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■オープニング本文 激烈な揺れ、吹き抜ける烈風、轟音、衝撃、そして風の音。 次の瞬間、貴方は前後左右、何も無い空間に飛び出ていた。 みるみる離れていくのは、貴方が乗っていた小型の飛空船だ。 単なる普通の定期便なのだが、今、その周囲にはいくつかの影が。 だが、その飛行船もすぐに小さく離れていく。 ……貴方はいま、何の支えも無く自由落下状態にあった。 おそらく、飛空船がアヤカシに襲われた拍子に、落下してしまったのだろう。 この航路、下は海だったはずだが、この高さから落下しては命は無い。 だが、貴方は慌てない。 まず一つ、貴方の首には羽毛の宝珠が。 船に乗る時に、もしものためにと貸与されたものだ。 これは墜落した場合、地面に激突する直前に効果を発動し衝撃を緩和する効果がある。 だが、墜落死を免れたからとしても下は海だ。 結局は行方不明になるだけでは? ……否。貴方には信頼出来る同乗者がいたのだ。 空を舞う相棒、龍や鷲獅鳥などの信頼出来る相棒が、定期船には同乗していたのである。 さあ、自由落下を楽しむのはこれぐらいにしよう。 では、その相棒の名を呼ぼう。 自由落下はそろそろ切り上げて、相棒と共に敵を討とう。 是非とも、この珍しい経験のお礼をアヤカシどもにしてやろうじゃ無いか。 さて、どうする? |
■参加者一覧
水鏡 絵梨乃(ia0191)
20歳・女・泰
玖堂 真影(ia0490)
22歳・女・陰
オドゥノール(ib0479)
15歳・女・騎
燕 一華(ib0718)
16歳・男・志
蒔司(ib3233)
33歳・男・シ
エルレーン(ib7455)
18歳・女・志
刃兼(ib7876)
18歳・男・サ
メリッサ・カニンガム(ib9695)
28歳・女・砲 |
■リプレイ本文 ●自由落下は突然に 「なぁ……私って魅力ない?」 夏の陽気か、はたまた空の上という状況からか、メリッサ・カニンガム(ib9695)は開放的な気分だった。 胸の谷間を強調しつつ、なかなか男前な船員の一人を口説いている最中。 「……女がコワイって訳じゃないんだろ? だったら細けぇ事は良いんだよ、さあ私の……」 次の瞬間、大きな衝撃が走った。 「……やっぱり何度乗っても珍しいな」 船内をぶらぶらと歩いている刃兼(ib7876)は、ふと船員を口説いているメリッサに目をとめた。 確かに移動中は暇だけどな、と思いつつ邪魔しないように彼は廊下を引き返す。 次の瞬間、大きな衝撃が走った。 たとえ空の旅の最中でも、蒔司(ib3233)は武器の手入れを欠かさない。 だが彼は、宝珠銃の手入れをしながらふと顔を上げた。 何か物音がしたわけでは無い。気配があったわけでも無い。 単に不穏な何かを感じただけ。言うなれば第六感だ。 その不安の正体を探るべく、立ち上がって船員を探そうと部屋を出る蒔司。 次の瞬間、大きな衝撃が走った。 「世話が焼けるな……大丈夫か?」 小さな船内で、相棒たちを留め置いている船倉の一角にやってきたのはオドゥノール(ib0479)だ。 鷲獅鳥のツァガーンが心配になったようで、ふらりと会いに来た彼女。 そんな彼女を見つけて、ツァガーンはその大きな体をよせ、頭をすり寄せるようにして。 オドゥノールもそれに応えてツァガーンの頭をわしわし撫でた。 次の瞬間、大きな衝撃が走った。 上甲板にて、寛ぐ女性が一人。 「お日様ポカポカで、良い気持ちねー♪」 玖堂 真影(ia0490)はそんなことを良いながら、お日様と風を満喫していた。 だが、彼女はふとこちらに向かって近づいてくる小さな点に気付いた。 なにかがこっちに向かってきている。 「えっ!? ちょ……嘘っ……?!?!」 だが気付いたときには少し遅かった。みるみるうちに近づいてきたその何かは船に直撃。 次の瞬間、大きな衝撃が走った。 