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■オープニング本文 泰国に八極轟拳という門派がある。掌門(門派の長のこと)の名は轟煉。 尋常ならざる剛の拳を持つ無敗の武人。そして力こそ正義を掲げる男である。 だが、彼ら八極轟拳は力こそ正義を掲げる故に、弱者を顧みない。 弱き者は滅べば良いとただただ力を振るうだけの集団なのだ。 そのため八極轟拳の長、轟煉を始め八極轟拳には賞金が懸けられている。 しかし、彼らの力は強くその支配も堅固なために、敢えて火中の栗を拾うような者は少なかった。 ……そんな八極轟拳に新たな動きが。 泰国の北西に、瑞峰というなの山岳地帯がある。 天然の要害であり、それまで八極轟拳の支配領域と隣接しながら安穏と守りを固めていた小領地だ。 そこが、八極轟拳に落とされた。 瑞峰を治める諸侯、瑞家は滅び瑞峰全域が八極轟拳の手に落ちたようだ。 どうやら彼らはそこを新たな本拠地としてさらなる支配の拡大を目論んでいるらしい。 領地が落とされたとしても、やはり真っ向から八極轟拳と事を構えたい領主はいない。 泰国内部でも問題視はされて居るが、アヤカシの被害もある現状、大規模な討伐軍を向ける余裕も無い。 だが、そんな八極轟拳に立ち向かおうとする集団がいた。 名も無き抵抗勢力。八極轟拳に滅ぼされたり虐げられた流派が集って生まれた勢力だ。 今までも、幾度か開拓者の手を借りて、様々な作戦を遂行してきた彼ら。 それが、活発化した八極轟拳の暴挙を止めるべく、ついに動き出したのだ。 今回の作戦は、勢力を拡大しようと動く八極轟拳の出鼻を挫く作戦だ。 彼らは、今新たに支配した領域に新年の貢ぎ物を要求していた。 それを奪ってしまおうというのだ。 奪った金品は、避難民や支配領域で苦しむ人たちのために使われる予定である。 もちろん、武具などは抵抗勢力に有効活用されることになるだろう。 だが、八極轟拳はそうした貢ぎ物に護衛を付けている。 敵の貢ぎ物とその護衛は2部隊。 開拓者は二手にわかれてそれを奪取しなければいけないのだ。 さて、どうする? これは、八極轟拳の支配に屈せぬ勢力がいるのだということを示す反撃の狼煙だ。 難しい依頼となるだろうが、開拓者にしか出来ない仕事だろう。 改めて聞こう。どうする? |
■参加者一覧
梢・飛鈴(ia0034)
21歳・女・泰
水鏡 絵梨乃(ia0191)
20歳・女・泰
朧楼月 天忌(ia0291)
23歳・男・サ
羅喉丸(ia0347)
22歳・男・泰
鬼島貫徹(ia0694)
45歳・男・サ
パラーリア・ゲラー(ia9712)
18歳・女・弓
リンスガルト・ギーベリ(ib5184)
10歳・女・泰
嶽御前(ib7951)
16歳・女・巫 |
■リプレイ本文 ● 決行を前に、彼ら青い旗を掲げる反対勢力の若き拳士たちは震えるほどに緊張していた。 そんな彼らを知ってか知らずか、集まった開拓者は……。 「久々に手応えのありそうな相手だ。腕が鳴るぜ……だが女の相手は苦手だ。オレは渦山派剣宗の方をやるぜ」 殺人刀を無造作に担ぎ、半面の刺青をにやりと歪ませて笑う朧楼月 天忌(ia0291)。 彼は微塵の緊張も気負いも見せずに、ただただ楽しそうだった。 そんな彼に、 「なら、これを読んでおくと良い。