【AP】巨大な敵を爆破しろ!
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: イベント
EX
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/04/22 20:30



■オープニング本文

 ※このシナリオはエイプリルフール・シナリオです。
 オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。

「皆は、真似しないでね!」
 にかっと良い笑顔で宣言する中務佐平次。
「……誰に言ってるんだ?」
「いやぁ、お約束だからね♪」
 保上明征に突っ込まれつつ、にこにこ応える佐平次。
 そんな彼の目の前には、ありとあらゆる爆薬に近代火器が山と積まれていた。
「今日はこれを使うよ! 爆薬火薬、爆弾にロケット、対物火器にミサイルまであるよ!」
「……大丈夫なのか?」
「大丈夫! 僕はこれを扱うプロフェッショナルだし、今回は開拓者の皆さんにも手伝って貰うから!」
「……いつになく、テンションが高いな。で、相手はなんなんだ?」
 やれやれといった様子の明征。
 彼は毎回この爆発好きの友人に振り回されているようでため息と共にそう尋ねてみれば、
「相手はあれだよ! 爆発させて壊すのにもってこいの相手だね!!」
 そういって、荒野の向こうを佐平次は示した。何も居ないでは無いかと首を傾げる明征だったが。

 なにかが、ゆっくりと地平線の向こうから歩いてきていた。
 ずーん、ずーん、ずしーん、ずしーん。
 地平線の彼方にありながらも、視認できるその巨体。
 それは全身頑丈そうな岩で形作られた、巨大な巨大な人型のアヤカシだ。
 それがゆっくりゆっくりとこちらにやって来る。
 ずずんと地面を踏みしめれば、そのたびに地響きと轟音。
 身の丈、100メートルはありそうな巨大なカスルゴーレムであった。それが何体もやって来る。
 だが、敵はそれだけではない。よーくカスルゴーレムの足下を見ると、同じ形の小さなゴーレムが沢山。
 人間より少し大きいほどの岩人形。ストーンゴーレムが見渡す限り進軍中であった。

 カスルゴーレム、とストーンゴーレム、違うのは大きさだけのようだ。
 岩で出来た頑丈な体。しかも今回のこいつらの中心核は体内にあるようで倒すには粉砕するしか無い。
 それを全滅させるのが壊すのが今回の依頼の目的だが……。
「武器は何を使っても良いからね! 近代火器は何でも揃ってるし」
 今回は個人用の小火器、分隊支援火器、果ては重火器だけではない。
 榴弾砲、ロケット砲、戦車や戦闘ヘリまでなんでもありらしい。

 相棒の龍と並んで戦闘機で対地爆撃をしてもいいだろう。
 ワンマンアーミー気取りで防衛陣地を気付いて、火力で押し寄せるゴーレムの群れを粉砕しても良いだろう。
 仲間と協力して戦車で進軍、戦闘ヘリで対地攻撃。対物ライフルでゴーレム狙撃。
 砲兵部隊として火力を集中運用したり、戦車部隊を作って見るのもなんでもありだ。
 だが敵の数は多く、しかも巨大カスルゴーレムは怪獣サイズ。
「天儀の平和は僕たちの、開拓者の手にかかってるんだ! ……あ、核兵器は禁止ね♪」
「……燃料気化爆弾とかバンカーバスターが使えるからいいやって顔するな」

 というわけで、天儀の平和は皆さんの手にゆだねられた。
 さて、爆破する?


■参加者一覧
/ 羅喉丸(ia0347) / 浅見 純芳(ia2011) / リンスガルト・ギーベリ(ib5184) / リィムナ・ピサレット(ib5201) / ルゥミ・ケイユカイネン(ib5905) / 雁久良 霧依(ib9706) / 信貴山 聡英(ib9983) / 沙羅・ジョーンズ(ic0041


■リプレイ本文


 無慈悲に、地平線の向こうからこちらへやって来る軍勢が在る。
 全てを踏み潰し、踏み砕き、踏み越えて進軍する軍勢。
 感情も、恐怖も無く進撃する彼らは、石塊の軍勢だ。
 ただただ、立ちはだかる者を粉砕するゴーレムの軍団。
 だが、それを阻む者たちがいる。数は少ないが、彼らには確信があった。
 自身等の技術と、そして兵器をもってすれば必ずや立ちはだかるゴーレム兵を粉砕できると。

