秋の行楽
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: イベント
相棒
難易度: やや易
参加人数: 58人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2009/11/18 22:58



■オープニング本文

 戦士にも休息は必要である。
 とくに、大きな戦いを終えた後は、その分しっかりと休む必要もあるようで。

 そんな折、ギルドには一つの張り紙が。
 仕事ではない、開拓者達にも参加しようと呼びかける秋の風物詩のお誘いで。
 場所は武天の芳野という街。
 この街の外れにて、紅葉狩りをしようというのが今回のお話だ。
 まるで祭りのように、街からその紅葉の見事な谷まで続く道には多くの出店があるとのこと。
 そして、紅葉が広がるその谷では、そこかしこで紅葉の眺めを楽しむ人達がいるのだ。

 大きな戦いで得た傷を癒し、また仲間達と語らう。
 背中を任せた昔なじみと酒を酌み交わすも良し。
 戦場で助けられた新たな友と親交を深めるも良し。

 もちろん、稼ぎ時だとして、芋を焼くなり、店を出すなり、それは開拓者の自由だ。

 寒さ深まるこの季節、目にも楽しい紅葉狩り。
 友と、仲間と、恋人と。
 一緒に行ってみれば、良い思い出になるだろう。

 さて、どうする?


■参加者一覧
/ 天津疾也(ia0019) / 柄土 仁一郎(ia0058) / 柚月(ia0063) / 北條 黯羽(ia0072) / 鈴梅雛(ia0116) / 水鏡 絵梨乃(ia0191) / 犬神・彼方(ia0218) / 紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454) / 奈々月纏(ia0456) / 橘 琉璃(ia0472) / 那木 照日(ia0623) / 柄土 神威(ia0633) / ダイフク・チャン(ia0634) / 柚乃(ia0638) / 相川・勝一(ia0675) / 鬼島貫徹(ia0694) / 葛城雪那(ia0702) / 鷹来 雪(ia0736) / 香坂 御影(ia0737) / 篠樫 鈴(ia0764) / 佐上 久野都(ia0826) / 酒々井 統真(ia0893) / 鳳・陽媛(ia0920) / 巳斗(ia0966) / 奈々月琉央(ia1012) / 氷(ia1083) / 秘純 織歌(ia1132) / 輝夜(ia1150) / 白姫 涙(ia1287) / 嵩山 薫(ia1747) / 水津(ia2177) / 劉 厳靖(ia2423) / 辟田 脩次朗(ia2472) / 周太郎(ia2935) / 斉藤晃(ia3071) / 幻斗(ia3320) / 赤マント(ia3521) / 真珠朗(ia3553) / 嵩山 咲希(ia4095) / 瀬崎 静乃(ia4468) / 奏音(ia5213) / 夏葵(ia5394) / 設楽 万理(ia5443) / 此花 あやめ(ia5552) / 菊池 志郎(ia5584) / 千麻(ia5704) / 難波江 紅葉(ia6029) / 景倉 恭冶(ia6030) / アルネイス(ia6104) / 雲母(ia6295) / 朱点童子(ia6471) / からす(ia6525) / 萩 伊右衛門(ia6557) / 与五郎佐(ia7245) / 浅井 灰音(ia7439) / 燐瀬 葉(ia7653) / 青禊(ia7656) / 天ヶ瀬 焔騎(ia8250


