踏み荒らすものたち
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/02/21 21:14



■オープニング本文

 急募:危険な任務を相棒と共にこなす開拓者

 場所:泰国南方の小村付近

 敵 :アヤカシが8体
    それぞれ微妙に詳細が異なるが共通点が一つ。
    突進攻撃を得意とする超重量級のアヤカシであること。

 付記:ギルドは、便宜上このアヤカシの一団を【踏み荒らし】と呼称することにした。
    大きさは、大型草食獣のサイやゾウに近い。
    頑丈な表皮や、高質化した甲殻のような皮膚を備えた重量級である。
    さらに、骨の突起や角による鋭角などを備えている。
    
 付記2:彼らの突進先には小村がある。
     すでに住民の避難は完了しているが、敵の突破を許せば村は破壊されるだろう。

 緊急、の二文字が朱墨で大きく印された依頼書がギルドに張り出された。
 参加する開拓者は、相棒を伴い急ぎ現場に向かって貰う必要があるだろう。
 相棒の種類は問わないが、小型の相棒では苦労するかも知れない。
 相手は大型、力押しで突進攻撃を得意としているのだ。
 新型を含めた駆鎧を使用して、肉弾攻撃によって突進を阻むか。
 龍と連携して、龍の巨体と開拓者の技によって突貫を遮るか。
 土偶ゴーレムなど、そこそこ大型の相棒を活用する手段もあるだろう。
 もしくは、攻撃力の高さで、弾幕をはって押し切るという手も使えるかもしれない。

 だが、注意して欲しい。
 突貫を止めることが出来なければ、まず最初に踏み荒らされるのは、貴方とその相棒だ。
 巨大な力の塊を止められるかどうか、それは貴方の作戦に懸かっている。

 さて、どうする?


■参加者一覧
羅喉丸(ia0347
22歳・男・泰
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
和奏(ia8807
17歳・男・志
サーシャ(ia9980
16歳・女・騎
アレン・シュタイナー(ib0038
20歳・男・騎
フィン・ファルスト(ib0979
19歳・女・騎
リィムナ・ピサレット(ib5201
10歳・女・魔
赤い花のダイリン(ib5471
25歳・男・砲


■リプレイ本文


 無人の村へと襲い来る怒濤の巨獣たち。
 それを前にして、開拓者には策があった。
「ダイリン殿、そちらの準備は……」
「ああ、大丈夫……って、うぉぉぉおお重てぇぇぇ!!」
 竹盾を運ぶ羅喉丸(ia0347)とベイルを抱えて唸る赤い花のダイリン(ib5471)。
 二人は急いで、それぞれの荷物を配置しているのであった。
「しっかし、疲れただろトウテン! あとでもう一働きしてもらうから、すこし休んでな」
 相棒の炎龍、紅龍登天の首筋をぽんと叩いてダイリンが労えば、登天もぐるると穏やかに応えて。
 そして羅喉丸とダイリンはテキパキと準備にはいるのだった。
 時間はあまりない。
 さすがに崩震脚では地面を掘ることは出来ず、可能だったのは油と水を用意した程度だ。
「わりいなトウテン、ちょっとこのノコギリ借りるぜ」
 まずは水でぬかるみを造り、さらに持ち込んだ盾の上に油を撒いて滑りやすい場所を作る。
 そしてトウテンの武器である駆鎧用の鋸などを地面に配置し簡易の罠代わりにしたのである。
「出来れば、槍や杭を使って柵を作れたら良かったんですけどね」
「ああ、俺は氷でも用意してみたかったんだがなぁ〜」
 手伝いをしながら和奏(ia8807)やダイリンが言えば、
「いや、これでも時間はギリギリだったからな。準備は万端とは言えないが……仕方あるまい」
 羅喉丸はそう言って。
 そして、開拓者側の準備は紙一重で完了した。
 時間も手も足りないのだが、それでも依頼を成功させるために彼らは最大限の策を練ったのである。

