賊徒に囲まれて
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/06/29 19:22



■オープニング本文

「おおっと、そこの馬車……ここはタダじゃ通れねぇぜ」
 谷中の道を進む馬車に投げかけられたのは、下卑た声。
 それは日頃から人を恫喝し慣れた人間の放つ、粗野で乱暴な声だ。
「どーやら、たんまりと荷物を積んでるようじゃねぇか。折角だ、軽くしてやろう」
 そういえば、なにが面白いのか、げらげらと笑う男。
 それにあわせるように周囲の男たちもげらげらと大声を上げて笑う。
 そう、男は1人では無い。なんと周囲には何十人もの賊の姿が。
「あー、荷台に客もいるみてぇだな。全員、命が惜しけりゃ逆らわねぇことだぜ!」
 そういって、一斉に周囲を包囲する賊たち。
 ああ、なんて不幸な出来事だろう……。
 場所は、狭い山中の谷にある一本道、前後は賊たちにふさがれて、逃げ場は無い。
 しかも賊たちは何十人も居る。こちらは馬車の御者とその娘さん、それに客だけだ。
 さらに、賊たちが調子に乗っているのには理由があった。
 なんと道の前方には、ぼろぼろのアーマーが一体。
 どうやら賊たちは、手に入れたアーマーを主戦力としているため、自信満々なようだ。

 ああ、なんて不幸なのだ。
 アーマーは整備も不十分なボロボロのもの。とても本来の性能が出るようなものではない。
 賊たちは数は多いようだが、武器や防具を見れば武芸の腕が立つようにはとても見えない。
 そして、極めつけは馬車のお客だ。彼らはたまたま乗り合わせた歴戦の開拓者たち。
 馬車の御者とその娘は恐怖におののいているのだが、やることは一つ。
 調子に乗っている賊たちを、逆にぶちのめす。これだけしかないだろう。

 さて、どうする?


■参加者一覧
浅井 灰音(ia7439
20歳・女・志
霧咲 水奏(ia9145
28歳・女・弓
ゼタル・マグスレード(ia9253
26歳・男・陰
レヴェリー・ルナクロス(ia9985
20歳・女・騎
猫宮 京香(ib0927
25歳・女・弓
朱華(ib1944
19歳・男・志
アルゴラブ(ib8279
32歳・男・魔
アナ・ダールストレーム(ib8823
35歳・女・志


■リプレイ本文


 その不幸な事件は、次のようにして始まった。
「全員、命が惜しけりゃ逆らわねぇことだぜ!」
 そんな賊の怒声が響き渡る中、ほろつきの狭い馬車の荷台にて。
「……京香、私達は何か呪われてでもいるのかしら」
「海は邪魔が入ったので、陸路で今度こそと思ったのですが……またこんな目に遭うとは不思議ですね〜」
 はぁ、とため息をつくレヴェリー・ルナクロス(ia9985)に応える猫宮 京香(ib0927)。
 二人は、以前にも旅路を賊に邪魔された経験があるようだ。
「ほんっと、またこんな目に遭うなんて……此れは何かの呪いかしら? ねえ京香?」
 そんなレヴェリーに、困ったように京香は笑みを返して。
 とりあえず、ため息交じりに二人は外に出るのだった。
 山賊に四方を囲まれてもなお、彼女たち開拓者には余裕があった。
 馬車の中でわずかな間にささっと相談すれば、あっというまに対策ができあがる。
 そう、乗り合わせた8名の開拓者、彼女たちは皆、歴戦の戦士たちだったのだ。
 たかが山賊、恐るるに足らず。
 となれば問題になるのは、力ない弱者。御者とその娘だ。
「……三治郎殿は荷台に隠れて頂いて、おはる殿を抱きしめていて頂けますか?」
 御者の三治郎に霧咲 水奏(ia9145)はそう告げた。
 すでに数名の開拓者はすでに外に出始めていた。そんな中で霧咲は安心させるような笑顔を向けて。
「大丈夫。拙者らが付いておりまする」
 そう頷くのだった。言葉の通り、三治郎はぎゅっと娘を抱きしめる。
「……そうだな、お願いすることはもう一つ。僕達を信じて待っていてくれ」
 続いて告げたのはゼタル・マグスレード(ia9253)だ。ぽむっと娘のおはるの頭に手を置いて。
「あと、おはるちゃんは父さんを励ましてあげて欲しい。……なに、すぐに清閑な旅の続きになるさ」
 そう告げて、霧咲とゼタルも馬車の外に。残ったのは最後の一人、浅井 灰音(ia7439)だ。
「心配しなくて良いよ。ここは私達に任せてくれれば大丈夫さ」
 そういって残される二人を安心させるように声をかける浅井。
 彼女の手には、見事な剣と銃が握られていた。それを見て、思わずおはるは笑顔を浮べて。
「……父ちゃん、きっと大丈夫。皆、凄い開拓者なんだよ!」
 そうゼタルの言葉通り父親の手を握って励ますおはる。それには三治郎も頷いて。
 2人は運命を開拓者たちに任せながら、ただ身を潜めて待つのだった。