■リプレイ本文

●目に楽し 舌にも嬉し 紅葉谷
「んー‥‥こんな‥‥朝早くに‥‥」
 武天の街、芳野からほど近い六色の谷、そこはその名の通りなかなか見事な景勝地である。
 その谷へと向かう道を行くのは二人の姿、眠そうに目を擦っているのは那木 照日(ia0623)。
 そしてその手を引いて進んでいるのが香坂 御影(ia0737)である。
 朝靄に煙る谷、その中を進んでいけば、徐々に見えてくる見事な紅葉に、今まで眠そうだった那木も、
「あわわ‥‥すごいです‥‥綺麗です‥‥」
 思わず感嘆の声。それを見て、香坂もどうだとばかりに得意げな様子で、
「見事だろう? ‥‥もし気に入ったんなら、屋敷の庭でも紅葉を育てないか」
「それなら、うんと立派な紅葉を、ね」
 紅葉の中くるくると回り全身で感動を表しながら、応える那木。
 二人は紅葉を眺めながら、いつしか彼らの住まう屋敷で紅葉を眺める日を思うのだった。
 さて、いつしか商品を並べて道行く人に声をかけたりする屋台も増えて。
 徐々に人が増えていけば、賑わいも増していくのであった。
「‥‥また太りますよ?」
 人混みの中でも目立つ赤い髪と紫の瞳の女性が2人、見るからに親子。
 娘の嵩山 咲希(ia4095)は、母の嵩山 薫(ia1747)がどっちゃりと抱えた屋台の料理を見ながら言そういって。
「太るだなんて、この子は‥‥そ、その分動いて回るから大丈夫なのよ」
 もきもきと団子をかじりながら、その頬がちょっと赤いのは自覚があったからか。
 ともあれ、親子水入らずで仲良く紅葉を分け入り、好きな菓子を食べるのは至福のひとときで。
 びしっと厳しいことを言った娘の咲希も、こっそり母親の腕に掴まって甘えて見せたり。
 紅葉狩りを楽しみつつ、屋台を巡るのがどうやらここの楽しみ方のようであった。
「‥‥あれ、欲しいの」
 射的の屋台の前で瀬崎 静乃(ia4468)は友達の夏葵(ia5394)の肩をちょんちょんと。
「まかせるのですよ!」
 頼もしく応えた夏葵は、屋台の親爺から弓を受けとって。
 見た目はまだうら若き少女と侮った屋台の親爺、こう見えて夏葵は開拓者でしかも弓術師。
 三本の矢を使ってあろう事か景品を5つも射落として、今度は静乃にコツを伝授しながら射的を楽しむのであった。
 二人は景品を抱えつつ、紅葉の綺麗に見える茶屋で一休み。
「これおいしいのですよ。静乃ちゃんどうぞなのです」
 あーんと仲睦まじく、お菓子を分け合ったりしながら、静乃は
「‥‥楽しいね。ありがとう」
 にこにこと笑顔でこっくり頷けば、夏葵の狐の面とおそろいのわんこのお面が静乃の頭の上で揺れるのだった。
 そして、眼下に広がる景色一面が美しい紅葉だが、それの楽しみ方も人それぞれ。
「こういう時はシノビでいて得したって思うんだよなー」
 木の上で、買いこんできた食べ物をぱくつき、景色を眺める青年が一人。
 シノビゆえの身軽さで、樹上の特等席を満喫しているのは菊池 志郎(ia5584)。
「こういう景色は陰殻にもあったな。師匠は里の人達元気かな‥‥」
 同じ秋の空の下、遠い地にも思いを馳せる志郎であった。
 そんな彼の足下を駆け抜ける姿。
「おーい、葉。どこだー」
 のしのし、野山をかき分けるのは酒々井 統真(ia0893)。
 彼は、茸やら柿やら秋の味覚を背中に満載中。
 どうやら山奥に友人がいるということで探しに入ったついでに、いろいろと山の実りを見つけた模様だ。
 山野をある気そろそろ疲れてきた酒々井、そんな彼の耳に届いたのは凛とした音色だ。
 簪がしゃらんと鳴り響くその音をたどれば、やっと見つかる燐瀬 葉(ia7653)の姿が。
「おや、よーやっとのおいでやね」
 にっこり微笑み、そのまま舞を続ける燐瀬の姿に、やっと一息つく酒々井。
 山の奥にて、ひっそりと舞われる燐瀬の舞を酒々井は静かに見ながら。
 踊りが終わったら、見つけた秋の味覚をどう振る舞おうか、そんなことを考えていたりする酒々井であった。