「うん、やっぱり芋羊羹は最高だ……」 迅鷹の花月のおねだりを回避しつつ、もきもき芋羊羹をかじる水鏡 絵梨乃(ia0191)。 彼女はのんきに空の旅を楽しんでいた。 ああ、世はすべて事も無し。だが、平穏はそうそう続かなかった。 次の瞬間、大きな衝撃が走った。 「やっぱり空の旅は気持ちが良いですねっ」 船内をてくてく歩く燕 一華(ib0718)。愛用の薙刀は今日は持たずに手ぶらだ。 そんな彼が出くわしたのは、メリッサが船員さんを口説いてるところ。 廊下の反対側から歩いてきている刃兼もくるっときびすを返しているようで。 自分も邪魔しないように退散と思ったのだが、そんな燕の視線が窓の外へ。 するとそこには近づいてくる大きなアヤカシの影が。 「って、アヤカシさんですかっ? 危な──っ! うわわっ?!!」 警告は一瞬遅かった。 次の瞬間、大きな衝撃が走った。 そして最後の一人は、甲板でうとうととまどろんでいたエルレーン(ib7455)だ。 その瞬間、大きな衝撃が走った。 飛来したのは死竜が2体。強引に体当たりをして船室と船倉の一部を粉砕する。 予想外の一撃に船は大きく揺れ、幾人かが投げ出されてしまう。 これが始まりだった。 ●自由落下のその最中 大きく揺れる船、死竜が巻き起こした風が甲板上のエルレーンを巻き込む。 すると彼女は、そのままぽんと空に放り出されてしまったのだ。 全身で感じる激しい風や轟音に彼女はうっすら眼をあける。 飛び込んでくるのはめまぐるしく変わる空と海、そして浮遊感だ。 (死んじゃうっ?!) その恐怖に彼女は思わず涙を浮べたが、その涙さえ風が無慈悲に吹き飛ばしていく。 だが、次の瞬間彼女は思い出す。彼女の忠実な相棒、その炎龍の名を。 「ラーーーーーーーーール!」 破壊された船倉部から、飛び出してきた一頭の炎龍はまるで矢のようにその主の元へ向かった。 エルレーンの相棒、ラルだ。その炎龍は、器用に主を背に乗せると一気に飛び上がる。 「……っ! あ……ありがと、ラル!」 ぐるると応えるラルに、涙をぐしぐしっとぬぐいながらラルの背の上でへたり込むエルレーン。 彼女は船を見上げ、そこを襲う死竜を確認。 「あいつらのせいか……ラル、行くよっ!」 信頼出来る相棒の背の上で、エルレーンはすぐに気合いを入れて高らかに宣言する。 「あやうく死んじゃうところだったんだから……おしおきしてやるッ!」 その号令と共に、エルレーンとラルは再び矢のように飛び上がっていくのだった。 燕がとっさに掴んだのは、突き飛ばされた船員だった。 衝撃の瞬間、メリッサは口説いていた船員を船内に向かって突き飛ばしたようだ。 それを掴んで、さらに安全な場所へ引っ張り上げたその時、二度目の衝撃が。 その衝撃で、メリッサやら数名がはじき飛ばされた船の穴から放り出される燕。 「宝珠があるので助かりはしそうですけど……っ? あれは、蒼晴ですかっ? おーいっ、こっちですっ!」 そんな彼が見つけたのは、だれかを探すように船倉から飛び出した小さな青い駿龍だ。 なんと蒼晴は、その口に薙刀をくわえてきていた。 落下する燕をひょいとその背に乗せると、器用に反転。さらにはその口の薙刀を渡して。 「蒼晴、ありがとう御座いますっ……薙刀も持ってきてくれたんですね」 燕もそれを受け取ると手綱を取って上を見上げる。 「それじゃあ、一緒にアヤカシさん退治をしちゃいましょうかっ!」 同じように飛び上がってくるエルレーンとラルに並んで、燕と蒼晴も一直線に飛び上がるのだった。 そんな燕やエルレーンのさらに下。ひゅるりと落下していく水鏡は手中の芋羊羹を眺めていた。 「……楽しみに取っておいた芋羊羹なのに……」 見れば彼女の相棒、花月はこちらを追いかけてまっすぐに飛んできている。 だが、花月の視点は明らかに自分より芋羊羹をロックオン。 「……芋羊羹を食べさせないと言うこと聞かないだろうな。自分用なんだが、仕方ない」 と、さんざん悩んだ結果、彼女は芋羊羹を花月に渡して、代わりに友なる翼を発動。 