死にそうなほど食欲の秋
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 10人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/10/28 17:43



■オープニング本文

 人には幾つもの欲求がある。だが、その中でも最も強く激しいもの、それは『食欲』だ。
 お腹と背中がくっつきそうな程の飢餓感、悲鳴を上げる胃袋。
 自己主張する腹の虫、ああ、本当にお腹がすいたとき、人はこれほどに苦しいのか……。

 では、なぜそんな状況になったのか、そこから説明しよう。

 諸君等開拓者は、とある依頼を受けた。
 それは、山岳地帯に潜む山賊を撃破せよというものだ。
 これから秋が深まり、冬へと向かって行くその山岳地帯。
 点在する小村は、山岳から得られる恵み……鉱石や宝石類を取って暮らしているという。
 そしてそれを売って、代わりに食料などを買って暮らしているというのだが。
 その食料や生活必需品を商う隊商を狙う山賊が居るというのだ。
 隊商が来なくなれば山岳地帯の小村は孤立してしまうだろう。
 そんな状況を防ぐために、諸君等は山賊たちを追ったのだった……。

 が、その途中で問題が一つ。
 山賊を追いかけて3日目、周囲は不毛の禿げ山であった。
 この地方は塩分の多い地質のため植物が殆ど育たないらしい。
 水はかろうじて小量なら手に入るが食料の現地調達はほぼ不可能だ。
 植物は生えず、その結果動物もほぼ居ない。キノコすら生えていない。
 だが、行軍3日目にして開拓者達は食料を失ってしまった。
 さらに不幸は重なる。
 山賊追跡を諦めて戻れば良かったのかも知れないのだが、雨のせいで地滑りが発生。
 戻るための最短の道が失われてしまったのである。
 大きく山を迂回して戻る場合、6日はかかってしまうだろう。
 こうなれば山賊を探すしか無い。
 そう覚悟を決めた諸君等は、決死の覚悟で前へと進んだのである。

 そして3日後、諸君等は水だけで何とか生き延びた。

 なにかかぐわしい香りが漂ってくる。絶食が見せた幻覚、ならぬ幻臭か?
 いや、どうやら違うようだ。
 谷に隠れるように作られた小さな砦、そこに山賊の根城があった。
 そこから漂ってくるのは、肉を焼く香ばしい香り。
 どうやら彼らしか知らない秘密の切り通しの道があるようだ。
 その道を使って彼らは隊商を襲撃し、根城に帰ってきているようだ。
 だが、そんなことはどうでもいい。3日ぶりに見る食料が目の前にある。
 どうやら山賊たちは羽振りが良いようだ。保存食や干し肉では無く、丸焼きの豚に酒。
 米を始め様々な食料を奪って備蓄しているようだ。

 ……敵の数は開拓者の軽く三倍は居るだろう。
 そしてこちらは断食中、最高の状態だとはとても言えない。
 だが、やつらを倒せば飯が食える! 食えるのだ!!

 さて、どうする? ってか、お腹すいたよね?


■参加者一覧
鈴梅雛(ia0116
12歳・女・巫
斑鳩(ia1002
19歳・女・巫
慄罹(ia3634
31歳・男・志
アルクトゥルス(ib0016
20歳・女・騎
龍水仙 凪沙(ib5119
19歳・女・陰
クリスティア・クロイツ(ib5414
18歳・女・砲
高崎・朱音(ib5430
10歳・女・砲
羅刹 闇詠(ib6420
19歳・男・シ
鍔樹(ib9058
19歳・男・志
神無院 槐(ic1054
23歳・男・武


