外道退治
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: シリーズ
相棒
難易度: 難しい
参加人数: 10人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2009/11/13 19:46



■オープニング本文

 人は様々である。
 聖人君子も居れば、極悪非道の輩も居るわけで。
 開拓者にも様々な個性があるのを見れば、一目瞭然であろう。
 そして、人に仇成すアヤカシを討つ開拓者達ではあるが、誰しもが正義の輩とは限らない。
 スネに傷持つ者も居れば、その本性は混沌として悪であるという者も居るだろう。
 それでこそ人間なのである。

 そして、時には毒をもって毒を制する必要が生じるときもある。
 武天のとある街にて、周囲に名の知れた領主が居た。
 サムライとしての誉れも高く、徳に優れた為政者であった。
 ゆえにその街は栄え、噂を聞いた数多くの人々が集まり、なお富み栄えていったのだが、それは過去の話。
 その息子は、父の影を追い一生懸命に文武の修練を重ねた。
 その結果、父には適わないまでも、それなりに優秀だという評判を得るまでになったのだが。
 何事につけても清廉潔白で、優秀であった父と常に比べられることは苦痛であった。
 父に負けぬよう、周囲の声に追い立てられるように暮らしていれば、いつの間にやら自分も壮年。
 死ぬ気で務めてきたというのに、周囲の評判は、まあまあだが父には及ばないというもの。
 そんな彼が溺愛したのは、彼の息子だった。
 自分が苦しんだような思いはさせまいと、何不自由なく長男を甘やかして育てたのだ。
 するとどうだろう、富み栄えた領主の三代目として育てられ、甘やかされ続けた長男は。
 ある種の怪物となってしまったのだ。
 父という後ろ盾を笠に着て、傍若無人な振る舞いをするに始まり。
 果ては、良くない仲間を集めては放蕩三昧。
 結果、彼に人一倍備わっていたのは凶暴性だという事が分かるに居たり、父は頭を抱えた。
 だが、ある時気付いたのだ。
 父親として我が子を放置し続けてきた結果が、現在の息子を作ったのだということに。
 そして自身が心の奥に潜め続けてきた凶暴性、それが息子に現れているのだと気付いてしまったのだ。
 思えば、自身は清廉潔白な自分の親に、心の底では反発し続けてきたのかもしれない。
 そう気付いてしまえば、もう坂道を転がるように人は堕落する。
 すでに、清廉潔白であった親はおらず、残されたのは豊かな領地のみ。
 そこに君臨するのは、小さな暴君である我が息子と、やっと父親の軛から解き放たれた現領主。
 彼らは、止めることは出来ない凶暴性に突き動かされるように、牙を剥いたのだった。

「私はあくまで代理人ですので、依頼主の正体は明かせません」
 そういって、依頼を受けた開拓者達を一室に招いた男はにこやかに笑みを浮かべて。
「これから、私が言う依頼は一切他言無用で願います。その代わり‥‥」
 差し出された包みには、常の報酬よりも明らかに多い額が入ってるのが分かり。
「それと、あなたたちがへまをしない限り、今回の事件は表沙汰にされません。もし失敗したら‥‥」
 男はよりいっそう笑みを含めて、一同を見やり。
「依頼は存在しなかったという事になります。よろしいですか?」

 そういって切り出された依頼は、単純であった。
 暴走を始めたその領主と息子を討ち取る事。
 この二人が殺されて始めて、依頼は成功となる。
 この際、無辜の一般人を巻き込んだりしない限り、すべての事は不問となる。
 さらに、この二人の殺害に関しても、罪に問われないことが補償されている。

 さて、どうする?