 無数のゴーレムの軍勢に立ち向かう兵士の数はわずか10。
 戦いが始まった。

「機関砲の弾薬は積み込みましたにゃ! 荷物が重いからパイロンは空だけど、いつでも飛べますにゃ!」
 ばりばりとヘリのエンジンが爆音を立てて、始動した。
 大型ながらスマートなその機体はロングボウの名を冠する攻撃ヘリだ。
 武器の弾薬を確認していたのは猫又の法林。
 そして、そのコクピットには法林の主の信貴山 聡英(ib9983)がいた。
 法林がぐっと親指、というか肉球を握って合図を送れば、ヘリは爆音とともに浮上する。
 すると、ワイヤーが張り詰め、何かがゆっくりと引き上げられていく。
 それはまるで金属で出来た巨大なゴリラのような無骨な装甲服だった。
 背中からは大砲が突き出ており、両手には重火器。
 武装を満載した、強化装甲服がヘリからはつり下げられていたのだ。
 見た目以上に重さが在るようで、信貴山は慎重にヘリを上昇させてホバリング。
 すると、ぶらんとつり下げられたパワードスーツから通信が入った。
「飛行機だけは勘弁な!」
 楽しげな叫び声を上げたのは浅見 純芳(ia2011)だ。
 ワイヤーで吊されつつも、余裕十分な浅見に信貴山は苦笑しつつ通信で応えて、
「ということは睡眠薬の注射が必要なのかな? もしくは後頭部殴って気絶とか」
「いやぁ、まあ今回はヘリなんで……こちらは問題ありませんよ。よろしくお願いしますね」
「了解、では快適な空の旅を」
 そして2人は一気に空を滑り出して行く。
 向かうのは敵陣ど真ん中。
 ゴーレム達がひしめくその最中に、パワードスーツを投下しようというのだ。
 一気に前線へ向かって飛ぶ攻撃ヘリ。
 遠くから、巨大なゴーレムと、その足下を埋め尽くすゴーレムたちの群れが見えてきた。
 ゴーレムたちは対空兵器などは持って折らず、空はヘリの独壇場かと思えたのだが、
「信貴山殿、遠方に見える巨大ゴーレムですが……あの姿、かつて現れた轟砲の姿に似ていませんか?」
「轟砲……確か拠点攻撃用の大砲や指砲を備えた強敵でしたね。仔細は違いますが確かに……」
 ヘリを操る信貴山はそう思った次の瞬間、大きくヘリを旋回させていた。
 そこに、ゴーレムたちの火砲や投石が飛来する。
 どうやら一部のゴーレムは指や体の一部が大砲化しているようだ。
 さらには器用に投石を繰り返しているようで、空は安寧の場ではないようだ。
 このままでは、敵軍勢の奥への進軍は不可能か。
 そう思った彼らの遙か上方を飛来する大きな影があった。

「あーこちら戦略爆撃機ボーンの機長、雁久良。コードネーム、マードック聞こえるか?」
 遙か情報に飛来する影、それは珍しい可変後退翼を持つ爆撃機であった。
 機長は雁久良 霧依(ib9706)。
 音速で飛来するこの戦略爆撃機はそのステルス性から本来は長距離爆撃を目的に開発された機体だ。
 だが、隠密性が高く速度があり、爆撃する力を持つ戦略爆撃機にはそれより得意なことがあった。
 それは、近接航空支援だ。
 マードックと呼ばれたのはヘリのパイロット、信貴山だ。彼はゴーレムたちの反撃から距離を取りつつ、
「こちらマードック。現在敵の対空火力によって足止めされている」
「了解、ならまずは小さいのを潰しましょう!」
 そして作戦が始まった。

 戦略爆撃機が投下したのは、クラスター爆弾ユニットの雨だ。
 クラスター爆弾とは、簡単に言えば小型の爆弾を多数積み込んだ爆弾のことだ。
 一撃一撃の威力は低いが、この爆弾の最大の特徴はその制圧面積の広さ。
 次々に投下されるクラスター爆弾は、広範囲にその子爆弾を散らせると爆発。
 一直線に敵陣中央に爆弾が道をつくり、敵の対空火力を封じるのであった。


