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■オープニング本文 とある開拓者たちが受けた依頼は、狼型のアヤカシを倒せという物だった。 狼型のアヤカシと言えば、怪狼や剣狼といったアヤカシが有名だ。 どれも単独ではあまり恐ろしいアヤカシではないが、群れでアヤカシの先遣隊を務めることも多い。 だが、アヤカシという物は単純に分類できるものではない。 強い瘴気の影響によってか、もしくはより上位のアヤカシに寄ってか、奴らは変異するのだ。 より強く、より凶悪な姿形を備えたアヤカシへと……。 今回、目標となったのはそんなアヤカシの一種であった。 8名の開拓者に同行したのはギルドの依頼調役、庄堂巌だ。 新種のアヤカシの出現と言うことで、その調査のため同行したと言うことらしい。 そしてその開拓者らが遭遇したのは、剣狼より一回り大きな狼型アヤカシの一群だった。 数はおよそ20、赤い目と鋭い刃を全身から生やした凶悪な狼だ。 便宜上、この新種には刃狼と庄堂は名付けた。 今までの剣狼らより、数段強力であり、さらには真空の刃を飛ばすらしい。 しかし、この強敵を相手に開拓者らは健闘した。 だが、それはこの刃狼の頭目が現れるまでだった。 頭目は新たに20の刃狼を引き連れて現れた。 真っ黒な毛に黒い目は他の刃狼と同じ、だがその大きさは規格外。 まるで馬や牛のような巨大さで、さらに全身から刃が。 そして頭目の咆哮と共に、他の40の刃狼は凶暴化し、連携しながら襲いかかってきたのだ。 かろうじて開拓者らは脱出したものの、重傷を受け今は療養中だとか。 しかし、恐ろしいのはこれだけではない。 刃狼の数は、その時点で40頭ほどだったのだが、どうやらそれで全部では無いらしい。 依頼調役の庄堂が最後まで踏みとどまり確認したところ、数はおそらく全部で60以上。 それを統率する頭目の狼と相まって、この群れは蒼穹に討伐せねばという話になったわけだ。 というわけで、依頼が出された。 危険性を鑑みて、今回は相棒を使用する許可が下りている。 同時に攻撃を仕掛けてくる新種のアヤカシ『刃狼』60頭に、その頭目が1頭。 これを全て排除するのが今回の目的だ。 さて、どうする? |
■参加者一覧
緋桜丸(ia0026)
25歳・男・砂
柊沢 霞澄(ia0067)
17歳・女・巫
音有・兵真(ia0221)
21歳・男・泰
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
リューリャ・ドラッケン(ia8037)
22歳・男・騎
サーシャ(ia9980)
16歳・女・騎
椿鬼 蜜鈴(ib6311)
21歳・女・魔
宮坂義乃(ib9942)
23歳・女・志 |
■リプレイ本文 ● 空を行く影が3つ。三角形の陣形を維持して、龍たちはぐるりと空を廻っていた。 先頭は黒紅の鱗の駿龍、背に椿鬼 蜜鈴(ib6311)を乗せた天禄だ。 眼下には開けた荒野。ちらほらと刃狼の姿が確認出来る。 刃狼らは頭上を悠々と舞う龍を警戒しているようで、お互いに吼えながらその数を増していた。 獰猛で巨大な狼が続々と集まるその様子は、恐ろしいものであるはずなのだが……。 椿鬼はにやりと口の端に笑みを浮べて、体を預ける天禄の首を撫でた。 「……群れとるのう、天禄。じゃが、あれしきの数では物足りぬであろ?」 すると天禄は主に応えるようにぐるると喉の奥で唸って。 一方、音有・兵真(ia0221)は左翼後方の龍の背で、2本の槍を手に眼下を見つめ呟いていた。 