼ばないと機嫌悪くなるんだった」 ぽんぽんと首を撫でて、なだめながら笑みを浮かべる天藍であった。 一行は、芳野の発着所にて、急ぎ準備を進めていた。 竜の翼を持ってすれば、移動にそれほどの時間はかからないだろう。 だが、竜の数少ない難点は、その積載量の少なさである。 取り回しが容易で、賢く、柔軟な運用を可能とする竜であるが、空を飛ぶ彼らはあまり多くの荷物を運ぶことは出来ない。 幸い、今回は乾燥させた薬草が主であり、それほど大量に必要とされるわけではない。 いくつかの束をそれぞれで受け持って、鞍や開拓者本人が背負うなどして荷物を分担して。 「‥‥この程度が丁度良いようですね」 基本、速さで優れる駿龍も防御に優れる甲龍も、攻撃力に優れる炎龍もそこまで積載量に差は無い。 早い駿龍は速さの分小柄であり、甲龍は大柄だが備わった鎧と称される外皮の装甲が重いのだ。 そもそも、竜は重い荷物を積んで飛べるようには出来ておらず、人を装備ごと乗せるので精一杯で。 追加で、少量の荷物を積むのがせいぜいといったところであろう。 それを見越した上で、荷物の配分を考えていたのは戦部小次郎(ia0486)だ。 他の開拓者と相談しつつ、竜の大きさや、乗り手である開拓者の体格差なんかを見て、薬草を配分して。 飛ぶときの陣形や配分も考えて、今回は甲龍たちに荷物の大半を割り振ることになったようだ。 「あとは、速度にどれだけの差が出るかですね」 こういった情報は、のちのち大事になるだろうと、書き付けを残しながら、自分の相棒である正宗に荷を積み込むのだった。 「これだけあれば十分かしらね。皆、防寒具を借りてきたわよ」 ごそっと襟巻きやら、外套を手に、発着所にやってきたのは椿 幻之条(ia3498)。 さすがに高級品とは言えないが、風を防ぐ外套に防寒用の襟巻きぐらいは予備があったようで。 「あなたの泰紋毛布に包まれば風なんて大丈夫でしょうけど、それじゃ身動きとれないものね」 幻之条の竜彦三郎は、防寒用の豪奢な毛布を巻き付けてあって、それを撫でる幻之条。 そんな様を見ていた斎賀・東雲(ia0101)は。 「たしかに、せっちゃん用の毛布に一緒にくるまればちょうどええねんなぁ?」 東雲の相棒、せっちゃんと呼ばれている雪のように白い甲龍の雪花に向けてにこにことそう言って。 彼女はそんな東雲を見て、おふざけがすぎるわよとばかりに、鼻先でつつくのであった。 そして、急ぎ進められた準備を積み込みも終わった。 地上でも、最近では吹く風も肌寒い。竜の翼で空を行けばさらにだろう。 荷物はしっかりと余分に積み込んで、あとは経路と隊列の確認だ。 それなりの高速で一直線に目的地に向かうのであるから、迷うことはないだろう。 幸いに、今日は晴天。抜けるような青空が広がっている。 開拓者は最終確認をして、それぞれの順番を改めて確認する。 そして、それぞれ自分の相棒の背に乗り、地を蹴って空に舞い上がるのだった。 「さあ、村の人達も待っているでしょうから、急がないと駄目ですね。もちろん、油断はできませんね」 橘 琉璃(ia0472)は、相棒の炎龍、紫樹の背にまたがり空に飛び上がる。 強く羽ばたいて、竜が力強く地を蹴れば、ふわりと竜の体は空に舞い上がり。 すでに、飛び上がり、上空でゆったりと弧を描く仲間達の元へとばさばさ羽を動かして追いついて。 「櫻嵐、改めて宜しくね。一緒に頑張りましょう」 そう野乃宮・涼霞(ia0176)が声をかければ白い甲龍の櫻嵐は、ぐっと背を伸ばすと同じように空に舞い上がる。 「さぁ、行くぞ赤影丸! 無茶は無しだが、狙うは1着だ!」 そういって最後に飛び立つのは流星 六三四(ia5521)とその竜、赤影丸だ。 駿龍の赤影丸が、相談の結果、今日の先導役とのことで、六三四と赤影丸は張り切っているよう。 ぐんと強く羽ばたくと、一気に急上昇して、上空で弧を描いていた他の九騎と合流するのだった。 大きく、六三四が手を振って注意を引けば、準備万端とばかりに全員が応えて。 一行は、一路目的地に向けて力強く羽ばたき始めるのだった。 ●行きの道中、急ぎ旅 「‥‥上空は寒気強く、風強し‥‥。防寒、防風具や防風眼鏡も必須也‥‥積載量はどうかしら」 風に飛ばされないように、小さな書き付けをつけているのは幻之条だ。 