「……ああん? 商人と娘はどうした? それにてめぇら……開拓者だな!」
 すらりと揃った8名の開拓者。彼らは皆、それぞれが油断無く周囲を窺い配置についた。
 そんな様子と一同の装備を見て、アーマーの傍らにいる頭目らしき男がわめく。
「へっ、こっちにはジルベリア渡りのアーマーがあるんだぞ! たった8人で何ができ……」
「……何というか、騒がしいな。聞くに耐えん……まったく、弱い奴ほど、よく吠える」
 ぽつりと、ため息と共に朱華(ib1944)がつぶやいた言葉が頭目を切って捨てた。
 訪れず静寂、続いてそれを割ったのは、ごごごと轟音を上げて地面からせり出したストーンウォールだ。
「さて、これで幾分かマシだろう……長口上のおかげで時間が稼げたよ。感謝の極みだ」
 にこりと笑いながら紳士的に一礼したのはアルゴラブ(ib8279)。
「……た、たった8人! しかも女ばっかりだぁっ!! 野郎共、ぶっころしちまえっ!!」
 怒髪天の頭目が、怒声をあげれば、一斉に襲いかかってくる山賊たち。
 開拓者は、有り余る余裕をもって、彼らを迎え撃つのだった。


 まず動いたのは、アーマーに狙いを定めた3人の開拓者だった。
「それでは一つ、実戦訓練と参りましょうか。お二人のこと、お願い致しまする」
 一人目は弓術士の霧咲。馬車を守る戦友の浅井に声をかけると、ずいと前に出る。
「其のアーマーが泣いているわ……貴方達のような者達に使われる事以上に、悲惨な事があるのかしら?」
 二人目は仮面の騎士、レヴェリー。どっかりと大きな盾をかめて、こちらもずいと前に出る。
 そして三人目は、褐色の肌の修羅、アナ・ダールストレーム(ib8823)だ。
 鞘からすらりと抜き放ったのは、長大な真紅の両手剣。魔剣「ラ・フレーメ」だ。
 襲いかかりつつある山賊たちも思わずその迫力に足が止まるほどだ。
「……このアンナリーナ・ダールストレーム。山賊にやられる程ヤワじゃないわよ!」
 アナは、気合いと共に剣を構えると、一気にアーマーへ向かう。
 傍らを固めるのは霧咲とレヴェリーだ。山賊はそれをさせじと向かうつのだが、
「……はいはい、ちょっと道をあけてくださいねー」
 山賊共を蹴散らしたのは、猫宮の後方支援。バーストアローの一撃だった。
 山賊どもをなぎ払いながら飛んでいく矢。その間隙を縫って進む3人。
 そのあまりの速攻にアーマーは大慌て。やっと、ゆっくりと音を立てて機動しはじめるのだった。

 馬車を襲いかかった山賊たちは、数の暴力に酔っていた。
 強い護衛といえども、複数で襲いかかればなんとかなる。事実いままでは何とかなっていた。
 だが、本当に強い開拓者を彼らは知らなかったのだ。それがまずそもそもの不幸だろう。
「こう……派手に動くのが好きな奴、いるよな。さっきの親分気取りとか」
 右の刀は順手、左の刀は逆手に構え、二振りの名刀を構えた朱華はそういって一気に駆け抜ける。
 狙うのは、指示を出しているやつらだ。
 見れば動き出すアーマーから離れていく、先ほどまでがなっていた頭目があっさり見つかった。
 おそらくアーマーの大暴れから距離を取ろうとしているのだろう。
「あれだな……ふん、邪魔すると怪我をするぞ」
 そちらへ向かって一直線に進む朱華。そこに次々山賊が襲いかかってきた。
 山刀を片手に飛びかかってきた山賊。その一撃は刀で打ち払い、その勢いのまま、靴の踵を鼻っ面に。
 粗末な槍を手に、突きかかってきた山賊。その槍を二刀で輪切りにし、こめかみを左の刀の柄で一撃。
 あっさり抵抗をねじ伏せながら、一気に距離を詰める朱華であった。

