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■オープニング本文 武天の海岸線沿い、芳野という大きな街から歩きで数刻。 海沿いの街道に、小さな漁村があった。 日々、小さな漁船が海へとこぎ出し、そして天儀各地を廻る交易船も近くを通るそんな場所。 だが、その漁村にほど近い場所に、村の漁師も近寄らない海の難所があった。 その場所は、村では『寄らずの岩礁』と呼ばれている。 複雑に海流や離岸流が入り組む岩場で、さらに地形のせいかよく霧が出る。 さらに海流のため、一度入ってしまうと出にくく、岩礁にぶつかりやすい難所なのだ。 今では難破した船や流木、海藻などが絡み合う不気味な場所となっているという。 そんな『寄らずの岩礁』にアヤカシが現れた。 アヤカシは、報告に寄れば狂骨や骨鎧のような瘴気が骨に取り憑いたもの。 それが、難破したまま放置されている船の残骸の場所で見かけられたという。 今はまだ被害が出ていないとは言え、これは見過ごせない。 何時、アヤカシがその場所からさまよい出て人を襲うかも分らないだろう。 開拓者の目的はアヤカシの撃破。数は10〜20体ほど。 だが、場所は水上でさらには海の難所だという。 いろいろと厄介だろうが、周囲の安全のためにも、急ぎ依頼を果たすべきだろう。 さて、どうする? |
■参加者一覧
雪ノ下 真沙羅(ia0224)
18歳・女・志
エメラルド・シルフィユ(ia8476)
21歳・女・志
レヴェリー・ルナクロス(ia9985)
20歳・女・騎
猫宮 京香(ib0927)
25歳・女・弓
九条・亮(ib3142)
16歳・女・泰
椿鬼 蜜鈴(ib6311)
21歳・女・魔
ナキ=シャラーラ(ib7034)
10歳・女・吟
呉 花琳(ic0273)
19歳・女・シ
七塚 はふり(ic0500)
12歳・女・泰
高虎 寧(ic0832)
20歳・女・シ |
■リプレイ本文 ● 海の難所、人呼んで『寄らずの岩礁』へ向かう開拓者達を迎えるのは荒れる海と不気味なもやだ。 それを見て開拓者達は、夏の暑さにも関わらず、そっと身震いする……かと思いきや。 「夏の海にきて岩場でアヤカシ退治か〜。面倒な水域じゃなきゃ遊んで帰るんだけどな〜」 虎耳と虎の尻尾を海風になびかせつつ、水着姿の九条・亮(ib3142)は残念そうに言った。 揺れる小舟の上で残念そうに腕組みをする亮。 そうすると、水着で強調された大きな胸が、腕の上でむにゅんと揺れて。 そんな九条を猫宮 京香(ib0927)は眺めながら、 「あは〜、海で運動には変わりませんし頑張りましょうー♪ それに、終われば遊べるかもですしね〜」 と笑顔でクロスボウを腕に装着するのだった。 隣には親友のレヴェリー・ルナクロス(ia9985)。背中に盾を背負った彼女に京香は、 「ね、終わって時間があるなら遊んでいきますか〜?」 「え? ちょっと嫌な予感がするけれど……でも、まずはアヤカシ退治よ!」 「そうね〜、それならさっさと片付けてしまいましょう〜」 「ええ、此れも罪無き人々の為。頑張りましょう!」 そううなずき合うのだった。 それぞれ青いビキニと赤の紐ビキニ姿のレヴェリーと京香。 彼女たち含め、なんと今回の開拓者は全員が女性だ。 というわけで、小舟の上は水着姿や薄着の女性開拓者がよりどりみどり。 誰も見ていないのが惜しいぐらいの華やかさであった。 それを眺めて、今回最年少のちびっこ、ナキ=シャラーラ(ib7034)がぽつり。 「……にしてもエロい恰好の姉ちゃんが多いな」 ちなみにナキ自身の水着は、黒色が大人の魅力を引き出すと評判のきわどい水着だ。 だが、着ている本人に羞恥心はないようで重ね履きのボトムなし。 おしりが完全にTだったりするのだが……幸い女性ばかり、邪な視線を向ける者はいないのだった。 そして、目的地に近付けば近付くほど、いよいよ波が荒れてきた。 「さて、絶好の海水浴日和じゃ……と、言うて良いのかのう? ここからは泳ぎになりそうじゃの」 苦笑する椿鬼 蜜鈴(ib6311)の言葉に一同は頷いた。 