道中は何ごともなく、順調に進んでいた。確かに風は冷たいが天気も良く、日差しは穏やかで。 綺麗に隊列を整えて、空を一直線に飛ぶ竜の編隊。さぞかし地上から見れば、見事な眺めだろう。 そして幻之条と同じように、久しぶりの竜に騎乗した面々は、再確認に余念が無かった。 「やはり、まずは手や耳が寒くなりますね‥‥いい防寒具が増えてくると良いのですが」 そのためには美しさも欠かせませんわね、と考えながら駿龍、ゴールスキーを駆るのはスワンレイク(ia5416)。 折角竜の使用が解禁されたからには、エレガントに、竜を素晴らしいと皆に思わせてこそ一流らしく。 芳野では、新たにどういった設備や装備が必要かと助言を求めているので、こうした改善点の模索は重要だろう。 さて、村へと向かう道は地図を見ればわかりやすい一本道で。 街道や、山の位置を手がかりに、まっすぐに進めばほんの数時間で到着できる距離であった。 村では薬草が一刻も早く欲しいという状況である。 それが分かっていた開拓者達は、簡単な慣らしをして直ぐに村へと向かったのである。 その結果朝も早い時間に出立した開拓者達は、途中数度休憩を挟んで昼過ぎにはその村まで到着したのである。 さすがに、久しぶりの空の旅、技術があると言っても神経を使うものだ。 村へとやってくると、まずは一人が村はずれに着陸し、村のどこに降りて良いかと聞いてみて。 その後、誘導されたとおり村の入り口付近にある草原に、一行はそろって着陸するのだった。 数時間の空の旅に、竜も開拓者達もなかなかに疲れたようで、やっと一息。 「流行病とのこと、急ぎ竜で薬草を届けに参りました。お医者様はどこでしょうか?」 涼霞はそう言って薬草を取り外してまとめると、 「櫻嵐、少しの間、大人しくしていてね。御留守番、お願いできる?」 そう涼霞が櫻嵐に訪ねれば、任せろとばかりに頼もしげにどっかりと草原に腰を下ろして。 見れば、他の竜達も思い思いに体を休めるのだった。 数名が涼霞と共に医師の元へと向かい。 「専用の小屋な無いみたいだし、今日はここで寝てもらうことになるみたいだな、ま、しかたないか」 相棒の頑鉄の手綱を握りつつ、他の竜にも問題が無いように見張りに残ったのは羅喉丸(ia0347)。 村人に竜達が入れるような小屋とかは無いかと聞いてみたのだが、さすがに田舎の村にはそういった施設はなく。 幸い、竜達がまとめて休んでいられるような開けた草地があったので、そこを仮の宿とするようだ。 さて、薬草は無事に医師の元に届いて、さてどうしようとなった開拓者達。 これから引き返すとなると、おそらく日が落ちてしまうだろう。 だが、さすがに流行病が広まっている村にとどまる場所はあまりないようで。 「お医者様が言う話では、多少のことではうつらない病気らしいので、このままここで野営するのはどうでしょうか」 戻ってきた涼霞が提案すれば 「そうですね、聞けば食べ物が原因でこの村に流行った病気とのこと‥‥今日はここにとどまっても平気のはずですわ」 スワンレイクもそういって、ゴールスキーの体にブラシをかけて綺麗にしてやっていて。 「それじゃ、そうと決まったらなにか食べるものを仕入れないとねぇ」 と井伊 貴政(ia0213)。最低限の荷物しか運べない竜ゆえに、野営の準備以外の食料なんかはほとんど無いのである。 するとそこにやってきたのは、村の子供達であった。 聞けば、この村で流行っているのはいわゆる食中毒の類らしく、大人達がまとめてばったりと寝込んでしまったとのこと。 はじめは今回はその薬草を飲めばけろりと直るらしいのだが、子供達は暇でしかたないらしい。 そんなおり、村へとやってきた10頭の竜。これに興味を持たない方がおかしいだろう。 みれば、子供達はなにやらいろいろと食べ物を持ってきていた。 これらは村人達からの差し入れらしい。 さすがに、食中毒の原因になったらしき、生魚類はないようだが、秋の実りがどっさりと渡されて。 「ふむ、これだけの量があれば、みんなの分にさらに竜にも作れそうだな」 「ほー、貴政はん、大変そうやけど大丈夫やろか?」 