以前奴らと闘った時の物だ……俺もその場に居合わせた」 「あのとき、兄貴があっさりやられたのに懲りない奴らだナ」 報告書や書き付けを手渡したのは羅喉丸(ia0347)と梢・飛鈴(ia0034)。 二人は幾度となく八極轟拳と戦い、勝利してきた猛者達である。 「……そいや、親玉の轟煉だったか? 噂くらししか聞かんがどんな奴なのやら。羅喉丸はしってるカ?」 「ふむ、俺も相見えた事は無いが強敵だろう。以前相見えた叉焼とかいう幹部や他の幹部も手練れだった」 「となるとそれを束ねる轟煉はそれ以上の手練れってトコかナ?」 「その通りだ。今回の幹部相手も油断は禁物だ。若輩でも瑞峰落としで実戦をくぐり抜けているはず」 「本当の戦場で、一回りも二回りも強くなった、なんて話はよく有るもんナ」 そんな物騒なことを言いつつも楽しそうに笑みを刻む飛鈴。 すると報告書を見ていた天忌、顛末を読み進めてがばっと立ち上がった。 「あ? なんだこりゃ……劫光の奴もやり合ってたのかよ! 今回の幹部はそいつの弟だってか」 「劫光? ああ、そういえばあの依頼では共に闘ったな。確かに今回の幹部の一人はその時の敵の弟だ」 「こりゃ遅れを取るワケにゃいかんねェな……あのヤロウに負けるのだきゃあ勘弁なんでな!」 獰猛に笑って刀を握る天忌に、そんなものかと首を傾げる羅喉丸。そんな反応を見て飛鈴が、 「ま、男には譲れないものってのがあるんだロ」 そう笑うのであった。 いつの間にか、控えていた青き旗の拳士たちの震えは消えていた。 開拓者達は緊張している自分たちを解すためにこうした軽口を叩いているのではないだろうか。 そんな思いで顔を上げる若き拳士たち。彼らに、羅喉丸は目を留めると、 「……緊張は取れたか? 積み重ねてきた修練は決して裏切らない、だから信じるんだ。きっとできる」 そうとだけ声を掛けながら、彼らと同じ青い布を二の腕に巻く羅喉丸。 みれば他の開拓者達も同じように青布を身につけていた。 それにますます感謝して、10人の拳士たちは抱拳礼で謝意を示すのだった。 ● 「悪逆非道も結構、生ぬるい覚悟では覇道を歩むことは敵わず! だが、その悪ごと喰らい尽くしてやるわ!」 呵々大笑する派手な出で立ちの男、鬼島貫徹(ia0694)。 彼は腰に金拵えの大太刀を佩いて、どっかりと隠れ家の一つで待ち構えて居た。 この隠れ家から開拓者達は二つの貢ぎ物を狙って出立するのだ。 「しかし、一口に八極轟拳と言っても多様な使い手がいるのだな。黒仙派は毒を使うと言ったか?」 そんな鬼島の言葉に、頷くのは水鏡 絵梨乃(ia0191)。 「うん、確かシノビに近い動きをする奴らだったと思うよ。そこで一つ提案なんだけど」 そういって水鏡の切り出した案は、彼女自身を囮とするものだった。 酔拳の達人である彼女は回避力においては並の泰拳士の遙か上を行くだろう。 提案を前に思案する鬼島。そこに新たな提案が二つ。 「奇襲の隙を作ってくれるのであれば有難い。ならば妾が味方の彼らのこれを貸そうと思うのじゃ」 リンスガルト・ギーベリ(ib5184)が取り出したのは弓と礫だ。 「コレを使えば奇襲の一手には、なるじゃろ?」 小さな泰拳士からの提案は確かに十分な勝算があった。さらにもう一人。 「では我が援護につくというのは? 神楽舞「瞬」と解毒があれば囮役の危険は減るであろ」 袖で口元を隠しながら、嶽御前(ib7951)が告げた。その言葉に鬼島も頷いて。 「初手が肝要な策となるだろう。ならば敵の混乱を誘って乱戦に誘い込むのが上策」 「じゃ、ボクの案で決行だね。