廃鉱に満ちる死
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2014/03/04 19:01



■オープニング本文

 暗い、深くて昏い洞窟を想像してみよう。
 空気は湿っぽく、不気味なほどにひやりと冷たい。
 そして静寂。足音がくぐもって響き、自分の息づかいが煩いほどに聞こえる。
 手にした頼りない灯りは闇をたしかに照らしてくれている。
 造りの荒い坑道だ。壁面もごつごつで、角も乱雑。そこかしこに影が落ちる。
 揺れる灯りに合わせて影も揺れ、まるで闇が生きているように蠢くのだ。
 岩肌の影、柱の後ろ、角の先……そこになにかが居るような気がして………。

 天儀、武天の廃鉱にアヤカシの屍人たちが巣くっているという報告がギルドに届いた。
 その鉱山跡は、すでに何年か前に廃鉱となった場所である。
 期待された鉱山だったが、急な開発が悪かったのか事故が絶えなかったという。
 そして多くの死者を出した割りには、実入りもすくなく、すぐに資源が尽きた。
 時を同じくして、鉱山周辺で流行病が広がり多くの死者が出た。
 そうなれば、もう誰も鉱山周辺には近寄らない。
 残ったのは、虚ろな鉱山と無数の墓だけだという。

 その鉱山跡に、屍人が大量に巣くってしまったのだ。
 鉱山の鉱夫たち、流行病で死んだ村人達。
 だが、それにしては死者が多すぎる気がする……。

「いいね……実に良い。曲がりくねった坑道は死と狂気に満ちた臓腑のようだ」
 夜、月下で笑みを浮べる不気味な男。黒衣と黒い肌の美青年は愉悦に満ちた笑顔で呟いた。
 黒の青年……上級アヤカシの無有羅だ。
 手には、この寒い季節にもかかわらず真っ赤な花束が。
 それを彼は眼前の墓にばさりと投げつける。
 舞い散る花は、急に萎れてくしゃくしゃと瘴気に還って消えていき……。
 そして墓からぼこりと死者達が蘇った。

 屍人は、瘴気によって蘇ってしまった死人である。
 弱く知能も無い。緩慢に動き、生者を襲い仲間を増やす程度の力しか無い。
 だが、屍人の中にも強い種類も居る。
 食屍鬼や蘇屍鬼と呼ばれるアヤカシたちがそれだ。
 さらに恐ろしいものも居る。
 上位のアヤカシの手で死して尚、活動するようにされた鬼の屍人、不死鬼。
 そして、志体を持つ人間を屍人と化した屍鬼だ。
 無有羅は、かつてこの近くで鬼と戦い敗れた開拓者数名を屍鬼と化した。
 さらには、彼らの闘った鬼数体も屍人と化して、それらを連れて鉱山へ赴いたのだ。

「さて、この程度で良いか……出来れば、鉱山に響く悲鳴が聞きたかったんだけどね」
 笑う無有羅は、そういって鉱山を後にする。
 彼が振りまくのはただただ狂気に満ちた悪意のみ。
 こうして鉱山は恐ろしい場所へとなりはてたのである。

 開拓者の仕事は、死に満ちたこの鉱山に巣くうアヤカシを退治することだ。
 敵は多く手強いだろう。だが、やらねばならない。

 さて、どうする?
 


■参加者一覧
鴇ノ宮 風葉(ia0799
18歳・女・魔
成田 光紀(ib1846
19歳・男・陰
破軍(ib8103
19歳・男・サ
月雲 左京(ib8108
18歳・女・サ
山茶花 久兵衛(ib9946
82歳・男・陰
カルマ=A=ノア(ib9961
46歳・男・シ
ジェラルド・李(ic0119
20歳・男・サ
紅 竜姫(ic0261
27歳・女・泰