「そう見られない、と言うものでもありませんが‥‥」
 賑やかしい屋台の喧噪を感じつつ、紅葉を見上げるのは辟田 脩次朗(ia2472)。
 のんびりと紅葉を見物し、その土産に綺麗な紅葉を一葉袂に滑り込ませ、思い出を持ち帰る、それもまた風流。
 また一方、ただただこの景色の鮮やかさに圧倒される奏音(ia5213)のような姿もあって。
「こ〜よ〜なの〜♪ まっかっか〜で〜、すご〜くきれ〜なの〜♪」
 純粋に景色を楽しみ喜ぶ姿は、周りにも笑顔をもたらすようであった。
 そんな様子に微笑みながら、混雑する道を進むのは。
「あの、手を繋いでも、良いですか?」
「うん、もちろんなのよ」
 にこにこと、小さな妹分の手を引く千麻(ia5704)と手を繋いで嬉しそうなのは鈴梅雛(ia0116)である。
 秋の山を吹く寒風の前では、友達同士で手を繋ぐのも暖かく。
「最近は慌しかったので、のんびりするのが、気持ち良いです」
 雛の言葉に、そうだねと応える千麻。その手には屋台で買い求めたお菓子が。
 そんなお菓子を売っているのは屋台の数々だが、その中には開拓者によるものもちらほらとあったり。

●店を出し 才覚競う 開拓者
「さーらっしゃいらっしゃい、紅葉狩りのお土産に紅葉饅頭はどないや〜?」
 商売人の基本は声、だかどうかは知らないが、威勢の良い声を響かせているのは天津疾也(ia0019)。
 紅葉の形の饅頭を焼いて売り込んでいれば、こういう場だからこそなかなか盛況で。
「ほれ、これはおまけや!」
 饅頭のおまけにと紅葉を使った栞をつけるというにくい心意気、儲かりそうである。
 威勢の良い声で攻める屋台があれば、香りを武器にする屋台もある。
「さぁ、開拓者名物焼ネギ屋、四度目の開店じゃ」
 方々の祭りで毎度見かけるこの屋台、主は輝夜(ia1150)だ。
「食い物はやはり味で勝負せねばの」
 意気込み通り、醤油の焼ける香ばしい匂いが漂って。香りに誘われたお客を前に、屋台の輝夜は大忙しなのであった。
 さて、醤油の焦げる香ばしい香りも食欲をそそるが、女性の皆様にも大人気なのは甘い香り。
「おいもーおいもー美味しいおいもーって話で」
 秋の味覚サツマイモ。それをほっくりと焼いて小さく切って水飴をかけて。
 イモの柔らかい香りに水飴の甘い誘惑、ということで女性たちに大人気。
 当人は予行演習のつもりだったようだが、店主の真珠朗(ia3553)の予想を上回る盛況さで。
 どうやら紅葉をあしらった容器やらも人気の原因のようであった。
 もちろん、開拓者ならではといった毛色の変わった屋台もある。
「ただ飯を食わせる程、私の気前は良くない」
 と豪語して、気まぐれに軽い物をいろいろと作るのは雲母(ia6295)。
 目立つのはくわえたままの煙管、そこからぷかりと紫煙をくゆらせつつ、お客の希望に応えるという屋台のようで。
 物珍しさも手伝って、賑わいを見せていたり。
「さあさあ、赤焼き屋だよ〜!」