「……さて、この子たちがやられてはこれからの旅に困るからね」
 すっと馬の傍らに立つアルゴラブ。彼はそういって戦場をぐるりと見回して。
「では、まずは弓持ちの君たちから、風の刃で退場して頂こう」
 あっさり蹴散らされる仲間たちにあっけにとられていた山賊の弓使い。
 だが、慌てて狙いを定めたときにはもう遅い。杖と短剣を構えるアルゴラブの一撃がその弓を破壊した。
 次々に弓使いたちを切り裂くアルゴラブ。彼は油断なく警戒するのだが、
「……なんと、馬を狙う者はいないのか。馬も売る気なのか、それとも知恵が足りないだけか……」
 やれやれとため息をつくアルゴラブであった。

「人の恋路……じゃなくて旅路を邪魔する人は、弓に射られて倒れてくださいですよ〜」
 こちらは笑顔でコワイことを言っている猫宮だ。
「さあ、急所を貫かれたい人からかかってきてくださいね〜」
 言葉と共に、脳天スレスレに矢がぷすり。思わず腰が抜けて倒れる下っ端山賊。
「……どこを貫かれたいかのリクエストは一応聞きますよ〜?」
 走馬灯がちらりと見えたりしながら、ようやく山賊たちは自分たちの過ちに気付くのだった。

「悪いけど、これ以上馬車に近づける訳には行かないんでね」
 短銃で足を一撃すればそれで一丁上がり。命を奪うまでも無い。
 浅井は淡々と敵を無力化しながら、ちらりとアーマーに視線を向けて。
「……そちらはどう? ゼタルさん」
「こちらは問題ないよ、浅井殿。……賊たちも身の程というものが身にしみて分かったようだ」
 斬撃符で一撃を加えればそれで十分、彼もまた命までは奪わずに賊たちを無力化して。
「おや、どうやらアーマーとの戦いが始まったようだ。少々援護をしよう。その間、護りは任せた」
「ええ、こちらは任せて。水奏さんたちの援護、任せるわよ」
 そういって、浅井は剣を抜き放って、接近してきた賊を剣の平で痛打。
 遠くならば短銃、近くなら剣の二段構えで、馬車を狙う賊をつぎつぎに撃破していく浅井であった。


 アーマーこそがこの山賊たちの切り札だった。
 志体持ちは少数しかいない、その1人はアーマー担当で、頭目以外には数名だけだ。
 その数人がアーマーに襲いかかる開拓者たちの前に立ちはだかる。
 ……だが、立ちはだかるだけだった。
「邪魔立てはさせませぬ」
 矢を放つ霧咲。先即封が山賊の動きを止める。そこに突っ込むのは重武装のレヴェリーだ。
「そこをどきなさい! 余計な怪我をしたくなかったら、邪魔はしないことね!!」
 両手で構えた盾ごとぶちかまし。そしてだめ押しはアナだ。
「さあ、そろそろ納め時よ! 勝負よ、アーマー!」
 魔剣の一撃が、山賊を一発で蹴散らして。そして彼女ら3人の前にはアーマーが。
 起動は間に合ったようで、ゆっくりと歩を進めると巨大な剣を掲げて。
 これにはさすがに山賊たちも勝利を確信する。なにせ、アーマーの攻撃力は驚異的だ。
 人の身長以上ある巨大な剣で一撃されれば、あの調子にのった開拓者たちも恐れをなすだろう。
 ……だが、そうはならなかった。攻防は、ほんの一瞬だった。