 そして、やって来る敵に対して、開拓者達には覚悟があった。
「村には絶対近づけないよ! 皆やっつけてやる!!」
 小柄なリィムナ・ピサレット(ib5201)は一足先に滑空艇のマッキSIに乗って、空へ。
 続いて、和奏が鷲獅鳥の漣李に跨がり、こちらも空へ。
 彼は、地図を確認しつつ、地上の仲間たちとの連絡係も兼ねているようだ。
「……アヤカシさん達は、最終的に何を目的に走っていらっしゃるのかな?」
 風が耳元で唸るほどの速度で空を駆けながら、和奏はのんびりと考えた。
「ただ走ってるだけ……なんてことがあるんでしょうかね? それなら誘導も容易いと思うのですが……」
 だがそんな和奏の思考を遮るように、彼の相棒である白い鷲獅鳥、漣李が一声高く鳴いた。
 見れば視界には徐々に近付く巨大なアヤカシたちの姿が。
「……漣李、見た目怖そうな相手ですが、よろしくお願いしますね」
 和奏の声に、再び漣李は高く応えて、その煌めく風切り羽で風を打つとさらに加速していくのだった。


 遠くから接近してくる巨獣、それが8匹。
 これを対するに当たり、今回はその作戦の要にもなったと言えるのは、一人の少女だった。
 それは紅の滑空艇、マッキSIを操り風に乗るリィムナだ。
 現在彼女は吟遊詩人であった。
 吟遊詩人と言えば、歌や楽の音で仲間を鼓舞し、力を与える援護役だと多くの者は思いがちだ。
 だが、このリィムナは吟遊詩人としてはかなりの才能があるようで。
「……村には近づけさせない! まずは眠らせてあげるよ!!」
 そして彼女が笛の音を響かせて奏でたのは、夜の子守唄だ。
 広範囲の敵を眠らせる吟遊詩人の妙技、それが巨獣アヤカシの数体を震わせた。
 とたんにその数体はがくんと速度を落とし止まりかける。
 このまま各個撃破出来れば、とリィムナは思ったのだが、

 グゥォォォオオオオオオオオオオ!!!

 大きく吼えたのは眠らされなかった他の巨獣アヤカシだ。
 その音に反応して、眠りつつあったアヤカシが再び動き出した。
 敵を眠らせることは非常に効果が高い。だがその代わりに、実は弱点も多いのだ。
 その弱点の一つは、睡眠を解除する手段がかなり多いと言うこと。
 攻撃をすれば、かなりの確率で睡眠状態は解けてしまう。この咆哮もその一種のようだ。
 さらに、夜の子守唄自体の効果範囲があまり広くないのも弱点の一つだろう。
 同時に、数匹ごとしか眠らせられなければ、他がすぐ仲間をたたき起こしてしまうと言うわけだ。
 だが、リィムナは諦めなかった。
「だったら、次はこれ! この曲は、あんた達の魂に直接作用する!」
 何度か眠らせたりしたおかげで、敵の群れは前後にばらけつつあった。
 そこを狙ってリィムナが構えた次の曲、それは魂よ原初に還れだ。
「厚い表皮なんて無意味だよっ! 魂を無に帰してあげる!」
 響き渡る新たな音色。それは卓越した技術を持つ吟遊詩人のみが習得する技であった。
 魂よ原初に還れ、その名の通り敵の魂に直接作用する強力な技。
 この曲は敵に一切の外傷を与えない。
 だが確実にその力が巨獣等を蝕んでいるようで、その足並みは乱れ始めた。
 巨獣アヤカシの体力は高いようで、この強力な技でも精々足並みが乱れる程度だ。
 だが、それだけでも仲間にとっては十分な助けになったようで。
「……これだけ分断すれば……うん、あとはみんなに任せるよ!」
 リィムナは一度だけ振り向いて、後方の巨獣へと向かって跳んでいくのだった。