■リプレイ本文


 寂寥とした鉱山にやってくる開拓者達。それを迎える者は誰も居ない。人の気配も動物の気配もない。 
 鉱山にはあるのは不気味な静寂と、しつこい冬の寒さだけだった。
「……こんな所か。全部じゃないだろうが、塞がないよりはマシだろう……」
 周囲の廃材を乱雑に積み上げて、鉱山の出入り口に即席の障害物を作った破軍(ib8103)。
 一仕事終えてやれやれとため息をついて、ぐるりと鉱山を見回して。
「ふん、辺鄙なところに変わり種がたむろって……たしか、無有羅の奴が糸を引いているんだっけな」
「無有羅、の手の事だと、そうおっしゃいましたか?」
 破軍の呟きを聞きつけたのは月雲 左京(ib8108)。
「あぁ? ……ああ、目撃報告もあったし、手間の掛かる事が好きな奴だ。今回も奴だろうよ」
「無有羅……で、御座いますか。冥越、八禍衆……」
 なにかを思い出すように目をつぶり、腰に佩いた勇壮な太刀の柄をひと撫でする左京。
「憎々しい…いつぞ、その首、取らせて頂きます」
 小さく呟く左京。だが、ふと左京が視線をあげると、破軍がじっと左京を見つめていた。
「……どうか、しましたか?」
「ああ、そのちっせぇナリだと動きやすそうだ、と思ってな、チビ助……」
 大柄な破軍と並ぶと左京は、彼の胸にも届かないぐらいの背丈だ。
 だが急にそんなことを言われた左京は、じっと視線を向けて、
「確かにわたくしは小さいですが、貴方様が無駄に大きいのではありませんか?」
「はっ、確かにこういう狭いとこじゃ不便だな。少し背を分けてやりてぇな」
「……見たところ、その首の上のものは邪魔な木偶では? 切り落として差し上げましょうか」
「馬鹿か……お前は?」
 冷え冷えとした視線を向けつつ刀の鯉口を切って言う左京に、あきれたように返す破軍。
 一見すると犬猿の仲のような口論だが、いつものことのようで。
「ま、そろそろ集合だ。奴の楽しみをぶっつぶすか……」
「ええ、一匹残らず、動けぬように、せねばなりませぬね……」
 口には出さずとも、同族同士には信頼関係があるようで二人は足並みを揃えて仲間たちの元へ。
 丁度仲間の開拓者達は、班分けとギルドから支給された消耗品の確認を終えたところのようであった。
「落盤や空気の悪いところは、分かる範囲で地図に書き込んだが……なにぶん情報が古いからな」
 紫煙をふうと吐き出して、吸っていた煙草を放り投げたカルマ=A=ノア(ib9961)が地図を示す。
「あとは、どれくらいの燃料があれば最深部までいけるか……だな。実地で確かめるしかないか」
 破軍に塞いだ出入り口の場所を聞いて、地図に印を付けるカルマ。
 彼が耐久中の仲間たちに視線を向けると、坑道の地図を写していたジェラルド・李(ic0119)が、
「次善策としてギルドに、予備の人員の配置を頼んでおいた。万が一取りこぼしても何とかなるだろう」
 そう仲間たちに告げて、ずしりと重量感のある長巻直しの大太刀を抜き身で握り直す。
「ふん、誘い込まれるのは気にくわないが、余計な被害が出る前にさっさと片付けるだけだ」
 そんな李の言葉に、仲間たちもそれぞれ頷き、彼らは踏み込む予定の入り口に向かった。

「廃鉱探検、ね……宝物があればやる気も湧くんだけど。あるのは屍人とくず鉄だけか……」
 廃鉱に残っていた壊れた手押し車を見ながら見て、けだるく呟く鴇ノ宮 風葉(ia0799)。
 拾った鉱石の欠片を手の中で転がして、風葉はそれをぽいっと放った。
 すると、欠片は見事に手押し車にからんころんと収まる。
 そんな彼女を見て、乾いた笑い声を上げたのは成田 光紀(ib1846)だ。
「……鴇ノ宮君。君も暇なものだな」
「ふん、あんたには言われたくないわね」
 ばさりとロングコートの裾を翻しつつ、振り向く風葉に成田は肩を竦めるだけで。
 成田が懐から懐中時計を取り出して眺めれば、丁度味方も集まって来たようで廃鉱へと歩きだす。
「なんだか薄暗くって、気味が悪いわね……」
 手にした提灯の明かりを受け、影が揺らめくのを見て呟く紅 竜姫(ic0261)。
 彼女たちは、最後に自分たちが踏み込んだ坑道の入り口を塞ぐと、奥に向かって歩き出すのだった。


