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■オープニング本文 「しまったっ、速度では奴らの方が上かっ……退けっ!! 退くんだっ!!」 「駄目です、逃げ切れません! このままではすぐに……うわぁぁぁぁ!!」 襲うアヤカシ、襲われる兵士たち。 彼らは武天のとある無人の平野にて、アヤカシの一群の掃討作戦に付いていた。 対アヤカシの傭兵団としてはそれなりに名を馳せた彼ら。 だが、予想外だったのはそのアヤカシたちの速さだ。 「ちぃっ、ただの狂骨や骨鎧と見て侮ったか……このままでは総崩れだ。殿を固めて撤退!」 隊長の号令とともに、必死で逃走を始める傭兵団。 それを追いかけるアヤカシたちは、歩く骨といった姿のアヤカシなのだが、少々特別であった。 彼らは、自身らと同じく骨で出来た馬型のアヤカシに騎乗しているのだ。 その数およそ30騎。 屍狼と呼ばれるアヤカシと同じく、どうやら馬の死骸に瘴気が宿り生まれた馬型の骨アヤカシ。 傭兵団を撃破したのは、その馬アヤカシを駆る骨アヤカシたちだったのである。 元来、戦場に置いて騎馬の兵というものは非常に強力だ。 その突破力や攻撃力もさることながら、最も重要なのはその機動力。 縦横無尽に戦場を動き回ることの出来るその速力こそが、騎兵の強みなのである。 今回、この騎兵アヤカシに関する情報が少なく、傭兵団は反撃を受けほぼ壊滅。 結果、機動力で対抗できる開拓者へと彼らの撃滅依頼が持ち込まれたのであった。 開拓者たちであれば、相棒たちの力を借りて、このアヤカシ軍団を倒すことが出来るだろう。 龍やグライダーなどの飛行型を使うも良し、霊騎で騎馬戦を挑むも良し。 その他、作戦次第で様々な対抗策を取ることができるだろう。 さて、どうする? |
■参加者一覧
ジルベール・ダリエ(ia9952)
27歳・男・志
オドゥノール(ib0479)
15歳・女・騎
猫宮 京香(ib0927)
25歳・女・弓
藍 玉星(ib1488)
18歳・女・泰
クリスティア・クロイツ(ib5414)
18歳・女・砲
御調 昴(ib5479)
16歳・男・砂
ルゥミ・ケイユカイネン(ib5905)
10歳・女・砲
椿鬼 蜜鈴(ib6311)
21歳・女・魔 |
■リプレイ本文 ● 荒野を疾駆する不死者の騎馬隊。彼らが求めるのは、死。 疲れも痛みも、彼らの足を止めることは無い。ただ獲物を襲い、踏み砕けばいいだけだ。 だが、そんな彼らの元に一直線に向かってくる影が。 空を行く五つの影。地を賭ける彼らを凌駕する速さ。 だが、たった五つだ。ならば、脅威ではなく獲物だ。 不死の騎馬隊は、空を行く敵へと馬首を廻らせると、一気に走り出すのだった。 その少し前。 地に伏せて、じっと時を待つ3人の開拓者たちがいた。 荒野のなか、丁度起伏と周囲の藪で、ある程度身を隠せるその場所で待機するのは開拓者だけではない。 「後で思う存分走らせたるから、もうちょい辛抱しぃや」 ぽんぽんと愛馬、ヘリオスの首筋を撫でながらジルベール(ia9952)が言えば。 「千歳もアヤカシをおびき寄せられて来るまでここで待機ですよ〜」 霊騎の千歳をなだめるのは猫宮 京香(ib0927)。 そして、2人が視線を向けると、そこでは大きな土偶ゴーレムが。 「……わたくし達は、ただ皆様を信じて待ちましょう。クリス、準備は宜しくて?」 