ここからは簡易の錨を降ろして小舟を留め置いて、泳ぎで向かうことになっているのだ。 「では、皆の衆、用意は宜しいか? 久々の水遊びじゃのう」 笑顔を浮べる蜜鈴、肌を大きく晒した赤い衣装で小舟の縁に立って、 「人魚のように華麗に泳いで魅せようぞ」 その言葉の通り、見事に頭から水に飛び込む蜜鈴、他の開拓者達も次々に続く。 開拓者達は遠くに見える船の残骸へ、まさしく人魚のように一直線に泳いでいくのだった。 ● 一丸となって泳いぐ開拓者の中から二人が一気に先頭に飛び出した。 勢いのまま水面から跳ね上がる二人、何とそのまま水を足場に数歩跳躍し、ひらりと残骸に着地。 水中や水面を足場として踏みしめたのはシノビの技、水蜘蛛の力だ。 「難破船到着〜、浪漫あるやん〜! もしやお宝が眠ってたりしてな」 ふるふると首を振って、二つに括った髪から水を散らしながら呉 花琳(ic0273)が言えば、 「とりあえず、近くにはアヤカシは居ないみたいね。でもお宝は無いんじゃない?」 ショートボブの髪をざっとかき上げて、高虎 寧(ic0832)が応えた。 「想像するだけならタダやろー? 勿論、仕事は真面目にやったるけど何事も楽しんでやらな!」 「そうかもしれないわね。でも、この船に巣くう骨アヤカシ一同が相手なんだし……難儀な事よね」 そう言いながら寧はくるりと振り向いて。 そこには丁度、続々と到着する仲間たちの姿が。寧と花琳は仲間たちに手を貸して。 最後に泳ぎ着くのは、ナキだった。 彼女は、装備を詰めた木箱を浮き袋で浮かせて引っ張ってきたため遅くなったようで。 なんとか仲間たちにも手伝って運んだその木箱からローブを引っ張り出すナキ。 他の開拓者達もそれぞれ装備を確認し、緊張感を高めていくのだった。 そんな中、胸を気にして白のビキニの生地をついついと引っ張る雪ノ下 真沙羅(ia0224)。 「……去年買った水着なんですが……何か、また胸がきつくなったような」 とても重そうな胸をなんとか綺麗に水着に収めようとしつつ四苦八苦していたり。 その一方で、軽装なのを満喫しているのは、七塚 はふり(ic0500)。 「いつもより身が軽いであります」 座礁した難破船の足場をにぎにぎと踏み込んで確かめながら、周囲を見回すのだった。 そんなはふりが普段通りのジト目を向けた先には、 「……こ、こら! ジロジロ見るな! ……恥ずかしい」 恥ずかしそうにもじもじしているエメラルド・シルフィユ(ia8476)が。 (さきほどまで陸上で着ていた衣装とあまり変わらないような) そんなふうに思って、かくりと首を傾げるはふりだったが、エメラルドとしては思う所があるようで。 ともかく、準備を整えた一同は、三班に別れてアヤカシを掃討するために動き始めるのだった。 ● 開拓者は三班に別れたようだ。 その一つ、先導するのは超越聴覚を働かせて、身軽にひょいひょいと進む花琳だ。 慎重に進みつつもどこかその足取りはおっかなびっくりで、隣には同じように首を竦めるエメラルドが。 「ひえーっ……何や何や、おどろおどろしいなあ」 「うむ、アヤカシとは言え亡者もどきを相手にするのは、少々気後れしてしまうな」 「そうそう、難破船に骸骨やからなぁ……お化け屋敷来とる気分や」 「うう、怖いことを言わないでくれ。だ、だが迷える者を眠らせるのも神職の務めだ!」 そういって自分を奮い起こすエメラルドであった。 二人の後ろには、亮とナキだ。 「ナキさんは吟遊詩人だよね。楽器は?」 「ふふん、アタシの楽器はダチが作ってくれたイカす手袋だぜ」 ひらひらと羽織ったローブをなびかせつつ、ナキがつきだしたのは両手の手袋だ。 指をぱしんと慣して楽器代わりに使える特殊な武器だとかで、それを自慢しようとしたのだが。 「……おっと、お出迎えが来たみたいだぜ」 じゃらりと天狗礫を手にしてナキが言えば、すぐさま他の3人も戦闘態勢。 傾いた座礁船の甲板で身構える四人の開拓者を迎え撃つように骨鎧たちがぞろぞろと現れるのだが、 「ほな手筈通り頼むで。