■リプレイ本文


 その日、風に吹かれて流れる雲は皆の目に……食べ物にしか映らなかった。
「あの雲が……おにぎりに見えます……」
 かすれた声で呟く斑鳩(ia1002)。
「は……ハラペコすぎて……お腹と背中が……くっついちゃいそうなのです」
 不毛な山で食料を失ってしまった開拓者10名は、どうやら皆同じ気持ち。
「本当に、お腹がすくとそんな気持ちになるんですね。もう、限界です」
 小さい体でてくてくと懸命に歩を進める鈴梅雛(ia0116)。
「料理人の俺が餓死とか洒落になんねぇ……」
 目だけはぎらぎらと輝かせつつ、倒れそうな体に活を入れて歩く慄罹(ia3634)。
「ウチのメイドはからくりなんだがな、一人でメシを作らせると塩加減もなにもかもレシピ通りでな」
 かつて食べた料理を思いだしながら、ぽつりぽつりと呟くアルクトゥルス(ib0016)は、
「そうなると味気が無いというか、何か物足りないで気になるんだが……」
 いまはあのひと味足りない料理も恋しい、と傷むほどに空っぽの胃をさするのであった。
 開拓者達は頑強だからこそ3日の断食にも関わらず動けているのだが、
「シノビの修行で断食なんてのもあったけどさ流石に三日は無いだろ……」
 これ以上何も食べなかったら死ぬ気がする、とぼやく羅刹 闇詠(ib6420)。
 さすがの空腹で、素の性格が出ているようだがそれも仕方の無いことだろう。
 しかし、歩けども、歩けども解決策は見当たらなかった。
 なにか少しでも食料になるものがあれば……しかし、その思いもむなしく道無き道をただ進むばかり。
「……此れも、此れも試練だと仰られるのですか……!? あぁ……わたくしは……わたくしはぁぁぁ!!」
 飢えに苦しんだ幼少期を思いだしたか、クリスティア・クロイツ(ib5414)が泣きそうな声をあげた。

 もう限界か。なすすべは無いのか。と、そんなとき。
 10人の開拓者は、皆ぴたりと足を止めた。
 空気に交じるのは、馨しい香りだ。
 香ばしい肉の焼ける香りに、塩気を纏った味噌の香り。そして誰もが空腹を覚える炊きたての飯……。
 開拓者達はお互いに顔を見合わせる。これは空腹が見せた幻覚ならぬ幻の香りか?
 いや、これは現実。急いで進む一行すると眼下には小さな砦と、そこから微かにたなびく炊事の煙が。
 谷を吹く風がすぐにかき消してしまうため、今まで気づけなかったようだ。
「ありゃ、依頼の山賊達だな。丁度メシの最中みたいだ……こちとら数日まともに食ってねえっつうのに」
 ぎらりと目を輝かせて鍔樹(ib9058)が呟いた。
「我等が斯様な目に合っているというのに、奴等は呑気に酒盛りか」
 緋色の瞳で冷たく微笑んで、薙刀を構える神無院 槐(ic1054)。
 とうとう開拓者達は、食料へとたどり着いたのだ。
「あぁ、神よ……感謝致します。今此処に、糧を与えて下さいました」
 錯乱寸前だったクリスティアも思わず祈って感謝するが。
「ふ、たしかに感謝じゃが、こんな所でいい匂いをさせるとは我に喧嘩を売っているようじゃな?」
 魔槍砲を構え治した高崎・朱音(ib5430)の言葉に、10人の開拓者は強く頷いた。
「あそこに食糧がある……山賊をぶっ飛ばす理由は他にいらないね」
 龍水仙 凪沙(ib5119)の言葉に、開拓者の心は一つにまとまるのだった。