「私は問題ありません、お嬢様」 にょきっと藪から頭を突き出したままクリスティア・クロイツ(ib5414)に応じるゴーレムのクリス。 その言葉に、クリスティアは頷くと、静かに伏せて身を隠すのだった。 3人の開拓者はそれぞれ地面に伏せて、地面や草木と似た色の布を被る。 霊騎たちも大人しくその場に伏せて、ただ静かに時を待つ。 その時、彼らの頭上を五つの影が飛び越していった。 龍が二頭、鷲獅鳥が二頭、そして滑空艇。 ちらりと彼らを仰ぎ見る地上の開拓者たち。彼らは、仲間を信じて待つのだった。 「さて、まずは索敵ですね」 空に上がった5人の開拓者たちは、緩やかに弧を描いて空を飛びながら、周囲を窺っていた。 その中で、索敵に最も長けていたのは砂迅騎の御調 昴(ib5479)。 バダドサイトで視力を強化しながらぐるりと荒野を見渡せば、 「……あれは、蹄の跡でしょうね。大量の馬が走った痕跡……前回の戦闘の名残かも知れません」 御調は、大きく身振りで方向を示すと、ひらりと皆を先導して。 「昴、やっぱり頼りになるネ。あっちの方向でアルか?」 「ええ、まだ新しい蹄の跡が、あの方向にいるのは間違い有りません」 知り合いの藍 玉星(ib1488)の問いかけに応えつつ、開拓者たちは一気にその方角へと進むのだった。 ● 風を切って進む五つの翼。彼らは一直線に御調の誘導の元、アヤカシへと距離を詰めた。 そうすれば、すぐに土煙を上げて疾駆するアヤカシの集団を発見、開拓者たちは臨戦態勢へ。 今回、彼女らは非常に難しい作戦を遂行しようとしていた。 それは、誘引作戦だ。 つかず離れずの距離を取り、数を削りながらの待機している地上部隊へとアヤカシを導くというこの作戦。 それは危険の多い作戦だ。 いかにこちらが飛行しているという利点があると言っても、攻撃をするには近づく必要がある。 そうなれば、向こうも相応の手段でもって反撃してくるだろう。 現に、ほとんどの骨アヤカシが馬上で弓を構え始めていた。 数では5対30だ。圧倒的不利だと言えるだろう。 ……だが、5人の開拓者たちは不安を感じていなかった。 彼らが今、その背に体を預けているのは信頼出来る相棒なのだ。 「さぁ、天禄。おんしが速さで敗ける筈もあるまいて。此度の鬼遊び……楽しめそうじゃのう」 笑みさえ浮べてそうつぶやいたのは椿鬼 蜜鈴(ib6311)。 彼女がその体を預ける相手は、家族として信頼する駿龍の天禄である。 「名前のせいかな、じいちゃんと一緒にいるみたい……」 ルゥミ・ケイユカイネン(ib5905)はそっと彼女が操る滑空艇の機体を撫でる。 小さな彼女が操る滑空艇の名は、彼女の祖父の異名から取られているのだという。 「……雪の妖精と「白き死神」の力、見せてやるんだから!」 小さくとも、立派な開拓者のルゥミは、しっかと魔槍砲を構えて。 「騎乗戦闘ならば、こちらとて本領です。更に空中という優位性もある」 敵を見事に発見した御調は、淡々と現状を確認して。 「……骨の馬なんかに、負けるわけにはいきませんね」 彼女もまた、相棒の鷲獅鳥ケイトの背を撫でながら、手綱を握り高度を下げて。 まずは小手調べ。一瞬の油断が危険を招く地対空の戦いが始まった。 「なるほど……たしかに騎兵隊か、厄介な」 先頭を切って急降下したのはオドゥノール(ib0479)とその相棒、鷲獅鳥のツァガーンだ。 様子を窺うように距離を詰めれば、まずはアヤカシから矢が飛来。 30騎の騎乗した兵士が一斉に矢を放てば、かなりの弾幕だ。 だが、ツァガーンは風翼で急加速、そのすべてをひらりと躱す。 