どっさりと積まれた差し入れを前に、貴政が何を作ろうと思案していれば、東雲が大丈夫かと声をかけるのだが。 「伊達に、料理人をしているわけではありませんので。まあお任せあれ」 とにっこり応えるのだった。 ということで、開拓者達は、竜を交えて村の外れでのんびりと料理を作り始めたりするのだったが。 「あんまり近づいたら危ないわよ、坊やたち?」 じーっと竜を見ている、子供達に気付いた幻之条は、そう声をかけたのだが。 「あ、あの‥‥お姉さんたちの竜、触っても良いですか!」 どうやら子供達は竜に興味津々だったようだ。 どうする? と、幻之条が仲間の開拓者達を見れば、しかたないさ、と笑みを浮かべて頷き帰す開拓者達。 ということで、子供と、さらには一部の健康な大人達も集まってきて、竜とのふれあい大会が始まってしまったり。 ●それぞれの過ごし方 さて、開拓者が様々いるように、その竜達も様々な個性があり性格が違う。 「‥‥良くやったな、ありがとう凛麗」 竜と一緒に休憩がてら散歩にでていた天藍。彼がぐるっと村の近くを歩いて戻ってくるとなにやら賑やかである。 「の、乗っても良いの?!」 「ああ、だけど開拓者が近くにいない時には近かづかないこと、約束できるな?」 目をキラキラ輝かせた男の子たちを前に、羅喉丸がそう注意すれば、子供達は首がとれてしまいそうなほどぶんぶか頷いて。 「何、多少頑固なところはあるが問題はないさ。そら乗せてやろう」 と頑鉄の背に子供達を乗せてやるのだった。 がっしりとした体躯に、ごつごつとした外見の頑鉄を囲んでかっこいいかっこいいと騒ぐ男の子達。 そして、引っ込み思案な女の子たちは、白く優雅な外見の櫻嵐や穏やかなゴールスキーが人気のようで。 ゴールスキーは、スワンレイクから梳って貰いながら、のんびりと伏せて休憩中。 そんなゴールスキーの首筋をおそるおそる女の子が撫でれば、大人しそうな目を向けて応える優しい竜で。 「ふふ、こう見えて気の優しい子なのですわよ」 そして、櫻嵐の背中に、涼霞が女の子を乗せてあげれば、なんだか不安そうな表情の櫻嵐だが。 「櫻嵐、ちょっと我慢してね‥‥大丈夫、こわくないから」 櫻嵐も、我慢してといわれれば、しかたないなとばかりに静かに体を伏せて。 その白い優雅な翼の間にちょこんと女の子が腰掛けて見たり。 さすがに、村に竜はいないが、竜はたまに見かけると言った程度の存在である。 だが、これほど近くでふれあえるという経験はほとんど無いものだ。 子供達は大いに楽しんだようで、涼霞が櫻嵐の体を水で拭いてあげようとすれば、みんな率先して手伝うほどの人気であった。 そして、そんな賑やかな竜達を見ながら、日が沈むまでのんびりとひなたぼっこをしている竜もいる。 「さて、医者の手伝いも終わった‥‥紫樹、ご苦労だったな? 少し休むか」 一仕事終えた琉璃は、そういって竜の紫樹をつれて日向に腰を下ろせば、琉璃をぐるりと囲むように紫樹も腰を下ろし。 山間のためだろうか、確かに空気は冷えているが、風は強くなく。 暖かい日差しの中で、相棒の竜に背を預け、のんびりひなたぼっこはなかなかに快適だ。 紫樹は、信頼する飼い主のそばで、すりすりと頭をこすりつけた後は、うつらうつらとしはじめて。 「そういえば手伝いの報酬代わりに酒を貰ったぞ、後でご褒美にやるからな。休める内に休んでおけ‥‥」 にこにこと笑みを浮かべて琉璃はそう言うのであった。 そして、同じようにひなたぼっこをしている東雲と雪花は、なにやら頑張って料理をしている貴政が気になるようであった。 「暖かそうなもんをつくっとるなぁ‥‥しかし、ちょいとばかし冷えるけど、こうしてだらけるんのも悪くないわぁ‥‥」 ぬくぬくと雪花とともにひなたぼっこ中、いつの間にか子供達も混じっていたりするようで。 見れば、隣でひなたぼっこしている幻之条と彦三郎のところにも子供が交じってたり。 そんな情景を眺めていれば、雪花も同じように料理中の貴政を見ているようで。 「ん? せっちゃん腹へったん? ほな何が食いたい?」 つきあいが長くなれば、言葉は無くても意思は通じ合う物、雪花の物言いたげな瞳に映る意思をじっと東雲は見て、 「‥‥や、さすがに俺でも氷菓子はムリやがな‥‥」 目をそらした東雲をぐいこぐいこと雪花が突き、それを見てあらあらと幻之条が微笑んでいたりするのであった。 