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■オープニング本文 開拓者に辛酸をなめさせられた犯罪者の数は多い。 ここにも、そんなケチな悪党が1人。 彼は、志体も無く悪知恵が働くだけ小悪党で、近々大きな盗みを働こうとしていた。 だが、彼が組もうと思っていた盗賊集団は開拓者によって壊滅。 孤立無援になったその小悪党は、日々開拓者を逆恨みするというわけである。 そんな小悪党、名を「蚊喰鳥の夕吾郎」(かくいどりのゆうごろう)という。 そいつはある日、開拓者に一泡吹かせる良い考えを思いついた。 奴らは強く、仲間意識が強い。ならば、同士討ちをさせればいいのでは! ということで小悪党の夕吾郎は、身分を偽って二つの依頼を出すのだった。 依頼その1 開拓者4名を募集。悪党たちを撃破して貰いたい。 自分は彼らに脅されて手伝いをさせられていたので、居場所を知っている。 場所は、とある小屋で悪党たちはいまそこに隠れている。 なお彼らは開拓者を警戒しているので、変装して依頼に出発して欲しい。 依頼その2 開拓者4名を募集。変装し小屋に潜んでニセ開拓者を迎え撃って欲しい。 自分は商人なのだが最近、店にニセ開拓者たちが居座ってしまった。 やつらを退治して欲しいので、賊が小屋に居着いていると彼らを謀って連れてくる。 賊の振りをして変装し小屋に隠れ潜んで、それを迎え撃って倒してくれ。 それぞれ、一般人や商人の振りをして、別の日・別の受付で依頼を出す夕吾郎。 無事依頼は受理されてしまったようだ。何も知らない貴方たちは、この依頼を受けてしまった。 さて、どうなるのだろう? |
■参加者一覧
川那辺 由愛(ia0068)
24歳・女・陰
喪越(ia1670)
33歳・男・陰
各務原 義視(ia4917)
19歳・男・陰
アーシャ・エルダー(ib0054)
20歳・女・騎
郭 雪華(ib5506)
20歳・女・砲
アーニー・フェイト(ib5822)
15歳・女・シ
霧咲 ネム(ib7870)
18歳・女・弓
アナ・ダールストレーム(ib8823)
35歳・女・志 |
■リプレイ本文 ●怪しげな依頼だけど 「どうもきな臭いね、この依頼……変装しろと言う時点で…何か裏がありそうな気がするけど」 首を傾げ郭 雪華(ib5506)はそう仲間たちに語りかけた。 彼女をはじめ4名の開拓者は、小屋に潜む悪党を討つために待機中。 雪華のそんな言葉に、確かにね、川那辺 由愛(ia0068)も頷いて、 「確かにね。変装しろ、とか注文が多いし……ま、あたしらは開拓者だからね〜受けた依頼は完遂しないと」 「……何かあれば、その時はその時、かな?」 「そうね。相手が外道なら、仕留めるだけだし、何か裏があれば……それはその時よ」 そう頷く2人であった。 ……で、残りの2人はというと。 「ネム〜、アヤカシさんなのだぞ〜」 えへへと笑うドクロ、のきぐるみ姿のネム(ib7870)。 「オー。ワタシ天儀の言葉ワッカリマッセーン! ……ってな感じだな」 ジルベリアの聖職者風、しかしもじゃもじゃ頭やら言動のせいで全くそう見えない喪越(ia1670)。 そんな珍奇、もとい怪奇、でもなく、とにかくなんというかへんちくりんな2人。 「うーむ、路銀稼ぎにハッスルぅ〜、と思ったら意外や意外。俺サマの美女センサーが反応してるぜ!」 にまっと仲間を見る喪越。確かに両手に花の羨ましい状況だ。 変装はしていても、川那辺と雪華は美人。それをうっとり眺める喪越だが、 「美人〜? ネムも美人さん〜? 美人の骸骨さんなのだ〜」 「う、うーん……どこから見ても普通にドクロだな〜……いや、俺サマのセンサーに間違いは無い、ハズ!」 美人だよーと褒める喪越に、わーいと喜ぶドクロなネム。 なんというか緊張感はゼロである。しかしそろそろ作戦開始の時間だ。 そうなれば珍奇怪奇で暢気な2人も集中したようで。 「さって、そろそろか。ま、顔見られずに仕事終わらせられるならそれに越したことはねぇしな」 しれっと火炎獣での小屋ごと丸焼きを提案する喪越に。 「悪い奴は〜、退治なの〜」 のほほーんとクロスボウを構えるネム。