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■オープニング本文 アヤカシには様々な種類のものがいるのだが、個体差があるものも珍しくない。 今回はそんな敵だ。 出現したのは岩人形などとよばれる、岩などで構成される巨大な人型のアヤカシだ。 これらの個体は核があり、それを砕くことで消滅させることが出来ることが多い。 今回、発見された個体は最初から核が見えている不思議な個体であった。 その固体はなんと全身が巨大な水晶で構成されており、その胸の奥に不気味に明滅する核があるのだ。 非常に目立つこの岩巨人。 すぐさま開拓者達が討伐に向かったのは言うまでも無いのだが、なかなかの強敵だった。 その最たる理由は、硬度だ。 水晶で出来たその体はものすごい硬度を誇っていたのである。 銃弾や矢は中々効き目を現さず、刃物であれば逆に刃こぼれしてしまうほどだとか。 そこで一つの依頼が出された。 ものすごい固さを誇るこの水晶人形の討伐。 そのために必要なのは堅い物質を粉砕する技術や武器だ。 弱点や装甲の隙間を貫くような技ではおそらく無理だろう。 強固な水晶自体を粉砕できるような技や武器が必要になってくるはずである。 おそらく、重量級の鎚などであればさらに効果を発揮できるかも知れない。 我こそはと思う開拓者を、現在急募しているというわけだ。 さて、どうする? |
■参加者一覧
朝比奈 空(ia0086)
21歳・女・魔
三笠 三四郎(ia0163)
20歳・男・サ
空(ia1704)
33歳・男・砂
御形 なずな(ib0371)
16歳・女・吟
ルゥミ・ケイユカイネン(ib5905)
10歳・女・砲
アルバルク(ib6635)
38歳・男・砂
八甲田・獅緒(ib9764)
10歳・女・武
鬼咫嶺 臣親(ic0453)
27歳・女・サ |
■リプレイ本文 ● 「水晶巨兵……ンのまンまじャねェか」 ひねりがないねェ、と冷笑とともに空(ia1704)は吐き捨てる。 彼ら開拓者は、小高い丘の上でうろうろと徘徊する水晶巨兵を見つめていた。 ずしりずしりと歩く水晶巨兵、地面にはくっきり足跡が残るところをみるとかなりの重量だ。 「宝石並みの硬度があり、人型の……スライム、粘泥みたいなモノですかね」 再生するんでしょうかね、と三笠 三四郎(ia0163)。 「あれが戦場に大量に配備されたら、大変なことになりそうですね。そうならないことを祈るばかりですが」 「確かになァ……一匹でも面倒なのになァ、やれやれ」 空が面倒くさそうに呟くと、 「ああ、まったくやれやれだ……随分お堅いのが相手とあっちゃ、ため息もつきたくなるもんだねえ」 アルバルク(ib6635)も、ヒゲを撫でながら首を振って。 妙に渋めの男性陣は、やれやれと揃いも揃ってため息をつくのだった。 「せ、戦闘経験は少ないですけどが、頑張りますよぉ……はわわっ!?」 丘を登ってくる途中、べたんと転んだ八甲田・獅緒(ib9764)。 「……い、痛いですぅ」 「あらあら、大丈夫ですか?」 「おいおい、そんな調子で大丈夫かぁ?」 心配する朝比奈 空(ia0086)と笑いながらひょいと助けおこす鬼咫嶺 臣親(ic0453)。 「わわ、あ、ありがとう御座います……は、はわっ、お、大きいですね」 立ち上がった八甲田は、鬼咫嶺を見上げて思わず呟いた。 小柄な八甲田に比べ、修羅としてもとても大柄な鬼咫嶺。なんとその身長は倍近くの差。 開放的な服装の鬼咫嶺、背以外もいろいろと“おっきい”のを、八甲田がはわーと見ていれば。 「まぁ、確かにあたしゃでかいが、お前さんは人一倍小さいな。頼んだぜ?」 「新しく手に入れた武器を使うチャンスですぅ。が、頑張りますぅ」 鬼咫嶺にばんばんと背中を叩かれて、思わずよろけつつ八甲田は応えるのだった。 