他の開拓者たちもそれに次々続いた。 「おお、みんななかなかやるアルね。炎蕾、いっちょ、暴れに行くアルよ!」 ニ゛ャー! と勇ましく応える相棒の炎龍、炎蕾を急降下させる藍。 矢を放った好きを付いて急降下、気功波と炎蕾の火炎の二段攻撃だ。 だが、それを騎馬アヤカシたちは、回避する。 地上にいる彼らの速度は相当なモノだ。 対峙する一瞬、龍が炎を吐こうとすれば、集団を左右に分けて急加速し炎をくぐり抜ける。 騎馬との連携もしっかりしているようで、なかなか決定打を下すことは出来ないのだった。 彼らは開拓者たちと距離を取りながら、矢で牽制。 このままでは、逃げ去ったとしてもまっすぐ追ってくるかは分からないだろう。 そこで、開拓者たちは一気に攻めに出た。 多少、アヤカシたちに打撃を与えれば、こちらの誘導にも乗りやすいはず。 そう考えて、5人の開拓者たちは一気に攻めに転じるのだった。 「さてさて、それでは鬼遊びの合図と参ろうか。しっかり追ってきておくれ」 最初に一撃は回避不能の魔術師の一撃。椿鬼の放った雷霆、アークブラストだ。 これが鎧に身を包んだ骨アヤカシに直撃。一撃で倒されはしなかったのに白煙を上げて焼け焦げる。 獲物から反撃を受けて、不死の騎馬アヤカシたちは一斉に椿鬼を睨め付ける。 ひらりひらりとこちらの攻撃を避け続け、さらには反撃までしてくるいらだたしい獲物たち。 彼らは、うつろな眼窩を開拓者に向けると、ますます矢を放ち一気に追いかけてくるのだった。 「ふむ、首尾良くいったな。鬼様此方……わらわを退屈させおるな」 そういってひらりと頭を廻らす天禄と椿鬼。 彼女たちは、先導する御調に従いながら一定の距離を保ちながらアヤカシから逃げ始めた。 御調はすでに、待ち伏せ場所までの経路を考えている様だ。 だが、それにはまだ手が足りない。 ある程度、アヤカシたちに痛撃を与えつつ誘導しなければ。 矢が雨のように飛んでくる危険な距離を保ちつつ、彼女たち上空班は見事にその攻撃を凌いでいた。 そして、いよいよ次は反撃だ。 もうすぐ待ち伏せ場所というその時に、上空班による第一の反撃が始まった。 ● 「騎馬隊を分けようというわけですか……そうはさせませんよ」 ひらりひらりと矢を躱しつつ逃げる開拓者たち。 それにしびれを切らしたのか、彼らは部隊を二つに分けようとしていた。 別方向から連携して矢を射かければ、回避はさらに難しくなるからだ。 だが、それをさせまいとしたのはノールと鷲獅鳥のツァガーンだ。 「……ツァガーン、行きますよ」 手綱を引いて一気に距離を詰めるツァガーンとノール。 もちろん反撃の矢が飛んでくるが、ツァガーンは鷲獅鳥の優れた機動力でそれを回避。 その上でノールはしっかと矢を引き絞り、分かれようとしていた別働隊の端を矢で一撃! うつろな骨の胴体を射貫かれて、思わず馬共々動きが鈍る骨の騎馬アヤカシ。 そこにさらに追い打ちだ。 「炎蕾、今なら思いっきり当たるアルよ。自慢の火炎をお見舞いするネ!」 足並みが乱れた隙に、再び炎蕾と藍が急降下、業火炎を見舞えば、騎馬アヤカシたちは守りのために密集。 密集隊形を取って、盾を構えて攻撃を凌ぎつつ突破しようというのだろう。 だが、それを許さないと飛来する影が。 ルゥミとその愛機、滑空艇の白き死神が、いつの間にか騎馬部隊の後ろに付いていたのだ。 開拓者たちの相棒は様々だ。 その中でも、もっとも速度に優れるのが、この滑空艇である。 