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■オープニング本文 行く年来る年、今年もいよいよ終わりで、もうすぐ新たな年が始まる。 世話になった仲間、親しい友、そして愛しい相手……そんな相手と一緒に年越しの宴はいかがだろうか? 場所は武天にある商業の街・芳野。そこの郊外には六色の里と呼ばれる景勝地がある。 六色の里は紅葉の美しい谷として有名で、そこにある開拓者御用達の温泉宿「桂の湯」が今回の会場だ。 辰蔵とおせんの夫婦が経営するこの温泉宿、最近はなかなかに評判も良いらしい。 そんな桂の湯をこの年末は開拓者の貸し切りにするそうだ。 開拓者御用達の温泉宿だからこそそれが出来るのだが、その代わり一つ頼み事があるそうだ。 辰蔵とおせんはこの宿で暮らしているので問題は無いのだが、やはり他の従業員は帰ってしまうそう。 なので、最低限の準備や宿の掃除などは辰蔵夫妻が行うが手が足りないとのこと。 そのため、料理の材料はそれなりに準備してあるが、ほぼ自炊してもらうこととなるようだ。 宿泊料金や材料費はタダ。ギルドからの援助もあるとかで、開拓者は身一つで来てもかまわないそう。 今年一年を締めくくる宴、友と仲間と、愛する人と一緒に温泉宿で年越しの宴はいかがだろうか? さて、どうする? |
■参加者一覧 / 雪ノ下 真沙羅(ia0224) / 相川・勝一(ia0675) / 礼野 真夢紀(ia1144) / 慄罹(ia3634) / 平野 譲治(ia5226) / ペケ(ia5365) / 此花 あやめ(ia5552) / からす(ia6525) / ネオン・L・メサイア(ia8051) / 和奏(ia8807) / 以心 伝助(ia9077) / 无(ib1198) / 白藤(ib2527) / 言ノ葉 薺(ib3225) / 禾室(ib3232) / 東鬼 護刃(ib3264) / 春風 たんぽぽ(ib6888) / 闇野 ハヤテ(ib6970) / シフォニア・L・ロール(ib7113) / 雨下 鄭理(ib7258) / エルレーン(ib7455) / 破軍(ib8103) / 月雲 左京(ib8108) / 九条緋炎(ib8587) / 劉延(ib8590) / マリアン(ib8591) |
■リプレイ本文 ●それぞれの年越し 開拓者は健脚である。山の中の温泉宿へ行くのも何のその。 かじかむ冬の風の中、軽々と宿にたどり着けば、普段より押さえた明かりではあるものの、宿は営業中だ。 からりと戸を開けのれんをくぐって中に入れば……。 「お疲れ様でございます」 ……従業員は居ないはずなのに、黒髪の少女がお出迎え。 一つにくくった黒髪をゆらして、深々とお辞儀をして開拓者をお出迎えしているのは、 「……からすさん、何をしてるんですか?」 「バイト?」 何故に疑問系。ともかく、あなたたち開拓者を出迎えたのは即席従業員となったからす(ia6525)だった。 手が足りない時に大助かりと、宿の主人夫妻は諸手を挙げて大歓迎。 代わりに、食材や資材は自由に使ってくれとのことで、満を持してからすは従業員として大奮闘のようだ。 「では、お部屋にご案内しますね。あ、温泉はすぐにでも入れますので」 愛想よく、仲間たちを案内するからすに、お客の開拓者たちも笑みを浮かべて。 そんなこんなで、温泉宿での年越しは、楽しげに始まるのだった。 開拓者は多忙である。 こんな年の瀬でも忙しさは変わらず、その合間を縫ってやっとの息抜きに温泉宿を訪れる男が居た。 「暫くは仕事はもういい……伝承も……」 そんなつぶやきとともに、ぐったりと宿に到着したのは无(ib1198)だ。 調査や資料整理の激務で目は疲れるし、肩こりもひどい。 なので、少しでも仕事を忘れて疲れを癒やそうと温泉宿にやってきたようだ。 