 開拓者は一団となって坑道を奥へ奥へと進んでいった。
 始めは、緩やかに下へと降りていくような坑道だ。
 幅も広くところどころにおそらくは鉱石の積み下ろしを行った広い空洞もある。
 そんな坑道を歩きながら、提灯を手に腰をとんとんと叩く山茶花 久兵衛(ib9946)。
 足下に注意を払いつつ、
「こんな薄暗くて辛気臭いところで可哀想になぁ……早く成仏させてやりたいところだが……」
 すこし足を止めて、ぐっと腰を伸ばす山茶花。
「こうも狭苦しい坑道が続くと、腰に来るな」
「まったくだなぁ。やれやれ……老体には、ちとキツい道程だなぁ」
 苦笑しながら応えるカルマ。坑道は入り口付近で、アヤカシの姿もない。
 開拓者達の表情には余裕と笑みが浮かんでいるのだが、坑道はどんどん奥へと続いていく。
 次第に狭くなる坑道、分かれ道の数も増えていく。
 開拓者はそこで、予定通り二つの班に別れて坑道を進むことにした。
 坑道の大半は、途中で枝分かれしてその先が行き止りになっている。
 試し堀り用の坑道だったのか、予定していた鉱脈が発見できなかったのか。
 ともかく、そうした行き止りの坑道を調査するときは、片方が坑道を進み片方が分かれ道で待機する。
 挟撃や待ち伏せを防ぎ、効率よく闘うための策である。
 そしてその狙い通り、効率よく、坑道の調査は進んでいた。
 敵が隠れ潜んでいないことを確認し終えた坑道の入り口には、蝋石で印を付けて。
 落盤の痕跡や、空気のよどみが分かれば、
「ふむ、この先には居ないようだ。すぐ先で行き止りになっておる」
 人魂と夜光虫を飛ばして、山茶花がアヤカシの不在を確認する。
 だが、坑道が深くなればなるほど、じわじわと不快な死臭が増していた。
 全方位に警戒心を向けていても、じわりとにじみよってくるような不快な気配。
 それはアヤカシの確かな気配だ。
 アヤカシの存在感と不快な気配はいよいよ間近まで迫りつつあった。

 先行しているのは一班だ。
 カルマと李が交代で超越聴覚を発揮して、周囲の怪しげな物音を聞き逃さない。
 前衛は破軍と李。霊剣を構える破軍に長巻直しを構える李。
 後衛ではカルマが悠々と身構え、彼らの中央で風葉が夜光虫をふわりと飛ばす。
 そこで気配が動いた。
 気付いたのは皆ほぼ同時、合図する必要も無く四人は即座に戦闘態勢をとる。
 そこに屍人の群れが飛びかかってきた!
 狭い場所、多勢の敵、落盤の危険性に戦いにくい環境。
 これだけの悪条件が揃えば、弱い屍人といえども強敵のはずだ。
 だが、万全の準備をしていた開拓者たち四人は、塵ほどの油断もなく待ち構え居る。
 飛びかかってくる屍人を、破軍の霊剣が刺し貫く。
 松明を手に、霊剣を振るう破軍。一突きで屍人が吹っ飛ぶ、松明を棍棒代わりに振るって蹴散らして。
 さらにもう一人。李も長巻直しで鋭い突きを見舞って屍人を刺し貫いた。
 彼の強烈な突きは、なんと二体の屍人を同時に貫いた。それを力任せに引き抜いて、さらに一体に突き。
 李は屍人の突き刺さった長巻直しを振るって横の屍人にぶつけ殴り倒して。
 狭い坑道にもかかわらず、二人のサムライはあっというまに屍人たちを細切れにしていくのだった。
 屍人たちは、死体に瘴気が宿った弱いアヤカシだ。
 だが多勢なら、優れた戦士の破軍や李といえども倒しきるのに時間がかかる。
 それがアヤカシの狙いだ。二人が屍人の群れに襲われている隙に、飛び出してきたのは蘇屍鬼だ。
 屍人を囮にして破軍や李を足止めし、その横をすり抜ける! 蘇屍鬼が狙うのは後衛のカルマと風葉。
 だが、飛びかかってくる蘇屍鬼を前にしても、二人は欠片も慌てていなかった。
「逃げたところを追う、ってのは無理そうだな。どいつもこいつも、死ぬまで襲いかかってきやがる」
 蘇屍鬼を前に不敵に笑うカルマは、手を一振りして。
「……ん? もう死んでるから、死ぬまで、ってのは違うか……まぁいいさ。ほぉら、遊ぼうか」
 次の瞬間、鋼線が蘇屍鬼に絡みついた。敵を切り刻む暗器が狭い坑道に伸びる。
 同時に隣の風葉も、蘇屍鬼に向かって符を放る。
「後衛狙い? いっつも芸が無いわね……悪いわね、あたしにかかれば中級術だって立派な大技よ!」
 放たれたのは氷龍。前衛を巻き込まないように蘇屍鬼を巻き込んだ氷の嵐が発動する。
 こうして一瞬の攻防は決着がついた。
 破軍と李は群れを殲滅し、鋼線と氷の嵐が蘇屍鬼を粉砕して。
「……直撃してねぇのに、この寒さは老体に応えるな」
「あら、失礼。それじゃさっさと戻りましょ? ここよりはマシなはずよ」
 苦笑するカルマに風葉は軽く返して、一班は坑道をあとにするのだった。