仲間に混じってひらりひらりと矢を回避していたルゥミと滑空艇。 それが藍と炎蕾が炎を放った瞬間急加速と急上昇。 くるりと空中で一回転すると、ぴたりと騎馬部隊の後ろについていたのである。 彼女が構えるのは、魔槍砲「死十字」。そこでやっと騎馬部隊のしんがりが気付いたが、もう遅い。 「あたいの魔砲、受けて見ろ! デスクロス……ジェノサイドスパーク!!」 強烈な閃光と爆発、魔槍砲が放ったのは、強烈なスパークボムの一撃だ。 そこにだめ押しのように、たたき込まれる椿鬼の雷霆。 この連係攻撃には、あっというまに数騎のアヤカシが脱落。 2割ほどは、削ったところでいよいよ上空班は、仲間が待つ待ち伏せ地点へとやってくるのだった。 スパークボムの爆発と閃光、それに椿鬼の雷。それが合図となって地上班の面々に伝わった。 「おいでなすったで、ヘリオス」 静かに体を起こして、ジルベールが望遠鏡を構えれば、見えるのは激戦の様子だ。 ぎりぎりの距離を保ちながら、集中攻撃を加えている上空部隊。 それを凌ぎ、アヤカシも反撃の矢を雨あられと放っている。 「……うわー……敵も味方もえらい迫力やなぁ。闘牛の群れみたいや」 ジルベールは、思わずそうつぶやいてまたがっている霊騎、ヘリオスを静かにたたせる。 もう距離は十分だ。あとほんの少しでこちらが反撃する版がやってくるだろう。 ジルベールは静かにクロスボウを準備すると、仲間の顔を見やるのだった。 「もうはっきり合図が見えますね〜。では、私もそろそろ戦闘態勢と行きましょうか」 ジルベールと同じく猫宮も霊騎の千歳の上でクロスボウを構えると待機。 そして最後の1人。いや一組もすっくと立ち上がり準備を終えたようだった。 「凄い速さですね。野を駆けて荒れ狂う死人の群れ……此のままでは汚れは広がるばかり」 ジルベールから借りた望遠鏡で、近づくアヤカシたちを見ていたクリスティア。 彼女は望遠鏡を返しつつ、小さくつぶやいて、そのままがちゃりと魔槍砲を構えて伏せて。 「神の名の下に、此の場で残らず浄化して差し上げましょう」 そうきっぱり告げるのだった。 アヤカシたちは空中の敵を必死で打ち落とそうとしていた。 先ほどの後ろからの爆撃で、一部被害が出てしまったことが非常に腹立たしい。 だが、まだ一部だけだ。いらだたしい開拓者たちも反撃で、それなりの被害は受けているのだ。 そう、やって追いかけ続けていた彼らは、はっと彼らの進行方向に立つ異形に気がついた。 待ち伏せか。だが、恐るるに足らず、たかが土偶ゴーレムが一体。 このまま突破してしまえる、そう身構えたのだが。 「わたくしは早くはありませんが……わたくしの砲撃、遅くはなくてよ?」 目立つ土偶ゴーレムのクリスの足下に伏せたクリスティア。 十分引きつけてから魔槍砲でメガブラスターを発射! 充填された練力が強力な光線として、真っ正面から騎馬隊を貫通。 しかも、開拓者の手痛い反撃はそれだけではなかった。 「あはは〜、流石クリスティアちゃんの砲撃は派手ですね〜♪」 そう良いながら、矢のように飛び出したのは霊騎の千歳と猫宮だ。 構えたクロスボウは、メガブラスターの突撃で進路を変えようとしている騎馬隊。 「これはこちらも負けていられませんよ〜。そこ、貫いちゃうのですよ〜!」 足が止まった騎馬隊に、バーストアローの一撃。しかもまだまだ終わらない。 「いやはや、こりゃすごいな。この隙は逃せんなぁ」 同じく矢のように走り出たヘリオスとジルベール、こちらもバーストアローを混乱する騎馬隊へ。 