「あー、後片付けはするんで、食事の方はなんとか……」 「それならば大丈夫だ。料理好きの開拓者たちが多めに作ってるから、つつくぐらいなら余裕はある」 案内役のからすに言われてほっと一息。這いずるように部屋で荷を解くと、尾無狐を連れて温泉へ。 そして、ぶくぶくと温泉につかって、うとうととまどろむのだった。 そんな男湯、あまり客の姿は見えず、静かだったのだが、新たにお客が1人。 それは満身創痍の修羅であった。 開拓者は危険な稼業である。 合戦があれば命をさらし、死線をくぐり抜けるのが日常だ。 そうなれば怪我の一つや二つは日常茶飯事なのである。 怪我を負った修羅のサムライ、破軍(ib8103)は湯治目的でやってきたようで。 ちらりと温泉の片隅で船をこいでいる无を見てから、破軍は温泉へ。 「……全く、しくじってこんな怪我をしちまうとはな……」 そういって体を流してからざぶりと温泉に浸かるのだった。 そもそも、温泉での湯治にはどういう意味があるのだろうか? 戦傷といえば、刀傷など骨身に刻まれるものが一般的だ。 温泉はそうした怪我を直接癒やすのではなく、快復力を高める効果があると言って良いだろう。 ただでさえ高い治癒能力が備わっている志体の開拓者だ。温泉の温熱や効能が合わされば鬼に金棒で。 「まだまだ修練がたりない証拠か……」 ぽつりとつぶやく破軍であったが、この調子ならばまたすぐに戦場に立つことだろう。 さて、実は結構な数のお客がすでに温泉宿にはやってきていた。 だが、男湯は彼ら以外に姿は無く静かなものだ。ではみんなはどこに居るのだろうか? それは、わかりやすい理由だった。 ●恋人たちの年越し 開拓者は、恋多きものである。それに寒い季節ならば、なお人恋しくなるとものだ。 一年が終わり新たな年が始まるこの時期、特別な相手と過ごしたくなるのも自然である。 結果、仲よさそうな恋人たちがたくさんやってきました、ということで。 ……爆発しろ、とかひがんで思う者は、幸いながら今回は居ないようだ。 では、それぞれどんな調子なのかというと……。 「ほぉあぁ……温泉なんて久し振りでした」 「前は誘って貰ったから今度は俺が……って事で。年末に温泉も悪くなかっただろ?」 館内の廊下を離れに向かっててくてく歩く男女の姿が。 温泉で暖まって心地よさそうにのびをしている白藤(ib2527)とその恋人の慄罹(ia3634)である。 慄罹曰く、事情があって周囲には隠している恋人だとかで、2人の行動はあくまでこっそり。 2人の手にはどっさりと鍋の具。どうやらこれから鍋を部屋でやるようであった。 「慄罹さん、慄罹さん。豆腐は少し大きめが良いです」 「あいよ。〆も楽しみにしててくれな」 料理が苦手な白藤は慄罹が手際よく鍋を用意するのを楽しそうに眺め。 そして、恋人に見つめられつつ鶏肉と野菜のみぞれ鍋を用意する慄罹。 2人は楽しく、今年最後の食事を囲むのだった。 さて、もちろん仲のよい恋人たちならこの温泉で気になるところがある。 それは家族風呂だ。まあ、一緒に温泉に入りたがる開拓者たちのために、といったところだろう。 「えへへ、お正月を温泉で……なんて、なんだかすっごい贅沢ー……♪」 かわいらしく笑顔を浮かべる此花 あやめ(ia5552)が手を引いているのは相川・勝一(ia0675)だ。 2人はどうやら家族風呂を使う予定のようで。 ちなみに、余談だが家族風呂は男湯と女湯の間の部分を敷居で区切ってある程度のものだ。 しかし、大人気だということで改装が進み、今では複数の露天風呂が家族風呂として使えるようで。 ともかく、その一つにやってきた2人、 「……ちょっと恥ずかしいですけどタオル巻いてますしいいかな」 テレテレと真っ赤になって此花を待つ相川であった。そこに女湯側の入り口からひょこっと此花が。 