【PM】世界の敵
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: ショート
EX :危険 :相棒
難易度: 普通
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/11/26 21:38



■オープニング本文

※このシナリオはパンプキンマジック・シナリオです。
 オープニングは架空のものであり、DTSの世界観に一切影響を与えません。

 開拓者は冒険の果てに何を見るのか。
 これはその最後の一幕。
 世界の敵となった者と、それを討とうとする者たちの物語だ。

 幾つもの死線を越えて、貴方の力は遙かな高みへとたどり着いた。
 アヤカシを屠り、国を守り、仲間を助け、世界を救いつづけたのだ。
 だが、その結果‥‥待っていたのは敵意だった。
 強すぎる力を得た貴方はまさに一騎当千。
 並ぶ者無き勇者、孤高の達人、救国の英雄、世界の救い主。
 だがそんな力を持つ者を、敵よりもなお恐ろしいと思う者たちがいた。
 幾度も世界を救ったのに、貴方はまるで化け物のように扱われたのだ。

 そこで、貴方には二つの道がある。
 一つは、たとえ裏切られようと、自らの正義を信じて希望の剣となる道。
 そしてもう一つが、世界を滅ぼそうと自らの心のまま世界の敵となる道だ。
 どちらを選ぶ?

 ‥‥そう、ならば貴方は世界の敵だ。

 さて、どうする?


■参加者一覧
シュラハトリア・M(ia0352
10歳・女・陰
瀧鷲 漸(ia8176
25歳・女・サ
リーナ・クライン(ia9109
22歳・女・魔
レヴェリー・ルナクロス(ia9985
20歳・女・騎
ウィンストン・エリニー(ib0024
45歳・男・騎
ラティオ(ib6600
15歳・女・ジ


■リプレイ本文

●絶望の戦場
「あはっ、あはははっ‥‥いい眺めね、レヴェリー」
「ええ、シュラハ‥‥」
 少女と女騎士の名はシュラハトリア・M(ia0352)とレヴェリー・ルナクロス(ia9985)。
 二人の名は、世界中に鳴り響いていた。もちろん開拓者としてではない。
 大アヤカシの少女とそれを守り続ける仮面の騎士としてである。
 その二人の見下ろす光景は、地獄絵図だった。
 町は焼き尽くされ死屍累々、そしてその屍たちはシュラハの放つ瘴気によってアヤカシと化す。
 無限に増えていく不死者の軍勢、それはかつての冥越八禍衆以上の災厄であった。
 そして、その日もシュラハとレヴェリーは、戯れに殺戮し軍勢を増やすためにさまよっていた。
 レヴェリーに抱きかかえられたまま、ふらりと立ち寄った大きな街。
 そこは不思議な光景が広がっていた。
 季節はまだ冬ではない、だが街は真っ白に凍り付いていたのだ。
 立ったまま氷の彫像と化した人々。そこに雪が街だけを狙ったように降り積もっていた。
 不思議に思ったシュラハとレヴェリーが街に踏み込んだ次の瞬間!
「レヴェリー、障壁よぉ♪」
 シュラハの声にとっさに障壁を張り巡らせるレヴェリー。それが彼女の能力だ。
 瞬時に二人の周囲を不可視の障壁が囲んだ。そこにぶち当たったの無数の氷の弾丸だ。
 続いて巨大な衝撃波が飛来。だが、そのすべてをレヴェリーの障壁が受け止めきった。
 衝撃波が二人を残して周囲の建造物を粉々に破壊し、地面には深い亀裂を穿つ。
 そして、舞う雪が晴れればそこには巨大なハルバードを手にした女戦士と魔法使いがいた。
「‥‥あら、たしか‥‥紅淵の魔神に白銀の魔女、ね」
 シュラハが漏らした言葉に、瀧鷲 漸(ia8176)とリーナ・クライン(ia9109)が動きを止める。
 異名で呼ばれた瀧鷲とリーナの2人は、改めて眼前の2人を観察する。
 そこにいるのは骨で出来た鎧と仮面を装備した女騎士と、彼女に抱かれる黒衣の少女だ。
 そこで瀧鷲とリーナの二人も眼前の二人の正体に思い至ったようで、戦闘態勢を解くのだった。

