避暑地の湖で実験!
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: ショート
危険 :相棒
難易度: 易しい
参加人数: 10人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/08/07 22:16



■オープニング本文

 その日、理穴の友人宅にてのんびり昼ご飯を啜っていた発明家、中務佐平次はふと考えた。
 眼前に有るのは、自作の流し素麺機である。
 手元の紐をくいっと引けば、1人分の素麺が自動的に竹製の滑り台へ補充される。
 竹製の滑り台は常に少量の水が流れるようになっている。動力は足漕ぎ式だ。
 きこきこと足を動かせば、水汲み水車の要領で水が上昇。それが滑り台に補充されるという寸法だ。
 きこきこ。紐を引く。素麺がつるん。しゅぱーんと流れる麺。箸で掴まえる。うまい(もぐもぐ)。
 ……なかなかに画期的で、そして素敵に不毛な装置であった。

 で、この珍奇な発明家佐平次が何を考えたのかというと。
「高い位置から滑り降りた素麺は……もぐもぐ。水で摩擦が減って……んぐんぐ、速度を増す……ごくん」
 なんだか難しいことを言っているようだが、言いたいことは一つ。
 それは、『素麺、流れてくるの、早えー』である。
 で、暑さと足漕ぎの面倒さでぼーっとしてたら、素麺を掴まえるのを失敗し、素麺はしゅぱーんと通過。
 そのまま流れの水ごと素麺は近くの池へ。佐平次は流し素麺機の排水先を、庭の池にしていたのだ。
 勢いの付いた素麺は、軽やかに水面を跳ねた。まるで水切りの石のようだ。
 二度ほど跳ねた素麺は、そのままぽちゃんと沈み、池の鯉が美味しくいただいたとか。

「滑り台の勢い、水切り、水面の移動……これだっ!」
 佐平次は何かを思いついたようだ。
 急いで素麺を平らげて、その後は材料を試算、手続きのための手紙を書いたり、人手を頼んだり。
 そして、友人の理穴高官・保上明征氏が怪訝な顔をしているのも気にせずに。
「ちょっとした実験があるんで、芳野に行ってきまーす♪」
 といって出かけていくのだった。そして数日後、ギルドには手伝いの募集が。

 ●水面における行動に関する新案実験
 ・巨大滑り台を使用して、人は水面で水切り出来るのか。
 ・巨大投石器を使用して、人は水面で水切り出来るのか。
  この二つの新案を試してくれる協力者募集。

 ・場所は景勝地、芳野の六色の谷 その谷にある湖で行う
 ・すでに滑り台と投石器の準備は整っているが、参加者の案に応じて強化、新造も可能。
 ・各種開拓者の技能を使うことも、実験の様々な側面が見えてくるので推奨。
 例)・滑り台から発射後、シノビの水蜘蛛を使用してみたらどうなるか
   ・滑り台から発射時、瞬脚などを使って加速は可能か。
   ・投石器から射出後、飛距離を伸ばすことの出来る技はあるのか    などなど。

 というわけで、どうやら涼しげな水遊びのようだ。
 ………たぶんきっと死ぬことは無いと思うので、是非とも協力して上げるといいだろう。
 さて、どうする?


■参加者一覧
荒屋敷(ia3801
17歳・男・サ
ペケ(ia5365
18歳・女・シ
滋藤 柾鷹(ia9130
27歳・男・サ
レヴェリー・ルナクロス(ia9985
20歳・女・騎
猫宮 京香(ib0927
25歳・女・弓
リィムナ・ピサレット(ib5201
10歳・女・魔
ムキ(ib6120
20歳・男・砲
エイン・セル(ib6121
28歳・男・砲
鴻領(ib6130
28歳・女・砲
フレス(ib6696
11歳・女・ジ