「群れだな群れ、まさしく……だが、頭目はどこだ? まだ姿を見せていないか」 駿龍の空電の手綱を操り、仲間と距離を保ちながら地上を窺う音有。 だが、刃狼の頭目は発見できず音有は槍を力強く握りしめたまま、小さく呟くのだった。 「……ならば少しばかり多いこの数を、減らすだけだな」 そして最後の1匹の龍は獰猛に唸り、時には咆哮を上げながら下界を睥睨する炎龍・華龍王だ。 「お〜、いるわいるわ……さて、どこから切り崩すか」 掌中の銃をくるくると弄びながら、緋桜丸(ia0026)は笑いながら言う。 最近サムライから砂迅騎へと転身した緋桜丸は新たに扱う銃の調子を確かめながら、どこか嬉しそうで。 そんな彼が注視しているのは、刃狼らの全体の動きだ。 「いくつか小さい群れを作って連携してる……ってところか」 すでに40匹を超えた刃狼を見て、緋桜丸はそう結論づけた。 あとは戦いの始まりを待つだけ、そう考えて3頭の龍と開拓者は戦いの始まりを待つのだった。 「油断ならない相手ですね……麗霞さん、お手伝いお願いしますね」 「はい、お任せください。霞澄様をお守りするのが私の務めであり、幸せですから」 巫女の柊沢 霞澄(ia0067)が語りかけたのは傍らに立つからくりの麗霞だ。 主の霞澄とそっくりな外見をしたからくりの麗霞。だが、今はその装備ではっきりと見分けがついた。 麗霞の手には武骨な剣と相棒用の銃。完全な戦闘態勢である。 二人を半円状に取り囲む刃狼の群れはかなりの数。 もし護衛がからくり1人だけであれば危険すぎただろう、だが刃狼らはこちらを窺うだけで。 その理由は周囲の仲間たちだ。 「さて、新型の慣しもかねて、やっちゃいましょうか〜」 ずんと音を立てて踏み出したのは新型のアーマー『人狼』を駆るサーシャ(ia9980)。 暖気状態から、戦闘機動状態へと移り変わった新型機は、うなりを上げて武器を構えた。 「準備完了……これからは手動に切り替える。自動起動よりは、全手動の方がやりやすいんでね」 同じくアーマーを、ただしこちらは遠雷型を手早く起動するのは竜哉(ia8037)だ。 この二機がどっかりと彼女の周囲に控えていたのだ。刃狼らも近寄れないのだろう。 巫女の霞澄の傍らで、弓を構える宮坂 玄人(ib9942)は油断無く周囲を窺っているのだが……。 「手強いアヤカシ狼の群れに囲まれた玄人様、絶体絶命の状況……燃えますわ!」 相棒のからくり、桜花はこの危険な状況でありながらひたすらに喋っていたりして。 そんな様子に、思わず玄人は苦笑を浮べるのだが、それもまた余裕の表れだ。 そして最後の一組は、走龍にまたがったルオウ(ia2445)だ。 「よっし! みんな準備は出来たみたいだな!! よろしくなー」 にっと笑いながらぐるりと一同を見回すルオウ。 今回最年少のルオウ、ぽんと走龍のフロドの首筋を叩きつつ刃狼の群れに向き直って。 「……いっぱい居んなあ。でも、一番槍は俺が貰ったぜ! いくぜぃ、フロド!!」 と鬨の声代わりに叫んで一気に駆け出すのだった。 こうして油断無く戦いは始まった。 本来で有れば強敵の相手なのだが……今回は、もしかすると挑んだ相手が悪かったのかも知れない。 ● 一気に疾駆したルオウとフロド、その後を追うのはアーマー装備の竜哉。 迎え撃つのは、群れた刃狼たちおよそ10匹以上だ。 如何にアーマーが堅かろうが、走龍との連携が手強かろうが素早い刃狼10匹が相手では危険だ。 だが、その危険を物ともせずルオウと竜哉は突っ走る。 なぜなら、必ず援護がやってくると信じているからだ。 「まずはあそこからか……ならばまずは連携の攪乱だ」 上空を舞う空電、その背の音有はぎりっと力強く槍を振りかぶった。 