超・鬼退治
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/10/26 19:21



■オープニング本文

 アヤカシは不思議な存在だ。
 瘴気より生まれ、その個性は千差万別。
 小さい者から大きな者まで、そして知恵も力も種々様々。
 だが、何よりも特筆すべきこと。それは奴らが人類の敵であることだ。
 人をエサとしか思わぬ凶悪な敵、それがアヤカシである。

 だが、人間もただ喰われるだけの存在では無い。武器を鍛え技を磨き、反撃をするのだ。
 そんな反撃を受け滅ぼされたアヤカシも少なくは無い。
 強力なアヤカシ、俗に上級アヤカシと呼ばれる者もすでに数多く滅ぼされている。
 さらにはアヤカシの支配者である強大なアヤカシ、大アヤカシすらも開拓者たちは倒しているのだ。
 アヤカシにとって、最大の敵。それが開拓者であることは疑いようが無いだろう。

 武天のひとけのない荒野にて。そこに、一匹の鬼型アヤカシが居た。
 アヤカシの名は、赫牙(カクガ)。肌は黒色、真っ赤な牙と角が特徴的な鬼のアヤカシだ。
 このアヤカシ、元は単なる鬼型のアヤカシの一体だった。
 他の個体より優れていたのだろう。下級アヤカシでありながら力を蓄え、すぐに頭角を現した。
 しかし、そこでこの赫牙は人の武に破れることとなる。
 サムライの刀技、泰拳士の拳法、志士の居合……武の極みが赫牙を打ち倒したのである。
 顔に消えない傷を負い、二つあった角の片方をへし折られた赫牙は命からがら逃げ出した。
 エサでしか無い人間、それが彼に手痛い反撃をしたのだ。
 そこで赫牙は考えた。矮小な人間が強大な我々アヤカシに反撃するのはその技があるからだ。
 ならば、その技を盗み、覚えれば……。

 それから数年。赫牙はいまだに討ち取られること無く活動していた。
 赫牙の行動には癖があった。彼は優れた武芸者ばかりを狙うのである。
 もちろん、赫牙にとって人間は単なるエサだ。弱い人間でも邪魔をすれば適当に殺すことはある。
 だが自分から狙うのは強い相手のみ。最近では、技と力を身につけた開拓者ばかりを狙うらしい。

 その赫牙と、部下のアヤカシたちに、とある開拓者集団が襲撃された。
 アヤカシの痕跡を追って、ちょっとした調査任務に赴いたところを、この赫牙たちが襲撃したようだ。
 逃げ帰ってきたのはシノビただ1人。数人はその場で殺され、まだ幾人か開拓者が囚われているらしい。
 人質は救出しなければならない。
 急遽、救出任務のための開拓者が募られることとなるのだった。
 相手は凶悪なアヤカシ、赫牙。
 十分な策と連携が無ければ、この任務は果たせないだろう。さてどうする?


■参加者一覧
月酌 幻鬼(ia4931
30歳・男・サ
雲母(ia6295
20歳・女・陰
長谷部 円秀 (ib4529
24歳・男・泰
破軍(ib8103
19歳・男・サ
月雲 左京(ib8108
18歳・女・サ
クレア・レインフィード(ib8703
16歳・女・ジ
ヒビキ(ib9576
13歳・男・シ
吉祥 紅緒(ib9962
16歳・男・武


■リプレイ本文


 今回の作戦は単純。鬼を倒すことに固執せず、戦力の大半をつぎ込んで鬼の気を引く。
 そしてその間に、人質を救出するのだ。
 囮役は危険を承知で敵と相対する。そして救出役は、失敗が許されないという過酷な作戦だ。
 だが、やるしかない。敵は強敵なれど、開拓者の戦意は十分。
 残る不安材料は……敵がどれほど強く、そしてどのような力を持っているか。それだけだ。

