女傑商人を護衛せよ
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/09/20 19:37



■オープニング本文

 泰国の女商人、シュンレイ。
 彼女は危険を顧みず、仁義を通す女傑として名を馳せているのだが……。
「ああもう、こんなに暑いと気が滅入っちまうね! 酒だ酒〜! よーく冷やしたヤツを持って来な!」
 彼女は大いに荒れていた。

 その原因は、暑さなのだが……単に夏が暑いから荒れているだけでは無いようだ。
 最近、彼女は暗殺者に狙われているらしい。
 そのため、危険を避けるために避暑にも出かけられず、引きこもらざるを得ないとか。
 なので、いろいろと鬱憤が溜まっているらしいのだ。
「……なんだいこりゃ、水じゃ無いか」
「氷を浮べておきました。それで我慢してくださいまし」
「なんだい、ケチなこと言うねぇ……って、そんなに怒らなくてもいいじゃないかよぅ」
 相棒の女性型からくりのツバメから、じとっと睨まれてしおらしく水を啜るシュンレイ。
 そんなしょんぼり気味の主に、ツバメはふと問いかけた。
「ところでシュンレイさま。暗殺者の件ですが、どなた様からの差し金か、思い当たるところは?」
「ん〜? そーだなぁ、思い当たる人物は……えーっと、あいつとあいつと……んー多すぎて分からん」
 けらけらと笑って応えるシュンレイに、はぁとツバメはため息で応えて。
「この前、横槍を入れてきたあの商人ですか?」
「ああ、それはあるだろうなぁ。あの強突く張りの商売を潰したことは数え切れないほどあるしな」
「……少し前に、縁談を持ってきたあのご老人の線は?」
「ああ、あの助平爺な。裏で密売商やってるのは百も承知だっての。ぶっ飛ばしてスッキリしたねえ」
「…………あとは八極轟拳がらみでしょうか?」
「あー、あたしの首に賞金でも懸けてるかも知れないねぇ? 女が上がるってなもんだね」
 からからと笑う女主人のシュンレイに、ますますツバメは深くため息をつくのだった。

 ともかく、女商人シュンレイは今、暗殺者に狙われている。
 雇った護衛も居るし、この場所を離れない限り、暗殺される恐れは無いのだが……。
「あー!! もう限界だ! 避暑に行くぞ避暑に! 暑すぎる!!」
 どうやら我慢比べは苦手なようで、数日後にはこんなコトを言い出す始末。
「ダメですってばシュンレイさま! 外に出たら思うつぼじゃないですか!」
「大丈夫だ! こんなコトもあろうかと、依頼を出して置いた!! 返り討ちにすりゃいいのさね!」
 巨大な行李にぽいぽい着替えを放り込んで行くシュンレイに、とうとうツバメも根負けするのだった。

 ●追加情報
 女商人シュンレイとその相棒、ツバメについて。
 シュンレイは年齢三十前後、志体を持つ泰拳士出身の女傑。
 名は鷺・俊麗(ロ・シュンレイ)。大柄で豪快な姉御肌。
 10年ほど前に、商人の護衛をしつつ商人としての才を磨き独立。
 相棒の女性型からくり、ツバメと共に飛行船を操り、それなりに成功している。
 ちなみに、シュンレイは槍の名手、ツバメは機械弓の扱いを得意としているようだ。

 さて、開拓者諸君はどうする?


■参加者一覧
鈴梅雛(ia0116
12歳・女・巫
音有・兵真(ia0221
21歳・男・泰
鷲尾天斗(ia0371
25歳・男・砂
相川・勝一(ia0675
12歳・男・サ
鞘(ia9215
19歳・女・弓
レヴェリー・ルナクロス(ia9985
20歳・女・騎
アムルタート(ib6632
16歳・女・ジ
庵治 秀影(ic0738
27歳・男・サ