 谷を逆さに走り降りるような勢いで駆け下りてきた開拓者の一団はまずは砦の正門付近に降り立った。
「て、てめえら何者だ? いったいどこから……」
 隠し砦に突如現れた見知らぬ開拓者達に、慌てる山賊だが。
「朱音様……準備は宜しくて……?」
「うむ、万全じゃ! クリスティア、しっかり合わせるのじゃぞ!」
 山賊の言葉はまるっと無視して、魔槍砲を構えるクリスティアと朱音。
 2人は、慌てふためく山賊もろとも、砦正面に、大技の魔砲「メガブラスター」を叩き込んだ!!
 カッ! ……閃光が上向きに伸びて、轟音が谷に轟いた。
 料理を守るため、あくまで壁だけを破壊する一撃。それに門と壁はぶち抜かれた。
「て、敵襲!! 敵襲だぁ!」
 大慌てする山賊、だが続いてぶっとんだ壁の間から現れたのは巨大な龍であった。
 巨大な龍が、庭先でぱちぱち焼かれていた豚の丸焼きに食いつく!
 そのあまりの恐ろしさに山賊たちは腰を抜かせるが、なんと龍の姿は不意に霧散した。
 巨大な龍は単なる幻影だったのだ。そして霧散した龍がいたところには、小さな人影。
「むぐむぐむぐ………肉うめえええ」
 もりもりとまだ熱々の豚に直接飛びついて囓っている凪沙がそこにいた。
「ま、幻か! てめえら賊……は俺たちか。か、開拓者か!」
「もぐもぐもぐもぐ……あ、おかまいなく。……もぐもぐ」
「て、テメェ馬鹿にしやがってー!!!」
 山賊の怒声もお構いなしでもりもり食べる凪沙に、とうとう山賊たちはキレた。
 だが、時すでに遅し。破壊された壁からは開拓者がなだれ込んでくる。
「覚悟してください、ご飯! ……ではなく山賊の皆さん!」
 凪沙に殺到しようとしていた山賊を薙ぎ払う精霊砲の閃光。
 まず飛び込んできたのは、斑鳩だ。
 豚の足をむしっとちぎってもぐもぐしている凪沙を、ちらりと羨ましそうに眺める彼女だったが、
「……私だってさっさとご飯が食べたい〜……ですが、ここは我慢の子です」
 というわけで、決して前衛型ではない斑鳩は大暴れを開始。
「守りなんて関係ありません! 食料を独り占めする悪漢たちは……さっさと滅びなさーい!!」
 そして精霊砲の閃光が、山賊たちをぶっ飛ばし、
「わたくしたちに見せつけて、何という、何という罪深い!!」
「ふん、砲術師だと甘く見るでないわ! 食べ物をまもるためならどうとでもなるのじゃ!」
 閃光連弾を放ちまくるクリスティアに、山刀を構えて大暴れする朱音。
 さらに、もぐもぐ豚を食べてた凪沙も参戦だ。しかし豚を手にしていたら符が使えない。
「あ、口にくわえておけば良いんだ!」
 という解決策で、豚の足をがぶっと加えたまま、雷閃を放つ凪沙。
 開拓者達は次々に山賊を撃破していくのだった。

 まだまだ開拓者の勢いは止まらない。
 壁がぶち破られて龍が出たとか、襲撃だとか大いに混乱する砦。
 その中で、宴会場に料理を運ぼうとしていた一団の前に騎士が現れた。
「な、何者だ!?」
 慌てて武器を構えようとする料理番、だが羊肉の塊を邪魔をする。
 ほかほかと焼きたての羊肉だ。それを宴会場に運ぶ途中だったのである。
 それを見て、斧を構えた女騎士、アルクトゥルスは吼えた!
「肉おいてけ! なぁ! 飯当番だ!! 飯当番だろう!? 飯当番だろう、おまえ!?」
 びりびりと壁が震えるほどの大音声。びたりと構えられた斧。
 シィィィイと口の端から漏れる吐息も、まるで地獄の獰猛な獣。
 慌てて肉を放り出して逃げようとする料理番たち。
 だが、食べ物を捨てて逃げる彼らを、妖怪肉おいてけ……もといアルクトゥルスは許さない。
 オーラを爆発的に放出し、盾を構えたまま突貫。
 放り投げられる肉を、盾と引き替えにキャッチ、がぶりと一口。
 熱々の肉汁が口中にあふれ、香草と焼けた肉の香ばしさが空きっ腹に満ちて……。
 その勢いのまま、斧をぶん回して、料理番たちを一撃で蹴散らすのだった。
「……まめももももまむにまむまうも(食べ物を粗末に扱うと)……んぐ、酷い目に遭わすぞ」
 もぐもぐ咀嚼しつつ、酷い目に遭わせたあとで、しれっとアルクトゥルスは告げた。