うちは遊撃……前衛は任せたで、エメラルドちゃんに亮ちゃん♪」 花琳の言葉に頷いて、ひらりと前衛の2人は前に出るのだった。 戦いの始まりは静かな一撃だ。 甲板の上だということで、水気はあまりないその場所。まずはエメラルドの雷鳴剣が閃いた。 雷撃を受けてひるむ骨アヤカシ、そこにするりと間合いを詰める亮。 強い踏み込みは船の甲板を踏み抜く可能性があることを考えて、巧みな体重移動で距離を詰める。 そのまま、ひるんだ敵に頂心肘。斜めに体重を落としつつ、その勢いを肘に乗せれば一撃粉砕! さらに、そこに飛び込んでエメラルドが宝剣を閃かせて追撃。 身軽なのを良いことに、速度重視で宝剣が縦横無尽に敵を切りつける。 「この暑いのにたいへんだな! 鎧脱ぐの手伝ってやろうか?」 ナキも後方から援護して天狗礫を飛ばせば、礫を受けて骨鎧がひるんだところに花琳が飛び込んで、 「足下がおるすやで! 体重が軽いから簡単に転ぶんや!」 シノビの身軽さを最大限に活かした奇闘術で、敵の足を止めるのだった。 倍の数のアヤカシを相手に、主導権を握って戦う開拓者達。守りに回る骨アヤカシだったが、 「ここでとっておきを見せてやるぜ!」 仲間が敵を上手く1カ所に集めて足止めしたその時、ナキがパシンと指を鳴らして高らかに宣言した。 「素晴らしきナキ=シャラーラの姿! 目に焼き付けて正気に還りな!!」 指パッチンが響いて、精霊の狂想曲が響き渡り、精霊の力が敵を打つ。 暴れる精霊の力を制御するナキ、その強い力は敵を混乱させるほどで、 「んじゃあ、今が好機だね!」 「船共々安らかに眠れ!」 亮とエメラルダはアヤカシが混乱しているのに乗じて一気に攻撃。 こうして、彼女たちはあっというまにアヤカシを殲滅したのだが、終わってほうと息をつくエメラルド。 ピンクのビキニ姿の彼女はふと、 「うむ、味方が女ばかりというのは、良かったかもしれんな」 ずれる水着を直しつつ、ぽつりと呟いているとそれをみたナキがにまっと笑って。 「たしかに、ねーちゃんたちみたいにエロい格好で戦闘してたら、目のやり場にこまっちゃうよな」 「え、えろっ!? そ、そんな格好をしているつもりは……」 目を白黒させるエメラルドに、そんなかな、と首を傾げつつも十分な色気を振りまく亮や花琳であった。 ● 「あの、処でレヴェリー様、その……何故私を、仲間を見るような目で見られてるのです?」 「そ、そんなことないわよ? 別にこう、親近感があるから巻き添えにしようだなんて思ってないわ!」 真沙羅に急に問われて自爆気味のレヴェリー。 「そ、そそそそんなことよりアヤカシを探さないと! 本当に面倒な場所に巣くってくれたわ……!」 「そ、そうですね、アヤカシが居るとなれば、しっかり退治しませんと……」 そして、あわあわしている2人をニコニコ眺めている京香ら3人は探索中だった。 「夏に怪談はお約束ですが、現実にいる必要はないですしね〜。さっさと片付けてしまいましょう〜」 そういって、改めて周囲を窺う京香。他の班と違って、索敵の得意な者が居ない彼女たちの班。 そこを狙ってか、突然水中からアヤカシが飛び出してきて3人に襲いかかってきた! 絶体絶命のピンチになるかと思われたのだが。 「私が引き受けるわ、真沙羅、京香、お願い!」 慌てもせずにレヴェリーは盾を手にアヤカシの眼前に躍り出た。 「此処は、抜かせないわ!」 スィエーヴィル・シルトでオーラの障壁を展開すれば、まさしく鉄壁。 そしてレヴェリーの稼いだ隙に刀を抜き放つ真沙羅。 仲間を信頼して背中を任せ、まずは平正眼の構えから一撃。 先程までのおろおろした様子はなりを潜め、白のビキニ姿で刀を振ってあっという間に一体を撃破。 さらに、2人だけでは対応しきれない敵には、 「固まったらいい的ですね〜。範囲射撃いきますよ〜!」 命中率の悪いアームクロスボウでも、熟練の弓術士が使えば必殺の一撃を放つ武器だ。 京香は上手く敵を誘い込み、次々に矢弾を放って敵を牽制。 「真沙羅、一気に押し切るわよ!」 「はいっ! いきます!!」 レヴェリーがシールドノックの強烈な一撃で、骨アヤカシを叩き潰せば、真沙羅も追撃。 