 耳慣れぬ赤焼きという料理、見れば一目瞭然、赤い食材でそろえたたこ焼き屋台であった。
 甘いのから辛いのまでいろいろとそろってる上に、見た目では区別がつかない楽しい料理とあれば。
 怖いもの見たさの若者から、仲間内での話の種にと、大繁盛の様子である。
 そんな盛り上がる客達の姿を見て、店主の赤マント(ia3521)は目を細め。
「‥‥ああ、これを守りたかったんだなぁ」
 小さな呟きは、開拓者ゆえの安堵、彼らがいるからこそ、こういったお祭りが出来るといっても過言ではないだろう。
 とはいえ、開拓者達もこの紅葉と盛り上がりを楽しんでいるのは間違いなく。
「うまうまみゃ〜!」
 もきゅもきゅと赤焼きをほおばりつつ、うみゃーと泣き出したりするダイフク・チャン(ia0634)。
 どうやら辛いのが的中した模様であった。
 そんな彼女は、赤マントの屋台からもほど近い、別の屋台の売り子さんだという。
 その屋台で腕を振るうのは紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454)。
「いらっしゃいませ〜! 何を食べますか〜?」
 元気の良い紗耶香の声、彼女の屋台は泰国の料理を振る舞っているようで。
 紅葉を見ながら熱々の料理を食べられるとあって、お客の入りも上々。
 もちろん、賑やかな屋台ばかりではない。
 紅葉を静かに楽しんで貰おうとお茶を振る舞う静かな場所を用意したいと思う者もいるようで。
「やあ、飲んでる?」
 そういって、飲み過ぎ気味な人にお茶を渡すのは茶席を用意したからす(ia6525)だ。
 そんな彼女はお茶を振る舞いつつ、突然おもちゃの弓を構え矢を放ち。
「‥‥ああ、何でも無いよ。それより、お茶はどうかな?」
 ちなみに、玩具の弓から放たれた矢は、下の方で人様の財布を失敬しようとしていた小悪党の脳天直撃。
 (この美しい景色の中で親を困らす悪い子はいねーがー)
 そんな文面に、小悪党はびびって逃げ出すのだった。
 そして、お茶席には人も集まるもので。
「‥‥紅葉狩り、紅葉と言えば鹿ね。こちらの森にはいるのかしら?」
 お茶席の端にて、のんびりお茶をすすりつつ、森を見据えるのは設楽 万理(ia5443)だ。
 さすがに人里近いこの辺りには鹿はいないようで、ちょっと残念そうな設楽であるが。
 ちょっと人気のないところに移動すると、弓を手にして、舞い落ちる紅葉をぱすぱすと射貫く神業を見せたり。
「‥‥‥これが本当の紅葉狩り‥‥なんてね」
 と微笑む設楽、とそこへ。
「‥‥紅葉を‥‥狩る?」
 ぽやっともふらのぬいぐるみを抱えた少女、柚乃(ia0638)が通りかかり。
 丁度設楽の行動を見て、ああ、紅葉狩りは鎌でじゃなく弓で狩るのかな? と思いこみかけたり。
 ともかく、やっとからすの出している出張お茶席を発見して腰を下ろして。
「ここ‥‥眺めいいかも」
 お茶を手に、敷物に腰を下ろして隣のぬいぐるみを愛でつつまったりと。これも風流な楽しみ方である。