「……おっきくて硬そうやな」 ぽつりと意味深に呟く御形 なずな(ib0371)に、空とアルバルクはぶほっと噴き出したり。 「ま、あんなのに殴られたら一撃であの世行きやな。今回は援護に徹させて貰うわ」 御形はしれっとそう言いながら、準備を終えた仲間たちを見れば、 「あたいも後ろから援護するよ! どんなに硬い相手だって、力を合わせれば必ず壊せるよっ!」 ルゥミ・ケイユカイネン(ib5905)がにっこりと笑いながら宣言する。 そして、開拓者達は丘を下り、アヤカシに向かっていった。 ● 「さぁて、まずはちょいと牽制ってぇところか。おーい、そこのおちびちゃん、大丈夫かね?」 魔槍砲を担いで、飄々とアルバルクが八甲田に尋ねると、 「は、はい! ま、万が一の為に防御を上げて……獅緒、行きますぅっ!」 「おー、若者は元気だねぇ。じゃ、おっさんも手伝おうか」 前衛の2人は、まず水晶巨兵の注意を引くために動き始める。 開拓者に気付いた水晶巨兵は、ごりごりと水晶同士が擦れる異音を立てつつ振り向いた。 大きく腕を振り回し、地面ごと薙ぎ払えば、土塊が舞い散って煙幕に。 しかしその煙幕を突破して、小手調べだと巨大なロンパイアを振り上げて迫る鬼咫嶺。 彼女は、飛んでくる土塊をロンパイアではじき返すと、振り上げる一撃で腕を狙った。 がちん! 凄まじい音を立てて、ロンパイアが火花を散らして。 「ちぃ! さっすがに硬いねぇ……でも全身全てが硬いわけでもないだろう?」 飛び離れて別の場所を狙う鬼咫嶺。だが予想以上に水晶巨兵の反応が速かった。 反撃は叩きつぶす一撃、体ごと飛びかかるようにして鬼咫嶺を狙ってハンマーのような両拳が迫る。 「しまっ……」 とっさに後退する鬼咫嶺だがこのままでは巻き込まれると思われたその時、 「おっと、そいつぁ防がせて貰うよ。まだ戦いは始まったばかりだからねえ」 横合いから放たれたのはアルバルクの砲撃だ。魔槍砲の一撃が巨兵の腕に着弾。 「……ふん、やっぱりそこまで効かないか」 砲撃は弾き散らされたようだが、体勢を崩すには十分で、巨兵の攻撃は狙いを逸れ鬼咫嶺は離脱。 そこで後方の準備は整ったようで、援護の銃撃が始まった。 「まずは……遠距離からひざを狙って集中攻撃で砕き、機動性を奪う事からですね」 「わかったっ、まずは膝だね!」 狙い定めて銃撃する三笠とルゥミ。 真っ直ぐに射撃する三笠に対して、ルゥミはクイックカーブで弾道を曲げていて。 「おや、なるほど。角度を付けて弾かれないようにわざと弾道を曲げているんですね」 「うん。これ、じいちゃんの教えなんだ! 斜めに当たると威力を削がれちゃうからね!」 元気に応えるルゥミを見て、頷き返す三笠。 「ふむ、なら後方からの援護はお任せしましょう、このままでは前衛が足りなくなりそうですしね」 「わかった! あたい毎日練習してきたから大丈夫だよ!」 その言葉を背に三笠も前に。 前衛は4人に増量、そこに妙な歌が聞こえてきた。 「巨兵さんのちょっといいとこ見てみたい♪ 奴隷に水晶は宝の持ち腐れ♪」 バイオリンを奏で、陽気というか妙ちきりんな歌を歌う御形。 「水晶の鎧を脱ーげ脱ーげ♪ 脱ーげ脱ーげ脱ーげ♪ ハイ、バンジャーイ♪」 バンジャーイ、に合せてルゥミが可愛らしくバンザイしてたり。 「……なあ、アルバルクのおっさん。あの歌なんかすげぇ気が抜けるんだが……」 「そういうな……ほれ、防御を損なう『奴隷戦士の葛藤』の効果覿面だぞ」 空の愚痴に応えつつアルバルクは指を差す。どうやら確かに効果はあるようだ。 奴隷戦士の葛藤は相手の護りを損なう技、しかしそれだけで水晶巨兵の体の強固さを奪うことは出来ない。 だが、防御の構えを解く効果はあったようだ。 それまでは、核を腕で巧妙に守っていた水晶巨兵の護りが解けていた。 そこを即座に空が弓と銃で狙い撃つ。アームクロスボウから放たれた矢は月涙で精霊力を帯び胸に命中。 だが、障害物をすり抜ける弓も、強固な水晶の体を貫くことは出来なかった。 