■参加者一覧
静月千歳(ia0048
22歳・女・陰
シュラハトリア・M(ia0352
10歳・女・陰
柳生 右京(ia0970
25歳・男・サ
柊・忍(ia1197
18歳・女・志
大蔵南洋(ia1246
25歳・男・サ
椿 幻之条(ia3498
22歳・男・陰
黎阿(ia5303
18歳・女・巫
御神村 茉織(ia5355
26歳・男・シ
ブラッディ・D(ia6200
20歳・女・泰
ネオン・L・メサイア(ia8051
26歳・女・シ


■リプレイ本文

●偽
「なんだお前は!」
 郊外の屋に響く恫喝の声。
 ふらりと立つ男相手に、声を上げたのは屋敷のごろつき達だ。
 その前に立っている黒髪の男はへらへらと笑みを浮かべてごろつきたちに、
「いやー羽振りが良さそうだと思いやしてね。お零れに預からせて貰えねぇかと‥‥」
 古びて薄汚れた着物や手に提げた酒瓶、見るからに流れ者といった様子の男。
「ここには、俺のようなモンが集まってるってな話を聞きましてねぇ。ちっとは役に立ってみせますぜ?」
「ふん、そういうなら多少は使えるんだろうなぁ?」
 ごろつきたちがそう言えば、ではひとつ、と男は刀を借りて軽く一閃。
 すると、傍らのススキに止まっていた蜻蛉がぽとりと両断されて落ちて。
「‥‥そこそこ使える見てぇだな。なら由之助様に口を利いてやろうじゃねぇか」
 そういって、ごろつきたちは男から酒瓶を奪いつつ、屋敷の中に案内するのだった。
 (‥‥さて、これでひとまずは良し‥‥しかし、それなりに腕の立つのもいるみてぇだな‥‥)
 心中でそうつぶやく男は御神村 茉織(ia5355)、剣客崩れの振りをして一足先に潜入したのだ。
 屋敷の中にて彼の前に、どこか幼さの残る若者が姿を見せて。
「へー、腕が立つらしいな。なら、ここにいる間は好きにしな、だけど俺の命令は聞いて貰うからな」
 整った顔立ちに立派な体格、話に利く由之助からはあまり想像のつかなかった身なりの立派な青年がそこにはいた。
 しかし立派な若者として通用しそうなのは体格だけ。その表情と言葉にはどこか歪みが見えて。
「‥‥そうそう、さっき聞いたんだけどな。今、街に女衒の一団がいるらしいんだ」
 にたりと笑みを浮かべる由之助。そして濁った蛇のような瞳を向けて、
「話がつけば、新入り歓迎の宴ぐらいは開けるかもな」
 笑みを浮かべて、子供のようにそういう由之助に御神村は言いしれぬ嫌悪を感じるのだった。

 さて、同じ頃。
「‥‥ほっといてくれ」
 ぴしゃんと鼻先で戸が閉められると、ほぅと溜息をつく黎阿(ia5303)。
 彼女は仲間達とは別行動で、街の人々から話を聞いてみようとしていた。
 まずは被害に遭った者の家族、それから息子の屋敷で働いていた人間を捜したのだが満足な結果は得られなかった。
 かつて、屋敷と取引があった者や働いていた者も、厄介事は面倒だと口をつぐみ。
 被害者の家族に至っては良くても逃げたか、皆口封じも合わせて殺されているのだろう。
「‥‥‥熱血なんて趣味じゃないし、柄でもないけど‥‥許せないわね」
 街全体を包む陰鬱な雰囲気はおそらくそうした恐れのためもあるのだろう。
 黎阿はそう思いつつ去るのであった。

 そして夕刻、街の寂れた飯屋兼酒屋にて。
「へぇ、あの屋敷にはそんなに沢山、流れ者があつまってるのかい」
「‥‥姐さんも、そこに用がおありで?」
「いやいや、たんに目立ってたから気になっただけさ」
 酒場の親父相手にそういって酒を飲むのは赤い髪が目立つ女、柊・忍(ia1197)だ。
 屋敷に関わりが無い、と聞いて親父の表情は目に見えてゆるんで。
 それだけで分かるのは、あの屋敷とそこに関わる人がどれだけ毛嫌いされているか。
 その様子に柊はふっと笑みを浮かべて、掌中の賽子をちゃりちゃりと握る。
 まだ、彼らの策が動くには時が必要なようであった。