ぎりぎり水面付近にて空中停止。水鏡は光翼を背に一気に空を駆け上るのだった。 「み、みかづ……! むぐ! げほげほっ!」 落下する玖堂はすぐに相棒の名を呼ぼうとした。 揺れ動く船の船倉が破壊され、相棒たちが解き放たれたのが見えたのだ。 しかし強い風のせいか咳き込んむ玖堂。 絶体絶命か、と思われたその時ひらりと飛んでくる純白の鷲獅鳥が。玖堂の相棒、帝雷である。 落下速度を合せ、玖堂が手綱を掴むのを待ってから反転する帝雷。 やっと掴まって一息ついている主に、グルルと気遣うように泣き声を上げて。 「ありがと、帝雷♪」 思わずぎゅっとその首に抱きつく玖堂だったが、それも一瞬。 顔を上げて手綱をしっかと握ったときにはもう船と死竜に視線を向けていた。 「さぁ、行くわよ!アイツら絶対に許さないんだからっ!」 「グギャアァァァ!」 玖堂の言葉に、帝雷も雄叫びを上げて応えるのだった。 「ちょっとまてうぁあああああっ!」 船倉をぶち破られたとき、ツァガーンと一緒に居たところで落下するのはオドゥノールだ。 ツァガーンも混乱しているようだが、やはり相棒だ。すぐにオドゥノールに気付く。 慌てて、追いかけてひょいと背中に乗せて。 「あーびっくりした……うん、よくやった」 ぽんぽんとツァガーンの首筋を撫でるオドゥノール。 一人と一匹が見上げれば、どうやら他の開拓者たちも次々復帰しているようだ。 ならば、自分たちもやらねばと、オドゥノールはツァガーンの手綱を取って。 「さ、行くよ。ツァガーン」 声をかけると、鷲獅鳥のすばらしい速力で一気に空を駆け上がっていくのだった。 ごうごうとなる風の音に包まれながら、はるかな蒼穹を見上げて。 「蒼い空を映したまま息絶える……ワシには上々の死に場所やないか」 蒔司は一人、そう思って目を閉じた。だがそんな彼を呼ぶ声がした。 その声は、仲間のものか、朋友の声か、はたまたただの気のせいだったのか、それは分からない。 ぱちりと目を開ける蒔司。するとそこには駿龍の雅が。 「……せやな、まだ幕引きには早いわ」 追いついた雅の手綱を取って、その背にまたがる蒔司は、そっと彼の相棒の背に触れた。 「雅……さあ、反撃といこうかのぅ」 彼らもまた、一筋の矢となって風を切り裂いて、死竜へと向かうのだった。 (意外と風の音が大きいんだな……) のんきにそんな感想を思い浮かべた刃兼。だがはっと我に返る。このままではまずい! だが、そんな彼をはっしと足で掴んで、ひょいと引き上げたのは相棒の駿龍、トモエマルだった。 「……トモエマ、ル? お前、助けに来てくれたのか?」 びっくりして尋ねる刃兼。龍と人は良き友であるが、言葉がすべて通じるわけではないのだ。 だが、やはりそれでも言葉を越える絆があったようで。 刃兼の言葉に、主を気遣うようにぐるると喉を鳴らし応えるトモエマル。 その様子に思わず笑顔を浮べて、刃兼はその背をそっと撫でて。 「ありがとうな、トモエマル。ひと仕事終えたら、好きなものたらふく食わせてやるよ」 そして、きっと空を見上げれば、死龍へと牽制をしかける仲間たちの姿が。 「よし、ひとつ気合い入れて、戦いに挑もうか!」 かけ声一つ。言葉を越えて繋がる一人と一龍は一気に高度を上げるのだった。 そして最後の一人だ。 「カービン銃はさっきので船内か、ついてないね……」 口説いていた船員をとっさに突き飛ばしたものの、その反動で落ちたメリッサ。 船員はそのまま、他の開拓者が掴んでいたから大丈夫だろうと思うも愛用の武器は船内だ。 というか、現在自分も自由落下中だ。だが彼女は慌てていなかった。 その豊かな胸をばるんっとゆらして、なんと胸元からピストルを取り出す! それをそのまま構えると、空を見据えて、 「ロックハート! 来いっ!!」 その声に応えて、甲龍のロックハートは一直線に彼女をすくい上げる。 その背にまたがったメリッサは、ピストルに弾丸を装填して、 「さあ、反撃開始だ!」 