■リプレイ本文


 泰国の避暑地、常夏のこの国でも避暑地とあれば涼しい風が吹くそんな場所。
 そこに、女商人シュンレイの別宅があり、そこはいつもとは違い、大勢の客で満ちてた。
「いやぁ、これだけの護衛を侍らすってぇのは、なかなか良い気分だねぇ!」
「……シュンレイ様、暢気にふんぞり返っていないで、食料運ぶの手伝ってくださいまし」
 シュンレイに、相棒のカラクリ・ツバメにじとっと視線を向けたり。
 そんな主従を眺めて笑いを浮べながら、粛々と準備を進めているのは開拓者達だった。
「ずっと閉じ籠もるよりは、誘き出した方が効率的ではありますが……」
 よいしょよいしょとちいさい手で衝立を動かす鈴梅雛(ia0116)。
 そんな彼女に音有・兵真(ia0221)が手を貸して、ひょいと衝立を置くと、彼は鈴梅の言葉の続きを促して、
「並みの度胸では出来ないですよね。やっぱり、シュンレイさんは凄い人です」
「確かに……無茶はしていそうだけどな。暗殺者を送り込まれるとは、なにをやったのやら」
 苦笑で応える音有を、悪い人じゃ無いと思いますよ、と見上げる鈴梅であった。

 一方外でも開拓者達は忙しく働いていた。
「ふぅ、こんなもんか……」
 まだ高い日を眺めて暑そうに顔をしかめるいぶし銀は庵治 秀影(ic0738)。
 どうやら風鈴から伸びる紐を利用した仕掛け罠を設置していたようだ。
「早く来てくれよ。終わらねぇと酒が飲めねえからなぁ」
 庵治は、依頼人が邸に運び込んでいた銘酒を思いだして舌舐めずりしそうな表情だ。
 だが、にやけていても仕掛けられた罠は用意周到。赤糸の先に見えにくい黒糸を張った二重の罠のよう。
「さて、仕掛けは御覧じろ、ってところか」
 一息入れて腰を伸ばした庵治は、ぐるりと周囲を見回すのだった。
 すると、そこには退屈そうに見回りをしている男の姿が。
「……見廻りは暇だねェ。だからと言ってあのおばはんの相手は疲れそうだから勘弁だしなァ」
 くぁ、とあくびをかみ殺して依頼人をおばはん呼ばわりするのは鷲尾天斗(ia0371)だ。
「おいおい、そんなこと言ってたら怒られるぞ?」
 苦笑して言う庵治に、肩を竦めて鷲尾はへらりと笑って。
「俺にとっちゃあ女は九つから俺の六つ下までだ。あんな海千山千の女商人は大年増、ってところだな」
 どうやらこの男、中々に素敵な趣味の持ち主のようだ。
 だが宣言の通りの年齢の嫁がいるらしく悪びれる様子も無くへらりと笑って。
 そんな鷲尾の様子に、庵治はやれやれとため息。だが、何かを視界の端でとらえたようだ。
「……だが、女傑と呼ばれる商人なら、きっと耳も遠くまで届くはずだぞ?」
 にやりと笑う庵治に、ん? と首を傾げる鷲尾へ、びゅんと邸から空っぽの酒瓶が飛んできた。
「おっ……っと!」
 ぎりぎりで受け止める鷲尾。みると、邸の縁側で酒瓶を投げた豪快な体勢で笑うシュンレイの姿が。
「な?」
 片眉を持ち上げ髭をなでつけ苦笑する庵治。
 見れば、シュンレイはそれで気が済んだとばかりにもう邸内に引っ込んだようで鷲尾も苦笑を浮かべるのであった。