「よろしくね円秀ちゃん。紅と一緒に頑張ろうねっ♪」
「……こちらこそよろしく」
 ぱたぱたと紅色の翼を動かしながら、吉祥 紅緒(ib9962)は長谷部 円秀(ib4529)に挨拶。
 2人は六腕を持つ女鬼、黒六華を引きつける役だ。
 長谷部は歴戦の拳士だ。だが一方の吉祥は、今回が初依頼だという。
「うぅう……円秀ちゃんはとっても強そうだからすっごい心強いけど……緊張するーっ」
 はわわーと身を震わせる吉祥だが、
「でも、紅が頑張らなくっちゃ! ……それで作戦とか、あるのかな?」
 天真爛漫に見える吉祥にも背負う物があるようで、決意も新たに彼はそう長谷部に尋ねるのだった。
「そうですね。私は近接戦に持ち込む予定ですが、そこで狙いたいことがあります」
「狙いたいこと?」
「ええ、黒六華の六腕が厄介なので間接破壊を狙ってみるつもりです……援護を頼めますか?」
「うん、もちろん!」

 一方錆鎧を見据えて、人一倍元気な少年が1人。
「鬼……修羅としてその存在を認める訳にはいかない。それだけで、闘う理由には十分だよ!」
 錆鎧担当のヒビキ(ib9576)はそういって2本の槍を手にくわっと気炎を上げていた。
 だが、そんなヒビキを心配げに、もしくは皮肉っぽく見守る2人の仲間が。
「ヒビキ様、鬼は鬼、わたくしたちと違うとて、種族という壁だけではなく根本的に違うのでございます」
「わ、分かってるよ!」
「……くれぐれも、油断はせず、深追いはしないで下さいませ」
「大丈夫、深追いはしないからさ」
 ヒビキに、心配そうに話しかけたは月雲 左京(ib8108)だ。
 左京は同じ修羅で、しかも同じ小隊の仲間であるヒビキが心配なようである。
 そしてもう一人。同族で同じ小隊の仲間がいるのだが。
「ふん、何時かの合戦の時のように精々殴り倒されないことだな……」
 微かに口の端をつり上げて、皮肉たっぷりに言う破軍(ib8103)。
「あのときの二の舞は御免だから気をつけるよ。おいらだって、やれるっ!」
 そう意気込むヒビキであった。

 そして、敵を見据えてただ淡々と佇む二人が。
「雲母、ヘマするなよ?」
「……ふん、あたりまえだ」
 月酌 幻鬼(ia4931)の言葉に呟く雲母(ia6295)。
 馴れ合わない二人は、ただ淡々と戦いの準備を整えて。
 そして全員の準備がいよいよ揃い、一同は無言でそれぞれの配置につくのだった。
「……強さ、武、ねぇ……。なんとまぁ酔狂なことさ。そんなのがいつまでもまかり通る世でも無いのにさ」
 そう呟くのは最後の一人、クレア・レインフィード(ib8703)だ。
 彼女の役割は左京と共に人質を救出することだ。
 失敗は許されない重要な役割。全員が成すべき事を為さねば成功はおぼつかないだろう。
 だが、彼女には力みも衒いもない。
「ま、一つ楽をさせてもらうよ」
 あくまで飄々と、左京すら盾にすると嘯いて戦場にたつのだった。
 彼女だけでは無い。他の開拓者たちは物怖じもせずに鬼へと戦いを挑いでいた。
 何故か? それがこれこそが開拓者の仕事であり、彼らしか出来ないことだからだろう。
 そして、静かに闘いが始まった。


 まず距離を詰めたのは、3匹の鬼と相対する3人の前衛たちだ。
「黒鬼、参上だ」
 言葉少なに錆鎧の前に立つ月酌は、長巻を低く構えて。
 敵を前に舌舐めずりせんばかりのこの男。まさに戦鬼であった。
 そしてそのまま初撃は地断撃。長巻が地を擦り衝撃波を放った。

「……推して参ります」
 驚異的な加速は、泰拳士の瞬脚によってのみ成せるものだ。
 長谷部はまさに風のように黒六華へと接近すると流れるような連撃を放つ。
 彼が目指すのは拳の頂。技を真似る鬼如きに遅れをとるわけにはならないのだ。