強力な範囲攻撃を、一気に3発たたき込まれた騎馬隊は、すでに大混乱に陥っていた。 騎馬隊の利点はその突破力だ。 速力を活かして、攻撃でも防御でも動き回り続ける限り、騎馬隊は高い戦闘力を発揮できる。 だが、こうして一気に分断され砲撃されてしまえば、その連携が断絶。 倒れる騎馬アヤカシが、そのまま他の馬アヤカシに踏み壊されたりと大混乱。 その隙を逃さず、一気に開拓者は反撃へと移るのだった。 もちろん敵も矢を捨て、反撃のため武器を抜いて迎撃の構えだ。 だが、連携は失われ、数は当初の半分以下。 速度を出せない棒立ち状態となれば、あとは開拓者たちの独壇場だった。 ● 「頃合い……かの? さぁ、氷の檻へと捉えてやろうて」 反撃はまず誘引作戦を成功させた上空班の反撃からだった。 上から、駿龍の天禄の速度を活かし一気に接近したのは椿鬼。 そのまま、敵陣上空をすり抜けざまにブリザーストームを放つのだった。 氷雪の嵐に巻き込まれて、さらに混乱する敵軍。 まだ開拓者の倍はいる騎馬のアヤカシたちも、前後不覚に陥っているようだ。 そこを逃す地上部隊では無い。 敵陣を切り裂くように突貫したのは二騎の霊騎。 同じように自由に駆け抜けながらその戦い方は対称的だ。 「将を射んとすれば、まず馬を射よっちゅーのは騎馬戦の基本だな」 クロスボウと刀を振るいながら、敵陣を疾駆するジルベール。 まずかれは馬の足を止めるため焙烙玉を投擲。逃げ遅れた数騎が巻き込まれ転倒。 そこに突貫してすれ義体ざまに馬アヤカシを狙うのだった。 馬を倒されれば、さらに騎馬の利点が失われる。そう思ったのか、敵もジルベールの愛馬ヘリオスを狙うが。 「うちのじゃじゃ馬を狙おうなんざ100年早いわ!」 ひらりと飛び上がるヘリオス。ロデオステップで回避し、そのまま高飛びでさらに跳躍。 人馬一体の見事な技の冴え。ヘリオスはそのままなんと敵の頭上を飛び越えてアヤカシの包囲を脱出。 そのまま、頭上からクロスボウの見舞うほどの余裕だ。 そして、ジルベールとヘリオスを逃した騎馬アヤカシたち。 そこに突っ込んだのはもう1人の騎兵、千歳と猫宮だ。 「近づかれても……千歳が対応出来るのですよ〜。私たちの連携を舐めないでくださいね〜♪」 こちらはなんと強引な突破攻撃だ。 千歳は蹴りと踏みつけで眼前のアヤカシをなぎ倒し、そのまま敵陣を一気に貫く。 そして、追いかけようとするアヤカシに向かって、 「そんなに固まっていたらいい的ですよ〜。乱射、行きますね〜」 猫宮が乱射で追撃。みるみるうちに騎馬アヤカシの数は10騎に。 そしてそこに突貫してきたのはとどめの一組。 土偶ゴーレムのクリスと、クリスの肩の上から飛び降りざまに攻撃を仕掛けるクリスティアだ。 「では、わたくしも参ります。クリス、背中は任せましたわ」 敵陣に切り込みながら魔槍砲で眼前の敵をなぎ払うクリスティア。 「仰せのままに、お嬢様」 そしてその背後を守るのが土偶ゴーレムのクリスだ。 慣れた様子で連携し敵に対処する2人。そこに、2人の霊騎が何度も突貫を続ける。 たった三組の開拓者に、10組もの騎馬アヤカシたちが良いように撃破されていく中、ついにアヤカシは逃走。 あっという間に三分の一まで戦力を削られ、やっと振りを悟ったのだろう。 だが、もう遅かった。 「逃がしはしませんよ。ケイト、行きましょう」 鷲獅鳥のケイトを急降下させて、逃げる騎馬アヤカシの後ろから魔槍砲の一撃。 そのまま馬ごとケイトが飛鷲天陣翼で、数体の騎馬アヤカシをまとめてなぎ倒す。 