「‥‥ふん、運が無かったな。ここは直に戦場になる」
 しばしの静寂の後、瀧鷲がこぼしたのはそんな言葉だ。
 聞けば、二人は追っ手をこの場所で待ち構えているとのこと。
 世界の敵となった瀧鷲とリーナは、決戦の地としてこの場所を選んだのである。
 だが、そんな瀧鷲の警告に、シュラハはにっこりと笑顔を浮かべた。
「それは運が良かったわ。強い相手が来るのでしょう? せっかくだから私も遊んでいくわね」
 するとシュラハの影がするすると広がり、その暗闇からは無数の不死者の軍勢が現れた。
 凍り付いた街の跡で、世界の敵を自認する4人は、追っ手を待ち構えるのだった。

 そして、そんな一行を遠くから眺める二つの影があった。
 1人は壮年の騎士。積み重ねた年月を感じさせる風貌に浮かんでいるのは覚悟だ。
 因縁ゆえか、それとも彼が選んだ道のためか。
 悲壮な覚悟を漂わせて、その男ウィンストン・エリニー(ib0024)はその街へと歩き出した。
 なんのため? それは、世界の敵としての覚悟を見せつけるためだ。
 そしてもう1人。いや、1人ともいえないその存在は、風に漂いながらその光景を見ていた。
 風の中に時折幻視される踊り子の姿。それは幻か、はたまた精霊の仕業か。
 それはかつてラティオ(ib6600)と呼ばれた開拓者の姿であった。
 踊りを極め、幻惑と魅了の技の究極へと向かう過程で、彼女は半ば精霊と化していたのだ。
 意識も、価値観すらすでに人の枠を超えて、ただただ彷徨う存在。
 すでに世界からは敵として認識されている彼女は、騒動の香りに引き寄せられたようで。
 ただふらりと、気ままに彼らの輪に加わろうとするのだった。

●それぞれの因縁
 騎士は虜囚だった。
「‥‥敵と通じていた‥‥」「‥‥刻印を刻まれたアヤカシの手先‥‥」「‥‥裏切り者‥‥」
 アヤカシに一度囚われてしまった騎士、ウィンストンはかつての仲間に疑われた。
 失ってしまった信頼は戻らない。
 さらには、敵首魁のアヤカシは撃破できたものの、そのときにアヤカシは置き土産を残したのだ。
 騎士ウィンストンを通じて情報を得ていたと言うことを暴露したのである。
 たとえ、それが無理矢理だったといっても、もうウィンストンはその信頼を取り戻すことは出来なかった。
 それどころか、彼は幽閉されてしまったのだ。
 仲間を守るために戦い、その結果がこの仕打ち。
 それ故に、彼は自分の覚悟を示すために、逃げ出したのである。
 世界の敵となる覚悟は出来ている。
 ならば為すことは一つ。戦うことだった。そうして彼は戦場に身を投じたのである。

 戦場の中心に陣取っているのは骨の鎧に身を包んだレヴェリーと彼女が抱きかかえるシュラハ。
 楽しげに笑っているシュラハと、対称的に語る言葉も少なく表情もないレヴェリー。
 それもそのはずである。レヴェリーは彼女が騎士として守り続けた人々に捨てられ、裏切られたのだ。
 守るべき相手に拒絶されたレヴェリー、その心の隙を突くことは、シュラハには容易かった。
 あとは簡単だ。仮面の姫騎士として人々を守り続けたレヴェリーは今やシュラハの最愛の配下。
 忠誠の代わりに、シュラハがレヴェリーに与えたのは彼女を束縛する骨の仮面と鎧だった。
 今は人々を守る盾は、シュラハを守る最悪の敵となってしまったのだ。
 そんな2人が、リーナと瀧鷲の2人と合流したという知らせは世界を震撼させた。
 実はリーナと瀧鷲には秘密があった。それはこの2人にはすでに自由意思がなかったのだ。
 リーナが幼きころより手にしていた魔道書『暗き聖典』。それにに封じられていたのは闇の魔力だった。
 その魔力に魅入られ、意識を乗っ取られたリーナは、白銀の魔女の名にふさわしい存在となった。
 街を凍りつかせ、無秩序に氷雪の滅びをまき散らす白き災厄。
 そんな彼女とともに行動しているのは魔神と呼ばれる女、瀧鷲だ。
 強さと一撃の破壊力を求め続けた瀧鷲はその戦闘力を恐れられるようになった。
 規格外ともいえるその体格に、それに見合った巨大なハルバード、そしてそれをふるう膂力。
 しかし、そんな彼女もリーナと同じく自らの意思で動いているわけではない。
 彼女の意思を縛っているのは、胸中央の宝珠だったのである。
 その宝珠の来歴は知られていない。古代の遺物か、はたまた何者かの手によるのか。
 だが、問題なのは最強の1人である彼女が強き魔女であるリーナと組んでいることだ。
 すべてを凍らせる白き魔女と破壊を司りし紅淵の魔神。
 その2人に意識があろうと無かろうと、人類の敵であることにはかわりないのだ。