「‥‥一応、用心はしている様ですね‥‥」
 屋敷を遠目から伺う姿が一つ。
 寒さが厳しいからという風情で顔まですっぽりと布で覆った女性は静月千歳(ia0048)だ。
 小柄な彼女の姿は路地から路地へ。
 目立たぬように屋敷の周囲を回りながら正面に視線をやれば、そこには見張りの姿が見えて。
 彼女はそのほかに出口のないこと、そして見張りの質や数をこっそりと伺っているのだった。
 すると向こうからやってくるのは集団が。後ろに酒樽を積んだ車を従えて、女性2人を後ろにつれて。
 先頭のいかめしい男は、どうやら由之助の仲間であるごろつきに先導されているようだ。
 屋敷の入り口までやって来た一行はそのまま屋敷の中へと通されて。
 その後ろでばたんと閉じられる屋敷の扉。いよいよ、開拓者達の策が動き出したようである。

●宴
 大蔵南洋(ia1246)は、刀を落とし差しにし、いかにも無頼の徒といった風情だ。
 その大蔵はにと笑みを浮かべて交渉中だ。
「いいんですぜ。我々としちゃあ、ここで売らなくてもよそで高値で捌けるんで」
 そういって、後ろに立って震えている女達にちらりと視線をやって。
「‥‥こんな上玉なかなか居ないですからねぇ?」
 そんな挑発するような言葉に、いきり立つのは由之助の手下のごろつき達で、
「てめぇら、調子に乗ってるんじゃねぇぞ!」
 と、獲物に手を伸ばそうとするような奴らも居るのだが。
「‥‥待て! ならこういうのはどうだ。女の代金はすぐには払えんが、我々の一味になれ」
 すでに由之助はこの地の領主の息子だと言うことはいってある。
 そうなれば、一介の女衒に対してこれ以上ない後ろ盾が得られるということをネタに取引を持ちかけたのだ。
「お前さんが我々の面倒をみてくれるってぇことですかい?」
「ああ、それなら商売もやりやすかろう。そのうち女の料金も払ってやるしな」
 手下が武器を手にした瞬間、大蔵ら立ち居振る舞いから相手にするのは得策ではないと思ったのだろう。
 由之助の提案には、大蔵も頷いて場の雰囲気は一転。
「そうと決まれば、この女達は差し上げましょう。丁度酒も積んでいることですし」
 そういって荷車を示して。
「ひとつ杯を交わすってのはどうで?」
 由之助はこれに頷き、盛り上がる手下達とともに宴が始まるのだった。

「酒とは気が利いてるな。まったく、丁度酒も暇つぶしも尽きたところだったんだ」
 そういう由之助の酌をしているのは妖艶な女性だ。
「あら、次期領主様のところに伺うのですもの、手土産の一つや二つ、当然じゃなくて?」
 流し目一つで、手下達の視線を集めているこの女性。お前は客をとらねぇのかという手下の言葉に返したのは、
「あら、女の子じゃなくてあたしの様な男が好み?」
 椿 幻之条(ia3498)は男であった。
 詐欺だなんだと騒ぐ手下のごろつきであるが、他にも女衒の中に1人、商品として2人女性が居る。
 ならばと、誰もが浮ついた様子で酒を飲んで、そんな様子を見ながら、どんどん酒の酌に回る椿。
 男とは言え、見目麗しい相手に酌をされれば喜ぶごろつきたちで。宴は盛り上がっていくのだった。

「如何だ? 命中させるよりも面白いと思わないか?」
 凛とした美貌に鋭い笑みを浮かべて、庭先でそう言ったのはネオン・L・メサイア(ia8051)だ。
 場所は庭先、弓用の的が木々に取り付けられている場所にて彼女は男達数人を前に、勝負を持ちかけていた。
 弓を放って、外せば勝ち。そうすれば対戦相手が服を脱ぐというのだ。
 服の上からでも分かるネオンの豊満な肢体はそれだけでも目を引く。
 その上で、そんな勝負の提案。男達は、誘われているのだと思ったようだ。
 すっと上着を脱ぎ捨てるネオンに視線を奪われる男達。
 一方、どうやら、現在は幸運にもとらわれの人は居ないようで。
 それに彼女の提案ならば獲物を捕まえてくるよりは、木にくくった的の方がいいと男達。
 遊びが進めば、月明かりと屋敷から漏れ光る灯りのなか、柔肌を晒していくネオン。
「ふふふ、お前達、鼻の下が伸びて居るぞ‥‥」
 まさしく釘付けにされる男達であった。