「でもやっぱり裸は恥ずかしいし、身体は隠して……って、ぁ」 てくてく入ってきた此花のタオルがはらりとはだけてしまえば、相川もびっくりしてタオルを取り落とす。 「はぅ!? あ、あやめちゃん……」 「あ、えと……せ、折角だし、このまま、入ろう」 そんな此花の言葉に硬直する相川。 「ボク、しょーちゃんになら、大丈夫、だから……ほら、昔はよく一緒にお風呂入ってたし」 「う、それなら……」 というわけで、2人とも真っ赤なままのぼせるまで温泉につかっていたとか。 うむ、仲良きことは美しきかな。 もちろん、彼らのように嬉し恥ずかし仲良しの恋人たちは他にもいるようだ。 「よし、伝助! 早速家族湯へ突撃じゃ!!」 じゃーんと、宿の女将から預かったカギを見せる禾室(ib3232)の発言に、 「へ? か、家族風呂っすか?」 びっくり仰天したのは以心 伝助(ia9077)であった。 2人は宿の調理場で、料理を作って一息ついたところだったよう。 无やその他、料理をどうするか迷っていた開拓者たちに大いに受けたらしく2人は大満足で。 腹ごしらえが終わったのでそれならば温泉だと張り切っていたところでこの発言だったようだ。 「……ん、どうしたのじゃ、変な顔しおって。わしら、もう家族のようなものじゃろ?」 「う、いやそうっすけど、さすがに……」 家族と言われ、さらに戸惑う伝助。彼は家族には縁遠い生活を送ってきたからか、面食らったようで。 だが、どうやら禾室のほうが一枚上手であった。 「それにほれ、水着も二人分持ってきたから平気じゃよ」 水着を手にそう言われ、ついには伝助も折れるのだった。 そしていざ温泉に入れば、冬のからっとした星空の下、熱い温泉につかりつつ、 「……家族と言ってくれたのは嬉しかったっすよ。これからもよろしくっす」 目線をそらしてそうつぶやく伝助に、禾室は満面の笑みを浮かべ、 「うむ、来年もその先もよろしくなのじゃ!」 そういって、年越しを待ちわびつつ、のんびりと温泉で時を過ごすのであった。 さて、そのさらに奥の家族湯は、また別の雰囲気が立ちこめていた。 「……はふ、ネオン様ぁ……♪」 「おやおや。ふふ、真沙羅……甘えん坊だな」 これでもかと甘い空気の中、口移しで酒を呑まされて、甘えているのは雪ノ下 真沙羅(ia0224)。 そしてそれを抱きしめながら、陶然と恋人の頭をなでるのはネオン・L・メサイア(ia8051)だった。 2人とも、異国風に言うならばぐらまーすぎる肢体の持ち主だ。 その2人がうっとりといちゃつく様子は、砂糖に蜂蜜をかけて水飴で固めたより甘かった。 さて、その後2人はどんな様子なのか……微に入り細を穿って描写したいところだがやめておこう。 見る方にもこれは毒だろうし、なにより本人たちも余人に見せたくないだろう。 ということで、よってくったり甘え続ける雪ノ下を、ネオンはお姫様抱っこして、 「ふぅ、こうして2人切りで年を越せるのは良いものだな」 そう言いながら離れに消えていったことだけを記しておこう。 恋人たちの過ごす空間はなにも温泉だけではない。 風呂上がりに、年越しの鐘をまちつつ、離れの部屋で過ごす恋人たちもいるようで。 「……ふむ、髪もちと邪魔ではないかの? どれ、纏めてやろう」 すらりとした麗人の東鬼 護刃(ib3264)が手を伸ばしたのは言ノ葉 薺(ib3225)の髪だった。 てきぱきとまとめてリボンをちょんとつければ、 「あの、髪に触れるのは構いませんがこの髪型は些か男として……」 ただでさえ男としては小柄でかわいらしい容姿の言ノ葉の髪はかわいらしくまとめられてしまったのだった。 「ふっ、ははははっ! すまんすまん。ちと悪戯してみたくなっただけじゃ」 思わず噴き出す東鬼に、仕返しとばかりに言ノ葉は抱きつくと、 「ふふっ、護刃もこうすると随分と可愛らしく見えますよ?」 