 そして、そんな風に思い思いに過ごす開拓者達であるが。
 こうした行楽の機会があれば、やはり思いを寄せる人と過ごしたいと思うのも人の常である。

●恋人と 咲かす花あり 秋の山
「おお、コリャ美味い! さすがべっぴんさんのつくる団子はちがうねぇ」
 そんなことをいって屋台のおばちゃんからオマケをもらっているのは劉 厳靖(ia2423)。
 団子を手に、紅葉を眺めつつ谷を進めば、ふと笛の音が。響く音色は秋空の下、どこか寂しげに響く。
「おいユズ、んなとこで何してんだ?」
「笛吹いてるに決まってるデショ。そんなのもわからナイの?」
 と、突然声をかけられて笛を止めた柚月(ia0063)が応えれば、
「んなこたぁ、見りゃわかる! ったく、相変わらず可愛いげのねぇガキだな!」
 と丁々発止の掛け合いだ。その後、二人は劉が持ってきた焼き芋を囓って、
「おい、ユズ。食い終わったら笛吹け」
 そう言われて、猫舌の柚月がやっと食べ終わったあとに吹いた笛の音は自然体。
 紅葉の中、寂しさは消え、華やかで軽やかな音色が響くのであった。

 谷の沢に下りる小路を行くのは二人、にこにこと笑顔の妹は優しく微笑む兄に手を引かれ。
 兄は佐上 久野都(ia0826)、妹は鳳・陽媛(ia0920)だ。
「陽媛、お弁当は作ってきたかい?」
「はい、頑張って作ってきました。兄さんの好みのものは分かってますから」
 緩やかな下りの道をてくてくと、二人は紅葉の中をゆっくりと進み。
「‥‥河原の紅葉がよく見える場所までおりようか。転ばないようにね、陽媛」
 久野都の言葉にこっくり頷く陽媛。兄は妹が転ばないように支え、妹は兄を信頼してついていき。
 そして谷底の河原に出れば、そこは見上げる谷一面が見事な紅葉。
 谷底の川面に反射する紅葉も見事で、そこで陽媛は降りて二人並んでお弁当を広げ。
(兄さんが隣にいてくれて‥‥景色がこんなに綺麗で‥‥世界はなんて素敵なんでしょう)
 陽媛は心底幸せに浸るのであった。

「おぉー綺麗綺麗、良い景色だ」
「戦の静養、皆‥‥考えることは同じみたいね」
 喧噪も遠く、静かに紅葉を楽しむのは、周太郎(ia2935)と秘純 織歌(ia1132)。
 織歌はその目を布で覆っているものの、信頼の置ける周太郎に手を引かれて紅葉に分け入って。
 そして人目をはばかることが無くなれば、
「‥‥ぁ‥‥周太郎さん? ‥‥どこ?」
 問う織歌の後ろに回って周太郎はその目を覆う布を取り去ってやるのであった。
 鮮やかに晴れ渡った秋晴れの空の下、鮮やかな紅葉にはっと息を呑む思いの織歌。
「折角綺麗な紅葉なんだ、見ないのは勿体ないしな」
 周太郎はそう言って、笑いかけ。
 そんな二人は、のんびりと焼き芋を焼いて、周太郎はいつの間にか寝入ってしまった織歌を膝枕して。
 戦の後の一時を静かに過ごすのだった。

 羽を休めるのではなく、羽を伸ばす比翼の鳥もいる。
「でけぇ戦も終わった事だぁし‥‥嫁とのんびりするのぉもいいな」
 堂々とした女性の二人連れ、道行く男達の目を引きつける彼女たちは、しっかりと腕を組んで林を行く。
 北條 黯羽(ia0072)と犬神・彼方(ia0218)である。
 とても仲睦まじい様子で、しっかりと手を組んで進む先は、なにやら人目の無さそうな紅葉の奧。
「‥‥ちょっと肌寒い季節だぁし、黯羽の暖かさを感じたいじゃぁないか‥‥」
 どこに連れて行くつもりだと突っ込もうとしたその時に、不意に抱き寄せられて目を白黒させる黯羽で。
「‥‥ま、まぁ‥‥嬉しいから良いんだけどよ‥‥」
 なにやら悩ましいというか艶めかしいこの二人。全く、隣は何をする人ぞ、である。

「紅葉、綺麗ですね‥‥」
「綺麗です、来て良かったですねぇ〜」
 沢山の人がいるので、離れないようにと、しっかり握る手もなにやらほほえましく。
 仲睦まじく屋台をめぐったり紅葉を眺めているのは幻斗(ia3320)とアルネイス(ia6104)だ。
「本当、紅葉が綺麗で‥‥アル殿も綺麗ですけどね」
「‥‥とっても嬉しいです‥‥」
 お互い赤面しつつ、握る手にもぎゅっと力が入って距離が近づいたり。
 さらにぼっと赤面する二人であるが、そこは恋人同士、アルネイスは幻斗に軽く接吻してみたり。
 鮮やかでありながら、どこか寂寥感のある秋の山は、なんだか恋人達の距離を縮める効果があるようだ。

