【初夢】相棒ちぇんじ!
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/01/14 19:43



■オープニング本文

 ※このシナリオは初夢シナリオです。
  オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。

 新しい年の始まりに見る初夢から醒めると、貴方は貴方が愛する相棒と入れ替わっていました。

 龍を愛する貴方。
 目がさめると、貴方の肌は鱗の肌で背中には立派な翼。
 なんじゃこりゃ、と驚きの言葉と共に、ぼわっと火が出ました、口から。

 もふらを愛する貴方。
 寒い寒い冬の朝、お布団から出たくありませんが、昼過ぎにのんびり起きてみるとあら素敵。
 まるっとまろやか、貴方の体はもふらさまに。コタツが呼んでいます。

 人妖や羽妖精を愛する貴方。
 普段は、小さな同居人と仲良くやっていたと思います。
 しかし貴方が人妖サイズになってしまったら、相棒たちはどう貴方と付き合うのでしょうか?
 逆もまたしかり、いつもの小さな相棒たちが貴方と同じ大きさになったら……。

 からくりを愛する貴方。
 人間そっくりの絡繰たち。ふと目覚めれば、おや相棒の様子がちょっとおかしい。
 陶器のような肌は血色が良く、いつも以上に……おや、どうやら人間になってしまったようです?

 ということで、いろんな変化が目白押し。
 ・自分が相棒と同じ姿になる。(開拓者がもふらさまや土偶姿になってしまう)
 ・相棒が自分と同じ姿になる。(相棒が人間になってしまう、ということで)
 ・相棒と中身が入れ替わる。 (自分の中身だけが相棒になり。自分は相棒の姿に)

 はてさて、こんな夢は現か幻か。とりあえず、楽しんでみましょう!


■参加者一覧
葛切 カズラ(ia0725
26歳・女・陰
酒々井 統真(ia0893
19歳・男・泰
慄罹(ia3634
31歳・男・志
菊池 志郎(ia5584
23歳・男・シ
鞘(ia9215
19歳・女・弓
フィン・ファルスト(ib0979
19歳・女・騎
ゼス=R=御凪(ib8732
23歳・女・砲
藤本あかね(ic0070
15歳・女・陰


■リプレイ本文


「興覇、今日も訓練に……ってえ……」
 棍を肩に担いだ慄罹(ia3634)は早朝から訓練のため、相棒のもとへやってきた。
 相棒は興覇という名の龍だ。金にも見える色の鱗の威風堂々とした甲龍のはずである。
 慄罹はいつものようにギャースと返事が返ってくると思ったのだが、
「おまえ……」
「ん……俺は人になったのか?」
 龍の厩舎の中で、首を傾げたのは金髪の偉丈夫だった。
 髪の間からにょっきりと伸びた角、目元の入墨風模様と鼻っ柱の一文字傷。
 それは確かに興覇であった。人の姿になっていながらそれらの名残が興覇そのままで。
「これは一体どういうわけ……いや、理由はどうでもいい。聞きたい事、色々あったんだぜ」
「そうか。俺は慄罹と手合わせがしてみたい」
 けろっとそう言う興覇に慄罹は苦笑を浮べて、それなら一緒に行こうと声を掛け。
 二人は近くの山へと訓練に赴くのであった。