 火力支援を受けて、一気に敵陣を突き進むヘリ。
 その横をぶち抜いて仲間が二機、先行していった。
 片方は古いプロペラ戦闘機だ。
 一見すればそれは古くさい時代遅れの品だろう。
 だが違う。それはかつて、余りに多くの戦果を上げ伝説となった英雄が操る機体であった。
 名はシュトゥーカ。今それを操るのは幼きパイロット、ルゥミ・ケイユカイネン(ib5905)だ。
 ただのシュトゥーカではない。彼女の機はタンク殺しと呼ばれる機関砲を装備した伝説の型。
 かの英雄をして、恐ろしく難しい機体だと称されたその型を、ルゥミは操り敵陣へと躍り込んでいく。
 この機の愛称はカノーネンフォーゲル、大砲鳥という意味だ。その名の通り武装は機関砲のみ。
 そして機体は急降下とともに、雄々しい音を響かせた。
 味方を鼓舞し、敵陣を震え上がらせるシュトゥーカの雄叫び、ジェリコのラッパだ!
 低空すれすれを飛ぶルゥミ操るシュトゥーカ。
 特徴的な足下の窓から下を見れば、そこにはすでにゴーレムの群れがいた。
 ルゥミは冷静にその巨大な機関砲を単発発射。
 がんっ、という特徴的な音とともに、タングステン徹甲弾がゴーレムを粉砕。
「数だけは多いね、でも大丈夫!」
 にっこりと笑って再び発射、対空砲火をひらりと躱し、さらに徹甲弾を叩き込むルゥミであった。

 もう一つの機影、それは機と呼ぶにはあまりにも不思議な機体であった。
 魔法の力で駆動する足にくっついたプロペラユニットのような不思議な装備だ。
 どこかでみたような……まぁともかく。
 そのユニットを装備しているのはリィムナ・ピサレット(ib5201)だ。
 生身の体で、両足に付けたユニットを操り、空を航空機以上の機動力で駆け回るリィムナ。
 彼女は手にしたガトリング銃を地面に向けて、対地攻撃!
「下着じゃ無いから恥ずかしくない♪ いくぞー!」
 そのユニットを付けるために、リィムナはたしかに妙な格好をしていた。
 上は巫女服だが、いつものように胴体と袖が別れた脇全開の不思議な形。
 そして、いつも以上に目立つのが下着同然のマイクロビキニな白いローライズだ。
 だが、そんな姿で彼女は空を超音速で舞う。

 ルゥミとリィムナ、二機の怒濤の対地攻撃でさらに敵の対空火力は激減。
 ついに、信貴山の操るヘリは、パワードスーツを切り離して投下するのだった。


 みるみる地上が迫ってくるが、浅見は冷静に地上間近で逆噴射。
 轟音とともに着地し、すぐさま彼は両手の武器を握りしめた。
 周囲には対地攻撃をくぐり抜けたゴーレムたちの大軍勢が迫りつつあった。
 それに対して、浅見は落ち着き払って両手の重火器、無痛ガンとも呼ばれるガトリング砲を構える。
「さて、無事廃棄……もとい投下も完了しましたし、派手にいきましょう! 機動歩兵は戦場の華!」
 両手のガトリングが回転し、そして一気に弾丸を吐き出した。
 その速度、なんと1分間で2000発以上。
 連射どころの騒ぎでは無い、硬い岩で出来たゴーレムすら粉砕されて木っ端微塵だ。
 さらに、兵器はそれだけではない。
「続いてはこちらを試してみましょうか」
 浅見は右肩の上の大砲を操作し、こちらに詰め寄る軍勢を見据えて、放った。
 音よりも早く衝撃が響き渡り、大軍は一直線に貫かれた。
 放たれたのは電磁噴進弾。肩の大砲はレールガンランチャーなのだ。
 まだまだ続く、背中についたY型の投射口からは次々に各種の擲弾が放たれる。
 左右に牽制の弾幕を張りつつ、さらにパワードスーツは進軍。
 両手のガトリングガンともども、まさに戦場の死神もかくやと、進軍していくのだった。

 戦場の死神は彼だけでは無かった。
「まるで黒騎士物語じゃの♪ では行くぞ超重戦車ラーテ、発進じゃ!」
 戦車長リンスガルト・ギーベリ(ib5184)の姿は全身黒の軍服であった。
 将校帽をかぶり、右目には黒い眼帯。小柄な姿ながら、威圧感を放つかの国の士官がそこにいた。
 そして、彼女の号令とともに、動き始めた巨大な戦車。
 ラーテはネズミの意味だが、この戦車は名とは真逆の化け物であった。