「はや?! 琉央ちゃん、琉央ちゃん!! 甘味や、甘味ッ!」
 屋台や射的なんかを楽しそうに見ている彼女と、それを苦笑してみている彼氏という構図。
「わかったわかった‥‥それじゃ二つもらえるかな」
 女の子に払わせるのもカッコつかないと、男っぷりを見せ屋台をめぐるのは琉央(ia1012)と藤村纏(ia0456)だ。
「‥‥はわ、綺麗な紅葉やな。ええわぁ〜‥‥♪」
 お菓子を手に上機嫌な纏。紅葉の見える場所に二人で陣取って、纏が見上げる先は美しい紅葉で
「‥‥ああ、綺麗だな〜‥‥」
 琉央は、紅葉に見惚れる纏に見惚れていたり。すると纏はそんな琉央の視線に気付いて、
「‥‥ん? 琉央ちゃんどーしたのん? ウチの顔に何かついとる?」
「い、いやいや、別に何もついてないぞ? うん、綺麗だなーって思ってな、紅葉が」
 きょとんと首をかしげる纏に、赤面して焦る琉央はとっさに。
「いや‥‥手つなごうか。寒くなってきてるし、な?」
 怪我の功名か、うんと頷く纏と琉央は手を繋いで。
 まだまだ一方通行な思いのようだが、なかなかに脈がありそうな二人。これも風流、むしろ秋なのに青春である。

「ふぅ、久しぶりにゆっくり出来そう‥‥」
 久方ぶりの休養を満喫する相川・勝一(ia0675)、彼の静寂は次の瞬間破られる。
「どーん☆」
「うぁ? な、何?!」
 突然の突撃、というか抱きつき。びっくりした勝一が振り向けば、
「あ‥‥ま、まさかあやめちゃん? 何でこんな所に?」
「それはね、ボクも開拓者になったからだよ♪」
 抱きついてきた少女、此花 あやめ(ia5552)は勝一の幼なじみで。
 再会したからには、懐かしさも手伝って、仲良く紅葉を楽しむのであった。
「それにしても、しょーちゃんってば暫く見ない間に、何だか逞しくなったよね。男らしくなったって言うか」
 しみじみ言うあやめ、そうかなぁと首をかしげつつ勝一はあやめを見返して。
 否、あやめの「胸」を見返しつつ。
「あやめちゃんも昔に比べておおき‥‥もとい、大人っぽくなったね。驚いたよ」
 慌てて言いつくろう勝一であるが、失言はしっかりと聞こえたようで。
「え? ボクも…って、な、何恥ずかしいコト‥‥!? し、しょーちゃんのえっちー!」
 大きくというのが、背だけでなく、視線で分かったあやめ、思わずどーんと勝一を突き飛ばせば。
「って、にゃー!? ぼ、僕が何を言ったの!!」
 自業自得というか、ごろごろと斜面を転がって、つもった落ち葉に突っ込む勝一であった。

 ずらりと並ぶ豪勢なお弁当。
 それを広げて、紅葉を満喫する仲睦まじい一団が。
 うまくできたかな、と心配げな表情の篠樫 鈴(ia0764)。
 大丈夫ですよと微笑みながら、お弁当を広げるのは巫 神威(ia0633)。
 そして秋鮭と刻み大葉のおにぎりを囓るのは、柄土 仁一郎(ia0058)だ。
「天気も良いし、今日は行楽日和だな」
「本当に‥‥紅葉も綺麗、三人一緒に来られて良かった。さあ、二人ともいっぱい食べてね」
「うん! いただきまーす!」
 ということで、仲睦まじい恋人とその妹という三人は楽しげにお弁当を広げるのであった。
 秋の野山は恵みの宝庫、三人は山の幸を集めたり、紅葉を拾ったり。
 気を利かせた鈴が二人のじゃまをしてはいけないと思いつつも、あっという間に時は過ぎていくのだった。

