【混夢】銀河の守護者
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/08/31 19:19



■オープニング本文

 ※このシナリオは【混夢】IFシナリオです。
 オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。

 地球、いやこの銀河は崩壊の危機に瀕していた。
 迫り来る脅威、それは究極のアヤカシだ。
 目的も、野望も、それどころか意志があるかも怪しい存在。
 すべての平行宇宙を滅ぼし、無をもたらすアヤカシ【虚夢】(キョム)。
 これを止められるのは、貴方たちだけだ。

 貴方はヒーローだ。
 偶然力を手に入れて、人々を守るためにその力を使う良き隣人。
 影ながら人々と守るために、汚名を恐れず闘う闇の騎士。
 天才的な頭脳と超弩級の経済力で世界を救う科学者。
 兵士として、国だけではなく世界を守るために闘う超人。
 実験の結果、望まぬ力を手に入れて戦場を巡り続ける戦士。
 ……どんなヒーローなのかはそれぞれ自由だ。

 貴方はヴィランだ。
 世界征服の野望を企む鉄仮面の科学者。
 狂気と笑いを振りまく道化師の犯罪王。
 数多の組織を操るカリスマ溢れる黒幕。
 脅威の魔術を身につけた悪の魔法使い。
 改造で驚異的な知能を手に入れたミュータント。
 ……どんなヴィランなのかはそれぞれ自由だ。

 普段からこの世界での覇権を巡り戦いを続けてきた貴方たち。
 戦い、時には協力してきた貴方たちは、迫り来る危機に対して結束しなければならない。
 究極のアヤカシ【虚夢】を止めるためには、すべての力が必要なのだ。

 さて、どうする?


■参加者一覧
レビィ・JS(ib2821
22歳・女・泰
ヴェルナー・ガーランド(ib5424
24歳・男・砲
黒木 桜(ib6086
15歳・女・巫
羽紫 稚空(ib6914
18歳・男・志
ライナー・ゼロ・バルセ(ib7783
17歳・男・騎
神龍 氷魔 (ib8045
17歳・男・泰
陽葉 裕一(ib9865
17歳・男・陰
闇夜 紅魔(ib9879
17歳・男・泰


■リプレイ本文

●発端
 現代、天儀の街の片隅で警官隊がものものしく包囲を敷いているそのどまん中。
「ほぉ〜、今回はえらく沢山集まったな」
 ぐるりと周りを見回す青年。どこにでも居そうなその青年、だが目を引くのはその頭から生えた角だ。
 白銀の神からにょきっと生えた2本の角、それは修羅の証だ。
 白い髪の修羅の名前は、神龍 氷魔 (ib8045)だ。そして彼の隣にはもう一人、
「まったくっすね。毎度毎度、敵わないってのに……」
 修羅の青年と並んで立つ青年。彼には角は見当たらない。
 彼は人と修羅、つまりは鬼族の血を引くハーフなのだ。名は闇夜 紅魔(ib9879)。
 白と赤、神と闇、そして共に魔の名を持った2人の青年は、総勢数百人の警官隊に包囲されていた。
「……撃てぇっ!!」
 警官隊の号令一下、数多の火器が銃弾を吐き出す!
 だが、それをまるでちょっとした風物詩、とでもいうように眺める2人。
 そのまま2人は構えると、なんとそれぞれが籠手でもって銃弾の雨をすべて打ち払ってしまうのだった。
 神龍と闇夜の2人は、この世界では悪と目される存在であった。
 過去に何があったのか分からないが、常人を遙かに超えるその力だけで世界は彼らを異分子と扱うのだ。
 そんな2人を前に、一切の攻撃が通用しない警官隊。
 だが、次の瞬間2人の悪の拳士だけが動き出す。気付いたのが彼ら2人だけだったのだ
 じわり。闇がにじむようにして空に裂け目が出来て、そこから巨大な蟲が落ちてくる。
 それを、神龍と闇夜が迎撃。地面が凹むほどの踏み込みで飛び上がると、強烈な拳を放ってはじき飛ばす!
 吹っ飛ぶ巨大蟲。それが転がり近くの車を粉砕する。だが空の裂け目からは次々と巨大蟲が降り注ぐ。
「……ちぃっ! 早く逃げろ!」
「はっ、この俺に喧嘩を売る気か? 後悔するんじゃねぇぞ!!」
 神龍は警官隊に逃げるように促し、闇夜は巨大蟲の群れに飛びかかる。
 如何に悪や異分子だとされてもこの2人のヴィラン、人の心までは失っていないようだ。
 そして戦い始める2人のヴィラン。この戦いが、戦いの始まりだった。