 通常、巨大な戦車でもその重量は200トンを超えることはまずない。
 重すぎれば走行性を失い、不整地を駆ける戦車の役割りを果たすことが出来ないからだ。
 だが、巨大であれば火力を得ることが出来るのもまた真実だ。
 このラーテはそんな火力への信仰、いや妄信とも言うべき火力への思いを形にした期待なのだ。
 搭載する主砲は巡洋艦の主砲。重さはなんと1000トンを越えるこの化け物。
 だが、このラーテはただのラーテではなかった。
 あらゆる技術と科学力で強化されたラーテ。
 科学の進歩と進化は、妄想の産物であったこの巨大な怪物をとうとう現実としてしまったのだ!
「さあ、行くぞ! ゴーレムたちを教育してやるのだ!」
 戦車長リンスガルトの言葉で、陸上戦艦は動き出した。
 まずはマシーネンカノーネや対空機関砲がうなりを上げて敵を討つ。
 そして立ちはだかるゴーレムたちを次々に巨大戦車が踏みつぶす。
 主砲も敵陣を穿ち粉砕する。なにせラーテの主砲は、最大で40000mの射程を誇るのだ。
 さらに、近ければ戦艦の装甲すらぶち抜く恐ろしい威力。
 攻城兵器に相応しい破壊力を備えたその巨大な戦車は、じりじりと敵陣奥へと進み始めるのだった。


 帰投したヘリとそのパイロット信貴山はある人物を乗せて再度出発。
 乗せたのは、かの発明家にして砲術士の中務佐平次氏である。
 今回後席の操縦士を信貴山が務め、前席の副操縦士兼砲手を佐平次が務めるようだ。
「宜しいかな佐平次殿。チェーンガンでの対地攻撃はお任せするよ……法林! 兵装は?」
「パイロンに対地兵装満載で準備完了ですにゃ! いつでもいけますにゃ!!」
「ああ、なんて素晴らしい……これだけの火力があれば、どれだけの爆発が!!」
 悶える佐平次を見て、微妙に引きつった顔の猫又の法林に見送られ、信貴山は再びヘリで進撃。

 だが、ますます敵の対空火力は激しさを増しているようだ。
 これ以上圧力が高くなればヘリでの援護は難しくなってしまう。
 そうなると、地上戦力のラーテとパワードスーツは孤立してしまう危険がある。
 ……だが、その時にはるか後方の自軍から、一筋の火線が伸びて、砲撃をするゴーレムを粉砕した。
 余りに早く、そしてあまりにも凄まじい攻撃力。
 それを放ったのは沙羅・ジョーンズ(ic0041)だった。

「リロードに難はあるが……威力は絶大だな」
 がしゃんと排莢し、再装填。沙羅が手にしているその兵器の名はレールガンだ。
 パワードスーツが肩に背負っている物とほぼ同じ物だろう。
 だが、レールガンはそのレールが長ければ長いほど速度があがるのだ。
 さらに、単独の動力で動くパワードスーツに比べ、取り回しでは劣るが、大電力が投入可能だ。
 その結果、動くことの出来ない固定砲座に近いものの、沙羅のレールガンの速度は突出していた。
「第二射……命中、次目標……命中」
 淡々と沙羅は手にしたロングライフルの狙撃型レールガンで敵を破壊し続けた。
 狙いは火砲を備えた特殊なゴーレムだ。
 次々にそれを沈黙させ続ける沙羅。
 だが、そんな彼女はとうとう最終目標を発見するのだった。

 それは巨大な巨大なカスルゴーレム。
 他のどれよりも巨大で、全身には装甲。火砲すら備えた動く要塞。
 とうとう、開拓者達は最後の敵であるその巨大なゴーレムの姿を捕らえたのであった。