 一方、龍の幻影が豚を囓ってたり、妖怪肉おいてけが現れたりしてる大混乱の中。
 一部の開拓者は宴会場へと静かに忍び寄っていた。
 混乱の中で料理を無駄にされてはたまらない。守らねば! ……料理を。
「襲撃か? どうするかな。お頭に報告に行った方がいいかな……」
「そうだな……あ、ちょっとコレ焼き加減足りないんじゃね?」
 宴会はまだ続いているようで、不安顔の下っ端山賊に、どうでもよさげと応える男。
 あぐらで車座になった山賊にしれっと交じっているのは闇詠であった。
 宝石のような紅の瞳に、真っ白な髪の男である。そんなのが交じっていたら目立つのは当然で。
「……って、てめえ誰だ! なんでここにっ! ってそれ俺の肉じゃねーか!」
「もうちょっと焼いた方が良さそうだな」
 闇詠は気にせず、焼き鳥をぼわっと火遁で再加熱。
 頑張って火力を調節したようで、ほどよく焼き色がついた焼き鳥の完成だ。
 そしてもう一人、いつのまにか交じっている男がいた。
 凄まじ勢いで料理を消化しつつ、自然と混ざっていたのは慄罹。
「いいもん食ってるじゃねぇか〜、これ、旨いぜ! ……香辛料はあれだな、孜然か!」
 隠し味を良い当てるあたり、さすがは料理人。
 おにぎりを囓りながらだったのでふがふがとしか聞こえなかったようだが。
 だが、周りの山賊たちは怒り心頭、刃を持って2人を取り囲んだ。
「ちょっとちょっと俺血生臭い宴会なんて嫌なんだけど」
 嫌そうに顔をしかめる闇詠だが、そうはいかないようで、
「ふふっ、ふふふふふ……俺がおまえら、全部食ってやるぜ!」
 おまえらの料理、と言いたかった慄罹の言葉が引き金になって、戦いが始まった。
 料理をひっくり返そうとする山賊には、慄罹の飛刀がぷすり。
「その料理は仲間の分だ」
 ときっぱり宣言。本当は山賊の分だが、
「おまえらに食わせる飯はねぇんだよっ!」
「まったくだ。料理を無駄にはさせん」
 刀と苦無で闇詠も大暴れ。あっさり宴会場の山賊は壊滅するのだった。

 調理場にひっそりと進む開拓者が1人。鈴梅雛だ。
「ひいなも、食べたいですけど、盗賊も退治しないと。我慢して、戦っている人も居ますし」
 ちらっと宴会に交じっていた慄罹や闇詠を横目に、彼女は急いで砦の奥へすすんでいた。
 料理をしっかりまもらなければ。そう思って奥へ到達するとそこには鍋をかき回す1人の偉丈夫が。
 彼こそこの山賊砦の頭領にして料理人であった。
「てめえらが侵入者か……開拓者だな!?」
 しかし、雛はひるまない。空きっ腹で力の入らない体を気力で支えて、きりっと立ちはだかって。
「無駄な抵抗は止めて、大人しく、ご飯を渡して下さい」
 きっぱりと宣言した。
「……料理? 俺等を捕らえに来たんじゃ無いのか?」
「それはあとでやります。まずはご飯の安全が最優先です」
 きっぱり。雛は宣言したのだが、山賊たちはさっぱり不思議な顔。
「……って、そんなことはどうでもいい! 侵入者たちを全員ぶっころしちまえ!!」
 はっと我に返った山賊の親分と、その部下たちが一斉に襲いかかってくる。
 そこに風のように2人の開拓者が飛び込んできた。
 並み居る山賊たちをなぎ倒し、飛び込んできたのは、
「メシ食ってる悪い子はいね゛ェがァァァ!!」
 数日ぶりの美味しそうな匂いに完全に暴走気味の鍔樹と、
「こんな断食など進んでしたい苦行ではないのでな、早々に片付けさせて貰おう」
 薙刀を手に、静かに山賊を睨み付ける槐だ。
 狭い室内で、縦横に振るわれる鍔樹の片手槍!
 しかし料理には最新の注意を払い、足払いを中心に山賊たちを無力化していく。
 そして、槐も薙刀を器用に振るい、山賊たちを部屋の外にぶっ飛ばしていく。
 料理を守るため、あっというまに雑魚を片付けて残りは親分ただひとり。
「ち、ちくしょう、これでも喰らえっ!!」
 悪あがきした親分は、大鍋を蹴り飛ばす。なかにはなみなみと魚の汁物が!
 それをぶっくら返して、開拓者に浴びせようというのだ。
 だが、それは氷の花で防がれた。
「食べ物を粗末にするのは、絶対に駄目です」
 氷咲契の氷の壁ががっちりと鍋を受け止めたのだ。そして次の瞬間、
「逃がしゃしねーぜ、こんにゃろう!」
「食い物を足蹴にするとは如何なものか……その身に後悔しようとも敵わぬ程に刻み込んでやろう」
 心眼を発動して追いすがる鍔樹に、鍋を蹴飛ばした親分にくつりと酷薄な笑みを向けて襲いかかった。
 あっさりと、槍と薙刀の柄でぼっこぼこにされた親分は捕縛。
 料理ひとかけらどころか、汁物一滴も無駄にすること無く、開拓者は山賊を殲滅したのだった。
 ………山賊捕縛は、料理のついでだったが、結果よければ全てよし、ということで。
 宴が始まった。