 真紅の刀身を持つ霊剣を手に、修羅が一人。赫牙の眼前へと姿を表した。
「来たか、開拓者……お前は強いのか?」
 名の通り、赤い牙の生えた口を笑みの形に歪めて赫牙が問うた。対する破軍はただ静かに構えて、
「どうかな……確かめりゃいいだろう」
「それもそうだな。なら遠慮無く試させて貰おうか……んん? お前の構え……見覚えがあるな」
 そこで破軍はふと、師から聞いたある鬼の話を思い出す。
「……なるほど。手前ェは先代が逃した奴か……面白い。ここで引導を渡してやろう」
「カハハハ! お前は奴の弟子か! ああ、アイツぁ強かった……ならお前も強いんだろうな!」
 対する赫牙も、覚えがあったようだ。楽しそうに笑うと偃月刀を振りかぶり。
「……御託はこれぐらいでいいよな! さぁ、やろうぜぇ!!」
 轟、と吼えると背後の人質のことも気にせずに襲いかかってくるのだった。


 巨躯の月酌は、その体と見合う大ぶりの長巻を振るって錆鎧に肉薄した。
 全身錆びた鎧の錆鎧と、体格はほぼ同じ。獲物の長さではこちらが上だ。
 初撃の地断撃。それを錆鎧は同じ地断撃で迎撃した。
 やはりこの鬼たちは、開拓者の技を真似ている。
 だが、さすがに本家の技のほうが精度、威力共に優れていたのだろう。
 すぐに追撃できた月酌に対し、錆鎧は体勢を崩していた。
 ならば攻め時。肉薄した月酌は長巻を振るって真っ向から切り下ろす。
 受ける錆鎧、その錆びた鎧の表面を刃が滑り火花を散らし、耳障りな音を立てる。
 だが、それを気にする月酌では無い。さらに踏み込んで払い抜け。
 一気呵成に攻める月酌であった。
 そしてそれを後方から援護するのはヒビキだ。
「まさか、正々堂々勝負しろ、なんて言わないよね?」
 払い抜けを受けつつ反撃しようとする錆鎧に対して水遁の一撃だ。
 錆鎧は体勢を崩して攻撃は空振り。これならば追撃できるとヒビキも踏み込む。
 彼の獲物は槍だ。その歩先が錆鎧の鎧の隙間を縫って突き刺さった。
 同時に、錆鎧の刀の一撃をがっちり鎧で受け止めながらも月酌の一撃が錆鎧の肩口に食い込んだ。
 だが、次の瞬間2人は違和感に気付く。
 面頬に覆われて表情の見えない錆鎧。だがこの鬼は避けようとしなかった。
 攻撃を『敢えて』食らったのだ。刃が食い込み、血がしぶいた……否、飛び散ったのは血ではない。
 嫌な気配を感じ、それを回避するヒビキ。一方、月酌はその一滴を浴び、嫌な匂いと共に肌が焼ける。
「……酸、か」
 武器にまだ悪影響は無いようだが、このまま攻撃を続ければ……。

「黒六華ちゃんのお相手は紅達がしてあげるっ♪ ……女の子って聞いてたけど紅の方がずぅぅっと可愛いし」
 んべー、と舌を出しながら、足場の悪さを物ともしない天狗駆で吉祥は長谷部の後を追いかけた。
 瞬脚で肉薄した長谷部は、次々に拳や蹴りで黒六華を追撃している。
 その黒六華は、とびすさり距離をとろうとしながら手に何かを構えた。
 6本の手にそれぞれ不格好な苦無を構えたのだ。
 身軽に飛びすさった黒六華はそれを一斉に投擲。
 だが、歴戦の泰拳士の長谷部。ある物は拳で払い、そして大半を避けて全て回避。
 そして長谷部が前にいれば、吉祥にも余裕がでるもので。
「数撃ちゃ当たるってやつ? 下手っぴだねぇ」
 挑発しながら、霊戟破で強化した独鈷杵の一撃で苦無を払って。
 そしてその間隙を縫って長谷部が一気に間合いを詰めた。
 狙い通り、腕をとって関節を破壊する投げ……を黒六華はこらえた。
 関節をきめようとしたときに、体捌きで投げに逆らわずに動き、威力を殺したのだ。
 その動きは、長谷部と同じ、泰拳士の動きであった。
「泰拳士の技も真似るのですか……ならばその技、業を持って破りましょう」
 ぴたりと構える長谷部を前に、6本の腕で泰拳士の構えをとる黒六華。
「……真の業とは単なる技術ではないのでね」
 さらに苛烈な打ち合いは、長期戦の様相を呈して。
 そのすきに、ちらりと吉祥は他の戦いの行方に視線を向けるのだった。