こちらも問答無用で小屋を奇襲する予定。 銃を構える雪華に、人魂を飛ばして索敵をする川那辺と準備は整ったようだ。 「こうやって見えちゃうから、そこまで精巧にやっても仕方ないか……だませたら幸運位に思っておかないと」 少し前、小屋の中には等身大の藁人形を置いて、擬装する各務原 義視(ia4917)が。 彼は、慣れない女装姿、その後地縛霊を小屋の周囲に設置すると、こっそり小屋を離れた。 小屋の周囲には、仲間の開拓者が。彼らはこの小屋におびき寄せられる悪党を討てという依頼を受けたのだ。 「しっかし、依頼人はだいじょーぶかねー? ニセ開拓者に関して、変な反応してたしなあ」 まっ、いーけど、と呟くのはアーニー・フェイト(ib5822)。 黒猫の面を装備した彼女は、手の中の望遠鏡をくるくるともてあそびながらそんなことを呟いたり。 「変な反応、ですか?」 同じく望遠鏡を手に周囲をうかがっていたアーシャ・エルダー(ib0054)が聞けば、 「うん。なんか、適当というか嘘をついてるような感じ……ま、なんか変なことがあれば、後でとっちめるさ」 にししと笑いながらそう請け負うアーニー。 「そう、ですね。それに偽開拓者だなんて、ろくでもないのに違いないのです」 きっぱりとアーシャも言い切るのだった。 小屋を囮に身を隠す一同。そうして暫く待っていれば、小屋の様子をうかがうように飛ぶ小鳥が1羽。 どうやら、陰陽師による人魂だ。ならばもうすでに近くまでニセ開拓者は来ているはず。 「……来たね、あっちだ」 静かにアナ・ダールストレーム(ib8823)が仲間たちに知らせれば、アーニーにアーシャが望遠鏡を向ける。 そこには、銃や符で武装した女性が2人、あと怪しげな格好のもじゃヘッドとドクロ風が。 とりあえず後者2人は気にしないことにしつつ、 「う〜ん、あの格好からすると……志体持ちかも?」 思わずアーシャがそう疑問を浮べた次の瞬間だった。 業火がほとばしり、強烈な矢と弾丸が小屋をぶち抜いた! ●とりあえず本気で抹殺 強引な攻撃とともに、襲撃側は一気に距離を詰めた。 燃えさかる小屋の壁を矢と弾丸がぶち抜いたことで、小屋の中の人影が崩れ落ちる。 燃えながらも反応もせずにぱたりと倒れる四つの人影。どれもが人形だ! ならば、敵は周囲に潜んでいるはず、即座に喪越とネム、雪華は周囲に狙いを変えた。 「引き籠りは〜、犯罪なの〜」 ネムの瞳に精霊力が集中する。弓術士の技・鷲の目で視力を高めたのだ。 その彼女の視線が周囲の木立を見据える。見えた、大柄な人影が1人。 同時に、相手も気付いた。小屋の炎に煽られて、こちらを機械弓で狙うまるごとスケルトン姿が見えたのだ。 「……ニセ開拓者にしては何というか、お粗末な……」 義視は符を取り出し、火輪を放とうとするのだが、その符を撃ち抜くネムの瞬速の矢! 姿形は珍奇だが、実力は本物だ。 「……お粗末でも、油断はできませんね」 即座に義視は木々の間に駆け込んで、機械弓使いから遮蔽を取る。 それを追いかけるネム。2人は、木々の間を駆け抜けながら、戦いを始めるのだった。 小屋の周囲に隠れていた開拓者たちのうち、2人はまっすぐに飛び出して、襲撃者を迎え撃った。 真紅のフランベルジュを手に、一気に雪華へと接近するアナ。 迎え撃つ雪華は銃撃で迎撃を試みるが、それを横踏で躱すアナ。 さらに接近、だが雪華はターゲットスコープでさらに命中力を強化。 こちらに向かってくるのは銀の髪を炎が煽る風になびかせる魔剣使いだ。 「……何か見覚えがあるような……? 他人の空似……?」 ふと、知り合いの姿を思い出すのだが、相手は敵だ。さらに狙撃の一撃。 だが、それをなんと魔剣使いのアナは、剣で受け止めて弾く! 的確に狙ったが故に受け止められた銃撃。狙撃手と魔剣使いはお互いの力量をそれだけで感じ取った。 「中々相手も強者のようね。……ニセとはいえ、よくやるじゃない。面白くなってきたわ」 戦いの興奮ににやりと笑みを浮べるとアナはさらに接近。 雪華は、その頭上の枝を単動作で撃ち抜いて、それを落下させて妨害。 降りかかってくる大きな枝、それをアナは五月雨の斬撃で細切れにする。 