「む、それならば今度はこれでどうだ? ……ふふ、代わりに手料理馳走する故、それで許してくれな」 そういって、わしわしと言ノ葉をなでる東鬼。 2人は静かにおせちをつつきつつ、年越しを待って過ごすのであった。 ●新たな年 「ふむ、父様と母様は元気だろうか?」 ひとり男湯にて、空を見上げて家族を思うのはシフォニア・L・ロール(ib7113)。 「……今も尚、海賊の仲間達と世界を跨いでいるのかもしれないな」 はははと笑いつつ、そんな風につぶやいて、風呂を上がる。 さて、戻る先は仲間たちが待つ部屋だ。温泉はよかったぞと声をかけようと戸を開ければ。 しゅばっと枕が飛来。ぱしんとそれをつかみ取って、 「喧嘩か?! ……いや、これは枕投げ戦争……か?」 「ちょ、シフォニアさん邪魔!」 「……油断大敵だハヤテ殿。本気でやらせて貰うぞ」 枕投げの真っ最中だったのは、闇野 ハヤテ(ib6970)と雨下 鄭理(ib7258)だ。 戻ってきたシフォニアに気を取られたハヤテは劣勢。そこに淡々と鄭理は枕を投げつけて。 「む、鄭理くん。本当に年上に喧嘩売るの好きだねぇ……手加減しないぞ」 そう笑みを浮かべたまま応戦するハヤテの2人は楽しそうで。 そんな2人を眺めていたシフォニアは、 「……ん、元気があってよろしい。はははっ」 そこへ流れ弾がひゅんと。それを受け止めたシフォニア。 「俺に当てたら二人共許さんからなっ!」 といってますます大混乱に陥るのだった。 さて、この3人。男三名でこの宿に来たわけは無かった。同行者は別部屋の女性2人だ。 「さあ、料理の準備もすみましたし、皆さんを呼びに行きましょうか」 「ええ。でも本当にこんな穏やかのは……何時以来で御座いましょうね」 料理の準備を終えて一息ついたのは春風 たんぽぽ(ib6888)で。 その後ろをゆっくりと微笑を浮かべてついて行くのは月雲 左京(ib8108)だった。 だが、呼びに行った先の男部屋は大混乱中。 「左京ちゃん、今入ってきたら危な……ったんぽぽさん、何して……」 注意を引かれたハヤテがすっぽぬけて流れ枕がたんぽぽを急襲、するかに見えたのだが 「皆様、何……を……ったんぽぽ様、危ない!」 すぱんとそれを受け止めたのは左京だ。そして流れるようなフォームで投げ返せば、ハヤテを直撃して。 「何を考えておいでですか! まったく……」 男性陣三名は、左京に雷を落とされて、おとなしく夕ご飯に連行されていくのだった。 そして、遅めの晩ご飯を食べたり、思い思いの時間を過ごしている開拓者の耳に鐘の音が聞こえ始めた。 それは古い年の終わりと新たな年の始まりを告げるものだ。 手を止めて、それに耳を傾けるのは礼野 真夢紀(ia1144)。 「……ここで年越しするなんて、縁を感じます」 思えば、この温泉宿の立て直しから関わってきた真夢紀は感慨深げにそうつぶやいて、料理の手を止めて。 実は、今回料理の大部分を作ったのは彼女であった。 その周りで彼女の手伝いをしているのは、初依頼だというマリアン(ib8591)だ。 「他に、なにか出来ることはないかしら?」 「鍋も大体終わりましたし、おそばの準備も出来ましたから、今のうちに温泉に行きますか?」 「ああ、それはいいですね」 そういって、2人はやっと一息ついて温泉に足を向けるのだった。 鐘が、ゆっくりと響く中真夢紀とマリアンが温泉に行けば先客の姿が。 暇そうに温泉につかっているペケ(ia5365)と、臨時従業員として働いていたからすであった。 「ぬくぬくですよ」 と温泉での年越しを楽しんでいるペケだが、目立つのはその横のからすだ。 どうやら仕事をしてくれたからと、宿の主人からとっておきの地酒やらを貰ったようで。 「ふむ、お互いこの後にまだ仕事はあるが……どうだ? 働いた後の一杯が気持ち良い」 杯を掲げて勧めるからすに応えるマリアンと真夢紀であった。 そこに新たに1人、エルレーン(ib7455)がやってきた。 