構えたのは雷槍「ケラノウス」。腕に撚り合わせた束のような筋肉が浮かび、そして槍は放たれた! 同時に、一気に急降下を開始したのは華龍王と緋桜丸。 口中にめらめらと燃える炎を蓄えた華龍王は緋桜丸を背に乗せて一気に敵の群れへと襲いかかる。 刃狼らが気付いたときにはもう遅かった。 「まずは1匹目っ! もらったっ!!」 群れに突撃しながらルオウが先頭の刃狼を斬り飛ばし、同時に走龍がその刃翼で薙ぎ払う! 「ルオウには倒れられちゃ困るのさ。手出しはさせんよ」 ルオウを攻撃しようとする刃狼を追撃したのは竜哉だ。 オーラダッシュで一気に距離を詰め、アーマー用の大剣で薙ぎ払えば刃狼が何匹もはじき飛ばされる。 そこで丁度上空からの援護が振りそそぐのだった。 群れ後方から真空刃を放とうとしていた刃狼を空から飛来した槍が串刺しにした。、 さらに迎撃として放たれた刃狼の真空刃を、空電が放った真空刃が迎撃し相殺。 その間隙に華龍王が一気につっこんだ。 「まずはこれでもくらいな!」 敵は敵で連携しようとしていたのだろう。だがそれを許す開拓者ではなかった。 急降下しつつ華龍王が轟と火炎を噴き出した。何匹もの刃狼が炎に巻かれる。 だが強力になった新種のアヤカシだ。それで倒れるほど弱くは無かったのだが……。 「まだまだ、これからだぜ!」 炎を放った勢いのまま、華龍王は両足で刃狼を掴んで、他の刃狼に投げつけた。 さらに、緋桜丸は片手の銃を放ちさらに剣で切りつける。 その間に、音有が二発目の槍を放った。今度は神槍「グングニル」。 同時に雷槍が音有の手元へと戻り次なる一撃となって放たれた。 その混乱の中縦横無尽に暴れ回るのがルオウと竜哉だ。 「逃がさねぇぞ! これで……3匹目っ!」 『成敗!』を決めつつ、ルオウとフロドはどんどん攻撃。それを竜哉は追って追撃して。 一気に敵の先頭集団は瓦解していくのだった。 だが、この間他の刃狼らも動いていた。 一部が先頭集団に突っ込んだ開拓者を挟撃するために回り込み、そして一部は他へ。 狙うのは地上の開拓者たち、その中で戦闘力の低い巫女だ。 獣なりの知恵しかない刃狼たちといえども、開拓者の弱いところを見抜く目ぐらいはもっているようだ。 10ほどの刃狼が、霞澄と麗霞、そしてその周囲の宮坂と桜花を狙ったのだが。 「連携できるのは、こちらも一緒……なら、勝てる道理はある!」 「もちろんですわ、玄人様!」 宮坂が矢を放ち、からくりの桜花も銃弾を放てば先頭の一匹が撃破。 「霞澄様は私の後ろへ、前に出ないように」 前に出たのはからくりの麗霞。霞澄を守りながら剣をかまえて突貫してきた刃狼と交戦。 このまま行けば、刃狼らの思惑通り、防御を崩し押し切れただろう。 だが、それを許さぬ戦力があった。 「やはり狼というだけあって、群れると厄介ですね〜……でも、ここは通しませんよ〜?」 敵戦列の真ん前にその身をさらし、真っ向から刃狼の群れに向き合ったのはサーシャと駆鎧『人狼』だ。 この駆鎧『人狼』は新型機だ。 そのためか、サーシャはこの新型機にまだ名前すら付けていなかった。 だが、駆鎧乗りとしてのサーシャの腕前は十分。初心に返ったサーシャは、まず剣で鋭い突きを放った。 回避に優れた相手に備え、鋭い突きの一撃で迎撃。一匹が体の刃ごと粉砕され撃破。 そこに横合いからもう一匹アヤカシ刃狼が噛付いてくるのを盾の殴打で迎撃、撃破。 前面装甲を増した新型機『人狼』は、敵の真空刃を物ともせず、次々に刃狼を屠るのだった。 その護衛の中で、霞澄は周辺を油断無く窺い、まだ誰も怪我らしい怪我をしていないのを確認して。 「……このままなら、きっと……でも、皆さん。