 まず仕掛けたのは、沙羅だった。
「まずは機動力を封じないと、足を集中で狙う」
 そしてレールガンが放たれる。凄まじい速度がエネルギーと化して命中箇所を粉砕。
「では私も協力しよう」
 さらに追撃したのは、浅見からレーザーライフルを受け取っていた協力者の保上明征だ。
 だが、敵はあまりにも巨大すぎる。
 レールガンの破壊力も、レーザーの熱量もカスルゴーレムには決定打にならない。
「これだけの数が居ると、接近するだけでも一苦労ですね!」
 バーニアを噴射して、敵陣を大きく飛び越えながら、損傷箇所を狙う浅見。
 まずは肩の電磁投射砲を放つが被害は軽微。しかしそれで引くわけにはいかない。
 まずは周囲のゴーレムたちを粉砕しながら浅見は懸命に戦線を支えた。
 そこに砲撃がやってきた。パワードスーツをびりびりと揺さぶるような砲撃はラーテからだ
「情け無用ファイヤー! 総員、カスルの足を狙って擱座させるのだ!」
 機関砲が唸り、さらに主砲が2連射。さすがのこれにはカスルゴーレムも効いたようだ。
 砲弾は足の装甲を削り、カスルの足を止めさせた。
 だが、それはカスルゴーレムの注意を引いたようで、敵は火砲をラーレに集中。
 陸上戦艦は砲撃の雨あられにさらされるのだった。
 ラーテは懸命に反撃する。戦車長のリンスガルドは部下を鼓舞して吼えた。
「なんの、ラーテはこれぐらいでは落ちん! ふはは、地に伏して。妾の尻を舐めるが良いわ!」
 ラーテはさらに反撃。だがこのままではラーテが落ちるのも時間の問題だ。

 そこに加勢したのは二機の機影だった。
「行くよルゥミちゃん! 私が防御を下げるからその隙に!」
「わかった! 集中攻撃するね!」
 まず、生身のまま超音速で飛び回るリィムナがカスルの周りで笛を吹く。
 魔法の力が敵装甲を弱め動きを鈍らせる!
 続いて突貫するシュトゥーカ、名機を操るルゥミは果敢に距離を詰め背面降下で徹甲弾を雨あられ!
 損耗しつつある足や関節部を的確にルゥミは穿っていく。
 だが、カスルゴーレムはまだまだ健在であった。
 反撃の一撃、それが機動力に劣るルゥミのシュトゥーカを粉砕した!!
 放り出されるルゥミ、だが、それをリィムナが空中でキャッチする!
 この2人は、その瞬間すら、危険を顧みずに反撃のチャンスと捉えたのだ。

 ならばその隙を作ろうと、火線が駐中する。
 再びゴーレムの拳を放たれまいとレールガンやレーザーが集中。
 さらに、信貴山が操る戦闘ヘリが接近。
 左右の武器パイロンに吊された対戦車ミサイルが誘導されて的確に関節部に命中!
 被害は軽微だが、その攻撃にぎしぎしとゴーレムの動きがわずかに鈍る。
 まだまだ反撃は止まらない。ヘリの下部チェーンガンがうなりを上げて弾丸を放ち足を攻撃。
「ひゃっはーー!! これぞ爆発と砲撃! 火力と破壊ですよ!」
 雄叫びを上げて佐平次が大喜びすれば、ラーテもますます砲撃を繰り返し足を穿って。
 パワードスーツも残り少ない榴弾と電磁投射砲を足に集中。
 その猛攻にカスルゴーレムがぐらりと揺らいだ。
「いまだよリィムナちゃん! カスルをぶち抜くよ!!」
「援護するよルゥミちゃん! 今っ!!!」
 魂よ原初に還れがカスルゴーレムの装甲を振わせた。
 さらにそこに叩き込まれたのはルゥミの魔砲「ブレイカーレイ」の砲撃!
 魔槍砲から放たれた巨大な本流が対にカスルゴーレムの体勢を崩させた。
 ぐらりと傾くカスルゴーレム、どしんと腕を突いて体を支える。

 だが、ここまでの猛攻でわずかに体勢を崩しただけだ。
 果たして開拓者はこの巨大な城塞のようなゴーレムを倒せるのだろうか………。

「総員、今から済州攻撃を仕掛ける。急いで待避して」
 冷酷な宣言は遙か上方の爆撃機から告げられた。
 慌てて後方に下がるヘリの信貴山と、リィムナにルゥミ。
 そして無慈悲な一撃が爆撃機から投下された。
 それは大型貫通爆弾だった。強固な拠点や城塞、地下目標を粉砕するために作られた兵器。
 バンカーバスターと呼ばれるその爆弾は地下へと突き刺さり、爆発する最新鋭の兵器だ。
「最大級の大型貫通爆弾を2発! 貫け! そして弾けちゃいなさい!」
 そして落下した2発はカスルゴーレムへ直撃。
 凄まじい爆炎と衝撃波を振りまいて、視界は噴煙に埋まってしまうのだった。