「あぁ、神よ……んぐっ、はむ……此の糧に……感謝、致しますわ……むぐっ」
 食べ物を詰め込んで、ほっぺたをまん丸にしたクリスティア。
「賊のくせにこんないい匂いのするものを食べる方が悪いのじゃ。ふぅ、やっと腹が落ち着いたの」
 満足したのか朱音はまるく膨らんだおなかをぽんぽんと撫でて一息。
 ちなみに、朱音は縛った山賊の頭領をイス代わりにして座って居た。
「さて、主らにはしっかり説教をせぬといかぬな。今後、我に顔が上がらないように……」
 ちらっと本音が出つつ、
「……もとい、賊をやりたくなくなるほどにのぉ?」
 といってイス代わりの親分を踏み踏み。それにあわせてクリスティアも説教を始めるのだが、
「貴方達は……むきゅ……悔い改めなくてはなりません……はぐはぐ……聞いているのですか?」
 むぎゅむぎゅと食べながら説教してるので何がなにやらさっぱり。
 小動物っぽいやら、説教が終わらないやらで山賊たちは複雑な表情でうなだれるのだった。

 もちろん他の面々も大いに食事中だ。
 ゆっくりと、満足げに御飯を食べているのは料理を守りきった雛ちゃん。
 魚の汁物を最後に一口飲んで、
「……これで、甘い物があれば、満足なんですけど」
 そういってほうっとため息をつくと、よこからすっと小皿にのったごま団子。
「ん? 雛が食べて良いんですか?」
「ああ、皆の分作って見た。なんか色々失態を晒した気がするしな〜」
 照れくさそうに呟くのは慄罹、余り物の材料を使って団子を拵えたようで。
 お裾分けに他の仲間の所に行くと、
「ふふふ、山賊君。君達の敗因は私達を前にいい匂いをさせたことだよ」
 もっきもっきと豚の丸焼きを食べつつ、ふんぞり返る凪沙。
 慄罹の義妹らしく、団子も受け取っていつも通りに良い味だと褒めてみたり。
 凪沙ら獣人の開拓者と歓談しつつ、槐も団子を貰い、どうやら開拓者達はやっと一息ついたようだ。
「いやぁ、俺等の方が山賊っぽかったなぁ」
 呵々大笑しつつ、豚を切りきり囓って宣う鍔樹。
「まぁ、それも仕方が無いでしょう。さて、お酒はもう少しどうですか?」
 そんな鍔樹等にお酌して回っているのは闇詠。先に食べさせて貰ったからとお酌して上げているようだ。
「ふぅ、やっとお腹が落ち着きました……」
 さすがに今日ばかりは遠慮も配慮も無く食べられるだけ食べた斑鳩は満足そうに呟いた。
 ……どんぶり飯が軽く十杯以上消えた気がしないでも無いが、それは乙女の秘密と言うことで。
 三日間食べられなかった分も食べ尽くした開拓者達。
 山賊たちも無事とっ捕まえて、満足して帰路につくのだった。