■リプレイ本文

●夏の空に放物線
「エイン・セルだ。よろしく頼む」
「ああ、これはご丁寧にどうも。依頼人の中務佐平次です。よろしくお願いしますね」
 がしっとエイン・セル(ib6121)と握手を交わす依頼人の佐平次だ。
「いやぁ、こんな妙な依頼に来てくださって、感謝ですよ」
「はは、涼しそうだったからな」
 開拓者たちと依頼人の佐平次は、とある湖畔にいた。
 自己主張をしているのは佐平次の背後にでんとそびえる滑り台や投石器。
「……で、依頼はこれを使っての実験か。ちょっと変わった湖への飛び込みみたいなものかな?」
「ええ、そうなりますね。……見てれば分かりますよ」
 エインの問いにそう答える佐平次。エインが見上げれば。
「……えっと、合い言葉は『水切りで目指せ対岸』なんだよ〜」
 小柄な少女が巨大滑り台の上に。
 ぴこんと獣の耳を立てて、見守る佐平次らに手を振るのはフレス(ib6696)。
 覚悟を決めると、ジプシーの彼女はまるで舞うかのようにひらりと歩み寄りていっと滑り台に飛び込んだ。
 真っ赤なタンキニ姿、そんな少女がすさまじい速度で水に押し流されていく。
 速度、角度共に申し分なし。それに幸運の女神の後押しもあったのだろう。
 仰向けの姿勢のまま、背中とお尻で水面を跳ねて、まさしく水切りのように飛距離を伸ばすフレス。
 思わず仲間たちの歓声が上がり、水切りすること三回。なかなか良い距離でばしゃんと水没。
 すぐさまざばっと水面から顔を覗かせフレスは大丈夫と手を振って。
「おー、身のこなしが良いんでしょうかね。フレスさん、どんどん上手になりますねぇ」
 にこにこ笑顔で佐平次は帳面に結果を記していたり。
 そんな佐平次を見て、水着姿に着替えてきたすらりと背の高い鴻領(ib6130)が一言。
「一応お伺いしますけど、何回水切りしたら成功になるんでしょうか?」
「………あ、考えてなかった。えーっと、フレスちゃんが言うみたいに対岸まで行ったら成功?」
「対岸、ですか………さすがにそれは難しそうですけど、涼しくなるのは間違いなさそうですね」
 思わず笑いながらも、さて次は自分の番だと試作品を手に鴻領は滑り台に上るのだった。

「む、あたしも負けないぞ! 頑張るよっ」
 フレスに負けじと気合い十分なリィムナ・ピサレット(ib5201)は、胸を張った。
 無い胸をえへんと張るリィムナ、水着はセクシーなマイクロビキニだとか。
 日焼け跡もまぶしく……と言いたいところだが、ちびっ子の彼女、セクシーと言うよりは可愛らしい感じ。
「おや、リィムナさん。籠手装備したままですけど、外さないんですか?」
「うん、これが秘策なんだよ! まあ、見てて」
 そういって、彼女は投石器へ。エインや佐平次の手で勢いよく投石器が作動すれば、
(……ああ、朋友の助けも無しに、あたし飛んでるよ……)
 そんなリィムナの心中の声とともに、彼女は夏の空に綺麗な放物線を描く。
 角度が中々に高めだ、このままでは水面にばしゃーんと直撃しそうなのだが、彼女には秘策が!
「ここで、ブリザーストーム連射っ!」
 乾坤一擲、起死回生の氷結魔法を連射、凍り付く湖面……いや時間が足りない!
 水面の一部が氷結、小粒な氷やら薄い氷が張る程度、足場にするには不十分。
 ってか、足場にするどころではない、空中で体勢を崩したリィムナ、なぜか頭からバリーンと着水!
 中途半端に凍りかけの湖面に上下逆さまで刺さるリィムナ。
「……って、大丈夫ですか〜!」
 あわてて、小舟をこいで助けに来た仲間たちに、やっとこ救出されるリィムナ。
「ぜーはー………次いこうっ!」
「えええ! いや、ちょっと休みましょう! 唇紫色ですし!」
 めげないリィムナを、思わず止める佐平次であった。