無理だけは……」 小さく祈るように呟いて、きゅっと杖を握りしめて、仲間の無事を願うのだった。 もちろん、さらに外から単独で攻め寄せるような個体や奇襲を狙うものいた。 それを許さないのは、 「ほれ、天禄。新たな獲物が来たようじゃ……連携なぞ我らがさせぬぞ」 機動力に優れた駿龍と椿鬼は、上空から敵を見付け、一気に襲いかかるのだった。 牽制代わりに放たれるのがメテオストライク。強烈な火炎弾は隠れたアヤカシをあぶり出す。 そして、さらに放たれるのはアークブラストだ。狙い撃ちの雷霆が無駄なくアヤカシを消し飛ばす。 もちろんアヤカシは真空刃で反撃するがそれをひらりひらりと天禄は躱して、 「おお、巧いぞ天禄。下手な攻撃ではかすりもせぬでな……どれ天禄、本物の一撃を見せてやろうぞ」 首筋を撫でながら椿鬼が言えば、天禄は一声吼えて、地上へとソニックブームを放つ。 これでまたしても一匹が巻き込まれあぶり出され、そこに宮坂の矢が飛来して撃破。 あっという間に連携を崩されて、みるみるうちに刃狼は数を減らしていくのだった。 ● 連携の妙を崩され後手に回った刃狼。先手を取られ、一気に数が削られつつある。 完全に不利、刃狼の頭目はそのことに気付いていた。 このままであれば、数を減らされ殲滅されてしまうだろう。 さらに敵の二体のアーマー、あれを一気に殲滅することは不可能だ。 だが、アヤカシは知っていた。あれは時間制限がある。 ならば刃狼の取るべき作戦は一つ。最大戦力で、空の龍とアーマー以外を倒してしまうのだ。 そのためにはどうするべきか。最大戦力の自分と残る全個体で集中して攻めるべきだ。 十以上の刃狼は倒された。だがまだまだ数は居るし、無傷な刃狼ばかりだ。 集中して攻めれば敵の防御は貫通できるに違いない。 中央で護られている開拓者たちを倒せばまだ勝機はある。 後は身を隠しながら時間を稼ぎアーマーの時間制限を待てばいいのだ。 まだ勝てる! ……刃狼の頭目はそう考えて咆哮を上げるのだった。 咆哮が響き渡った。 すると応えるように続々と刃狼が咆哮を上げて、一気に動きを変えた。 散発的に攻撃、あるいは周囲を取り囲んでいた刃狼が一気に集合したのだ。 そのままで居れば、こちらの範囲攻撃で狙えただろう。 だが、集まりながら一気に霞澄らのいる開拓者の元へ突進を開始。 連携し真空刃を放ちながら、全体が一丸となって群れで突っ込んできたのである。 これに備えて動いたのは、椿鬼であった。彼女は魔術師。 防御のための技があるのだ。 「ふん、一丸と群れてくるのであれば、その勢いを邪魔してやろうてなぁ」 唱えたのは鉄の壁を生み出すアイアンウォールだ。高さと幅は5メートルだ。 だが、なんと刃狼らはこの壁を跳躍で飛び越えた! 自然の狼も4メートル程度の壁であれば垂直に飛び越えることがあるという。 そのため、より強力なアヤカシはなんとこの壁を飛び越えてしまったのだ。 この時点で、刃狼の頭目は作戦の成功を確信していた。 一気に攻めれば手数の多さで必ずや開拓者数名に致命傷を与えることが出来るはず、と。 音有が槍を放つ。だがその槍を体に受けつつも、牙で引き留め邪魔をする個体。 宮坂が矢を放つ。だがその矢を受けながらも突進を止めない個体。 アーマー二機が迎撃に構える。だがこの数だ、全部までは手が回らないだろう。 このまま、絶体絶命の危機なのか? ……開拓者の底力はまだまだ、この程度では無かった。 ● 「そっちが群れで一気に来るなら、全部叩っ切るだけだっ!! かかってきやがれ!」 フロドが威嚇の声、同時にルオウが咆哮を上げ、アヤカシの注意を引きながら眼前に躍り出た。 だが、多勢に無勢だ。 そこに急降下したのは二つの龍。