 同じ頃。
 一班が進んだ分かれ道で待機していた二班の元にも、アヤカシが殺到していた。
 こちらは不意打ちではなく、数を揃えての物量作戦のようだ。
 倒し漏れがあれば、一班の皆を挟撃されてしまう状況。つまり一匹たりとも通せない。
 ずいと前に出たのは竜姫だ。
「人もいない廃坑に巣食って苔や鉱石でも食べるのかしら……なんて思ってたけど」
 赤い籠手で包まれた拳をぴたりと構えると、挑発するように手招いて。
「そんなわけないわよね。やっぱりお腹すいてるのかしら? もちろん、食べられる気は無いけどね」
 だが彼女の斜め前に出て、まるで竜姫を庇うように構えて左京が太刀を抜きはらった。
「……竜姫様、先鋒はわたくしが。もし、怪我などして痕が残ると……大変になってしまいます」
 じり、じりと迫る屍人の大群を前にして、竜姫は思わずきょとんと吃驚。
「あら、それは戦っちゃ駄目ってこと?」
「いえ、戦うな、とは言いませぬが……竜姫様が怪我を追ってしまうのは、いささか気になります」
 小さな同族の少女の物言いに、竜姫はくすりと微笑んで。
「大丈夫、それなら怪我をしないように戦うわ……でも、それならあなたは怪我してもいいの?」
 竜姫の問いに、今度は左京が不思議そうな表情を浮べて。
「……? わたくしは、かまわぬのです。では、先鋒を務めさせて頂きます」
 きっぱりと言い無造作に屍人の群れに近付く左京。
 彼女は、太刀を軽やかに振るって屍人を迎え撃つのだった。
 先鋒として、前に出る左京。その援護をしながら、竜姫が取りこぼしを次々に屠っていく。
 左京は太刀を大きく振るわず、小柄な体躯を活かして小さく扱い屍人を切り刻む。
 一方竜姫は、全方位から襲い来る屍人を前に、縦横無尽に拳と蹴りを放った。
「わらわらと……! これじゃキリが無いわ!」
 後ろから飛びかかってくる一体を背拳で察知し掴んで強引に背負い投げ。
 前から襲いかかってくる屍人にぶつけ、すぐさま次の屍人へ。
 そんな2人の猛攻に、後ろで控える山茶花と成田は手持ちぶさたのようで。
「……さて、強敵も居ないようだし、俺は練力を温存させて貰おうか」
「ふん、狂気を撒くだけ撒いて顛末を見ないのであれば、随分と勿体無い事をする」
 鷹揚に構えて周囲を窺う山茶花に、おぞましい屍人たちを前にやれやれと嘆息する成田。
 だが、坑道の別の道から飛び出してきた新手を見て2人はすぐさま身構えた。
 現れたのは屍人より強力な屍食鬼たちだ。だが屍人の群れに襲われている前衛二人は動けない。
 そこで成田はまず呪縛符を放った。屍食鬼の片方をその術が足止めする。
 さらに山茶花は呪声、温存してきた技をここぞとつかい牽制。
 その隙に竜姫は、鋭い蹴りで自分の周囲の屍人を蹴り飛ばす。成田と左京に向かってだ。
「ごめん! よろしく!」
「ふん、術師でも屍人の一体程度ならどうとでもなる」
「お任せ下さい」
 成田は屍人を籠手で殴り、左京も新手を引き受ける。
 その隙に竜姫は瞬脚で一気に屍食鬼へと距離を詰めた。
 呪声でひるんだ屍食鬼に瞬脚から強烈な拳。鋭い一撃の連打で体力の多い屍食鬼を圧倒する。
 即座に一体を撃破、だがそこにもう一体が迫るが、割り込んだのは群れを屠った左京だ。
 屍食鬼の強烈な一撃を体で受ける左京。だが、小柄な彼女は踏みとどまった。
「左京、大丈夫!?」
「お気になさらず、多少は頑丈に出来ておりますが故」
 左京は鎧を活用してがっちりと攻撃を受け止めていたのだ、そして二人を前に逡巡する屍食鬼に、
「貴方の敵は、このわたくしです。どちらを向いておいでですか?」
 太刀を一閃、屍食鬼の腕を斬り飛ばし、竜姫との連携であっさりと撃破するのだった。