一体を平突で突き崩し、返す刀に炎魂縛武の炎を纏わせ二体目を切り捨てる。 残りは最後の一体、その頭蓋骨にかすんと京香の放った矢弾が突き刺さり五体はあっという間に全滅。 3人は静かになった船室で、ほっと息をつくのだった。 そして、不意の襲撃を凌いで一息ついていれば、怪我が無いかとお互いに確認する3人。 全員ばっちり無傷の勝利だったが、3人ともとても立派なものをお持ちな上にビキニ姿だ。 最初に耐えられなかったのは、紐で結んだ京香の赤いビキニだった。 激しい動きの反動か、はらりと結びがほどけてしまう京香の水着に、 「ひゃっ、しまったですよ〜!?」 慌てて隠そうとすれば、なんとアームクロスボウがレヴェリーの水着に引っかかる。 みょいんと引っ張られて、すっぽり脱げる青いビキニの上。 「なっ、なにをするんですかっ!」 と慌てて隠しつつ、脱げた水着に手を伸ばすレヴェリー、その手が真沙羅の水着に引っかかる。 ちょっとした刺激で、規格外の真沙羅の胸がなんとか収まってた水着が今度はつるりと脱げて。 誰も見ていない場所で、大いに慌てて真っ赤になって、なんとか水着を着直す3人。 やっと落ち着いた彼女たちは顔を見合わせて、思わずぷっと噴き出すのであった。 ● そして最後の班は、半分水没した座礁船の中を探索していた。 どうやらこの船が一番古いようで、傾いた船内は暗く、ぼろぼろに傷んでいる。 無言で先頭を行くのは寧、そこに暗がりから一匹の骨アヤカシが襲いかかった! だが、それにはすでに寧は感付いていたようで、ひらりと回避。距離を取る。 変わってするりと踏み込んだのは小柄な影、はふりだ。 どん、と爆音を響かせて拳の一撃が骨アヤカシの胸骨を粉砕。 さらに追撃の頂心肘が直撃すれば骨アヤカシは吹っ飛ばされて。 だが、不意打ちが失敗したと分かったのか、続々と姿を現すアヤカシたち。 卑怯にも水中や上から飛びかかってこようとするのだが、 「……わらわが居る以上、あの子等に手出しはさせぬよ」 ふわりと微笑んで、魔力を放つ蜜鈴。傾いだ船の床や壁から魔法の蔦が伸びて敵を縛り付けた。 斬りかかろうとしていた骨たちは、ぎしりと束縛される。 そこに、寧の放った手裏剣が、はふりの拳が叩き込まれていく。 残る敵は4体、だが前衛中衛後衛とそろった3人を前には、数の優位は無いも同然だ。 「椿鬼殿、援護感謝であります」 蔦で束縛された骨アヤカシ、はふりは間合いを詰めると、頂心肘で一匹の腰骨を爆砕。 腰が砕かれてはさすがに骨でも動けないようで、残りは3体。 束縛されながらも。さび付いた槍を振りかざす一体、その槍を寧はひらりと回避。 至近距離から、寧は手裏剣を放ち、槍を持つ手を破壊。落ちる片手槍、それを寧は拾い上げて、 「これで、トドメだよ」 槍を奪った一体を横殴りに粉砕してから、さらに別の一体に槍を突き立てて粉砕し二体撃破。 これで残り1体。 「おやおや、わらわの見せ場が無くなってしまいそうだのう。ではわらわも華麗に舞わせて魅せようてな」 襲いかかる最後の一体、短剣をひらりと奮って刀を弾けば、あっというまにその骨には蔦が絡みつく。 手足をがっちり縛り付けられた最後の一体、その頭に蜜鈴は指先を向けてホーリーアローを零距離発動。 聖なる矢に粉砕されて、最後の一体もがしゃりと崩れ落ちて。 「綺麗に片付いたのう……之で終い、か?」 くるりと周囲を見回して、蜜鈴が問えば、 「……もう、周囲から物音はしないね。気配も無いと思う」 寧の言葉にはふりもうなずいた。はふりは、ずれかけたゴーグルをくいくいと直すと、 「高虎殿、椿鬼殿、おつであります」 ぺこりと礼をするのだった。そんなはふりに蜜鈴はくつくつと喉の奥で笑って、 「うむ、では皆のところに戻ろうかのう。誰かが怪我をしておるといかんしのう」 乙女の肌に傷痕は残せぬであろ? と言う蜜鈴に、そんなものなのかと首を傾げるはふりだった。 こうして開拓者達は無事依頼を果たして小舟で帰還。 首尾良くアヤカシを倒して時間が余ったようで、日が沈むまで平和になった海岸で夏を満喫したとか。 これにて一件落着、しばらくは還らずの岩礁も平和なことだろう。 |