 そして、宴会が進めば、もちろん女にも手が伸びるもので。
「や、だ‥‥やめて、よぉ‥‥」
 小柄な体を恐怖ですくませる少女はシュラハトリア・M(ia0352)。
「くっ‥‥」
 気丈に男達を睨み付けるのはブラッディ・D(ia6200)だ。
 商品として連れてこられた女達、まさしく手土産として彼女たちはごろつきに囲まれていた。
 半分弱がここに集まっていると見ても良いだろう。
 そんな中で、由之助が声をかけたのは大蔵。
「‥‥いいのか?」
 その言葉に、大蔵は首を振って
「なに、自分は道中さんざんと楽しんだからな。この場は譲るさ」
 そういって、大蔵はその場から去るのだった。
「へっ、商品とはいえ、情でも移ったか? あくどい面をしてるがありゃ小心者だな」
「ははっ、違いねぇ! まーそれならさっさといただいちまうか、おらっ! 大人しくしやがれ!!」
 手下共の下卑た笑い声、それを呷るようにシュラハトリアは声をあげて
「いやぁ‥‥許してよぉ‥‥お願いだからぁ‥‥」
 逃げようとする彼女をいたぶるように追いすがる手下達、そんな姿を見ている由之助だ。
 そして部屋の隅に静かに立つのは、新入りの男、御神村。
 彼は何かを待ち構えるようにただ静かに目をつぶっているのだった。

●血
「‥‥あ、お前は‥‥」
 屋敷の門にて、一応とばかりに門番を務めているのはおそらく手下の中でも下っ端の男だ。
 もりあがる屋敷の様子を尻目に歯がみしていれば、そこにやってきたのは大蔵。
 ほんの数人ほどの見張りに、大蔵は声をかけて、
「私は十分楽しんできたから、交代しよう。ここで見張りをしていればいいんだろう?」
 その言葉に、もちろん宴会に加わりたい男達は喜び勇んで屋敷へと向かおうとするのだが。

 屋敷へと向かおうとした彼らの背後で、ごとんとかんぬきの外される音が。
 なんだと思って振り返ったその瞬間。
 ゆっくりと開いた屋敷の扉から飛び込んできたのは黒い影だった。
 どん、という衝撃、そのあとに熱さ。そしてゆっくりと冷たさが‥‥。
「‥‥恨むなら、奴についた己の不運を恨むんだな」
 柳生 右京(ia0970)の言葉を聞きながら、その見張りは事切れるのだった。
「な、なにもん‥‥ぐぁっ!!!!」
 一番距離の離れた場所に居た見張りのうち1人がそう声を上げる。
 おそらくその声は屋敷にも届いただろう。だが、その結果を男は知ることはなかった。
「すまんな。逃がすわけにはいかんのでな」
 重い刃を振るったのは大蔵。両手にもった分厚い刃はたやすく男の命を奪い。
 開いた屋敷の扉からすすっと屋敷内に踏み込んでくるのは、柳生以外にも3名の人影。
 この屋敷全体には30名にすこし足りないほどのごろつきがいるようで、開拓者達は劣勢。
 しかし、まだ何が始まったか、気付いている者は少なかった。
「‥‥では、周りに気付かれない様に、手早く片付けましょう」
 そう口にして、符を構える静月。いよいよ作戦は始まったのだった。