 分断された巨獣の群れ。半々に別れたとは言え、その数4匹。
 木々をなぎ倒し、地形すら変えて突貫してくるその姿を前に、傲然と立つ三つの巨大な人型があった。
「これはまた……ごっつい光景だな? だが、やりがいがあるというものだ」
 新型駆鎧「人狼」、リーリエ・リッターの前にアレン・シュタイナー(ib0038)。
「うわ、来た来た! あんなの村に行かせられません……頑張りましょう!」
 同じく駆鎧「人狼」のガラハッドの前にフィン・ファルスト(ib0979)。
「ええ、頑張りましょうね。でも、あれはアヤカシというより……ケモノのような印象を受けますね」
 首を傾げつつ、駆鎧「人狼」のアリストクラートの前にサーシャ(ia9980)。
 三者は同じく駆鎧をあやつる騎士たちだ。
 巨大な相手には、同じく巨大な駆鎧で対抗する。それは至極当然な作戦だった。
 彼らの傍らには、甲龍の頑鉄と共に羅喉丸。
 どうやらこの四者が接近してくる4匹の巨獣を相手にするようだ。
「龍は頑鉄だけだが、甲鱗を持って全て受け止めれば問題ないな。頼むぞ頑鉄」
 信頼を込めて羅喉丸が相棒の頑鉄を見上げれば、頑鉄はぐっと地面を踏みしめて轟と一声吼えて。
 4匹の巨獣に対して、待ち構える開拓者4人。
 だが、1人一体を受け止めるのは、それだけでかなりぎりぎりの作戦だ。
 もし、押し負ければ開拓者を踏み越え巨獣は突破してしまう。
 だが、敵はこの4匹だけでは無い。
 リィムナの尽力によって分断されたとは言え、まだ後方に4匹残っているのだ。
 それも程なく突破してこちらにやって来るだろう。
 ギリギリの戦いを勝たせるためにも、後続の4匹はさらに足止めせねばならない。
「よぅしっ! 後ろは俺が引き受けた。こいつ等は頼んだっ!」
 ルオウ(ia2445)は相棒の走龍フロドを駆り、そのまま巨獣達の傍らを抜けていく!
 危険を承知で後続を足止めする気のようで、
「この俺が相手だっ! きやがれえええっ!!」
 咆哮を上げて、後続の巨獣達を引きつけるフロドとルオウ。
 戦いは後続を止める開拓者達と、真っ向勝負で立ち向かう開拓者達の2局面に別れるのであった。


 後続の4匹。
 彼らの頭上にはリィムナと彼女の滑空艇が飛行していた。
 何度も何度も夜の子守唄と魂よ原初に還れの波状攻撃を放っているのだろう。
 後続の4匹も少なからず消耗しているようで、その動きにはところどころ隙が見えるようだ。
 さらに、その後続がついに罠のある地帯に踏み込んだのだ。
 ぬかるみは踏み越え、少しぐらい足並みが乱れる程度だ。
 さらに深くない落とし穴はそれごと粉砕して進んでいるようだ。
 体力が高く頑丈な巨獣アヤカシはやはり強敵のようで、単純な罠ではなかなか止まらないようだ。
 だが、そのなかでも油と盾の罠には彼らもてこづったようだ。
 盾を踏みつぶしつつすすむのだが、頑丈なものや武器も交じっているためさらに足並みが乱れる。
 そこにやってきたのは地上から走龍フロドに跨がったルオウ。
 そして空中を鷲獅鳥の漣李で駆け抜けてきた和奏であった。

「これで、すこしでも足が止まると良いのですが……」
 漣李は曲芸のように巨獣の間を飛来しつつ、それを攪乱する。
 さらにその背で和奏が放つのは瞬風波だ。
 風がうずまき真空の刃が巨獣達を攻撃する。さらにその風にのって漣李も加速。
 空中を縦横無尽に漣李と和奏は駆け巡るのであった。
 そこに突貫するルオウ。
「……フロド! 離れてな。行くぜぇっ!」
 ルオウはなんと、巨獣の一匹と併走した状態から、フロドの背を足場に飛び上がり巨獣の背に乗ったのだ。
 罠で勢いが弱まった隙の一瞬の早業だ。
 そのまま、押さえつけ締め上げ、龍やケモノを押さえつけるようにさんざんに乗り回すルオウ。
「おらおら! 力比べなら負けねぇぞ!!」
 咆哮で他の巨獣を引きつけながらの、果敢な行動だ。
 しかし、ルオウと和奏が連携して一体にあたってしまえば、他の三体の動向が心配だ。
 ルオウが咆哮である程度引きつけてはいるものの、このままでは突破されてしまうかもしれない。
 そんな時に、紅の龍、登天とともにダイリンも後続の戦闘へとやってきた!
「まとめて吹っ飛ばすぜ! 後ろは任せろ!!」
 ルオウに負けず劣らず熱く吼えると、トウテンとともに別の巨獣へ突貫するダイリン。
 ダイリンの獲物は強力な破壊力を誇る魔槍砲だ。
 魔槍砲の穂先に爆炎が生まれ、それが巨獣を真っ正面から直撃した。
 だが、さすがにぶ厚い外皮をほこる巨獣アヤカシだ。
 爆炎の直撃を受けつつもそれを突破して、ダイリンを踏みつぶそうと進み出るのだが、
「へっ! この赤い花のダイリン様がそう簡単に道を譲ると思ってもらっちゃぁ困るぜ!」
 トウテンが地面を踏みしめて飛び上がり、がっちりと巨獣に組み付く。
 攻撃や力比べか? いや、実はこれは主のダイリンの足場になるための行動だったのだ。
 ダイリンはそのままトウテンの背を足場に巨獣に飛びかかり、その魔槍砲を巨獣に突き立てる。
 すでに、リィムナの楽の音や、砲撃で消耗していた巨獣の外皮。
 そこに強力な一撃が叩き込まれたのだが……それで終わりでは無かった。
「これで……終わりだっ!! 燃え尽きろぉぉ!!」
 ダイリンはなんと、巨獣に魔槍砲を突き立てたまま、ゼロ距離での砲撃。
 爆炎は巨獣を内部から焼き尽くして、完全に息の根を止めるのであった。
 そして、爆炎の余波を恐れたのか、ルオウを乗せた巨獣がさらに大暴れ。
 だが、すでにこの巨獣の頭上にはリィムナと和奏が。
 和奏は足を狙って瞬風波。風の刃が足を直撃し巨獣はぐらりと体勢を崩した。
 その隙に、ルオウは高々と飛び上がり、
「いまだフロド! ぶちかませっ!!」
 主の言葉に応えて、走龍フロドは果敢にたいあたり。さらに巨獣が体勢を崩す。
 このとき、空中のリィムナは泥まみれの聖人達を奏で仲間を強化していた。
 そして飛び上がったルオウはその楽の音の中刀を鞘から抜き放ち、
「サムライ、なめんなあああっ!」
 気合一閃、タイ捨剣sの一撃を巨獣に見舞い、終にこの巨獣を切り伏せてしまうのであった。
 残りは2匹。
 まだまだ予断は許さないが、開拓者達は確かな手応えを感じていた。
 巨獣が相手であっても、協力すれば対抗できるのだ。
 彼らは新手に対して、気合いも新たに向き合って構えるのであった。