核を狙ったとしても、それは体内にあるわけで、水晶の体も巨兵の体の一部なのだ。 「ふん、やっぱり通らねェか、ダメだわコレ……さッて、それなら次の手だな」 諦めた空は弓と銃を双斧に持ち替えて、一気に接近戦に躍り出るのだった。 ● 前衛は現在増えて、まるで水晶巨兵を囲むような布陣となっていた。 果敢に攻める鬼咫嶺に、飄々と中距離を保ちつつ、砲撃の機を窺うアルバルク。 攻め時を探しつつも、なかなか決定打を打ち込めない八甲田に、牽制を繰り返す空。 そして、三つ叉の戟を手に立ち回る三笠の5人が巨兵を囲んでいた。 その後ろから、脱げ脱げ歌ったり、仲間を強化する御形。銃撃を繰り返すルゥミ。 だが、なかなか状況は突破できないようだ。 まず水晶巨兵の一撃が凶悪なため、なかなか決定打を打ち込めのだ。 逆に、その豪腕の一撃の余波を受けて、じりじりとアルバルクは八甲田、鬼咫嶺は疲弊していた。 そこに三笠と空が加わったものの、やはりなかなか決定打は出ない。 執拗に足を狙うルゥミの銃弾。だが、それもまた決定打にはなり得ないようだ。 御形の歌は効き目を示しているのだが、それでも相手の体が硬すぎる。 ならば、ここは一気に状況をひっくり返す手が必要だ。 「やはりいきなり弱点を狙っても容易く行かないですね。外堀から埋めていきましょう」 そう告げて呪文を詠唱しはじめた朝比奈。前衛は朝比奈の一撃を通すために布陣を変えた。 狙いは防御の腕を崩して射線を開けることだ。 一撃目、仕掛けたのは三笠と鬼咫嶺だ。2人は左右から破壊力重視の一撃を同時に見舞う。 「あたしゃの威力とおまえの硬さ、どっちが上回るか勝負!」 高々と掲げた振りおろしの一撃を放つ鬼咫嶺に、 「手加減しないと武器が折れてしまいそうですが、そうも言ってられません、ね!」 三叉戟の強烈な突きを放つ三笠。 左右からの攻撃を巨兵は腕で受け止めはじき飛ばすが、これで左右の手を封じた。 豪腕が風を切って三笠と鬼咫嶺を狙うがそれを2人は回避して。 「あんなの食らったらひとたまりもないだろうからなー。注意しておくぜ」 鬼咫嶺は仲間を見やって告げた。そこに続くのは、 「ッたく、コレ使い勝手あんマよくねェんだよな」 斧を両手に構えて、一気に踏み込む空だ。彼は巨兵の足下を駆け抜け胴体を薙ぎ払う。 これもまたがちんと耳障りな音とともに弾かれるが、注意を引きつけるには十分だった。 3人が作った隙、狙いは巨兵の左膝だ。 そこに直撃したのは朝比奈のアイシスケイラス。 前衛の隙間を縫って放たれた氷の刃が、水晶にぶち当たって音を立てて砕けた。 さすがに突き刺さるまでは行かなかったようだ。だがアイシスケイラスの目的は別。 氷の刃は直撃と同時に炸裂、微細な氷の刃で数多の傷を付け激しい冷気を振りまいた。 強固な水晶は例え冷やされてもほとんど変質しないらしい。 だが、微細な傷やこれまでの攻撃によって、幾度も攻撃された膝は確実に弱っていた。 びしり、嫌な音と共に巨兵の膝にヒビが走る。そこに駆け込んだのはアルバルクだった。 「これでも砕けねえか、頑固なもんだ……なら若いもんに乗っかるか」 一撃の威力において、魔槍砲に勝る武器はそうそう無い。 大きく引いた槍を一気に突き立て、槍の一撃と同時に強烈な砲撃。 槍撃連動砲撃が可能な種類の魔槍砲故に出来る芸当で、アルバルクは一気に巨兵の膝を粉砕した。 足を失った巨兵は、轟音を立てつつ倒れるのだった。 そこで、砲撃の余波か一瞬だけ立ち止まったアルバルクに、巨兵が振り回す腕が直撃した。 とっさに回避しようとせず、受け止めながら後ろに飛んで衝撃を殺すアルバルク。 だが、巨大な水晶の柱にぶっ飛ばされたアルバルクは吹っ飛ばされてごろごろと地面を転がった。 「はわ!? い、今直ぐ治療しますよぉ!? え、ええと……」 駆け寄ってくる八甲田。彼女は印を組むとすぐに浄境でアルバルクの傷を癒して。 