でも、敵にシノビみたいな優れた聴覚を鍛えてたらどうしようか?」 水鏡がそう言うと、すっと嶽御前がなにかの入った籠を持ち上げた。 ごそごそと籠の中から何かが動く音がする。それを仕舞って、 「……少々可哀想ではあるが、すこしの辛抱じゃ。これを使えば少しは攪乱できるのでは?」 どうやら小動物を使って敵の聴覚を攪乱するつもりのよう。 そんなわけでこちらも策は練り上がったよう。 その後は、リンスガルトが手伝いの拳士たちに弓や礫の扱いを教えていたりと待機の時間。 開拓者達は、ガランに幾つかのことを頼んでいたようだ。 それは貢ぎ物を移し替えるための荷車と、そして……。 「やっと完成しましたのにゃ。これだけ大きな旗があれば、きっと目立つのにゃ」 にっこりと笑って、大きな青い布を掲げるパラーリア・ゲラー(ia9712)。 家事の得意な彼女は、用意して貰った青い布を縫い合わせて大きな旗を二つ作っていたのだ。 旗を支える旗竿は丈夫な竹製。それを二組用意して、 「さあ、準備は整ったにゃ! みんなの笑顔を取り戻すためにも、がんばるのにゃ!」 策は整い準備も万端、開拓者も拳士たちも気力十分……あとは闘うのみである。 ● まず嶽御前が小動物を放った。野鼠や野兎たちががさがさと周囲を逃げていく。 同時に数羽の小鳥も、場所を変えて放った。 おそらく黒仙派の拳士たちは、その動きや音を小動物のものだと看破するだろう。 だが、それでも一瞬注意を引きつけられれば良いのだ。その隙に、移動していたのは嶽御前と水鏡。 敵隊列の横に陣取って、あえて音を出しながら接近する。 すると、黒仙派は音も無く身構える。誰何の声を上げることも無くただ無慈悲に迎撃を仕掛けた。 黒仙派は泰拳士とシノビを併せ持ったような流派だ。 必殺の間合いは三つ、至近距離の毒爪、中距離の鋼線、そして遠距離の投擲暗器だ。 どれも毒を帯びた一撃、一つでも当たれば戦闘不能だ。このとき、水鏡めがけて六つの攻撃が。 まずは暗器の投擲。それを水鏡は神楽舞「瞬」で強化された酔拳の身のこなしで回避。 続いて寸毫の間もなく鋼線が二条。 ただでさえ回避の難しい鋼線、黒仙派は瞬脚で一気に距離を詰めつつ改心の手応えでそれを放った。 幾度となく敵を仕留めてきた必殺の連携、それを水鏡は再び回避。 その身のこなしに黒仙派は緊張する。ただならぬ手練れと水鏡を見て取ったのだ。 さらに追撃、爪を構えた二人の黒仙派の連携、それすらも水鏡は避けた。 それだけではない。交錯の刹那に水鏡の足が跳ね上がり敵を蹴り飛ばす! 絶破昇竜脚だ。蹴りの爆音が響き、慌ててもう一人の爪の拳士は距離を取ろうとする。 が、遅かった。 「……長引けばこちらが不利になりかねないからね。速攻でいかせてもらうよ」 懐にはすでに水鏡が。そこから鋭い蹴りを顎に食らって、拳士は昏倒。 そして追撃のために接近していた鋼線の二人、その前にはなんと嶽御前が。 彼女は巫女だが、手には長剣と盾。それを構えてにこりと微笑めば、八重歯が覗いて。 その笑顔だけで敵は一瞬躊躇した。その一瞬さえあれば十分。 肉薄した水鏡が、乱酔拳で鋼線をかいくぐり、二度目の絶破昇竜脚。 ひるんだもう一人はなんと嶽御前が盾で鋼線を防ぎ、長剣が鋼線を跳ね返した。 こうして策を成った。 「後は任せたぞ……先行するが、皆一つ言っておく……妾に近付きすぎるな」 飛び出したリンスガルト。水鏡と嶽御前が囮になった今こそが好機だ。 「よぅし、今だっ! 