「おんせんおんせん……わ、温泉で年越しも風流でいいわね」 みんな考えることは一緒? とエルレーンも3人の輪に加わるのだった。 そして年は暮れていく。 「うちの実家では伊達巻きじゃなくてう巻きがおせちには入るんですよ。あとで一つ食べてみてください」 にこにこと料理のことを話す真夢紀。お風呂を出たらみんなでいただきましょうと言いつつ、 「……どうしました?」 ふと、マリアンが声をかけたのはエルレーンだ。 彼女は自分の体に走る消えかけの傷跡を眺めて、首を振ると。 「ううん。来年は、いい年になってくれたらな、って……」 アヤカシの消えた、平和な世界に、と声に出さずに祈りを捧げるエルレーン。 だが、ふと見下ろせば、もう一つの夢が浮かんだ。 一緒に温泉に浸かってるのは、からす、真夢紀、ペケにマリアンだ。 順につるん、ぺたん、ぼいん、ぼいんである。順繰りにそれを眺めたエルレーンは、 (……あと、もうちょっと私の胸が大きくなりますように……) とこっそり祈るのだった。 そして、丁度そんな織り、最後の鐘が高らかに打ち鳴らされた。 それを聞いて、からすが 「……新しい年に幸多からん事を」 と言えば、一同はそれに応えて杯を掲げ、新年を祝福するのだった。 それぞれ、友と、もしくは恋人と過ごす開拓者たちも同じく新年の到来を聞いた。 「慄罹さん、来年も宜しくお願いしますね」 「ああ、こちらこそよろしくな。こういう年越しは師匠と以来だが……やっぱりいいな。今年は格別だ」 白藤と慄罹は静かに〆のそばを食べつつ、挨拶を交わして。 一方東鬼と言ノ葉は寄り添って。 「薺。今年もこれからも、末永く宜しく頼むよ。共に良き一年としような」 そう東鬼が言えば、言ノ葉はくるりとそのしっぽを東鬼に絡ませて。 「今年も例年以上に二人の愛を育みましょうか」 そういってほほえむのだった。 「おや、鐘も終わりましたか……たしかあの由来は…」 そんな風に思わず考えているのは无だ。仕事休みのためにきていても、考えるのはやはり伝承について。 思わず自分であきれつつも、性分ならば仕方ないと笑みを浮かべ。 「おや、无さん。お一人ですか?」 「ええ、そうだ。辰蔵さんとおせんさん、お時間ありますか?」 このあたりに伝わる伝承を聞かせていただきたいと、と言う无にいいですよと辰蔵は応えて。 まだまだ夜は続くようだ。 もちろん開拓者たちの宴も終わっていなかった。 「はい、お待たせ」 まだ忙しく働いているからすは、宴でも給仕役のようで、人気はかきあげ蕎麦のよう。 そんな料理や、自作の料理をつつきつつ盛り上がるのは、 「なんだか俺、本当に保護者だな」 思わず苦笑するのはシフォニア。それもそのはずだ、鄭理は温泉に行っていて居ないが、 「ふぇ……左京しゃんは可愛い〜ですねぇ〜」 お酒を飲んだからか、なぜか左京に抱きついているのはたんぽぽだ。 抱きつかれて左京は目を白黒させていたり。 「うん、これも美味しいな!」 一方ハヤテは、たんぽぽの料理をばくばくがっついていたりして。 そんな光景に思わずシフォニアは噴き出すのだった。 そして夜は更けて。寝静まる者も多くなった真夜中。静かに過ごす者たちの姿があった。 「……お前さんは遊興か?」 不意に声をかけられたのは、たんぽぽを部屋に寝かしてきた左京だった。 振り向けばそこには縁側で酒を嘗めている破軍の姿が。 「いえ、わたくしも、養生を兼ねてで御座います」 そんな左京に、破軍は徳利を示して見せて。お互い言うとも無く酒を飲み交わし始めるのだった。 ともに手をつないで眠りに落ちる若い恋人もいれば、夜通し温泉に浸かる姿も。 手伝った疲れでぐっすり寝る者もいれば、ただ静かに月を見上げる開拓者もいる。 様々な思いとともに、新しい年は始まったようだ。 さて、今年はどんな一年になるだろうか。そんな思いを抱く開拓者たちであった。 |