「いつ襲ってくるかわかりませんし、気は抜かないようにしないとですねー」
 そんな言葉とは裏腹に、ぱちり、と音を立てて駒が置かれて、うーむと唸るシュンレイ。
 彼女は相川・勝一(ia0675)となにか遊んでいるようだ。
 泰国に伝わる盤上遊戯の一つらしく、いろいろな駒を動かして相手の王を詰む遊びだとかで。
「……でも避暑地ですし、ちょっとまったりはしたいかもっ」
 と相川の言葉通り、風通しの良い避暑地の居間で一同は護衛を兼ねて遊戯中なのである。
 開拓者は見回りと側についての護衛に別れて警備中のようで、初日は何事も無く日が暮れていく。
 そんな中、ぱちりと相川が詰めの一手。シュンレイは参ったとばかりに諸手を挙げて降参だ。
「あー、やっぱりあたしはこういうのはダメだな。ちまちま頭を使うのは性に合わないね」
「おや、シュンレイ様。商売人は頭が大事、と常日頃から仰っておりませんでしたか?」
 こちらは意地悪く言うカラクリのツバメ。だがそんな嫌みも何処吹く風で、肩を竦めたシュンレイは、
「なぁに、戦と商人の頭の使い方は別さ。損を避けて得を取る、時節を読んで大きく賭ける!」
 高説を宣うシュンレイだったが、そんな彼女に興味を示したのはアムルタート(ib6632)だ。
「そういえば、シュンレイって昔開拓者だったんでしょ? どんなことしてたん?」
「ん? 開拓者というか、殆ど商人の専属護衛の泰拳士って感じだったけどねぇ」
「それじゃあ、ジルベリアとかとか行ったことある? 私ないんだよ〜」
「ジルベリアか、あたしも行ったこたぁ無いね。そこまで商売を広げられると良いんだけどなぁ」
 からからと笑うシュンレイに、興味津々で様々に質問をぶつけるアムルタート。
 その後ろでは、今度はツバメが相川を相手に遊戯を開始。ツバメは意外と手強いらしく盛り上がっているよう。
 そんな賑わいを見つめる女騎士がひとり。
「……私はまだまだ修行不足ということなのかしら」
 命を狙われていても、暢気に遊び、世間話に興じる依頼人シュンレイ。
 彼女を見てレヴェリー・ルナクロス(ia9985)はそんな感想を抱いたようだ。
 歴戦の女騎士レヴェリーから見れば、シュンレイが本当に油断しているのか、それとも自然体なのかは一目瞭然だ。
 恐れも気負いもなく、さりとて油断も気の緩みもない女傑シュンレイ。
 多少買いかぶりな気もするが、女傑と呼ばれる剛毅なシュンレイにレヴェリーは憧れの視線を向けて。
 そんな視線にふと気づくシュンレイ。にっと笑顔を向けるとレヴェリーに手招きをして、
「ジルべリアの話ならちょうどいい相手がいるじゃないか。レヴェリー、だったな。こっち来い来い!」
「わ、私ですか?」
「おう、情報はそれ自体が値千金。せっかくの機会だ、ジルべリアの話を仕入れるのも悪いことじゃないさね!」
「ああ、こんなことで取り乱してしまうなんて。お父様、お母様。貴方達の娘は、まだまだ未熟者です……」
 楽しげに笑うシュンレイと興味津々のアムルタートの勢いに押されて、困った顔で小さく祈るレヴェリー。
 圧倒されつつも、護衛としての気を抜けない彼女は、話の輪に巻き込まれていくのだった。

 そんな喧騒を聞きながら、開拓者最後の一人は静かにその前髪を風に揺らしていた。
 邸の屋根の上で鞘(ia9215)は静かに周囲に視線を向ける。
「それにしても……何処の誰か知らないけど商人一人消すのに暗殺者三組雇うのはやり過ぎ」
 そもそも、暗殺自体が駄目だけど、とつぶやいて彼女は暗殺者たちの思考をなぞっていた。
 特に考えるの、彼女と特技を同じくする弓使いの暗殺者だ。
 仕掛けるとすれば、やはり夜だろう。攻めるにしろ逃げるにしろ、警戒されてるのが変わらないならば夜が良い。
 その中で弓を使うとすれば、場所は限られるし予想は容易だ。
「この周囲に人があまりいなくてよかった。他に被害が出ないほうが良いし……」
 ぐるりと周囲を見回すと、にぎやかなのはこの邸だけ。周囲はひとけのない避暑地でひろびろとしている。
 仲間たちの張り巡らした罠にそれぞれが見回り、護衛もついている。
 根競べの始まりだなと鞘は考え、日が落ちるに合わせて周囲の見回りのため屋根を降りるのだった。。