さて、時刻もそろそろ夕暮れ。日差しも陰り涼しさが増してくれば、一行はいくつか焚き火を起こして暖を取り。 「またねー!」「明日の朝、見送りに来るからー!!」 子供達の声を受けながら、竜達はのんびりと夜に向かう森の夕暮れを楽しんでいた。 「‥‥疲れましたか、正宗。ご苦労様」 小次郎は、竜の正宗と共に子供達の相手をしていたので、疲れた様子の正宗の首筋をぽんと叩いてねぎらってやって。 正宗を始め、竜達は絆のしっかりある開拓者達の言うことなら聞くようであった。 それにそもそもがそれなりに賢いようで、とくに何も問題なく村の人々との交流が出来たようで。 そして、ちょうどそこにやってきたのは、手伝って貰いながら料理を作っていた貴政だ。 貴政は後ろに、虎のような模様の走る炎龍、帝釈をつれていて。 どうやら、帝釈のような竜のためにもしっかりと料理を作れたようで、帝釈はのんびりと貴政の後を着いてきていた。 出来た料理は沢山の鍋を借りて作った鍋物や、たっぷりの握り飯。 それに竜のために、肉やたっぷりの水と飼い葉などを用意したようだ。 竜は雑食のようで、一日中飛んできて疲れ切った一行には、その美味しそうな香りが心地よく。 少量の酒もくわえて、にわかに宴会が村の外れで始まったようであった。 竜たちは村でとれる果物をぱくぱくと美味しそうに食べていたり、握り飯を貰っていたり。 開拓者達は、体の温まる鍋に舌鼓、茸を中心に山の幸がたっぷりと含まれた鍋は体が温まる。 それを食べて、焚き火に当たれば、山の冷たい空気もなんのその。 一行はそのまま、竜たちと共に冬空の下、綺麗な星空を見上げながら野営をするのであった。 それぞれの竜にもたれかかって焚き火に当たりつつ。 そうすれば、ちっとも寒さを感じないままに、あっというまに夜は更けていくのだった。 ●翼の力 翌朝、早朝に一行は目を覚ました。 やはり早朝の朝は冷え冷えと、改めて焚き火にあたって暖を取っていれば、村から子供たちがちらほらと。 どうやら、竜たちの出発を見送るつもりで頑張って起きてきたようだ。 竜たちには、たっぷりの水と餌が振る舞われ、開拓者達もしっかりと朝食をとる。 そしていよいよ、出発の時間であった。 ようやくしっかりと明るくなってきた山の朝。霞がすっと晴れて、晴天が覗く良い天気であった。 そんな中を、次々に飛び立つ竜たちの勇姿は、どうやら村の子供たちの宝物になったようである。 そして、一行は来た道をまっすぐに芳野に向けて飛んでいくのだが。 行きは急ぎであったが、帰りの道はそうではない。 このまままっすぐ進めば昼過ぎには芳野に着いてしまうだろう。 そんな余裕があると分かれば‥‥ 「よし、赤影丸! 昨日はしっかり休んだな‥‥じゃあ行くぞ!!」 六三四は赤影丸にしっかりと掴まると、行きのあった連携を見せる。 赤影丸が大きく翼を打ち振って、ぐんと一度体を浮かせてから、真っ逆さまに急降下! ぐんぐんと高度を下げてから、今度は一転、急上昇である。 空戦機動の訓練とばかりに、鋭い機動を描く駿龍の赤影丸、掴まる六三四も必至である。 それを見て、他の竜たちも次々に空戦機動の練習へと入っていった。 「なかなかにしっかり言うことを聞いてくれるから良いですが‥‥この速度で言うことを聞かなくなったら怖いですね」 装甲に長けた甲龍を駆る小次郎もいくつか急旋回を試して見つつ。 駿龍並みとは行かないが、甲龍でも鋭い機動を描いて飛ぶ竜たち。 凛麗を駆り天藍は、高度に挑戦。 ぐんと大きく急上昇すれば、直ぐに空気は身を切る寒さに。 さすがにすぐさま引き返して、今度は手放しで、符が仕えるかを試してみたり。 そうして、一行は思い思いに空の旅と、竜の翼が織りなす技を楽しみ、さらに練習を重ねてみて。 そうこうすれば、あっというまに見えてくる芳野の街。 空から見下ろせば、鮮やかな町並みが美しく、彼らは一直線に発着所へと降りたって。 あっというまの空の旅、改めて開拓者達は竜との絆の重要性を再確認したのであった。 きっとこれからも竜たちは、開拓者の相棒としてますます活躍していくのだろう。 竜たちも無事に依頼を終えて、どこか誇らしげであった。 |