 世界の敵として目される者たちが1カ所に集まっている。
 それは危険な知らせであったが、これを好機と考えた人々もいた。
 そこで発令されたのは大規模な戦であった。大勢の開拓者をはじめ兵士たちが募られたようだ。
 今回の敵は、アヤカシでは無くかつての同胞。
 しかし、シュラハにレヴェリー、そしてリーナに瀧鷲の危険度はすでに限界を超えていた。
 彼らを滅ぼさねば、人類は滅びるとまで恐れられた敵。
 運命をかけた戦いへと、世界は突入したのである。

 そしてその戦いに引き寄せられる半精霊のラティオは、踊りながらふわふわと漂っていた。
 踊りとは見る者を幻惑し魅了する技術だ。
 その極致にあって、ラティオはついに人の枠を超えてしまった。
 アル=カマルの伝承にある精霊たちのように、人を惑わす存在となったのである。
 気の向くままに誘惑し貪り、その結果巻き込まれた人がどうなろうと知ったことではない。
 そんなことを繰り返すうちに、アヤカシ以上にやっかいな存在へと彼女はなったのだ。
 そんな彼女を引き寄せるものが戦場には感じられた。
 千々に乱れる思考の中で、かすかに浮かび上がるのは懐かしさだ。
 なにかを求めて彷徨う半精霊の妖しき踊り子は、その懐かしさを追い続けるのだった。

●幕引き
 数千人規模の開拓者が参戦した今回の大規模戦役。
 だが、その進軍はたった1人の男に止められることとなった。
「かかって参れ。オレ自身が裏切り者たる『ウィンストン・エリニー』!」
 大音声とともに立ちはだかった髭面の騎士は多勢を相手に気後れした様子も見せず、
「被害を受けたい者は存分に承るが故、来るが良い!」
 そう吠えて大剣を構えるのだった。
 ウィンストンはそのまま突貫し、敵陣のただ中に切り込んだ。
 その戦闘力は圧巻、剣風だけで人が木の葉のように吹き飛ばされるほどだった。
 だが、それを止める者たちがいた。
 隠遁生活を捨てた者、または人々の助けに応じた者。またはただただ戦いに来た者。
 人々に恐れられ裏切られながらも、まだ世界の敵とならなかった者たちが立ち向かってきたのである。
 鬼を名乗り戦い続けた末、本物の戦鬼と化した月酌が仕掛けた。
 分裂し、無数の異形と化した鬼の群れが襲いかかる。
 それを蹴散らすウィンストンは吠えた。
「まだまだ稚拙だ小僧!」
 だが攻撃は止まらない。
 次に仕掛けたのは超越的な陰陽師、葛切カズラだ。巨大な式がウィンストンを襲い打ち据える。
 そして、最後は使徒ミナージュを名乗る三笠だ。
 天から降り注ぐ天罰の一撃、さしもののウィンストンも大技三つに膝をついて。
「‥‥朽ちる事により、我、謝りとなさん」
 そのまま大剣に寄りかかるようにして二度と動かなくなるのであった。

 戦場にあって、縁ある者と戦いを繰り広げている者もいた。
「っ‥‥まだ、届かない‥‥」
 つぶやく桃色の髪の砂迅騎、ラティオを相手は彼女の妹ルキノ。
 ルキノも超級の開拓者だ。その斬撃はすべてを切り裂き、弾丸はすべてを射貫く。
 だが、それすらも世の理を超越した姉ラティオには届かなかった。
 非実体化で攻撃をかわし、幻惑を重ねていればあとは一方的な戦いだ。
 刻み、打ちのめし、相手を組み伏せるラティオ。
 そこにはかつて無い実感があった。懐かしさからか、ラティオは相手を求め続け‥‥
「‥‥ルキノ、あなただったのね」
 ラティオは初めて自分を取り戻した。‥‥自分の胸に深々と突き刺さった刃によって。
「‥‥迷惑をかけたわね。いろいろあったけど‥‥ありがとう」
 その言葉を最後にラティオは人としての実体を取り戻し、事切れるのだった。