その優れた攻撃力はさすがの鷲獅鳥。ケイトは油断無く周囲を見回して次の獲物を探すのだった。 「上手くいけば足が奪えるな……ツァガーン、仕掛けるぞ」 同じく逃げ始めた騎馬アヤカシを追いかけるツァガーンとノール。 まずはノールが遠距離から矢を放ち、馬の足を止める。そこにツァガーンが暴嵐突でまとめてなぎ払う。 一度連携が崩れれば脆いもので、あっという間に数騎の騎馬を屠るノールとツァガーン。 「……よし、上手くいったな。次だ」 そして、あっというまに残りはほんの数騎に。 「はっはー、炎蕾と一緒なら、ホントに黒い旋風になれそな気がするアル!」 こちらは双斧「黒旋風」を手に、一気に残党へと突貫する藍と炎蕾だ。 馬を斧が粉砕し、立ち上がろうとする骨鎧を炎蕾が騎馬と炎で粉砕。 攻撃力に優れた2人は本当に黒い嵐のように大暴れであった。 最後の一騎は、それでも逃げようとしていた。 そこに振ってきたのは雷撃。 「……敵に背を向けるなど、然様な塵芥に価値等要らぬ」 椿鬼の一撃で弱り切った馬骨アヤカシが粉砕。そして転げ落ちた骨鎧が立ち上がったところに。 「これで……おしまい! あたいからは逃げられないよ!」 最後の一撃は、ルゥミの鳥銃の一撃だった。 そしてついに騎馬部隊は全滅。 開拓者たちは、ほっと一息ついて、全員の無事を確認するのだった。 ● 「千歳、よく頑張ってくれましたね〜。帰ったら美味しい人参あげますよ〜♪」 戦いが終われば、やはり大事な相棒の働きに応えてやるのが開拓者たるもの。 猫宮はよしよしと愛馬の千歳の首を撫でていた。 そんな彼女の目に付いたのは、土偶ゴーレムのクリスに損傷が無いか調べているクリスティアだ。 そーっと忍び寄ると、うしろから抱きつきっ! 「な、何をなさいますの京香様。お放し下さいなぁ!?」 「んー、やはり私より背が高いですね〜♪」 「な、なんのことでしょうかっ! あ、そこは……」 わきゃわきゃと猫宮がクリスティアをなで回していたり。 思わず救いの手を求めてクリスを見つめるクリスティアだったが。 「……お嬢様、時には諦めも大事です」 「そ、そんな〜!!」 となかなかに賑やかだったり。 彼女たちだけでは無いようだ。 「大丈夫かしら? ルゥミさん。滑空艇を運ぶの手伝いましょうか?」 「そうそう、炎蕾も手伝うって言ってるアルよ!」 「ニャー!」 抗議の声を上げているイェンリーはさておき。 御調と藍にそういわれてルゥミは首をかくりとかしげて、 「大丈夫だよ! あたい毎日練習してるから、ちゃんと1人でも出来る!」 とにこにこ応えたり。 そんなルゥミのほわほわの銀髪を思わず御調と藍がわしゃわしゃ撫でて上げるのだった。 そんな賑わいを静かに見ているのはオドゥノールと椿鬼だ。 ノールは鷲獅鳥のツァガーンの羽を撫でてやりながら、傷を確かめて。 大きな傷は無いことにほっと一安心。 そして、椿鬼はというと、ただただ信頼する天禄の背にそっと体をもたれさせて、煙管をぷかり。 思い思いに寛ぐ仲間たち、それをみて、思わずジルベールはふっと笑って。 「いやはや、はやり女性陣が多いと華やかだな……まあ、俺には関係ないけどな」 妻帯者のジルベールは渋く笑うと、愛馬ヘリオスの首をぽんと叩き。 「さぁ、そろそろ皆で帰ろうか。早くかえって、美味いもん食いたいなぁ」 ぽつりとつぶやけば、それもそうだと皆も帰り支度。 こうして依頼は無事終了。骨アヤカシたちはすべて撃破されたのだった。 |