その言葉と共に、他の開拓者共々一気に反撃にうつるのであった。 ●自由落下を乗り越えて しつこく攻撃を加えようとする死竜。それを遮ったのは鷲獅鳥たちだった。 速力を活かして、一気に死竜に肉薄。まず反撃したのはオドゥノールとツァガーンだ。 ポイントアタックで羽をねらってまず牽制、そこにもう一組、玖堂と帝雷が。 「荒魂よ、黄泉の唄を奏でませ!」 二組の連携に、死竜は鬱陶しげに開拓者たちを向き直った。 まずは一匹、だがまだもう一匹の死竜が船に襲いかかろうとしていた。 そこに飛び込んできたのは俊龍たちだ。 「この風を切る感じ───やっぱり、飛空船よりも蒼晴に乗った方が凄く気持ち良いですねっ」 そんな言葉と共に、一気に船と死竜を追い越して上空を抑えた燕と蒼晴。 燕はきらりと陽光にその薙刀を構えると、技を次々に発動。万全の体勢で一気呵成に攻撃だ。 「いざっ、飛燕陽華の輝きをご照覧あれっ!」 すると、それに合わせるように他の俊龍たちも動いた。 まずは、遠距離から蒔司と雅が。 二匹目を船から引き離すようにぐるぐると周囲を回りながら射撃を連発。 さらには咆哮が響き渡る。トモエマルと刃兼が一気に飛び上がり、死竜の引き寄せをしたのだ。 反応し、かみつこうとする死竜。だがそれをトモエマルがひらりと回避。 「これでも食らえ、真空刃!」 回避しながら刃兼は反撃。 こうして二頭の死竜は船から引き離された。もう心配することは無い。 それを見て、開拓者たちは一気に攻めに転じるのだった 「ラルッ! おもいっきりやっちゃえッ!」 鷲獅鳥に牽制されている死龍に襲いかかるのはエルレーンとラルだ。 「とっつげきぃーっ!!」 炎龍のみが放てる強烈な攻撃、炎の気を纏っての炎龍突撃にエルレーンが攻撃を合わせる。 鈍い死竜は鷲獅鳥たちの牽制でまったく敵を終えないまま四方から攻撃される。 だが、死竜はしぶとい。なかなか引かずに執拗に反撃を繰り返す。 それを遮ったのは甲龍のロックハートとメリッサだ。 「囮は任せなっ!!」 そういって死竜の眼前に身を躍らせるメリッサたち。 牙や爪の一撃を甲龍の鎧で凌ぎ、時折反撃の銃撃。そして、メリッサはくるりと背を向けると。 「ほら!胸だけじゃなく尻もグンバツだろ? 捕まえたら食わせてやるよ!」 なんと自身のお尻をぺしぺし叩いての挑発だ。 死竜にその言葉が分かったかどうかは怪しいが、ますますメリッサとロックハートに襲いかかる死龍。 それがメリッサの狙いだった。 ぎりぎりまで引きつけた瞬間、メリッサは死龍に早撃ちからの強弾撃連発。 死龍は顔を破壊されて思わずひるむのだった。 それに合わせて仲間たちが連携する。 まずは二組の鷲獅鳥たちだ。 「攻撃を許可する。全力で思い知らせてやれ」 暴嵐突でツァガーンが突貫、さらにはオドゥノールは矢を放って追撃。 矢の一つ一つが、死龍の皮膚の隙間を貫いてついには翼の一つを射貫く。 もとよりぼろぼろの翼だが機動力は落ちる。そこにさらに玖堂と帝雷が続く。 「死竜って事は、確か痛覚が無いんだっけ……だったらこれでっ!」 一気に距離を詰めて、帝雷は速度を乗せたバイトアタック。 その傷にさらに玖堂が術をぶつける。 「臨める兵闘う者、皆陣破れて前に在り! 斬!」 裂帛の気合いと共に放たれた斬撃符。その一撃がついに死龍の翼を斬り飛ばす。 翼を破壊された死龍は、真っ逆さまに自由落下。そのまま消えていくのだった。 残るはもう一頭の死龍だ。 こちらには駿龍が3組、次々に攻撃を仕掛けていた。 翼を狙う刃兼、彼はトモエマルの翼を信じて回避しながら咆哮で死龍を引きつけていた。 そこに牽制で攻撃を加える蒔司だ。だが、宝珠銃だけではなかなか決定打を与えられない。 そこに飛び込んできたのは、水鏡だ。 しかし友なる翼を発動中の彼女は攻撃には参加出来ないはず、どうするのだろうかと仲間は様子を窺う。 すると、水鏡は死龍の後背に回り込もうとしていた。 それを見て他の仲間たちは意図を察した。