 戦いを終えて、成田の治癒符が左京を癒し、山茶花が周囲を人魂で警戒。
 そんな中、竜姫は左京の元にやってきて、彼女の頭をぽふっと撫でて。
「ありがとう、助かったわ」
 にっと笑みを向ければ、左京もほわりと微笑んで竜姫を見上げ。
 そこに丁度一班が合流。開拓者達は坑道のさらなる奥へと向かって行くのだった。


 そして坑道の最奥にて、開拓者達は大量の屍人との戦いを繰り広げていた。
 練力の温存や戦力の維持、治療薬や食料があったおかげで、なんとかぎりぎり戦力は保てている。
 だが相手は消して恐怖せず、数で推してくる屍人の群れだ。
 数えるのもバカらしく思うほどの屍人を屠り、ついに不死鬼と屍鬼が現れる。
 屍人化した鬼はその体力が何よりの武器だ。如何なる攻撃だろうと意に介さず暴れ回る鬼。
 だが、今回は相手が悪かった。
「屍人でも、凍っちゃえば同じでしょう? これで終わりよ」
 風葉の氷龍が鬼を凍らせて、その次の瞬間には二つの影が不死鬼に肉薄。
 破軍は霊剣を突き刺して、そのまま飛び離れ即座に懐から短刀を二刃閃かせる。
 もう一人の李、彼もまた長巻直しを不死鬼の胴体に突き刺して、すぐさま忍刀を抜き打ちで一閃。
 凍りかけの不死鬼が反撃するその瞬間、カルマの裏術・鉄血針が不死鬼の脚を縫い止めて。
 破軍の二刀が首、李の忍刀が不死鬼の胴を薙ぎ払って、とうとう不死鬼は倒されるのだった。

 一方の二班。こちらには屍鬼が数体押し寄せた。
 開拓者の亡骸が屍人化した強敵だが……こちらも開拓者の敵ではない。
 閃く成田の呪縛符。一瞬でも脚が止まればその隙に竜姫が瞬脚で距離を詰め一撃からの背負い投げ。
 投げられた先には左京。太刀の一閃と山茶花の呪声の連撃であっさりと屍鬼は瘴気から解放される。
 単体で強い不死鬼と違って、連携と戦術が要の屍鬼だ。一角が崩れれば脆いもの。
 あっさりと残りも、連携攻撃で仕留められていくのだった。

「……ほんとーに全部いなくなったのか、分かり辛いわねー……」
 ぼやく風葉。成田も瘴気を観測する懐中時計で見るが今ひとつわからない。
 だが、アヤカシの本隊は倒したわけで、ひとまず依頼は無事完遂。開拓者は、廃鉱をあとにした。