「やっぱりアタシ、人間になっても美しいわね!」
 すらりと腕を伸ばし、ぱちぱちと瞬きを繰り返す自称・美の化身は高らかに宣言した。
 虹の七色に輝く長髪、まるでジルベリアの絵巻物から出てきたような美しい顔。
 鍛えられた体、そして高く伸びた背丈……そんな20代前半の男。彼は鷲獅鳥の虹色であった。
 長く伸ばした青い爪を眺める目元には、涼しげアイライン。そんな大男である。
「……薄々予想してたけれど、やっぱりイロモノだったか」
「ちょっとそれどういう意味? アタシみたいな美人が相棒で嬉しいはずでしょ!」
 イロモノ呼ばわりに文句を付ける虹色は、主の菊池 志郎(ia5584)より頭一つは背が高かくて。
 そんなキンキラキンに輝く虹色の大男を前に、がっくり菊池は膝をつくのだが虹色にはお構いなしだ。
「さ、折角人の姿になったんだし、行くわよ!」
「……行くって何処に?」
「まずは服のお店でお洒落を楽しむのよ! 志郎ちゃんの服はアタシには地味で小さいから」
 しれっと主に失礼なことを言いながら、出かける準備万端の虹色。
 そんな相棒に頭を抱える菊池であったが、その腕を元鷲獅鳥の虹色が、がっちりとつかんで。
「さ、さっさと行きましょう!」
「ちょ、ちょっと待てって……う、うわあぁぁぁ!」
 ずるずると引きずられて連れて行かれる菊池であった。

「……これは、一体なにごと?」
 朝目覚めて、目の前に自分と同じ顔があってびっくりした鞘(ia9215)。
 すると目の前の顔は、にっこりと笑って。
「いやぁ、びっくりだね。鞘が人妖になるなんて」
「……えっと、今、なんて?」
 鞘は、自分そっくりの人妖のかたなに尋ねながら、頭を抱えるのだった。
 そんなことはお構いなしの人妖かたな。自分の衣装箱からとっかえひっかえ着替えを出して。
「良かったわね、あたしが居て。その大きさじゃ人間の服着られないものね……これなんかどう?」
 頭を抱えたままの鞘に向かってかたながじゃーんと着替えをつきだした。
 それは、かたなの自己主張に比例するかのような立派な胸……もといスタイルに合せた巫女装束だ。
 ただの巫女装束では無い。大胆なスリットやら肌を見せるアレンジがこれでもかと施されていて。
「……こんなの良く着てるね……」
「でも他に服無いよ?」
「う、うう……」
 ということで仕方が無いので袖を通す鞘。だがそんな鞘を見てかたなは。
「ぷぷっ、地味に恥ずかしがってるよ、あんまり露出多い服着ないしね……ぷぷぷっ」
「……かたな、何を笑ってるの?」
「……だって、それ胸元ぶかぶかになってるんだもん!」
 お腹を抱えて笑い出すかたなに、ますますどんより落ち込む鞘。
 だがしかし、こうしているわけにはいかないようだ。
 ふわふわと空中を浮かぶ人妖、だがその飛び方は案外に難しいようで。
「……っと、意外と……難しいもんだな。宙に浮かぶのは」
「でしょ? だからまずはコツを教えてあげるわ! ……なんだかいつもと逆でお姉さんになったみたい」
 ふふっと笑いながらくるくると飛び回りお手本を示すかたな。
 普段通りどころかいつも以上に楽しそうな相棒を見ていれば、まぁいいかと思えてきて。
 おっかなびっくり人妖として鞘はいろいろと勝手を学ぶのであった。

 そして同じように人妖を相棒とするフィン・ファルスト(ib0979)も、目覚めると目の前に相棒が。
 翡翠の髪と瞳の少女がすやすやと目の前で寝ていた。
 普段ならば、人形のような小さな姿のはず。だが今日は自分と同じぐらいの大きさだ。
 何事だろう、とフィンが首を傾げていれば、その翡翠の少女はぱちっと目を開けて。
「……ん……あれ、フィン。なんでちっちゃくなってんだ?」
「あんたがでかくなっちゃってるのよ!」
 思わず応えたフィン。その言葉に元人妖のロガエスは自分の姿にびっくりするのだった。
 大きくなった人妖のロガエス。ふわふわと浮くは出来ないその姿は普通の少女だ。
 そんなロガエスは、いつもと勝手の違う世界に興味津々で。
「じゃ、じゃあフィン! 外行ってくるぜ!」
「あ、ちょっと待ちなさい! ……もう。ほら、おやつ買ってあげるから一緒に行くわよ」
 飛び出していこうとしたロガエスをフィンとりあえずつかまえて、一緒に出かけるのであった。