 最初に仕掛けたのは、弓使いの張三兄弟だった。
 実のところ、暗殺者同士での横の連携を取っていない。別の依頼人から放たれたものだからだ。
 それ故に、遠距離から狙撃を得意とする張兄弟が最初に仕掛けたのは自然なことで。
 その日、交代で休憩したり見回りをする開拓者たちに囲まれつつ、護衛対象のシュンレイは庭先に出ていた。
 動かない敵をけん制するために、囮となったようだ。
 庭先で、シュンレイが見ているもの、それはアムルタートの踊り。
「えへへ〜♪ ただ踊ってるだけじゃないんだよ♪ こうやって踊ってるとね? 色々分かるんだ〜」
 ひらりひらりと踊るアムルタートに拍手をするシュンレイ。
 その時だった、張兄弟が三人同時に矢を放った。あくまでけん制の一撃、しかしそれはまっすぐシュンレイへ。
 その矢に即座に対応したのは鈴梅とレヴェリー、そしてアムルタートだった。
 鈴梅は氷咲契で矢をはじき、レヴェリーは盾を掲げて矢を受け止める。
 そしてアムルタートは鞭を振り回し、フロル・エクスドで矢を弾き飛ばした。
 即座に追い縋ろうとしたのは護衛の相川、だがそれに対して屋根の上から鞘が首を振る。
「今のはただの牽制、もう移動してるみたいだし、ここからじゃ場所を追えない」
 そんな鞘の言葉に、相川は無念とばかりに仮面を外して。
 開拓者たちは見事に暗殺者たちの最初の一手を防いだのであった。

 本当ならば、盤面はゆっくりと進むはずだった。
 だが、暗殺者たちは気づいた。同じ獲物を狙う同士なら、同時に仕掛けて目的を果たすべきだ。
 それほどに開拓者は手強かったのだ。協力体制ではない、あくまでも個人行動の集合としての連携だ。
 盤面は一気に進む。暗殺者たちは一気に攻勢へ、そして開拓者側はそれを迎え撃つこととなった。


 夕暮れ、その日開拓者たちは何らかの予兆を感じたのか、それぞれの配置についていた。
 屋根の上の鞘、護衛の面々、見回りの鷲尾や音有に、姿の見えない庵治。
 日中に休息は十分にとって、準備万端で待ち構える開拓者たち。そしてついに暗殺者たちの攻撃が始まった。

 最初は、次々に矢を放つ張兄弟だった。火矢は無い、邸が燃えればシュンレイが逃げてしまう。
 三兄弟は、まず護衛や見回りの開拓者たちを狙った。数を減らせば、暗殺者が有利になるはずだった。
 だが、彼らは開拓者たちの技量をなめていた。
「さて、暗殺に来たならそれなりに応対しないとな」
 飛んでくる矢を籠手で払う音有。武器を持たぬ無手と思って甘く見た張兄弟の矢が彼には通用しなかった。
 さらに、物見から見回りに転じていた鞘も矢で反撃。
 張兄弟からは開拓者たちの位置が、邸の明かりである程度わかる。
 だが、張兄弟の場所はわからないはずだ。なぜ鞘は反撃できたのだろう?
「ここを狙える場所は限られているから。だから、何度か射られれば、場所は絞り込める」
 狙撃とはいえ、射程距離や立地で相手の位置を鞘は読み切ったのだ。
 そして弓の腕ならば鞘のほうがはるかに上手。
 鞘は音有に場所を伝え、じりじりと彼は張三兄弟を追い詰めていくのだった。

 身軽に壁を乗り越え邸に忍び込もうとする女の姿、灰鴉の丁だ。
 その眼前にふらりと姿を現す男は鷲尾。
「まァ、メンドクセェが命は盗らない方向って言うのがクライアントのオーダーだからなァ」
 武骨な短銃を構えてぴたりと灰鴉に向けて、宣告する鷲尾。
「命の代わりにその首にかかった賞金でも貰ってやらァ」
 そして返事を待たずに、鷲尾は銃をぶっ放した。
 狙いは手足だ、だが意外と灰鴉はすばしこい。ひらひらとかわすどころか、早々に逃げる体制だ。
 獰猛な鷲尾の様相に早くも恐れを感じたのだろう。あっという間に灰鴉は尻尾を巻いて逃げた。
 追うか、と考えた鷲尾だが、首をすくめると。
「……まったく、なんか今回は貧乏くじだ。あのおっさんに任せるか」
 逃げ去る灰鴉を放っておいて、鷲尾は音有に加勢し、張三兄弟へと向かうのであった。