「ある意味では決別だな、甘ったるい私へのな」
 赫牙を見据え、後方から援護するのは雲母。隻腕で手裏剣を投擲し、赫牙の隙を作ろうと狙っていた。
 だが、さすが赫牙は上級に属するアヤカシだけあるようだ。
 手裏剣の攻撃を物ともせずに弾き、時には偃月刀で受け止めて、そのまま破軍と切り結ぶ。
 得物を振るう腕もなかなかするどく、破軍はその一撃を受けじりじりと後退していた。
 もちろん、これは赫牙を引きつけるための策だ。
 だが赫牙が強敵なのは事実。どこかでこの流れを変えなければ、押し切られかねない。
 そこで、破軍は闘争心の赴くまま、一気呵成に攻めに転じた。
 受けに回る赫牙、両者火花を散らして打ち合うが、破軍の傷が増えていく。
 わずかに動きが鈍る破軍、そこで反撃に転じる赫牙。大ぶりの一撃だ。
「甘いな……」
 それを待っていた破軍、それを受け流して焔陰で反撃。だがこれもあくまで誘いだった。
 焔陰を打ち込み、即座に離れる破軍。
 すると呼応して、背後から横に移動していた雲母が隻腕に符を張りつけ、大技を放った。
 高位の陰陽師である雲母ですら二回放つのが限界という術、混沌の使い魔だ。
 正体不明の肉塊が赫牙の元へ殺到するのだが、その瞬間、赫牙の鎧の鬼面がぎょろりと目を動かした。
「チッ……案の定か……」
 常に警戒していた破軍はさらに跳びすさった。
 何か隠し球があるに違いないと警戒していたからこそ反応できたのだ。
 どうやら、赫牙の鎧は単なる鎧では無い。鎧の形をしたアヤカシなのだ。
 その鎧の鬼面が口から瘴気を一気に吐き出して、混沌の使い魔にぶち当てる。
 瘴気が吹き荒れ、それが一気に雲母と破軍の体を嘖む。そして次の瞬間、赫牙が攻めに転じた。
 破軍は血を流しながら剣を掲げ、偃月刀の一撃を受け止めて。
 そして雲母は理を使ってさらなる瘴気の波を回避し、手裏剣で破軍を援護する。
 鬼3匹との戦いは、どれも一筋縄ではいかないようで、開拓者たちはじりじりと押されるのであった。

 だが、それこそが狙い通りだった。
 大鎧を身につけた小柄な影、左京が死角から一気に駆け抜け、人質の元へ。
 たんと軽く飛び上がり、刀を一閃。人質が落下する。
 力なく落ちてくる人質2人の体、それを受け止めたのはジプシーの鞭の妙技だった。
 完全に意識が無いらしい女性開拓者を引き寄せたのは、クレアのマノラティ。
 それにようやく気付く鬼たち。錆鎧は動かず、反応したのは黒六華と赫牙の鎧だった。
 長谷部と相対しながら、二つだけ苦無を投擲する黒六華。
 同時に赫牙の鎧が瘴気の弾丸を放つ。
 狙いは、意識があるようだがまだ動けないもう一人の人質だ。
 クレアは彼に向かって声をはりあげた。
「死にたくなけりゃ、立ちな!」
 クレア自身は、意識の無い人質を鞭で絡め取り抱えて、すでに逃走を開始。
 遅れてもう一人の人質はなんとか立ち上がり、ふらつきながらもそれを追う。
 そこに飛来する苦無と瘴気の弾丸。だがそれを受け止めたのは左京だ。
 鎧で苦無を受け、焔陰の刃で瘴気の弾丸を斬る!
 もちろん全ては止められない、だが人質への攻撃は防いだようだ。
 その間隙に、クレアと人質たちは距離を稼ぐ。
 逡巡する鬼たち。人質を追うか、立ちはだかる左京を狙うか、目の前の開拓者を討つか。
 その一瞬の隙で十分だった。
「……おやおや、戦場で余所見は御法度じゃないのかい? そっちはそっちでよろしくやってくれ」
 逃げるクレアの捨て台詞の通り、開拓者は一気に反撃した。
 だが、その反撃は敵を倒すためでは無い。逃げる隙を産むためだ。