華龍王と空電だ。 「武器を奪われてしまったが……要は何事も使いようだ。ここは通さんぞ」 ひらりと飛降りた音有は、地上でまずまだ手元にある槍を構えて、真横に投擲! 数匹を貫通して槍が止まってしまうのだが、彼はそのまま追撃に移った。 まずは飛び込みながらの蹴り。脚絆「瞬風」に包まれた蹴り足が唸り刃狼の顎を蹴り飛ばした。 同時に地上に降りたのは緋桜丸。高らかに口笛で華龍王に指示を飛ばしながら、 「狼と獅子……どちらが上かたっぷりその体に教えてやるよ」 金獅子業火の二つ名の通り、紅の髪を炎のようになびかせて、緋桜丸は悠々と歩き出した。 襲いかかる刃狼に剣を一閃。さらにもう一匹には銃を一撃。 次々に襲いかかる刃狼を左右の攻撃で薙ぎ払っていった。 それだけではない、緋桜丸は集団戦でその真価を発揮する砂迅騎だ。 立ち位置を調整し、緋桜丸は指示を飛ばした。 「ルオウ! 少し下がって一旦迎撃だ。俺と兵真が援護する。駆鎧は両翼に、前に出て囲い込むぞ!」 戦陣「砂狼」がルオウと音有、緋桜丸、そして駆鎧の竜哉とサーシャの効率を高めた。 より攻撃しやすく、素早く動ける布陣が完成、開拓者は一気に反撃を解するのだった。 「凄まじい反撃ですね〜。でもアヤカシの思惑通りには行きませんよ〜?」 サーシャは駆鎧『刃狼』を駆って一気に躍り出た。 大きさと盾を活かしていなし、反撃の刃で屠り前に出る。 「ここが攻め時か……ならば出し惜しみは無しだ。一気に行くぞ」 竜哉はタクティカルコンバットを発動。体力を犠牲に攻めに転じた。 同時に雷鳴が轟き駆鎧が蒸気を吹き上げる。鋼剛雷衣を発動したのだ。 サーシャもオーラドライブを発動。二機の駆鎧はオーラを纏い一気に群れの両翼を押し返した。 両翼を潰されて、アヤカシの群れは中央に集中した。 そこに待ち構えるのはルオウ、緋桜丸、そして音有の3人だ。 「次で12匹目! さあ、どんどん来やがれっ!」 フロドとルオウは次々に襲ってくる刃狼を迎撃し続けて。 その左右を緋桜丸と音有が支えていた。 もちろん、刃狼の攻撃が集中する3人はそれなりの被害を受けるのだが、 「精霊さん、皆さんの傷を癒して……」 それを癒すのは霞澄だ。怪我を受けるのが3人に絞られれば効率は上がる。 強力な癒やしの技を持つ霞澄にかかれば、あっというまに3人の傷は癒されて。 そして3人をすり抜けてきた刃狼を迎撃するのは、 「玄人様、私も援護しますわ!」 「嬉しいが、誤射は止めろよ? 漏れ出てきた奴だけを一緒に狙うぞ!」 宮坂と相棒の桜花が連携し的確に仕留め、 「霞澄様には指1本触れさせませんよ。ここは通しません」 真空刃を剣で打ち砕き、さらに返す一撃は破穿撃。からくりの麗霞も盾となって刃狼を迎撃。 さらには上空から守りの援護をするのは、椿鬼と天禄だ。 「大事無いか? 見えぬ所は我等が護ろうてな」 どんと地上に着地しながら刃狼を踏みつけ撃破。さらに雷霆や火球で中央を援護して、 そして、ついに群れの中頃に刃狼の頭目が姿を現した。 「ふむ、とうとう姿を現したの……高見の見物はわらわが許さぬ。暫し黙りおれ」 椿鬼は雷霆を放って頭目を攻撃。頭目は体の刃で雷霆を受け流しつつ、咆哮を妨害されて喉奥で唸って。 そして、頭目もついに突貫。群れが一丸となって最後の抵抗を開始するのだった。 その後の攻防は一瞬だった。 椿鬼は火球を頭目の眼前に放つ。頭目はそれを真空刃で迎撃。 爆炎が弾け、刃狼等が巻き込まれるが敵の群れの勢いは止まらない。 「道を開くぞ、桜花! 援護を頼む」 「かしこまりましたわ、玄人様!」 制限解除で桜花は銃弾を乱射、刃狼の群れ先頭を撃破、そこに玄人が突っ込んで。 