 まどろみの中から、ゆっくりと目を覚ます葛切 カズラ(ia0725)。
 彼女は、なにかふかふかのモノに顔を埋めていた。
 至福の柔らかさを満喫するカズラ。だがどこか覚えがある感触だ。
 すりすりと、ほおずりすることしばし……、
「はっ! この柔らかさは……私の胸!!」
 がばっと跳ね起きたカズラ。その姿は相棒の人妖初雪になっていた。
 で、その言葉に目を覚ましたカズラの体、ぱちぱち瞬いて。
「へ? 何で僕がそこに? って僕がカズラになってる!!」
 慌てて起きて、確かめれば自分が主の姿になっているわけで初雪は大混乱。
 だが、それを見ながら、ふわふわ器用に浮かぶ初雪の体のカズラは良いことを思いついた。
「ハッちゃんが中に入ってる自分の体……興味あるわね」
「え、えっとそれはどういう……」
「こういうことよ、それっ!」
「や、んっ! そこ、くすぐったいから〜!!」
 とカズラに、好き勝手される初雪inカズラであった。

「ふむ、前にもこのような事があったし、他にも困ってる人が居るかも知れない。見回りにいこうじゃないか」
 きっぱりと切り出したのは、酒々井 統真(ia0893)の相棒、人妖の雪白であった。
 いつもは小さな人妖姿の雪白、今は人間サイズの楚々とした美人である。
「ん? どうした我が主」
 くるんと振り向く雪白に、なんとなく統真はなにかを思い出しかけて……。
「……いや、何でも無い」
 ぶんぶんと余計な事を思い出さないように慌てて追憶をかき消すのだった。
 そんな主の当惑を見て、ふふんと笑う雪白は統真の腕に自分の腕を絡めて体を寄せて。
「さて、それでは出発しよう」
 ぎゅっと体を押しつけながら、当惑する主をおもしろそうに見ながら外に繰り出すのだった。

 ジルベリア風の菓子と紅茶の店からの買い物帰り、見付けたカフェで一息つく二人組がいた。
 収穫はお菓子と紅茶とアクセサリーだ。
 それを眺めてお茶を味わっているのはゼス=M=ヘロージオ(ib8732)。
 そしてその傍らで、彼女を守るように控える青年はクレーストである。
 主のゼスと同じぐらいに見える凛々しい青年騎士のクレースト。彼は本来であれば駿龍だ。
 しかし、今の彼は人間の騎士姿。強い絆で結ばれたゼスは、そんな相棒を普段通りに扱っていた。
 そして黒い髪をゆらし銀の瞳で静かに周囲を窺っている姿はまるでゼスを守る近衛騎士のようだ。
 だが、そんなクレーストには小さな不安があった。
 お互いをよく知る二人である。だからこそゼスはクレーストの姿形が変わろうと普段通りに振る舞っている。
 しかしクレーストは主について、何か感じるモノがあるようだ。
 そんな相棒の様子に、ゼスも気付いたのだろう。
 彼女は、本をしまってカバンに収めると、静かに立ち上がって。
「……すこし、歩こうか」
 いつもとは少し違う形で、連れ立った2人は静かな神楽の街を歩き出すのだった。