「だ、大丈夫ですか?」 「……ああ、大分マシになったさ。ま、今は攻め時だ、休んでる暇は無いねえ」 もちろん全快にはほど遠く、心配そうに傷を見ようとする八甲田をアルバルクは制して。 口の中を切ったのか、ぷっと血を吐き捨てつつ魔槍砲を杖に体を起こすと。 「ぴんぴんしてるうちは、どうにもおっさん手が出にくかったが、今ならどうにかなるしなあ」 気合いで体の痛みを無視して、にやりと笑うアルバルクであった。 ● 膝を粉砕された水晶巨兵。そこに開拓者は一気に攻め込んでいた。 「皆がんばってや〜。応援するからな〜」 バンジャーイ♪ は止めて武勇の曲を奏でる御形。その援護を受けて前衛は一気に勝負に出た。 「次は腕か?」 「ええ、腕をどちらか破壊出来たら勝負は決まるでしょう。では、肩を。私が引きつけます」 「あいよォ、まったくとっとと壊れろッっての」 真空刃で腕を牽制する三笠、肩に回って破壊を狙う空。 足を折られ、座り込みの姿勢のまま腕を振り回して暴れる巨兵相手に、開拓者達は巧妙に立ち回る。 朝比奈の援護もあって肩にもひびが走り、そこにアルバルクが砲撃をしてさらに続くのは八甲田。 両手にトの字型の武器、双龍旋棍を構えて、がつんと一撃すれば、 「……はぅぅぅ、やっぱり硬くて叩くと手が痛いですぅ!」 「おいおい、無茶はするなよォ?」 苦笑する空。しかし 「で、でも負けないのですよぉ。同じ所を攻撃し続ければいくら硬くてもぉ……」 さらに連打連打。ひびはますます広がりついには腕も破壊することに成功するのだった。 勝負は一気に決まっていった。 「一気に勝負をかけるよ!!」 ルゥミの可愛らしい声とともに、強烈な銃撃が胸の中央に着弾。 「終わりです。消えなさい」 合せて放たれたのは朝比奈のララド=メ・デリタ。灰色の光球が胸を抉る。 なんとか反撃しようとする巨兵だが、その腕を妨害するのは鬼咫嶺と三笠だ。 「とっとと終わらせるぜ、邪魔はさせねぇよ!」 ロンパイアを何度も水晶の腕に叩きつけつつ、気を引く鬼咫嶺。 巨兵の反撃も、姿勢が崩れていれば力は無いようで。 「今ですぅっ! 弱っている所に一気に打ち込んでいくのですよぉっ」 1発目、飛び上がって胸にトンファーの一撃を放つ八甲田。 「やれやれ、やっと終わりだな……どうにも、頭の硬いヤツってのは昔から苦手でねえ」 2発目、気力を振り絞って砲撃でだめ押しするアルバルク。 「おっさん、こいつァ頭だけじゃ無くて体も硬いけどな……ッたく、手間かけさせやがって」 3発目。斧を手にえぐれた胸を十次に切りつける空。 そしてとうとうひび割れた水晶がぼろぼろとこぼれ、胸から核が露出した。 「……一気にぶち抜くよ!」 そして、巨兵の抵抗もそこまでだった。ルゥミの銃弾が核を穿ち、魔術や砲撃がだめ押しして。 ついに水晶の巨兵は粉々に砕け散っていくのだった。 「……ふー、しんどかったわ……」 どっと疲れた顔で、座り込むアルバルクに、空はにやにやと笑って、 「おっさん、年寄の冷や水は禁物だぜ?」 「はっ、まだそこまで老け込んじゃいないさね」 にやりと応えるアルバルク。 「はー……緊張しました……うう、手が痛いです」 「冷やした方がいいかしらね? ……アイシスケイラス、上手く使えないかしら」 「は、はわわ、それは遠慮しておきますぅ〜」 痺れる手をさする八甲田は、朝比奈の提案に首を振ってみたり。 「刃こぼれしてないと良いんですけどね。鬼咫嶺さん、そちらの得物は大丈夫ですか?」 「んー? ……大丈夫だと思うけどなぁ?」 三叉戟とロンパイアを見比べているのは、鬼咫嶺と三笠で。 「ばんじゃーい♪」 「ばんじゃーい♪」 バイオリン片手に、耳に残る歌を繰り返す御形とルゥミだったり。 そんな2人を見てアルバルクが思わずぶっと吹き出しかけて、傷の痛みに悶絶したり。 ともかく無事にアヤカシは退治され、怪我もなんとか治療して帰路についた一行であった。 |