放てっ!!」 鬼島の号令一下、泰拳士たちが矢と礫を放った。 それが降り注ぎ傷を負う黒仙派拳士たち。そこにリンスガルトが突貫した。 「まずはこれじゃ! にがさんよ!!」 やっと迎撃の体勢を整えて黒仙派が暗器や鋼線で迎撃するが、リンスガルトは八極天陣で回避。 するすると荷車に近付くと、崩震脚で一瞬の隙を作り、手にした刃で車軸を一刀両断! これで貢ぎ物は動かせなくなった。そこに、鬼島たちが突貫、一気に乱戦へ。 リンスガルトは素早さを行かして立ち回る。仲間の援護をしつつ狙いは幹部だ。 一方の鬼島は、まさしく鬼神の如き様相だ。 「クハハ。中々に筋が良いな。結構結構! だがまだまだ甘いぞ!」 豪快に振るうのは派手な大太刀。搦め手の鋼線をまとめて分断する剛の剣だ。 死角に回り込もうとする黒仙派を、 「温いわっ! 毒如きで我が歩みを止められると思うのではない!」 剣気と咆哮で威圧しながら太刀を振るえば、それだけで黒仙派が蹴散らされていく。 目立つ鬼島に攻撃が集中すればそれだけ余裕が生まれた。 そこを仲間の拳士たちが突いて一人又一人と黒仙派は倒されていく。 そして残るは幹部の紫霞だ。子供と侮ってか、リンスガルトに紫霞が向かう。迎え撃つリンスガルト。 爪の一撃を彼女は回避。だがその刹那爪の内側から刃が伸びた。毒の塗られた隠し刃だ! だがそれすらもリンスガルトは回避した。 手足の先に不可視の刃があるものと想定してのリンスガルトの読みが当たったのだ。 脚絆が風を巻き起こして彼女は跳びすさり、紫霞と対峙。 そのままリンスガルトは番天印を放った。牽制の一撃か? 紫霞はそれを回避して…… それで終わりだった。 囮役を終えた水鏡が、いつの間にか間合いに。そのまま絶破昇竜脚。 ぶっ飛ばされた紫霞はそのままリンスガルトが追撃、小柄な体で相手の体を踏みつけるように崩震脚! その攻防であっさりと紫霞は轟沈。 たった一人残った手下は慌てて逃げていき、それを追おうとする拳士たちを、鬼島は押えて。 「あれは放っておけ。皆殺しにしては、我らの武勇が伝わらないからな」 呵々大笑して言う鬼島。彼は旗竿を取って、それを地面に突き刺して。 「さて、これにて我らの名が刻まれたかな?」 はためく青い旗を見上げて、作戦成功を大いに喜び、無事切り抜けた拳士たちを労うのだった。 ● 一方の渦山派剣宗の部隊では。 山刀を投擲する飛鈴。狙い通りに左の車輪を直撃し貢ぎ物を満載した車ががたんと止まる。 次の瞬間、パラーリアの放った矢が右の車輪を粉砕。長い射程の弓だからこその精密狙撃でだめ押し。 その時には、飛鈴と羅喉丸は飛び出していた。 泰拳士の瞬脚。それは一瞬で間合いの飛び込む泰拳士の基本技だ。 慌てて仲間の拳士たちも追いかけて瞬脚で飛び出していく。しかし飛鈴と羅喉丸、この2人は別格だった。 待ち構えて居た渦山派剣宗。それが剣を振るうが飛鈴はそれを強固な籠手で弾き散らす。 柔と剛を併せ持ったしなやかな一撃。そのまま拳の連打を浴びて敵は昏倒。 一方の羅喉丸。彼はまさしく剛拳だ。泰練気法・弐と骨法起承拳、剛の拳を縦横に振るう。 その凄まじい連打は、如何なる鎧を着ていようと関係なく蹴散らして。 そのまま飛鈴と羅喉丸は馬車の左右に立ち塞がった。 左右から、車軸を狙っての拳を一撃、両側からの強烈な一打に車軸は真っ二つにへし折れた。 「これでもう逃げられねぇな!」 天忌ががつんと荷車の上に足を置いて敵を見回した。