 そして噴煙が晴れたその向こうに、カスルゴーレムはいまだ健在であった。
 周囲のゴーレムたちはほとんど瓦礫と化している。
 だが、最大級のカスルゴーレムだけは違った。
 装甲を砕かれ、体の所々を欠けながらもまだ動けるようだ。
 その理由は二発のバンカーバスターのうち一発が腕で受け止められてしまったためである。
 左腕は粉砕されているが、カスルゴーレムはそれを犠牲に生き残ったのだ。
 開拓者の反撃はここまでなのか……

「たった1つの目的のために鍛え上げられたその力が弱いはずがない」
 遙か後方、まるで巨大な建物のような列車の中で、羅喉丸(ia0347)は高らかに告げた。
 彼が操る兵器の目的はただ一つ。
 巨大な防衛拠点を単純な火力で粉砕することだ。
 この恐ろしい兵器の名前は列車砲、ラーテの計画の元となったさらなる化け物だ。
 列車砲の求める物、それはただただ巨大な破壊力。
「真に命を預けられるのなら、一撃で十分だ……グスタフ列車砲、発射!」
 放たれたのは、なんと7トンを越える巨大な砲弾だ。
 破甲榴弾と呼ばれるこの特殊な砲弾。それが線路二つをまたぐ形で君臨する列車砲から放たれた。
 陸上戦艦の異名を持つ化け物戦車ラーテの重さは1000トンだ。
 だが、この列車砲の重さはなんと1300トン以上。
 運用に1400人、整備と支援に4000人の人員を必要とするこの正真正銘の怪物。
 それが羅喉丸の号令で放った砲弾はたった一発だけだ。
 だが、その一発だけで十分であった。

 山を越えた先から飛来した巨大な榴弾。それはカスルゴーレムが反応する間もなく胸の中央を粉砕した。
 それだけで、カスルゴーレムの体は木っ端微塵に粉砕される。
 核が何処にあろうとそんなことはどうでもよかった。
 余りに強力な一撃は、バンカーバスターで弱り切ったカスルゴーレムを粉々にした。
 こうして、カスルゴーレムをはじめとしたゴーレムの軍勢は粉砕されたのだ。
 開拓者は勝ったのだ!!

 吹きすさぶ衝撃波と爆風は慌てて後方に下がるルゥミとリィムナの体を揺らす。
 後方の基地に帰った彼女たちは、そこでやっと笑顔を見せて笑い合う。
 だが、ちょうどそこで限界だったのか、リィムナのローライズがぷちりと破けてしまえば、
「わわ! ローライズが風圧に耐え切れず千切れちゃった♪」
「リィムナの体を見てよいのは妾だけじゃ!」
 慌てて飛び出てきたのはラーテの戦車長リンスガルドだ。
 彼女は慌ててリィムナの体を抱きしめて、周りを威嚇するのだった。
「小さな二人を祝福ね♪」
 そんな2人を祝福しながら拍手するのは爆撃機を降りた雁久良だ。
「本当はリィムナちゃんのあられもない姿をガン見したかったけどね♪ うふふ♪」
 そんな雁久良を眺めて、ルゥミはきょとんとしつつ、一緒にぱちぱち拍手をするのだった。
 そして最後の一機。ヘリも基地へと帰還した。
 戦勝に沸く一同、皆が無事で勝利できたことを祝っていれば、そこでふと、信貴山は気付いた。
 1人、足りないことに。
「……佐平次殿、そういえば浅見殿は?」
「浅見殿ですか? えっと強化装甲服で前線に……って、あ!」

 そのころ、激戦区の瓦礫の下から、がしゃんとゴーレムの破片をかき分けて、腕が突き出た。
 がらがらと瓦礫の上に這い出たそのパワードスーツ。
 ぐるりと周囲を見回してからガチャリと頭部装甲を展開して。
 ふうと一息ついて、浅見は迎えのヘリがくるのをのんびり待つのであった。