 その日も、がらんとした事務所の机にピザの箱を置いて、風呂上がりの頭をがしがしとふきつつ。
「………暇だな」
 アヤカシも泣き出す妖狩人、レビィ・JS(ib2821)はそう呟いた。
 だが、次の瞬間部屋に空間の裂け目が出来、怪しげな蟲人間が現れた。
「あー、仕事の依頼なら、もう店じまいだよ」
 風呂上がりの薄着で、しれっとそう告げるレビィ。
 もちろん次の瞬間、蟲人間たちが襲いかかってくる!
 ひらりと避けるレビィ。机が粉砕され、ピザが宙を舞う。
 だがそれを意に介さず、舞い上がった物の中から、コートを片手につかむと一回転。
 蟲たちの顎や腕の一撃を蹴りでいなして彼女は空中に飛び上がるとコートを羽織って。
「これは基本動作の一つだけど……シビれるでしょ?」
 にやりと笑うレビィ。そのまま彼女はコートの懐から拳銃を引き抜くと、一息で敵を全員撃ち抜いた。
 ちりんちりんと薬莢の落ちる音、どさりと崩れ落ちる敵。そしてその敵が黒い霧となって。
 そこに丁度落ちてきたピザの箱をぱしっと受け止めて、レビィは最後の一切れをひょいと口に放り込むと。
「……なんか厄介ごとの気配だね。とりあえず、なにか知ってそうな奴の所にでも行こうか」
 そういって半壊した事務所から出て行くのだった。

 貫通のヴェルナーと呼ばれる男が居た。
 白フードの死神、魔弾の射手……ヴェルナー・ガーランド(ib5424)はこの世界に名を届かせるヴィランだ。
 そんな彼がふらりと廃墟を歩いていれば、いつの間にか周囲に気配が。
 周囲に目を向けるヴェルナー、彼は持ち前の透視能力で周囲を見回せば、そこは敵だらけだ。
 巨大な蟲型の化け物の群れ、だがヴェルナーはそれに臆せずに、
「……ふん、何者か知らないが、俺の邪魔をするつもりか?」
 そう言って愛用のボルトアクションライフルを取り出した。
 古びた旧式の銃。だがそれをヴェルナーが撃てば、銃弾は壁の向こうの敵を一気に十数体も貫く!
 貫通のヴェルナー、その名の通り彼が放つあらゆる攻撃は、障害物を『貫通』するのだ。
「どうやら穴だらけになりたいらしいな」
 ヴェルナーは貫通弾を周囲に放ち、一気に蟲の群れを殲滅していく。
 そこにやってきたのは、この凄まじい破壊に気付いたレビィだ。
 風のように地面を走る勢いのまま、ひらりと飛び上がると巨大蟲を両断!
「ふん、ようやく現れたか! ……遅かったな、ようやくお出ましか?」
「うん、髪を乾かすのに手間取ってね」
 ヴェルナーの言葉にしれっと返すレビィ。
 そんなとき丁度対峙する両者の背後から、それぞれに巨大蟲が飛びかかる!
 だが、慌てず騒がずレビィは背中に背負った長剣を投擲、ヴェルナーの背後の蟲を粉砕。
 対するヴェルナー、拳銃を引き抜くと正確な射撃でレビィを避けて、その背後の蟲を貫通。
「もう少し後ろに気を付けることだな?」
「お互い様だけどね」
 そういって笑うヒーローとヴィラン。だが2人はここでやっと違和感に気付く。
 蟲は2人ともを敵として襲いかかってきたのだ。
「……ふむ、とするとお前らではないようだな。俺はこんなモノは知らんぞ?」
「そうみたいだね。とするとこいつら何者なんだろう?」
 ヴェルナーとレビィが首を傾げれば、そこに新たに2人の人物があらわれた。
「あんたが貫通のヴェルナーか……力を貸して貰いたい!」
 2本の長剣を手にした羽紫 稚空(ib6914)とライナー・ゼロ・バルセ(ib7783)だ。
 2人は、どうやらヴェルナーを捜していたようで。
 首傾げるヴェルナーとレビィを前に、羽紫は説明を始めるのだった。