すでに幾人かは倒されているのだが幹部は健在だ。 だが、どうやら様子がおかしい。幹部の楽遠が今回の筆頭だったはずなのだが……。 「ふん、アンタ等も懲りないヤッちゃなぁ……しかも見た感じ、弟は一人じゃなかったのカ?」 看破したのは飛鈴だった。以前討たれた幹部の弟である楽遠。一団には同じ顔がなんと三つ。 彼らは三つ子だったのだ。本来な一人だと誤認させたり、敵を攪乱するための策なのだがもう通じない。 幹部級が何と3人。それぞれの前に飛鈴と羅喉丸、そして天忌が立ちはだかる。 「あの兄貴の二の舞いになりなくきゃ、諦めて真っ当な生き方でもしたらどーダ?」 軽口を言って拳を向ける飛鈴。 「なるほど。拳と剣においては兄に劣るが、それをこの三つ子の利をもって越える、といったところか」 くだらない、といわんばかりに拳を握って、かかってこいと手招きする羅喉丸。 そして天忌は、 「上手い具合に頭目戦にありつけるとはな。やっぱり意地ってモンがあンだよ、男にはな!」 競い合い、犬猿の仲でもある仲間の顔を思い浮かべて獰猛に笑って。 そして三つの戦いが同時に始まった。 双剣を抜いて飛びかかる楽遠その1。左右からの精妙な刃の連携だ。 それを飛鈴は、左右の拳で討ち払う。金属音と火花をあげて、拳と刃が切り結ぶ。 そしてとうとう、飛鈴の拳が刃の片方をはじき飛ばした! だがこれこそ楽遠の狙いだ。 剣の片方をはじき飛ばせば、そこが好機と狙うだろう。 そこを楽遠たちは雷法で迎え撃つ。剣の攻撃で煙幕を張り、そこに必殺の雷を……。 そう思っていた楽遠その一の顔面に、飛鈴の天呼鳳凰拳がめり込んだ。 敗因はただひとつ、実力差だ。 待ち構える羅喉丸と楽遠その2が対峙する。 こちらは片手に剣、片手は雷法の構え。得意な戦術で手練れの隙を突こうという構えだったが……。 「来ないのか? ならこちらから行くぞ」 羅喉丸は無造作に距離を詰めた。慌てて迎撃の雷法、それを瞬脚で躱す羅喉丸。すでに間合いだ。 すぐさま楽遠は剣を振るう。それを羅喉丸はぴたりと二本の指でつかみ取る。 そして左の連打。泰練気法・弐による連打が突き刺さり、楽遠は悶絶。 羅喉丸はつまんでいた剣を手放して、右拳をぴたりと楽遠に当てて、骨法起承拳。 急所を打ち抜く寸勁の一撃に、音もなく楽遠は崩れ落ちた。 敗因はただひとつ、認識の甘さだ。 速度では勝てないとみた天忌。彼は刀をびたりと大上段に構えた。 そこに楽遠が仕掛ける。一撃離脱で時間を掛ければ勝てないわけが無いと思う楽遠。 だが、そこに差があった。手数で攻めようとする楽遠。 その一撃をなんと天忌は避けも受けもしなかった。ただ引きつけてからの両断剣。 肉を切らせて骨を断つ一撃。ただその一撃が勝敗を分けたのだ。 天忌は一撃で勝利。敵の敗因はただただ、根性の差であった。 そして頭目が討たれ、残党はパラーリアと拳士たちが打ち倒したようだ。 逃げる残党を狙うパラーリア、それを羅喉丸は手で制した。 「情報を敵に知られたらまずくないかにゃ?」 「1人2人は逃がしても良いだろう。我らの存在と武威を示さねば」 そして一同は貢ぎ物を自分たちの荷車に乗せ旗を立てた。 残ったのは倒された八極轟拳達と空っぽの貢ぎ物。 ここまでされては流石に黙っている八極轟拳ではないはずだ。 「さあて、これで焦れてもうちょい上のやつが出てくれば……ちっとは進展しそうだナァ」 笑いながらそう呟いた飛鈴の言葉通り、次なる戦いはすぐにやって来るだろう。 |