 振り上げた巨大なアーマー用の剣、その剣とアーマーの腕に錆壊符が命中。
 次の瞬間、アーマーは剣を振り下ろした。
 狙いは弓使いの霧咲だ。だが、彼女の前に立ちはだかるレヴェリー。
 レヴェリーは盾を構える。そこに強烈なアーマーの一撃が命中する!
 山賊は無残にはじき飛ばされるレヴェリーの様を想像した。
 しかし、レヴェリーは踏みとどまった。
「こんな一撃! ちっとも効かないわね!」
 オーラシールドとオーラファランクスで一撃を受け止めたのだ。
 逆に一撃で粉砕されたのはアーマーの剣だ。
 ばっきりと真っ二つに折れて、どすんと地面に落下。その隙を逃さない開拓者たち。
 まず、錆壊符で弱った腕の関節に、霧咲の矢が命中。深々と突き刺さると、アーマーの腕から異音。
 さらにだめ押し。レヴェリーがブレードファンを投擲し、同じ場所に命中。さらなる異音。
 そしてとうとうとどめの一撃。ひらりと舞うように飛び上がったアナ。
「……どんな堅牢なモノでも、脆弱性はあるものよ。万能とは思わないことね!」
 大上段からに構えた魔剣で放つ五月雨の2連撃!
 異音を上げるアーマーの腕関節は、その攻撃で見事分解。豪快な音をあげてアーマーは倒れる。
 そして、そのまま機能停止。
 一瞬の攻防でアーマーはあっけなく倒されてしまったのだった。

 さあ、山賊たちは数を減らされて、のこる頼みの綱は頭目だけ。
 だが、その頭目はどこだ、彼らが頭を廻らせると。
「どうやら虎の子のアーマーはやられたみたいだな。さっきまでの勢いは、どうした?」
 にやりと口端をつり上げる朱華は頭目の鼻先に刀を突きつけていた。
 思わず助けに動こうとする部下相手に、朱華はもう一方の刀を振るって雷鳴剣。
 びしゃんと雷撃を受けて部下は昏倒。そして再び朱華はにやりと笑って、
「……きゃんきゃん吠えるのは止めたのか?」
 と、ぐいと刀を突きつけるのだった。
 すでに戦いの決着は付いた。開拓者はそれを見て、つぎつぎに宣言する。
「……さて、私としては君達全員に死んでもらいたい」
 ぎくりとするような言葉をつげたのはアルゴラブだ。だが彼もにこりと笑うと、
「しかし都合の悪いことにここには人の死に慣れておらず、慣れてはいけない小さな子供もいる」
 ぴたりと短剣を間近の敵に向けて、
「……降伏したまえ、私としては逆らってくれた方が嬉しいがね」
 さらにだめ押しは続く。アーマーから這い出てきた山賊の二番目に偉い副頭目を縛り上げ、
「無駄な抵抗はいい加減にしなさい! もう、勝ち目はないわよ」
 きっぱりと告げるレヴェリー。彼女が副頭目を引きずり出した拍子にアーマーはさらに異音を上げて。
「頼みの綱もこれで終いに御座いまする。今度こそ、降参して頂きますかな」
 そしてだめ押しの霧咲の言葉。
 山賊たちは次々に武器を捨てて、投降するのだった。


「もう、出てきても大丈夫で御座いますよ」
「ええ、それにしてもこの馬車が無事だったようで何よりだよ」
 霧咲と浅井の言葉に、三治郎とおはるがのろのろ顔をだす。
 そこには、すでに全員縛られ拘束された山賊たちがいた。
 どうやらほとんど死者も出さずに、全員を拘束できたようであった。
 賊たちは、連絡を受けて急行した近場の宿場の役人に引き渡すことになったようで。
「すごいすごい! ほらな父ちゃん! やっぱりみんな凄い開拓者だったんだ!」
 ぴょんぴょんとはねて喜ぶおはる、そんなおはるに、なにか毒づこうとする山賊もいたのだが。
「……もし、次に会うことがあれば、私の研究の為に有効利用してあげよう」
 にっこりと笑みを浮べて告げるアルゴラブに、全員完全にびびってしまったようであった。
 こうして無事引き渡しもすめば、旅の続きだ。
「……やっぱり戦闘となると昔の血が騒いでくるのよね。私もバトルマニアってところかしら」
 アーマー撃破の大金星を挙げたアナはそういって、ふと視線を浅井に向けて。
「貴方もそんな感じかしら?」
「……そう見える?」
 急に言われて、思わず浅井が首をかしげて友人の霧咲に聞いて見たり。
「海も陸もダメとなると……次は空路でしょうかね〜?」
「……京香、やめて。そんなこと言ったら、次は空でも賊が出るわよ!?」
 にこにこと猫宮が言うことに、はふーと盛大にため息をついてレヴェリーが抗議してみたり。
 そんな賑わう馬車の中、ゼタルはまたうとうととうたた寝を。
 賊にとって最悪に不幸な事件はこうしてあっさり終わってしまった。
 教訓、喧嘩を売る相手はちゃんと選びましょう。
 というわけで依頼は無事成功。のんびりとした旅の残りを楽しむ開拓者たちであった。