 だが、四体の巨獣を相手にした駆鎧や甲龍は、連携するわけにはいかなかった。
 それぞれが一体を受け止めなければならないのだ。
 他を助ける余裕は無い。だが、罠で敵の足は止まり隙が生まれつつある。
 さらに、仲間たちは彼らの勢いをそぐために様々な作戦で敵を弱らせているはずだ。
 ならば痕はただ自分とその相棒を信じて戦うだけ。
 並び立つ三機の駆鎧は一斉に武器を構え、眼前に迫る巨獣へと立ち向かうのであった。

「さてさて、思って居たよりも迫力があるね……だが、駆鎧の力を見せてやろうか」
 アレンはそう言いながら駆鎧で武器を構えた。
 すると左右の二体も同じように眼前の敵に向かって武器を構える。
 敵は三体、こちらも三体。
 多対一であたることは出来ないが、お互いの動きを合せ、連携することは出来るのだ。
「サーシャ、抜かるなよ?」
「あら、もちろんですよ」
 アランの言葉に、傍らのサーシャが応える。
 そしてアランは巨大なランスを構えると、
「アーマー、前へ! 突撃ィィっ!」
 その言葉と同時に、三機は巨獣へと一気に距離を詰め最初の一撃を叩き込むのであった。

 サーシャの駆鎧、アリストクラート。
 初撃は地を滑るように接近してからの、盾での一撃。
 犀のような巨獣の鼻っ柱を横合いから駆鎧の盾が豪快に一撃した。
 金属同士をぶつけたような轟音と共に、吹っ飛ばされたのは巨獣だ。
 最高のタイミングで放たれた横合いからの一撃が、巨獣の進む方向を曲げてしまったのである。
 さらに追撃、アリストクラートは巨大な駆鎧用の剣を振り上げると、それを巨獣の前足に。
 体勢を崩されたところに叩き込まれた足への一撃に、巨獣はがくりと膝を折ってしまった。
 その首根っこをドスンと盾で押さえつけるサーシャ。
 彼女は一瞬でこの強敵を封殺してしまった。

「生身の連中に後れを取ってはいられないんだよ! ……貫く!」
 アレンの駆鎧、リーリエ・リッター。
 サーシャがタイミングの妙ならば、こちらは狙いの妙。
 向かってくる巨獣は、ずんぐりとした重量級だ。
 それを前にアレンは恐れもせずにぴたりと目を狙って槍を構える。
 そして、そのまま目、足、口を狙ってのランス攻撃だ。
 攻撃された巨獣は、体を貫かれながらも突進を続ける。
 だが、それはアレンが盾を構えてがっちりと正面から受け止める。
 力と力の真っ向勝負だ。だが、すでに動きの要である眼と足をやられた巨獣に勝ち目はなかった。
 ガードでがっちりと受け止めて動きを止めた相手に向かって、アーマースマッシュの一撃。
 強烈な槍の一撃に、巨獣はそれだけで倒れ伏すのであった。