「あたしの剣技どうかしらっ」 接近するアナと、身を隠したり距離を保ちながら牽制する雪華。 2人は丁々発止の激戦を繰り広げるのだった。 もう1人、突撃してきたのは騎士だ。 「身を偽って人々を惑わす偽開拓者、帝国騎士の渾身の一撃をくらいなさ〜い!」 大剣を掲げ、突進してくるアーシャ。狙いはもじゃヘッド、もとい聖職者姿の喪越だ。 「うぉ! こっち来た!! ……しかーし、相手はたぶんおそらく美女だ! センサーがびんびんに……」 「なにをぶつくさ言ってますか! 覚悟っ!!」 だが、にやりとエロい、じゃなかった悪い笑みを浮べた喪越。放ったのは錆壊符だ。 武器や防具を破壊するその一撃。騎士相手には効果的な技だ! 「ふっふっふ、狙いはモチのロン………物騒な得物、ではなく乙女の柔肌隠した薄衣だ!」 違った。単にエロ目的だった。 だが、そんなことさっぱり聞いてないアーシャ。騎士の突進力で一気に距離を詰める。 「って、ちょっとタンマ!! 近い近い!」 「命まではとりません。騎士の情けです!」 そういって大剣を掲げるアーシャ。手加減を使用しているとはいえ、炎にぎらりと嵐の名を冠した大剣が輝く。 「いや、命とれちゃうってかもげちゃう! 結界呪符「黒」!!」 とっさに防御のため、喪越が発動したのは黒い壁を生じさせる結界呪符だ。 にょっきりと生える黒い壁。高い防御力があれば安心だ。 だが、それを前にアーシャはオーラドライブを発動。そして剣を構えると、斬斬斬斬斬斬斬斬っ!! ガンガンガンガンガンガンと、瘴気で出来た強力な壁を大剣が穿つ。 そしてその乱打であっという間に結界呪符は破壊されて、 「……ニセ開拓者にしてはなかなかやりますね。ですがそれもここまで。無駄な抵抗は止めなさい!」 「ええええ! あれ壊すのっ!? ただのセコい悪党退治にしちゃおかしかねぇかぁ!」 ぶうんと振るわれた大剣の一撃を辛くも回避しつつ、逃げ回る喪越。 ちりちりの髪の毛が時折斬り飛ばされつつも、珍奇な格好で命をかけて逃げ回る喪越であった。 三者三様の戦いが繰り広げられている中、最後の一組は静かな攻防となった。 闇に潜み機をうかがうのはアーニー。山猫を名乗る彼女にとって、闇は味方だ。 相手は由愛。援護をしようと思っていた仲間たちは散り散りになってしまった。 しかし、1人でも戦えないわけでは無い。まずは人魂を飛ばして索敵だ。 「……っ! 人魂が破壊されたわ……鞭の一撃ね。往生際が悪いわ」 木々の間を縫って飛ばした小鳥型の人魂をアーニーが鞭の一撃で破壊したのだ。 だが由愛も負けてはいない。幻影符を飛ばし幻でアーニーを近づけない。 このままではらちがあかない、そうしびれを切らしたのか、アーニーが接近して鞭を振りかざす。 そこに襲いかかる髑髏型の式。幻影符だ。それを回避しながら、アーニーは鞭で由愛の符を狙った。 辛くも回避する由愛、そのまま彼女は起死回生の毒蟲を放った! 毒を帯びた蟲型の式がアーニーに迫る。だがアーニーは回避しながら焙烙玉を投擲! 爆破で目くらましと回避。だが、その攻防で両者は気付いた。 依頼の割には、他の仲間たちもそうだが相手が強すぎるのだ。 「ニセ開拓者っつー割りにゃ強ぇじゃん。逃げちまうかなぁ……」 そう思いつつアーニーは超越聴覚を発動。そこで聞こえてきたのは由愛の呟きだ。 「どうにもおかしいわね。……いくら私たちが開拓者でも、情報が間違っていたら依頼は完遂出来ないわよ」 ……開拓者? アーニーは足を止めた。状況がやっと読めてきたのだ。 「……そーゆーことね。じゃ、とりあえず相手にこのこと伝えないと!」 そういって武器を収めて早駆で由愛に接近するアーニー。 彼女は黒猫の面を取ると由愛の前で戦意がないことを主張。武器を収めて手を振って。 すると由愛も何かおかしいことに気付いたのだろう。 符を収めると、相手が同じ開拓者であることに気付いたようだ。 「……此れは一体、如何したことかしら?」 「たぶん、依頼人にお互いだまされたみたい。……こっちもダマし返すってのはどう?」 にししと笑いながら言うアーニーに、ゆらりと怒りに瞳を燃え上がらせた由愛は頷いて。 2人は、仲間たちの元へと急ぐのだった。 