玄人は籠手払で刃狼の刃をいなし、至近距離から紅蓮紅葉の矢を放つ。 強力な矢が頭目周囲の刃狼を穿って道を作った。 そこに左右から挟撃する二機の駆鎧。邪魔な刃狼を薙ぎ払いながら一気に距離を詰める。 「もう、咆哮は上げさせん。ここで滅ぶが良い」 オーラダッシュで距離を詰め、竜哉の駆鎧NachtSchwertはうなりを上げて刃を振り下ろす。 同時にサーシャの『人狼』も、盾を大きく振るって邪魔な刃狼をはじき飛ばすとそのまま盾を投げ捨てて。 「さあ、そろそろお終いですよ〜! 大人しくしてください〜」 サーシャの動きを的確になぞった駆鎧は流し斬りの構えから、鋭く刃を切り上げた。 左右からの挟撃を刃で受け止めようとする刃狼の頭目。 大きさ的には釣り合うのだが、熟練の駆鎧二体の連係攻撃はさすがに荷が重かったようだ。 刃を砕かれ体に傷を負い、突進が止められ、苦痛と怒りの混じった咆哮を上げた。 だが、開拓者の攻撃はまだまだ続く。 「犬畜生が喚くで無いわ……これで仕舞じゃ、残念じゃったのう?」 地を蹴った天禄はソニックブームで群れの前方を粉砕、同時に椿鬼も火球で追い打ち。 敵の群れの前方が粉砕されればそこに道が。 そこを一気に駆け抜けるのはルオウと緋桜丸、そして音有だ。 まずは音有、地面に縫い止められていた槍を拾うと、走りながら前方に投擲。 「逃がしはしないぞ」 数匹の刃狼を貫いて、投げられた槍は破軍の力で強化された勢いで、頭目の足を地面に縫い止めた。 そして緋桜丸の口笛が響くと、華龍王が頭目の後方から襲撃、なんと頭目のケツを蹴り上げた! ぎゃいんと情けない悲鳴を上げる頭目。 思わず緋桜丸も、苦笑を浮べつつ、距離を詰めて。 そして先に攻撃をしたのはルオウとその走龍、フロドは龍躍で一気に飛び込んで、 「くらい、やがれえ!」 速度を活かして、フロドはクロスボウを頭から放ち、ルオウは渾身のタイ捨剣。 受け止めようとした頭目の鼻っ柱を蹴りつけひるませての一撃だ。 矢で目を潰され刃を受けた頭目は、それでも闇雲に噛付こうとガチガチ牙をかみ合わせるのだが、 「これで、終わりだ」 無双で緋桜丸は左右の連撃。剣の一撃で喉を抉り銃で傷口を穿って、さらに接近。 ゼロショットのだめ押しでさらに傷を貫けば、頭目は断末魔の咆哮を上げて崩れ落ちた。 ずずんと重々しい音をたて倒れ伏す頭目。 まだ刃狼の数は残っているのだが、素早い決着がついてしまえば後は余裕だ。 「他愛なかったな……サーシャ殿は守りに回ってくれ。俺が残党を狩ろう」 竜哉は、その優れた駆鎧操縦によって、練力に十分な余裕があったので残党狩りに移って。 そして開拓者たちは十分な余裕とともに、再び霞澄の守りを固めるのだった。 龍を操る三名は空から残党を探し、サーシャはアーマーを降りて護衛について。 そしてしばらくの後、残党すらあっさり片付けた開拓者は、周辺の掃討を完了するのだった。 「皆さん、お怪我はありませんか……?」 霞澄の治癒によって、一同は完全回復。 もちろん龍や走龍たちも癒され、緋桜丸の相棒の華龍王なんかはご満悦の様子だったり。 「天録、ようやったのう。流石わらわの天録じゃ」 そして天禄を労うのは椿鬼。 彼女のように、開拓者は皆、相棒の働きを褒め活躍を称えるのであった。 開拓者だけでは絶対に不可能であったこの依頼。 しかもアヤカシの頭目は、苛烈な反撃を仕掛けてきた。 だが、それすら開拓者と相棒は軽々と凌ぎ、無事依頼を完遂したのである。 戦いは厳しかったが、無事に平和を取り戻した一行は、悠々と帰路につくのであった。 依頼は無事完了。仲間同士の連携と相棒との信頼が見事依頼を成功させたと言えるだろう。 |