 なぜ鷲尾は灰鴉を逃したのか。それは、すでに罠を張っている男がいたからだ。
「よぉ、遅かったじゃねぇか。おっと、動くつもりなら切り捨てても良いんだぜ?」
 あらかじめ目星をつけていた塀の切れ目から抜け出た灰鴉。彼女の眼前に庵治がいた。
 剣気だけで、灰鴉は逃げられない。
「まぁ、死ぬにぁ惜しい夜じゃねぇか。大人しく捕まりな」
 さすがにこうまで見事に退路を塞がれては、どうにもならないようだ。
 がくりと膝をつく灰鴉。一切刃を交えることなくこの暗殺者は降参するのだった。


 最後にシュンレイに迫るのは手練れの双子糸巻。そこに立ちはだかったのは二人の仮面剣士だ。
「我は剣となり、我が前に立ちふさがる悪を討つ! そちらの連携とこちらの連携、どちらが上か勝負!」
「私が受け止める。攻撃は任せたわ!! 私が居る限り、彼女には指一本触れさせないわよ……!!」
 敵の連携に真っ向から挑みかかった相川とレヴェリー。これは糸巻らの狙い通りだった。
 暗殺者には非道な手がある。卑怯な手を使えばいくらでも敵の不利をつけるのだ。
 仕掛けた鋼糸、目つぶしや毒。ならば双子糸巻が勝てる! と毒の吹き矢を構える糸巻の片割れ。
 だが、糸巻の卑怯な連携はあっさり打ち破られた。
「攻撃とかは、苦手ですけど。守りなら、そう簡単には抜かせません」
 毒の隠し武器を防いだのは鈴梅の氷咲契だ。
 そして、足元に張り巡らせた鋼糸を払ったのは、アムルタートの鞭と刃だった。
「おっとそこまで♪ 残念でした〜」
 切り札は打ち破られた、その瞬間を逃さず相川はチェーンブレードで敵を縛り上げ、レヴェリーも一人を捕縛。
 あっさり、あまりにあっさりと双子糸巻は無力化されるのだった。
 同時に張三兄弟も決着がついた。
 三男は鞘の反撃の矢で肩を射抜かれた。
「今ならまだ生きていられるがどうする? それとも死んでみるか?」
 二男は、瞬脚で飛び込んできた音有相手に降参した。
 そして不幸な長男は、不機嫌な鷲尾に足を射抜かれて悶絶して、
「あん? これで終わりかよ……手ごたえなかったなァ」
 あっさり無力化されるのだった。


 宴会だと騒ぐシュンレイだったが、
「いえ、もう少し用心しませんと。堅苦しいと思うかもしれないけど、我慢して下さい」
 暗殺の依頼主についてなどを調べつつ、レヴェリーは隣で深くうなずいているツバメとともに苦言を呈したり。
 だが、そんなことを言いつつもどうやら宴会の準備はちゃくちゃくと進んでいるようで、庵治はシュンレイに
「お疲れさん。ご褒美ってぇ事で酒でも付き合わねぇかい? 良い女と飲む酒は旨ぇからな」
「いいねぇ、ま、さしじゃなくてみんなで宴会だけどな……ってその虫刺され、どうしたんだい?」
「なぁに、待ち伏せしてる間は動けなかったんでな。好きなだけ食わせてたらこんなになっちまったのさ」
 と片眉をあげて答えるのに、シュンレイが爆笑したり。
 そして、暗殺の依頼主のことも分かっても、
「いい商人は悪人の恨みを買って一人前さ。今日はそんなこと考えず、打ち上げといこうか」
 誰が暗殺者を仕向けたのかはどうでもいいとのたまうシュンレイ。
 彼女にとってはそれよりも新たに優秀な開拓者と知り合えたことのほうが重要らしかった。
 依頼は無事完遂、それからしばらくの間、開拓者たちはシュンレイの宴会に付き合わされることになるのであった。