 そんな2人が歩き去ったあとで、跳ねるように四つ足で走ってきてのんきに伸びをする、女性が1人。
 まるで猫のように、柱に手を掛けてのーんと体を伸ばしているのは藤本あかね(ic0070)だ。
「迷惑だねえ、人に化けたつもりなんてないのに……どっこらしょっと」
 伸びながらくぁぁと大あくびを一つ。それを見て廻りの人がびっくりしているのも何のそのである。
 なぜなら、彼女は猫だから。正確に言うと猫又だからだ。
 藤本の中にいるのは、トメという名の猫又らしい。では、主のあかねは何をしているのかというと。
「ん……? んん!?」
 寝起きで、掌を見て、肉球を確認。にぎにぎ、爪がにょきにょき。
「……猫だこれーー! なに、言葉は話せる……ネコマタ?」
 慌てて跳ね起きたところであった。で、くるくると自分の姿を確認して、
「この毛皮の模様といい、トメさんになってる? どどど、どうしよう……」
 そこでふと気付いた。自分が居ない。正確に言えば自分の体が居ない。
 すると、猫又になったせいか鋭くなった聴覚に、遠くから聞き慣れた自分の声が聞こえてきた。
「そうだ、せっかく人になったんだから思いっきり楽しまなきゃ!」
「あっ! 今のはあたしの声……」
 ぴょんと窓に昇ってみると、丁度通りの先で、あかね改めトメさんが四つ足で掛けだしたところだった。
「……わあ、かっこいい男性開拓者! うなーーん! なーん! まーーお!」
「あああああ、待ってトメさーーーーーん!!」
 全力疾走する四つ足のあかね、それを窓から飛び出して涙目で追いかける猫又あかねであった。


 対峙する2人は黒髪の志士と金髪の龍人。その構えはまるで鏡写しのようであった。
 慄罹の構えを何時も見ている龍の興覇、人になった彼の構えはまさしく慄罹と同じなのである。
 そして手合わせが始まった。
 同じ動きから繰り出される技は互角。だが、ふと興覇は振り向きながら尻尾で攻撃しようとして……。
 尻尾が無かった。今は人の姿なのだ。
 それでバランスを崩したところを慄罹が鋭く反撃するのだった。
 だが、なんどか手合わせをしていけば、興覇も動きになれてきたのだろう。
 動きは速く鋭く、両者の技は互角となって手合わせも白熱するのだった。
 そして数刻後、手合わせで疲れ果てた2人は、日差しでぬくもった石畳に腰を下ろして小休止。
 手を合せてみて、改めて両者はお互いへの信頼と絆を感じるのだが、そこで慄罹はぽつりとこぼした。
「こうして、会話することなんて普段は出来ないからな」
 そんな言葉に首を傾げる興覇。
「だから、本当に気持ちを汲み取れているのか、なんて思うことも……ああ、いや違うな」
 首を振る慄罹。彼はちょっと離れて座って居る興覇に視線を向けて。
「俺の選んだ道は間違ってるのかもしれない。弱くなった俺にあきれてるかもだが、ついてきてくれるよな」
「……俺は、決めている。お前と、共に在ると」
 馴れ合うのは嫌いだ、とばかりにそれだけ応える興覇。
 彼は、内心の対等に語れる嬉しさを悟られないように顔を背けると、
「……それより慄罹。俺は、人の口でいろいろ食べてみたい。今ならたらふく食べられそうだ」
「ああ、龍の姿だと足りないもんな。じゃあ、オススメの店に連れてってやるか」
 2人は、訓練を切り上げて神楽の街に戻るのだった。
 2人が向かったのは、人気の高い屋台街であった。ここは新年から大繁盛のようで。
 手に手にいろいろと、ジルベリアや泰国、そして天儀の料理を手に取る2人。
「どうだ? これなんか美味いと思うぜ」
「うむ、いつもはあんまり味が分からないが……これ、気に入った」
 がつがつと熱々の揚げ物を食べて満足げな興覇に、慄罹も嬉しく思うのであった。
 そんな2人の眼前で、たまたまちょっと若くて美形の開拓者が通りかかった。
 目元涼しげな若者だ。そんな彼に飛びかかる影が。
「にゃーんにゃーんごろごろ。フーッ!!」
 猫のように飛びかかり、ごろごろ喉を鳴らしてすり寄る藤本あかねに、若者はびっくり。
 脱兎のように逃げ出してしまった。
「……おかしいなあ、なんで愛されないんだろう? ……別の格好いい人発見〜!! まーーお!」
 再び飛び出していくあかねを見て、なんだろうあれと首を傾げる慄罹。
 一方の興覇は、山盛りの天麩羅をぱくついているのであった。