ならば協力するまで。 まず仕掛けたのは燕だ。 駿龍の速度を活かして接近、さらに薙刀「巴御前」がきらりと閃くと、龍の翼を切り裂く。 「大空の演舞、楽しんで頂けましたかっ?」 白梅香で強化された一撃がまず死龍の翼を封じたのだ。 蒔司は、一気に接近して駿龍の雅と連携。攻撃を躱し、銃で牽制してから本命の攻撃だ。 雅がその体重をのせて、チャージとクロウで一気に死龍の体勢を崩す。 そこでトモエマルと刃兼が接近。真空刃での牽制を止め、一気に急降下からの一撃で翼を斬りつける。 完全に体勢を崩した死龍。その背に、なんと水鏡が飛び乗るのだった。 友なる翼を解除し、揺れ動く死龍の背に着地したのである。 「こうでもしないと攻撃が出来ないからな」 そしてそのまま、防御を無視する極神点穴が突き刺さる。 翼を壊された死龍は、さらに連打を浴びてさすがに力尽きて。 そのまままっすぐに海へと落ちていくのだった。 落ちかける水鏡、それをはしっと捕まえたのは蒔司と燕だった。 そのまま一同は、船へととって返して。 無事、二頭の強敵死竜を撃破した開拓者たちは、船員たちから歓声で迎えられるのだった。 ●自由落下再び どうやら船の損傷はそれほどでもないようで、航行には支障が無いとのこと。 開拓者たちは、修理が進む船内でやっと一息を付いていた。 「腹いっぱい好物を食べさせないと……風呂にも入らせるべきだろうか?」 大穴のあいたままの船倉にて、安全な場所でぽんぽんと相棒のツァガーンを労うオドゥノール。 とりあえず一同は安全な場所でそれぞれの相棒を労っているようで。 「お風呂はここじゃ無理ですけど……船員さんがお礼だと言ってご飯を沢山くれましたよっ」 にこにこと、鷲獅鳥用の餌も受け取って持ってくる燕。 彼は、蒼晴にお礼もかねてと、貰った餌を沢山あげているようで。 「トモエマル、お前のぶんも貰おうか。……ありがとうな」 こちらは刃兼だ。ひょいと大きな肉をトモエマルにさしだしつつ、ぽんぽんと撫でて。 そして、エルレーンは、戦い終わってやっと落ち着いたのか、ひっしとラルに抱きついて。 「ありがとう……ラルはいつも私を助けてくれるね」 そういいながらエルレーンは涙を浮べる。 「ごめん、ね、ラル……私、いつも、あなたまで……巻き添えにしてしまう」 見れば、今日の戦いでもいくつもの傷を負っているラル。その手当てをしながら思わず零すエルレーンだが。 そんなエルレーンに対して、ぐっとラルは首を上げると、何でも無いという風に喉を鳴らすのだった。 そんなラルに、エルレーンはぎゅっと抱きつくと。 「ありがとう……だいすきだよ、ラル」 そういって、笑うエルレーン。 その様子を見ていた仲間たちも、皆自分の相棒を撫で語りかけ、改めて絆を深めるのだった。 さて、その一方で。 「さーて、続き続き〜」 館内をてくてく歩きつつ、さっきの男前な船員を探しているのはメリッサだ。 玖堂は、今度は甲板上で鷲獅鳥の帝雷と一緒に日光浴中。 その甲板の端では、蒔司が修復作業の手伝い中であった。 もう嵐は去った。あとはのんびりと目的地まで待てば良いだけ。 と思っていたのだが。 修復作業を手伝っていた水鏡。甲板の端で、ちょっと休憩中。 その周囲をぱたぱたと桜色の迅鷹、花月が飛び回っていた。 「すこし大人しくしててくれ。ほら、これ上げるから」 と、芋羊羹をとりだす水鏡、だがその芋羊羹がぽろりと手からこぼれ落ちて宙を舞う。 するとその芋羊羹目指して一直線に飛んでいく花月。水鏡をはね飛ばす。 「……あ……」 彼女が立っていたのは甲板の端っこ。しかも修復中だ。 ふたたびぽーんと空に飛び出す水鏡。 「……お前、帰ったら覚えてろよ?」 とだけ言い残して、真っ逆さまに落下していく水鏡であった。 もちろん、慌てて他の開拓者が彼女を追いかけていったとか。 いろいろと波乱はあったようだが、結局依頼は成功。 自由落下の怖さを知ったとしても、それ以上に相棒たちとの絆を実感した開拓者たちであった。 |