「黒六華ちゃん、敵に背を向けちゃったら……死んじゃうんだよ?」
 黒六華が左京に攻撃をしたその瞬間、吉祥は苦無を投擲。
 綺麗な緋色の翼も幾つか傷を受けているが、吉祥は果敢に攻めの一手だ。
 もちろん倒せるとは思って居ない。だが十分な隙が生まれたようで。
 そこに滑り込む長谷部。足を狙った一撃で隙を作ってからの絶破昇竜脚。
 頭狙いの一撃を黒六華は六腕全てで防御する。
 しかし完璧な角度で決まった一撃は防げず後方に大きくはじき飛ばされ転がった。
 反撃はそこまで、長谷部と吉祥は一気に距離をとり戦線離脱。
「さて、あまり夢中にじゃれつき、深追いをするものではございませぬよ?」
 左京は、錆鎧と赫牙の中間へ。背後から圧力をかけて、時を稼ぐためだ。
 赫牙の鎧が瘴気の玉を全方位に放つ。それを受けるものの左京はひるまない。
 錆鎧は腐食性の体液を飛ばし、月酌とヒビキを追撃。
 だがヒビキは武器を弓に持ち替えて、反撃し月酌はその体液を食らいつつも物ともせずに逃走開始。
 なんと、弓を構えるヒビキをそのままひっつかんで後方に戦線離脱したのだ。
 同時に左京も距離を取り始める。すでに役割は果たした。
 雲母は瞬脚を使って一気に戦線離脱。瘴気の吐息が雲母の居た場所をむなしく直撃する。
 そして破軍はその隙を活かし、地断撃で土煙を巻き上げ煙幕にする。
 其れに乗じて、距離をとる破軍と左京。正反対の方向に駆け出し、一気に戦線離脱。
 二兎追う者は一兎も得ず、その格言の通りに赫牙は左京と破軍・雲母の両方を逃がしたのだ。
 一瞬の早業だった。
 土煙が晴れれば、そこには開拓者の姿はひとつもなかった。
 ようやっと蹴り飛ばされた黒六華は起き上がり、錆鎧もぼたぼたと体液をこぼしながら周囲を見回す。
 えぐれた地形、血しぶきの痕、刃や技の痕跡が方々に残る荒野に3匹の鬼が残されていた。
 血の跡を追うか? 否、おそらくすぐに奴らは傷を手当てし距離をとっているだろう。
 余り素早くない赫牙は、そこであっさりと追うのを諦めるのだった。
「……なかなかやるようだが……まだまだ足りねぇなぁ……」
 その言葉に黒六華と錆鎧も頷いて。そして3匹の鬼は行方を眩ませるのだった。

「……たかが鬼一匹、上級だろうが中級だろうが目の前の敵も殲滅できないのか」
 戦いを終えて、無事目的は果たせたのだが、やはり内心忸怩たる想いがあるのだろう。
 雲母は、小さく呟いて煙管を吹かしていた。
 一同、かなりの怪我を追ったが、幸い癒やしの術を使える吉祥が居たので大事には至らなかったようで。
「皆大丈夫?怪我した人は紅が治してあげるよーっ♪」
 まだまだ慣れないためか、完治には至らなかったようだが、はしゃぐ吉祥に治療されて。
「……いやぁ、アタイがいなけりゃアンタ達死んでたね?」
 人質からクレアが礼金をせしめていたようだが、それはともかく依頼は成功したのだった。
 鬼たちを倒すには至らなかったが、それはまた別の機会があるだろう。