同じ頃、やはりそれぞれの間違いに気付いたのは雪華とアナだった。 「……どこかで見たような銃捌きね」 アナは雪華を追い、その銃撃を回避しながら彼女の動きを見て取ってそう思った。 そこに狙撃の一撃、慌てて木々の間に身を隠して回避するアナだが、同時に雪華も違和感を感じていた。 剣を構える相手の動きに、見覚えがあるような気がして、ますますそれは確信めいて来たのだ。 長銃を構えなおし、周囲をうかがう雪華。その顔が小屋の炎に煽られて、ちらりと見えれば、 「……あら、誰かと思えば雪華さんじゃない」 「その声は、ダールストレーム殿?」 やっとお互いの存在に気付いた2人は顔見知りだった。慌てて謝罪する雪華、 「何か怪しいとは思っていたんだけど……本気で撃ち抜こうとしたのは事実だからね」 「大丈夫よ。怪我しなかったんだし」 そう応えるアナだが、丁度そこにアーニーと由愛の2人が。 勘違いに気付いた4名は、他の仲間たちも止めねばと動き出すのだった。 ●勘違いのまま、終わり? 木々の間で義視を追いかけるネム。接射で牽制してから機械弓を振りかざし、そのまま殴打! 「これで〜、とどめなの〜」 慌ててそれを彷徨う刃で受け止める義視。だがそこで義視はスケルトン姿の相手の口調に違和感を感じた。 相手は、知り合いだ! ならば戦いを止めることも出来るはず。 「この口調……ネムか? ほら、私! 各務原だって!」 「……ネムの知ってる〜、よしみは〜、男だし〜、賊になったりしないもん」 ダメでした。 残念ながらネムは敵の言葉を一切信じないようで、さらに攻撃をしかけようとする。 だが、そこに仲間たちが。なんとかネムは相手が知り合いの義視だと納得させられたようで。 「折角〜、真面目に戦闘してたのに〜、台無しだよ〜」 そう言いながら、嫌々戦闘を辞めたネム。これで義視はほっと一安心で。 残るのは最後の一組だ。 「はっ、そのいでたち、妙な言い回し、あなたは喪越さんですか!」 「お、おお! 俺サマのこと知ってるのか! きっと我々はダマされて……」 気付いたのはアーシャ。もう何度か死神とご対面しそうになった喪越は慌ててそういったのだが、 「どうして偽開拓者なんてしているのですか〜〜!」 どうやら誤解は解けていなかったようだ。 「いやぁぁぁぁ!! もうダメだぁぁぁ!」 そしてそんな喪越に剣が……。 「よし! けっ、開拓者共め。いい気味だぜ……」 物陰に隠れて様子をうかがっていた依頼人の夕吾郎。 喪越が剣にぶっ飛ばされたのを確認してほくそ笑んだ。 その後、他の開拓者たちも次々に集合し、お互いに相打ちになったのだろう。死屍累々の様子で倒れている。 それを見て、夕吾郎はやっとその場を離れようとしたのだが。 「あら? なにがいい気味なのかしら……」 「はっ! て、てめぇら、なんでここに!」 はっとした夕吾郎の背後にはアーニーや由愛、雪華やアナたちが勢揃いしていた。 慌てて死屍累々の様子だった開拓者たちを眺めてみれば、喪越やアーシャはむっくり起き上がって。 倒れたり剣を当てたのはどれも演技だったのだ。 具体的には、喪越のもうダメだぁ、までは本気。ぶっ飛んだのは、喪越の変な動きだったようだ。 その後に静止が間に合ったようで、そのまま、喪越とアーシャには演技で戦闘を続けて貰ったのである。 「……巫山戯た真似してくれたじゃないの、ええ?」 ぎらりと目を輝かせる由愛は符を構えて。 「僕達を騙し事……それはどうあっても許してあげることは出来ないね」 ぴたりと雪華は銃を構えて言い切った。 そういうわけで、このニセの依頼人はこてんぱん。半殺しどころか9割殺しの目にあったとか。 「……ねぇ〜、なんで女装してるの〜?」 「女装はほら、味方が女性しかいなかったから変装するならいっその事と思って」 ごうごう燃える小屋の前で、のほほんと会話しているネムと義視。 「ネム〜、ちゃんと〜、骸骨さんに見えた〜?」 「遠目には骸骨に見えたよ、うん」 ……なお、ニセ依頼人の夕吾郎はその後、ぼっこぼこにされたままギルドに引き渡されてたとか。 いろんな意味で喪越当たりにはトラウマになってそうではあるが、ニセの依頼は解決されたのだった。 |