●秘策続々
 そんな楽しげな阿鼻叫喚の中で。
「嗚呼、やっぱり予想した通りだわ……如何して私はまた、彼に協力してしまったのかしら」
 はらはらと落涙、してないけれども夏の空の下で微妙に後悔中なのはレヴェリー・ルナクロス(ia9985)。
 なんというか、微妙に貧乏くじを引きがちな彼女。だが今回は一つ策が。
「……そう、だから今回はあの人を道連れ……こほん、手伝って貰ったのよ」
 はっと思い出したのは同行者の存在だ。
「それにしても、レヴェリーさんから誘うというのも珍しいですね〜」
「貴女には誘われてばかりだから、ね。偶には良いでしょう?」
 のほほーんと投石器の調整をしているのは猫宮 京香(ib0927)だ。
 2人とも薄着だったり水着姿だったりと、目に楽しい状況で。
 そんなところに気付いたのか、ふらっとやってきたのは荒屋敷(ia3801)。
 どうやら、滑り台の水流の改良について、佐平次と相談してきたようで、改造中は手隙だとか。
「いやはや、なんてーかあの佐平次の旦那は、面白いというか馬鹿というか……なぁ?」
「ええ全く。着想の奇抜さは素晴らしいのでしょうが……ここまで突飛だと付いていくのが大変です」
 からから笑いつつ言う荒屋敷に、はふーとため息をついたレヴェリー。
 だが荒屋敷はふと、薄着の2人をじーっと目を向けて。
「……そうだ。布地が少ない方が、水の抵抗が減るんじゃないかな? 重くならないし」
 しれっと真顔の荒屋敷。よーく見れば口元が微妙ににやついてるような気も……。
「そうですねえ。今回戦闘でもないので、薄手の服ですけど、やっぱり水着の方が良いかもしれませんね」
 猫宮は荒屋敷の助言に頷いて、いそいそ布地の少なめな赤いビキニを選んだりして。
「……京香。あまり人を信じすぎるのもどうかと思うわ。ほら、そろそろ私たちの番よ!」
 そしてレヴェリーがそんな猫宮をずるずると引きずって、投石器に向かうのだった。
「おや、そいつは残念。それじゃ、俺も滑り台の方に行こうかね」
 くつくつと笑いながら荒屋敷も移動するのだった。

「さっきのを見ていたが、やはり角度は低い放物線の方が良さそうだな」
「そうですね。角度が高いと水面に刺さる形になりますからね……おや? それは?」
 いそいそと自前で道具を用意してきたムキ(ib6120)に佐平次が問えば、
「ああ、いくつか試そうと思ってな」
 ムキがまず最初に取り出したのは、細長い板のような道具だった。
 どうやらこれを靴に取り付けるようだ。
「ははぁ、なるほど。水面との接触面積を増やすって作戦ですね」
「そのとおりだ。それじゃまずは一回試してみよう」
 ということで、レヴェリーらの前に、まずムキが一度挑戦。で、結果はというと。
 投石器で射出されるムキ。空中でバランスを崩す。そのままどでかい水柱を上げて着水。
 なぜか其処に「エクストリィィうおおお!!?」と叫びを上げて、追いかけてくる荒屋敷、手前で着水。
 2人纏めて引き上げられる。
「……残念でしたね」
「うーん、さすがに安定性が悪いな。何かに引っ張って貰うならまだしも、風の影響が大きすぎる」
 思案顔の2人。そんな2人をよそに、次なる挑戦はレヴェリーたちだ。