「開拓者が混乱させられているのか? 治療が必要なのでは……」
 トメさんの特攻に吃驚して逃げ出した若者がどうしたもんかと悩んでいれば、
「いや、大丈夫だよ。ちょっと今開拓者と相棒の間で問題が起きててね、彼女は猫又なんだろう」
 すっと声を掛けたのは雪白であった。雪白はあかねの体ではしゃぐトメさんに声を掛け落ち着かせていると、
「やぁぁっとみつけた!! わたしの体〜!!」
 ぴょいんと飛び込んできた猫又が、びたんとあかねの顔に張り付いた。
「もう、私の体で恥ずかしいことしないで!」
「むぅ、バカ娘かい。やれやれ、もう少し遊んでいたかったのだがのう」
「だーめー。いいから帰るよトメさん!」
「はいはい。帰ったら、猫草食べて、毛玉吐いていいかね?」
「そ、それもだめ! ……ってか毛玉なんて飲んでないわよ。……飲んでないわよ、ね?」
 そんなことを言い合いながら去って行くトメさんとあかねであった。
 それを見送る雪白の今の見た目は、はっと目を引く美人。
 同じく騒動の行方を見守っていた青年はそれに気付いて、
「こうして会ったのも何かの縁ですし……」
 と詰め寄ると雪白はにこりと笑いながら、青年を手で制して、
「いや、それ以上は言わない方が良い。すまないね。ボクの心身は、ほらこの通り」
 彼女の首にあるのはブラッケン・ザイル。主と相棒を絆で結ぶ黒革の首輪であった。
 それを示されて、すごすごと背中を丸めて去る青年なのだが、
「……雪白、そんなことを言うと誤解されるぞ」
 合流した統真はどうやら一部始終を見ていたようで、ため息と共にそういえば、
「ん? 誤解を招く? ……誤解、じゃない方が良いんだけどね、ボクは……」
 艶然と微笑む雪白は、そういいながらそっと体を寄せて、耳元で囁いて。
「知ってる? 先日、ある即売会でボクと統真の艶話な絵巻が出てたんだよ? 実践、してみようか……?」
 同じ人としての体を寄せて、熱い吐息で囁く雪白に、統真はただただ苦笑して、
「……すまん、な……」
 そういいながらくしゃっと頭を撫でて。そんな主には雪白も苦笑を返して。
「……なんて、ね。さ、まだ見回りをしないとね。困ってる人がいるかもしれないしね」
 冗談めかして、それでも腕をしっかり絡めたまま、2人は神楽の街を歩いて行くのだった。

「あら、あの2人なんてすごく素敵ね! お似合いって感じじゃ無い?」
 先程までゼスとクレーストが腰を掛けていた喫茶店の店先で、声を上げたのは虹色だ。
 どうやら街行く人々のファッションチェックで盛り上がっているよう。
 虹色が声を上げたのは、もちろん統真と雪白の2人なのだが、
「年明け早々赤字……」
 机に突っ伏して疲弊している菊池には、2人を見る余裕なんてなかった。
 虹色は、まず服を買い込み、アクセサリーを買い込んだのだ。菊池の財布で。
 しかもその後、虹色は髪結いへと向かった。
「志郎ちゃんもやってもらったら?」
「俺は髪を巻いたりしません!」
 そんなやり取りの結果、虹色は1人だけ丹念に髪を結って貰い簪や髪飾りがきらきらに。
 そして、ちょっと前に2人はなんと爪をしっかり縫って貰ったとのことである。
 結果、新年早々財布はめっきり軽くなったらしく。
「こんな爪を誰かに見られて言いふらされたら、もう仕事は受けられない……」
 うすっぺらな財布をぎゅうと握りしめつつ、さめざめ泣きたい気持ちの菊池。
 そんな彼の爪は、虹色とおそろいのきらきら輝くラメ全開だったりするのだが。
「あら、あれ見て! あの2人も素敵じゃ無い? 肩に流した三つ編みや燃えるような金の髪!」
 虹色が示したのは、今度は慄罹と興覇の2人だったり。
 ちなみに2人は並んで熱々の鍋焼きうどんをすすりつつ、虹色の声を聞きつけて。
「慄罹、人は爪を綺麗に飾る、のか?」
「……女性ならな。男なら……まぁ、趣味は様々だ」
 ばっちり見られていた志郎は、我が身の不幸を嘆くのだった。
「うう、速くこれ落とさないと……」
「その爪、しばらく色落ちないわよ?」
「……えっ?」
 きょとんとする志郎に虹色は大笑いして。
「あははは、あーおかしい! 毎日こうなら楽しいのにねー」
「毎日だったら財布が持たないよ……」
 そんな志郎に、ますます虹色は大笑いするのだった。