●囚われの巫女へ
 アヤカシ虚夢。それを討つ使命を帯びた巫女がいた。
 彼女の名は黒木 桜(ib6086)、すべてを無に帰そうとする虚夢を滅ぼすのが彼女の役目だ。
 だが、彼女は力はあるものの闘う術を持たない巫女である。
 その彼女を護るのが、羽紫だ。2人は恋仲でもある。
 心底信頼出来る2人。だが、そんな2人を引き裂く事件が起きた。
 虚夢が現れたという報告を受けて、その現場に急行する2人。
「……いいか、桜。俺のそばから離れるなよ」
「はい、稚空。頼りにしてますね」
 2本の長剣を振るい、虚夢の手下である蟲型のアヤカシを滅ぼしていく羽紫。
 だが、ほとんどを滅ぼしたその隙を突いて、突然空間が裂けた。
「……ん? 何か来る?!」
 羽紫は気付いたのだが一瞬遅かった。裂け目から現れた巨大な触手の群れが桜を捉えて消えたのだ。
「なっ? ……ふざけるな!おい、こらっ、桜をどうするつもりだ!」
 吼える羽紫。だが愛する桜は空間の壁の向こうだ。
 これを突破するにはそれ相応の力を持った助けが必要となる。
 だが、そこで羽紫は思い出す。あらゆるモノを貫通する力を持った能力者のことを。
「……手助けを得られると良いんだけどな……でも、それしか方法が無いんだ!」
 そういって、羽紫はその能力者、「貫通のヴェルナー」を探すことにした。
「待ってろよ、桜! ぜってぇ助け出してみせるからな!」

 そういうわけで、羽紫はヴェルナーのもとにやってきたのだ。
 彼を助ける相棒はライナー。熱血の剣士同士気が合うのか、羽紫を手伝ってここまできたようで。
 そして、羽紫はやっと貫通のヴェルナーを見つけ出して今に至るというわけだ。
「頼む! このアヤカシ、虚夢の元に赴き桜を助けるためにはお前の助けが必要なんだ!」
 そういって頭を下げる羽紫。
 だが、それを前にぎりと歯がみするヴェルナー。
 それもそのはずだ。彼は、彼らヒーローたちとは袂を分かつヴィランである。
 だが、しかし。
「……いいだろう。今回だけは協力してやろう」
「ほ、本当か!!」
「いいか、俺は消してお前たちに荷担するのでも無ければ、馴れ合うわけでも無いぞ。それにだ……」
「それに?」
「私の力は見えている対象にしか働かない。どうやって相手の所在や空間の綻びを見つけるのだ?」
 ヴェルナーの言葉にぐっと言葉に詰まる羽紫。だが、それに対して応えたのはライナーだった。
「……ああ、その点は大丈夫だ。瘴気を操る術に長けたヒーローが1人、心当たりがある」
 こうして、最後のヒーロー。陽葉 裕一(ib9865)が招集された。
「俺の力で役に立てるなら……」
 そう言って、女性と見まごうようなその青年は符を取り出した。
 陰陽師の力は、アヤカシと同じく瘴気を扱うモノだ。
 ヒーローでありながら、その忌まわしき力を扱う陽葉。だが彼が今回の作戦の要である。
 だが、集ったのはヒーローだけでは無かった。
 敵もまた、自分の領域を侵そうとする相手を感じとり、その対策として大量の手下を放ったのだ。
「いやー、ヘラルドもこれだけいると壮観だね」
 ビルの屋上に立って、眼下を眺めるレビィ。
 住民が避難した無人のビル街は、虚夢の先触れという意味のヘラルドであふれかえっていた。
 そこに新手がやってきた。
「……ここでもうじき、こいつらのボスが出るって聞いたんだけどな」
「ああ、喧嘩を売ってきたんだ。一発殴ってやらなくちゃな」
 魔の名を持つ2人の拳士。神龍と闇夜である。
 ヴィランの2人は、馴れ合う気も無いが、どうやら奇しくも虚夢を敵として見なしているようだ。
 共同戦線を張ることになったヒーローとヴィラン。
 いよいよ、陽葉とヴェルナーの手によって反撃の一手が放たれようとしていた。

●反撃
 太極印が背に描かれたコート姿で空を見上げる陽葉。
 こうしてみれば、現代風の格好をした単なる青年にしか見えない。
 だが、その手にあるのは陰陽師の符。そして背中にあるのは霊剣だ。
 彼はその霊剣を抜き放つと構えを取る。すると手にした符が独りでに刀身に張り付く。
 さらに、彼の足下にするすると不思議な印が広がっていき、そのまま陽葉は霊剣を振るった。
 霊剣に張り付いていた符の数々が飛び出し、何も無い空中に張り付く符。
 いや、一瞬前までは何も無かったが、符がその正体を明らかにした。
 それは空間の歪みだ。虚夢が作り出した空間の揺らぎを符が捉えたのである。
 そして彼はそのままヴェルナーを見る。
「『見えている』のならば、問題ない。伊達や酔狂で『貫通』を名乗っているわけでは無いことを……」
 ヴェルナーは銃を構えると、符が作り出した揺らぎを見据え。
「俺が名前の本当の力、見せてやろう!」
 彼は能力を全開にしてただ一発の銃弾を放った。
 貫通の力。それはただ弾丸の威力を強化するだけではない。
 あらゆる物理法則を飛び越え、貫通という結果をもたらす一種の概念能力なのだ。
 あらゆるものを貫通するその力。それが空間の裂け目を貫く。
 すると、そこにこの世界と虚夢が居る異次元をつなぐ門が出来たのだ。
「今行くぞ、桜!!」
 羽紫が飛び出し、他の仲間も次々に続く。
「それじゃ、続こう。クールにいこうか!」
 こうしていよいよ彼らの反撃が始まるのだった。