 そして夕刻に近づけば、名の通り谷は色を変えて。
「素敵な景色と沢山の団子に囲まれて、のんびり出来る‥‥幸せです」
 暮れゆく谷を見ながらつぶやくのは巳斗(ia0966)。
 その横で景色を見ながら静かに頷くのは白野威 雪(ia0736)と白姫 涙(ia1287)だ。
 巳斗と雪は知り合い同士で、涙は雪の友人。
 初対面の巳斗と涙であるが、のんびりと紅葉の中で過ごせばすぐ緊張も解け。
 なんだか三人の仲の良い女の子達といった風情であった。‥‥巳斗は男であるが。
「みーくん、お団子、分けて頂いても構いませんか?」
 嬉しそうに団子をほおばる巳斗からちょっと分けて貰いつつ、ほほえましくその様子を見て。
 そして、雪は自分の友人の涙のために。
「もう一人、友人の分も、なのですが‥‥」
 と、ちょっと申し訳なさそうに追加で貰ってみたり。
 そしてのんびり過ごしていれば、いつしか真っ赤な夕焼けが里を照らせばそれは見事な光景で。
「‥‥綺麗‥‥」
 思わずつぶやく涙。こっくり巳斗は頷くと
「来年は皆を連れてこの景色を見ましょうね!」
 こうして、秋の祭りの日々は過ぎゆくのだ。
 だがもちろん谷の紅葉はそれだけではない。短いながらも続く紅葉の季節はまだまだ人を集めるのだ。

●秋の日に 響く楽しい 歓声は 秋の祭りの 余韻となって
「おい、この値はちょっと暴利ではないか?」
 にやりと凄むのは、骨董商を前にした鬼島貫徹(ia0694)。
 彼は骨董巡りを楽しんでいるようで。
 高値をつけて暴利を貪る店主には厳しい顔、そして思わぬ掘り出し物は買えぬ苦しみを味わいつつ堪能して。
「フン、やはり良い品は武天に流れてくる、か。これもまた時代よ‥‥」
 古びた刀の鍔を矯めつ眇めつ、そうつぶやく貫徹であった。
 たしかにこうした祭りがあれば、モノは集まる。そしてモノだけでなく人も集まるというもの。
「そこの人! そうそう、あなた」
 威勢の良い声が響くのは、紅葉の根元におかれた将棋盤からだ。
「あなたならいけそうですね。地頭の良さが顔に出ている! どうです、僕と一局、お付きあいくださいますか」
 声の主は、青禊(ia7656)。どうやら将棋の対戦の呼び込みのようである。
 そして対局が始まれば、観客も集まり大いに賑わうもので。
 そんな様子を遠目に眺めて、うつらうつらと船を漕ぐ姿もある。
 秋の風は寒々しいものだが、日差しはそれなりに暖かく。
 落ち葉と外套にくるまれて、紅葉のなかにぽつりとある開けた境内の片隅で眠る人影、それは氷(ia1083)だった。
「いやぁ、小春日和ってやつかね。なんにしても、昼寝日和だ‥‥zzz」
 そんな感じで船を漕ぎつつ、時折起きて、ぽやっと火焔獣が火を噴いて焚き火で焼き芋焼いたり。
 だが、そんな時、遠くの方で大きな火柱が立っているのに気付いた氷。
 思わず仔虎の形の式を放って偵察する氷、するとそこには、
「秋の行楽といえば‥‥勿論焚き火です!!」
 焚き火と言うには巨大な火柱が、境内の真ん中の開けた広場で燃え上がっていた。
 それを前にして、怪しげに微笑むのは水津(ia2177)だ。
 秋の寒風を吹き飛ばさんばかりの炎は人を集めるようで、集まる人々は勝手に茸を焼いたり芋を焼いたり。
 もちろん危険は無いように気をつけてで、どこか暴走しそうな水津をしっかり見守る斉藤晃(ia3071)の姿も。
「全く困った嬢ちゃんや」
「私は、火焔パーティーさえ邪魔されなければ優しい魔女さんなのですよ」
 ということで、水津は炎を満喫するのだが、大きく燃える暖かな火は人を集めるようで。
 すぐそばを会場として、この紅葉の中、豪快な豪勢で豪奢な飲み比べ大会が始まろうとしていた。