「うらぁ! 水断撃ィッ!」
 空中で、手刀を振るいつつ、水柱を上げて着水する荒屋敷。
「……荒屋敷さん、元気ですね〜。楽しそうです」
「ちょっと! 京香、今はこっちに集中して……では、京香。お願いするわ……!!」
 ああ、麗しき仮面の姫騎士は、その身を湖に投げださんとしていた。
 我が身を犠牲に、新たな知識の礎と成らんがために……と叙事詩っぽく語ってみたが要は飛び込みだ。
 悲鳴をこらえ、その時を待つレヴェリー。
「それじゃ、とりあえず行ってみましょう〜♪ ……えい!」
 錘を使って、勢いよくレヴェリーを放つ猫宮。さすがは弓術士、狙いは正確だ。
 低い確度で飛んでいくレヴェリー、そのまま水面が近づいてくるが、ここで秘策!
 彼女は水面に向けて勢いよくシールドノック。
 強烈な衝撃で浮き上がるレヴェリー、さすがの身のこなしで飛距離を稼ぐ!
 これは良い記録が出そう……と思われたのだが、シールドノックで体勢を崩して、くるんくるんと回転。
 きりきり舞いしながらそのまま猛烈な勢いで着水、慌てて猫宮が小舟で拾いに行くのだった。
「レヴェリーさん、大丈夫ですか〜? 凄い勢いで飛びましたね〜」
「ああ、京香……ま、まぁなんとか大丈夫よ。ちょっと目は回ったけど」
 へろへろと小舟に這い上がるレヴェリー。だが、彼女の水着は回転と着水の衝撃で大打撃を受けていた。
 ぷちん、からんからんと留め金が落ちたりはらりと布地がはだけたり。
「……それにしても、とっても色っぽい格好ですよ〜?」
「って、此れは!?」
 慌てたときには遅かった。レヴェリーはいろんな意味で無防備な姿に。
「……京香、偶には貴方もこういう目に遭うべきよね?」
「えっと、私は遠慮したいかな、とか思ったり〜……って、レヴェリーさん、あ……きゃぁぁーー!」
 反撃とばかりに、今度は京香が放物線を描いて、しかも同じように服が大ダメージを受けて見るのだった。

「むぅ、あたしも!」
 妙な対抗心と共に、奮起したのはリィムナ。
 肌もあらわにきゃあきゃあとお互いを飛ばし合うレヴェリーと猫宮に対抗し、彼女が取った作戦は……。
「……えーと、リィムナさん? それはさすがに危険かと……ほら、さすがに爆発は……」
「だいじょぶ! いける!」
 何故か自信満々のリィムナ。再び投石器で空を舞う。
 そして、目標地点でなんと、メテオストライク発動。
 本日、最大の水柱、ってか爆発がちゅどーんと発生。
 その爆風を切り裂いて、反動でさらに飛んでいくリィムナ。
「(やったっ……飛んでる……)」
 正確に言えば、吹っ飛んでる、だが飛距離を稼いでぼしゃんと着水。
 慌てて、レヴェリーと猫宮が回収すれば、微妙に焦げ焦げのリィムナ。
 水着は見る影もなく、どころかチリである。そのチリも、夏の湖畔を渡る風で吹き散らされて。
「……あれ? ……あ、あはは。着替えてきまーす」
「……私たちもいきましょうか」
「そうですね〜。その方が良さそうです」
 眼福だ、とばかりに視線を向けている佐平次やら荒屋敷やらに見送られつつ。
 いそいそと、賑やかな3人は纏めて着替えに行くのだった。

 そんな騒動を眺めていた残る1人の女性、フレスは微妙に半泣きの表情で、
「さ、佐平次さん。私もあれ、やらなきゃだめかな?」
「……さすがの僕でも、そんなことは言いませんよ」
 ちなみに、このときの水柱は、後々噂になったとかならないとか。