 そしてフィンとその相棒ガラハッド。
 こちらは、タイミングでも無ければ狙いでもない。
 オーラを操り、駆鎧を操る騎士らしく、その突破力こそが彼女の真骨頂であった。
 彼女の相棒であるガラハッド。
 この新型駆鎧は特にパワーの強化に主眼が置かれて調整されているらしい。
 重厚な鎧と重量級の武器、それを振り回せる強力なパワー。
 フィンの相手は、巨大な角を幾つも生やした凶悪そうな敵だ。
 それをあいてに、フィンはガラハッドを低く構えさせるとオーラダッシュで加速。
 低い体勢から角を勝ち上げて、がっちりと真正面から巨獣を捉えるのだった。
 そしてそのままガラハッドは迫激突。
「かわされると困るけど、これならどうよ!?」
 接近状態に近い間合いから、オーラによる強烈な加速での強烈な体当たりだ。
 真っ正面から、パワー型の駆鎧の強烈な一撃を受けた巨獣は、なんとそのまま吹き飛んだ。
 ひっくり返って転がる巨獣。
 フィンとガラハッドは、自身等の特製を活かした強力な一撃で勝利を掴んだのである。

 こうして駆鎧三機は見事な勝利を収めた。
 だが、残るは甲龍と泰拳士の羅喉丸だ。彼らは果たしてどうやってこの巨獣を止めるんだろう。
 眼前に迫る巨獣、それが油の罠で一瞬足を取られたその隙に、甲龍の頑鉄が飛び上がる。
 そして、巨獣が足場を整え直し再び動こうとするその出鼻、頑鉄は上から巨獣を抑えに懸かった。
 頑鉄は一瞬でもこの巨獣を止めるために龍戈衛装と強力でがっちりと組み付いた。
 巨獣は、巨大な甲羅で全身を固めた重厚そうなタイプであった、
 すぐさま、大暴れしてふりほどこうとするのだが、
「……一瞬あれば十分、砕けろ」
 どすんと強力な震脚とともに、羅喉丸はその甲羅の巨獣へ強烈な体当たりを放った。
 単なる体当たりであれば、その一撃は通じなかっただろう。
 だが、卓越した泰拳士が放つ玄亀鉄山靠は、衝撃を内に伝える技だ。
 あらゆる障壁を無視し、内部から崩壊させる究極の一撃。
 それを土手っ腹に喰らった巨獣は、なんとその一撃で粉砕。文字通り砕かれたのだ。


 3人の騎士は速攻で巨獣を片付け、泰拳士の羅喉丸も一撃で巨獣を粉砕した。
 彼らが急ぎ後続部隊の所に向かえば、丁度巨獣が2体倒されたところで残るは二体。
「わ、みんな! もう4匹倒しちゃったんだ!!」
 だったら残りは2匹だね、と無邪気に喜ぶリィムナ。
 彼女は、残る力を振り絞り、泥まみれの聖人達で仲間たちを強化した。
「トウテン! まだいけるか? ……なら援護するぞ!」
 ひらりと炎龍の紅龍登天の背に飛び乗るダイリン。彼は空中から射撃で牽制。
「では、こちらで隙を作りましょう……ルオウさん、1匹だけ引きつけて貰えますか?」
「任せろ! こっちだ、でかぶつっ!!」
 漣李の背でそう告げた和奏に応えるルオウ。
 ルオウが咆哮で1匹を引きつければ和奏は斜陽で敵を幻惑。
「よし、1匹はこちらで! ……サーシャ、合せてくれ!」
「ええ、行きましょう」
 アレンがサーシャと合せて、1匹に狙いを付けつつ、
「伊達や酔狂で駆鎧小隊を指揮してるわけじゃないさね。そのことを教えてやろうかね!」
 そういって、見事な連携で1匹を仕留め。
「頑鉄! 駆鎧と一緒に足止めを頼んだぞ!」
「止、ま、れ〜〜〜!!」
 頑鉄とフィンガラハッドが最後の1匹を足止めし、そこに羅喉丸が渾身の玄亀鉄山靠。
 ついに、全部の巨獣は粉砕されるのであった。