「よってらっしゃい! みてらっしゃい! さぁさ皆さんお立会い!」
 朗々と響く声は紅葉の間を響き渡り、なんだなんだと客の声。
「紅葉に負けず劣らず見事な詠みっぷり、飲みっぷりを見てっておくれ!!」
 声の主は景倉 恭冶(ia6030)、参加し大会をもり立てる仲間達のために声を張っての呼び込み中だ。
「自信のあるやつぁ参加しない手はない筈だ!!」
 こうして、なんとも風流に飲み比べと一緒に歌詠みまでする大会が始まったのであった。
 決まりは簡単、観客からお題をいただいて歌を詠む歌詠み大会がまず始まった。
 そこでは、負けたら酒を飲まされるという仕組みで。
 さらには、その真向かいで行われてるのは飲み比べ、我こそはといううわばみたちが勢揃い。
「音に聞く、六色の美を来て見やれ、今が盛りぞ紅葉の錦」
 おおと沸く風流な観客達、歌を詠みしは与五郎佐(ia7245)。
 彼を破らんとする歌詠みの数は多けれど、与五郎佐の詠む歌はなかなかに見事で
 その歌の数々に観客は拍手を送るのであった。
 そして、風流な歌詠みの盛り上がりとはまた別に、大酒飲み達が火花を散らす争いもあって。
「へいへいへーい! 司会進行は、この俺朱点だ! 盛り上がっていこう!」
 朱点童子(ia6471)が盛り上げる中、酒を争って飲む者たちのなかには開拓者もちらほら。
「‥‥美味いねぇ。酔いまではまだまだ遠いよ」
 涼しい顔で大杯を飲み干していくのは難波江 紅葉(ia6029)。
 隣の歌を肴に、ますます酒を飲み干せば、味わうようにしみじみと酒を舐めつつ。
 かなりの量を飲み干していくのは萩 伊右衛門(ia6557)だ。
「傾きも侘びも、酒が入れば話は別だ。重畳重畳」
 ただ淡々と、酒を飲むこの男もなかなかに手強く。
「俺の胃袋は滝壺だぜ!」
 気合いで酒を呷っている男は、天ヶ瀬 焔騎(ia8250)。
 素面なのか酔っているのか分からない台詞だが、紅葉を肴に楽しそうに酒を飲んでいて。
 だがしかし、よりいっそう観衆の心を射止めているのは、
「‥‥なんだか熱くなってきたな」
 着物の胸元をはだけて風を送れば、隣の飲み比べ相手が脳天に血を上らせすぎたようでぶったおれる。
 そんなこんなで勝利を重ねる水鏡 絵梨乃(ia0191)であった。
 呼び込みをしていた恭冶もいつしか参加して、大いに賑わう飲み比べ会場。
「はぁ、いつもこんなんだったらいいのにねぇ‥‥まぁ一時の休息も必要さね」
 その賑わいを楽しみつつ、紅葉はさらに大杯を呷るのだった。
 そして賑わいを楽しげに見やる開拓者もいて。
 紅葉の舞う大樹の下にたたずむ浅井 灰音(ia7439)は
「良い風景だね、合戦ですさんだ心も癒える‥‥」
 そう言いながら、ふと手にした綺麗な紅の一葉、それをみてふと新しいお菓子を思いついたり。
 そして、始まりがあれば終わりがあるもので。
「ああ、今日は本当に楽しかったなぁ」
 腰には茸を沢山下げて、どうやら秋の山を満喫したらしきは葛城雪那(ia0702)。
 思い出すのは少し前まで身を置いていた戦場の事だが、秋のさわやかさはそれを一時忘れさせるもので。
「‥‥皆は元気かなぁ」
 戦場の興奮を超えて、静かに故郷を思う。時に賑やかに、そして時に静かに六色の谷の日々は過ぎ去るのだった。

 そして夜にも谷には人影が。
「たまには、月夜に照らされる紅葉も良いものです。酒が進みます‥‥」
 橘 琉璃(ia0472)は酒の肴に月と紅葉を。
 月光に照らされる紅葉は、まるで今までの賑わいを忘れたようで。
 じきに紅葉は去り、冬がやってくるだろうが、きと開拓者達はこの秋の事を忘れないだろう。