●それぞれの交流
「あ、滋藤さん。用事の方は終わりましたか?」
「久しいな、中務殿……こっちが後回しになって悪かった。……妻を、里帰りさせてやりたくてな」
「ええ、まだまだ実験は続きますから大丈夫ですよ。そういえば、奥様は芳野の人でしたね」
 佐平次の言葉に応える滋藤 柾鷹(ia9130)。
 彼は、三月ほどまえ、芳野の桜花楼という女郎屋の娘を身請けしたのだ。
 それが滋藤の妻、初雪である。
「よく尽くしてくれている……俺には過ぎた嫁だ」
「良いお嫁さんが来たのは滋藤さんの人徳ですよ……なんか最近僕の周りでは春めいてますね」
 最近所帯持ちになった親友の理穴高官、保上明征を、新婚の滋藤から連想して苦笑する佐平次だったり。
「……さて、拙者は何をすれば良い? 頑丈故、多少の無理は大丈夫だ。何でも言ってくれ」
「ああ、それじゃお言葉に甘えて……いくつか発明品を試して貰えますか?」
 そういって佐平次が案内したのは、ムキ、エイン、そして鴻領の発明品の所であった。
 ムキが取り出したのは、両足で踏みしめる形の薄い木の板。
「ははー、これだったら滑り台の方が良さそうですねぇ……うまく流れに乗れれば距離が出そうです」
 エインが取り出したのは、なんと小型の凧。
「飛べる距離が増やせるなら、あるいは水切りができるかも、と思ったが、さてどうなるかね」
「これは投石器の方が向いてそうですね。もし美味く風を掴めば、飛べそうですが……」
 水切りから離れているが、もう飛距離がでれば何でも良いらしく、採用。
 そして最後の鴻領。
「滑り台から、この魚の鱗型に工夫したこの浮き袋を使ってみるのはいかがでしょう?」
「おお、これは効率が良さそうですね……丁度、体重を預けるのに丁度よさそうで」
「何度か試したんですけど、なかなか良い感じで使えますよ」
「はー、水上を滑るように進めそうですねぇ……」
 というわけで、この3人の発明を彼らと一緒に滋藤は手伝うことになったようであった。
 発明者たちもそれぞれ挑戦して、試行錯誤を繰り返す。
 すると、いろいろと新しい課題や進化が見えてくるわけで。
 その改良中、手隙の時にてこてこと滋藤に近づいてくるのはフレスだった。
 彼女も、発明品を試し、とくにエインの凧で最長距離をたたき出したのだが。
「えっと……御門さんのお兄さんですか、御門さんとお付き合いさせて頂いているフレスです」
 フレスの言葉に滋藤が視線を向ければ、びくっとおびえるフレス。
「む、すまん。睨んでいるつもりはなかったのだが、怖がらせて……ん、弟の事を知っているのか?」
「うん、えっと私御門さんとずっと一緒に居たいと思ってるから御門さん支えていくんだよ」
「そうか……お主がフレス殿か。御門から話は聞いていた……支えてやってくれ、頼むぞ」
 どうやら、フレスは滋藤の弟と縁のある娘だったようで、滋藤の言葉に笑顔を浮べるフレス。
「……その笑顔と傍にいる事だけで充分力となるものだ」
 その笑顔に滋藤はそう告げるのだった。

 そして、いよいよ実験も大詰めだ。
 モイライで幸運を味方に付けたフレスが、凧でなんと対岸へと到達!
「中務殿、今回は水面で人がどのように動けるかの実験だったのではないのか?」
「…………あ、そうだった」
 というわけで、非常に有意義な実験ではあったが、残念ながらこの凧作戦は保留。
 ムキと鴻領の作戦がなかなか効果的だと判明したようだ。
 開拓者の身体能力なら、ある程度水面で水切りをしたり出来るというのも新たな発見で。
「……ところで一つ聞き忘れてた。仮に実験が成功した場合、何に応用するつもりだ?」
 ムキに問われて、首をかしげる佐平次。
「確かに気になるな。無粋な話だが、大砲を使って人を打ち出すなんてことも考えられるしな」
 同じくエインも尋ねるのだが、
「……うーん、特に目的は考えてませんでしたねぇ?」
「だったら、滑り台とかは威力張節して、遊び場にしたらどうだ?」
 小銭が稼げるぜ、と言い出す荒屋敷。だが、それには一理あると言うことで。
 そろそろ実験も終わらせてお開き、というときにふと見れば人影が。
 それは、丁度お弁当をと持ってきた滋藤の妻、初雪だった。
 見れば、人数分あるとかで。
「ふむ、旨い飯にありつけるとは、何度も水の中にたたき込まれた甲斐あったな」
 思わずそういうムキに、一同は笑って答え、滋藤の妻の手料理に舌鼓をうつのだった。