「……あの、私を捕まえてもすぐに仲間が来て、きっとあなたを退治してしまいますよ?」
 黒木桜は、蟲型の檻の中に囚われていたが、何一つ心配していなかった。
 虚夢が彼女を捉えた理由は謎だ。力を危惧したのか、それともただ気に入っただけなのか。
 だが、そんなことは彼女にとってどうでも良かった。
 きっと愛する稚空は彼女のことを救い出してくれるに違いない。そう信じているからだ。
 そしてそれは現実になった。
「稚空、ここは俺にまかせて先に行け!」
「助かる! 任せたぞライナー」
 ライナーに背を任せ稚空は一目散に桜の元へ。
 それを邪魔しようとする蟲たち。だが、神龍らが迎え撃つ。
「とうとう敵の本拠地まで来たようだが、目的の奴はまだみたいだな。丁度良い、準備運動だ」
 鬼の力を全開にして、拳を振るう神龍。その一撃一撃がまるで大砲の弾丸並みの威力だ。
 ライナーと神龍の援護を受けて、とうとう稚空は桜の檻へとたどり着く。
 2本の長剣で道を切り開き、そのまま一気に檻を粉砕!
「大丈夫か? 桜! 怪我は?! なにか妙なことされてねぇか?」
「稚空……有難う御座います。大丈夫ですよ。それに私も戦いのお手伝いいたします!」
 助け出された桜は、そっと稚空に抱きつくと、そのまま笑みを浮べて強く宣言した。
「暖かな光よ 彼の者を包み込む癒しの光となれ 愛束花!」
 まず桜は仲間をすべて癒やした。そんな稚空と桜を見て、闇夜は小さくそっぽを向いていたり。
 どうやら恋愛ごとにはあまり耐性が無いようだ。
 そして、稚空を援護したライナーは。
「なんだよ、見せびらかせやがって……けどま、全員無事で良かったぜ。さて、反撃といこうか!」
 改めて、剣と銃を手に敵の群れに向き直るのであった

 周囲から無限に蟲アヤカシがわき出してくるが、本体の姿は無い。
 しかし、助け出された桜は、懐から水の入った容器を取り出しそれを稚空や仲間たちに渡す。
「これを周囲に……それで、虚夢を探し出します」
 その言葉を信じ、仲間たちが周囲に水をばらまいた。
 異次元に広がっていくわずかな水。それを桜は力ですべて氷にかえていく。
「……! 見つけました。清らかな水よ彼の者を縛る戒めの氷となれ、氷霊結!」
 桜の力で爆発的に氷のツタが広がる。すると異次元の奥底で虚夢の姿があらわになった。

 脈動する黒い霧の塊。不定形のその巨体がうごめきながら蟲アヤカシを吐き出し続けているのだ。
「……俺の大事な桜をさらったこと、後悔させてやる!」
 猛る羽紫、彼は怒りのままにまっすぐに突っ込む。その長剣はまるで嵐のように周囲を切り刻む。
「よっしゃ! 一気に行くぜ!」
 大剣を手にそれに続くライナー。次々に大技を繰り出して巨体を切りつけていく。
「紅魔、連携できるか?」
「ああ、問題ない……こいつにはしっかり落とし前を付けないとな!」
 神龍と闇夜は、連携して突貫。
 たかが拳の技といえども、鬼の力と超人の技。その一撃は空間を振るわせて敵を討つ。
「大層な悪役だな……でも好き勝手にはさせない」
 陽葉は霊剣を振るった。すると符が鎖のように虚夢を縛り付ける。
 そして最後はこの2人。
「この星の運命はあんな突然現れた様な輩に好きにさせるものではない」
 吼えるのはヴェルナー。並んで闘うヒーローとヴィランを見て彼は銃を構え放った。
「全ては我々ヴィランと、貴様らヒーローとで決着を付けるものだ! 違うか!」
 彼の弾丸は虚夢の装甲をぶち抜き、消滅させる。
 そして、赤い影が飛び込んだ。
 仲間たちの連携の中、空中を蹴りくるりとその赤いコートを翻すレビィ。
「………これで終わり。JACKPOT!」
 二丁拳銃を構えたレビィ。彼女が虚夢の中心にとどめの一撃をたたき込む。
 8人の超人の攻撃を受け、ついに虚夢は滅ぶのだった。