「? なんだ今の声は」
 女を前にした男達が聞いたのは遠くからの断末魔。
 下穿き一丁になった男達が今まさに女達に手をかけようとしていたそのときであった。
 すっと、動いたのは御神村。
 彼は床に放置された手下の刀に手をすると一閃。なんと左右におかれた行灯の灯心を斬り飛ばしたのだった。
 真っ暗になる室内、次の瞬間。
「外道は外道に殺されて然り‥‥ギャハ、楽しい狩りの始まりだ」
 今まで、悲鳴を上げて嫌がっていた商品の女がそう言って、
「‥‥俺の体に触れた奴は命をもって償いやがれ」
 にぃっと闇の中で笑みを浮かべるブラッディ、床にころがった状態から全身で跳ね上がる。
 泰拳士の技、滝登で自分を組み敷こうとしていた男の金的をたたきつぶす。
 そのまま起き上がると、まるで酔ったような足取りで、周りの男達に拳を叩き込んでいくのだった。
「ギャハ! 逃がさねぇよ!!」
 大いに暴れ回るブラッディであった。
 そんな中、自分が手を伸ばそうとしていたもう1人に狙いを定めた男。
 こちらも薄衣のみ、幼い姿には不釣り合いな妖艶な肢体を前に。
 細い首に手をかけようとするのだが。
「‥‥もぉ、早すぎ。みんな駄目駄目なんだからぁ‥‥シュラハ、全然満足できなかったよぉ?」
 そういって手を伸ばせば、虚空から現れるのは陰陽師の式だ。
 小刀の形をした式は、男の指を切り裂いてそのまま首を抉る。
「うっ、うわぁぁぁぁあああ!!」
 しぶいた血に悲鳴を上げ始める手下達だが逃げ惑う男達に向かって斬撃符は容赦なく。
 あるものは足を抉られて畳の上でのたうって、御神村にとどめをさされていくのだが。
「‥‥由之助はどこだ?」
 つぶやく御神村、由之助の姿はいつの間にか消えていた。

 屋敷が騒然となって、驚く庭先の男達。
 今の今までネオンの姿に目を奪われていたのだが、次の瞬間
「‥‥な、なんだこれ‥‥」
 一同の胸に突き立つ矢。ネオンが放った矢がいつの間にか彼らの胸に突き立っていた。
「最後に我の肢体を見れたのだ。得をしただろう?」
 急所を射られて崩れ落ちる男達をそのままに、彼女は屋敷に踏み込む。すると、
「‥‥残念。そっちには行かせないわよ」
 女を連れ込んだ部屋で騒動が起きて、他の場所の男も騒然とする中、椿はそういって斬撃符で一撃。
 丁度、男が崩れ落ちたところで、椿とネオンは合流したのだが、今だ由之助の姿は見つからず。

 丁度その時、屋敷の裏にて刃のかみ合う音が。
 そこでは、数名残った最後の手下とともに、逃げ惑う由之助の姿が。
 すぐさま開拓者達がそれを包囲、だが最後の手下達の抵抗は手強かった。
「くそっ! お前らはそういうことか!! よくも‥‥よくもよくもよくもっ!!」
 わめき散らしながら刃を振るう由之助、意外なことに確かな腕前で。
 手下とともになんとかしのいでいたのだが。
「‥‥残念だったなぁ」
 由之助が背にしていた屋敷の壁、その上の屋根から飛び降りてきた姿は柊。
 すっと由之助の背後に飛び降りると、手にした短刀をその喉に突き立てる。
「がっ!!」
 一瞬の早業に手下達も動揺したその瞬間、静月の呪縛符が手下をとらえれば、それを柳生が一撃。
 腕利きの手下も、虚を突かれて刀をはたき落とされると、力強い一撃で斬り倒され。
 そして、逃げようとする手下には黎阿の力の歪みが。
「少しは人の痛みを知りなさい‥‥」
 手下達は全員こうして倒されるのだった。

●終
 喉に突きたった短刀を抑える由之助、その手の間からはどくどくと血がこぼれ。
「お前のような野獣たちには、相応の死の報いだな」
 突き放して言うネオン。
「‥‥少しお痛が過ぎたわね」
 そう冷ややかに告げるのは椿。そして
「じゃあな、外道の息子様。地獄でもたのしんでらっしゃいな。ギャハハ!」
 ブラッディの言葉に、悔しげな顔で見上げる由之助だったが、ついには力を失い息絶えるのであった。


「‥‥ご苦労様でした。街では、仲間割れが原因だと噂されています」
 依頼の後、接触してきた依頼人は一行にそういって。
「また、酒と荷車についてですが、必要経費ということでこちらでその分は出しましょう」
 そう告げる依頼人だが、またしても笑みを浮かべて。
「‥‥近いうちに、また依頼を出すことになるでしょう。その時はお知らせします」
 そう告げるのであった。