 雪白に振られた青年は、肩がぶつかった老人に因縁をつけていた。
 それを見とがめたのはロガエスだ。
「うざってえ真似してんじゃねえよ、屑っぽいぜ?」
「こらロガエス、喧嘩しちゃ……でも、あれは注意した方が良いかな」
 ということで、青年はロガエスとフィンに取り押さえられて連れて行かれたり。
 ちなみに助けられたこの老人は、近くの鯛焼き屋の店主で、2人はお礼としてごちそうされることになって。
 ちょうどそこには沢山の子供たちが買い物にやってきていた。
 子供に交じって遊ぶロガエス、それを眺めるフィン。
 するとそこにふわふわと2人の人妖がやってきた。
 鞘とかたなの2人だ。
「原因、さっぱり分からないな……そして、この服やっぱり恥ずかしいし」
「ぷぷっ、まだ恥ずかしがってる! でも、悩んでてもらちあかないし、甘い物でも食べよ!」
 原因究明は美味く居なかったようだが、人妖の体で鯛焼きを抱えればそれは特大サイズだ。
 2人ならんでもぐもぐ食べていれば、さらに一組開拓者が。
 中身の入れ替わった初雪とカズラもやってきて。
「人妖になると、味覚とかはあんまり変わらないけど……なんでも大きく食べられるわね」
「うー、人間になると鯛焼きがちっちゃい……もう一つ食べて良い?」
 初雪はいつもに比べて物足りないようで。カズラの顔でそんな可愛いことを言ったり。
 そうしてわいわいと子供を交えて人妖らは鯛焼きを楽しんで。
「へへ、あー楽しかったなー」
 満足、とばかりに沢山鯛焼きを食べさせて貰ったロガエス。
「普段と食べる量が比べ物にならないよぅ……お爺さんがお礼でくれたから、助かったけど」
 やれやれと胸をなで下ろすフィンに、他の皆は思わず笑ってしまうのであった。

 そして、静かな冬の小道を歩く2人。
「ゼス……最近、変わった……」
 クレーストはゆっくりと歩く主に、そうぽつりと告げると、ゼスはぴたりと足を止めた。
 今ならば届く。クレーストはゼスに手を伸ばすと静かに抱きついた。
 龍の時から、そっと体を寄せて甘えるクレースト、そんないつも通りの相棒にゼスは、
「どうした?」
 そう心配そうに告げながら、いつものように優しく撫でる。
 でも、龍ならば告げられない疑問をクレーストは告げた。
「……僕を忘れるなんて事……ないよね……?」
 クレーストは怖かったのだ。そしてそんな相棒の言葉にゼスは、
「忘れもしないし離れもしない。他者と比べて秤にかける事なんてできはしない。俺の相棒はお前だ」
 強くそう言い切るのだった。ならば、相棒として、龍としてクレーストは誓うだけだ。
(……誰が隣にいてもいい。君の相棒で……傍にいられるのなら)
 誓いながら、今だけは翼や鱗の腕では無く、人としての腕でクレーストはゼスを強く抱きしめるのだった。

 相棒との関係は様々だ。だが変わらないのは絆の強さ。
 夢か現か幻か、不思議な物語はいろんな相棒の一面をちらりと見せてくれたようである。