「無邪気なる氷霊の気まぐれ‥‥吹雪け!」
 白銀の魔女リーナの魔術が強烈な吹雪を生み出した。
 その氷点下の嵐の中、戦い続けている瀧鷲。相手は月酌だ。
 異形の群れへと分裂する月酌を、瀧鷲は広範囲へと衝撃波を飛ばすグランドクラッシュで撃退。
 まがまがしいオーラを吹き上げて、瀧鷲は戦鬼との戦いを続けているのだった。
 傷を受ければ驚異的な治癒能力で再生し、リーナの援護を受けながら戦いは五分。
 しかし、その援護がはたと止まった。
 リーナのもとにやってきた追っ手。それは彼女の妹、ベアトリーチェであった。
 白銀の魔女は、彼女と比肩する魔力を秘めたその妹の対処で手一杯になったのである。
 月酌と瀧鷲の膠着状態は崩れ、生まれる一瞬の隙。
 その隙を逃さず月酌の一撃が瀧鷲の胸を貫くのだった。

 一方、リーナは妹相手に優勢だった。
「世界を氷付けにする‥‥それが私の目的だよ。だから‥‥その邪魔は例えキミが相手でもさせないよ?」
 バラの花弁を攻防に使うベアトリーチェに比べ、リーナの氷雪魔法は攻撃重視。
 薔薇を瞬時に凍らせ、花弁の刃は冷気で粉砕。だが、術者同士の攻防は長く続かなかった。
 しぶといベアトリーチェ相手に、リーナは最大の秘技で攻撃。
「我が望みしは冷たき風、我が汝に与えるは氷精の冷たき抱擁‥‥」
 詠唱とともに高まる魔力、気温は急低下し絶対零度へと近づいていた。
「絶対零度の棺の中で眠りなさい! アブソリュート・ゼロ!」
 そして放たれた最強の氷結魔法。だが、それをなんとベアトリーチェは薔薇の花弁の鎧で守りきった。
 最大の魔法が破られて呆然とするリーナ。その隙に彼女の妹の放った一撃がリーナの打ち倒す。
 破壊される魔道書、リーナは闇の呪縛から解き放たれるのであった。
 だが、解き放たれた彼女は自信の行いの責任をとったようだ。
 妹の見ている前でリーナは自らを氷の棺に閉じ込めるのだった。
 それをみるかつての盟友、瀧鷲。
 瀧鷲も、死んではいなかった。胸の宝珠を月酌に破壊され自我を取り戻したのだ。
 瀧鷲はただ、悲しげにリーナをみてから、姿を消すのだった。

 そして、最大の戦いは終幕へ。
「此れは私の心の壁。私を裏切った者達への、拒絶の障壁!」
 レヴェリーの障壁は誰にも破られなかった。
 数千の開拓者を相手にただ1人で守りを固めるレヴェリー。
 そしてその守りの合間に、レヴェリーに抱かれたシュラハは攻撃を繰り返す。
 だが、その攻撃を邪魔する者がいた。開拓者ギルドの切り札、礼野真夢紀だ。
 羽衣の力で倒れた仲間を癒やし、シュラハの攻撃を次々に無力化していく彼女。
「‥‥気に入らないわね」
 その働きにシュラハはいらついているようであった。
 深追いするシュラハ。それを支えるレヴェリー。
 だが、対する礼野はなんと自らを犠牲に羽衣の力をすべて解放した!
 広がる清浄な霊気。それに触れたシュラハの配下たちは次々塵と化す。
 呆然とする2人、その隙を逃がさず仕掛けたのは三笠と葛切だ。
 全方位から攻撃する最大奥義で攻撃、さしもののレヴェリーの障壁も二重の最大攻撃でついに粉砕。
 だが、それでもレヴェリーはシュラハを守りきるのだった。
「‥‥怪我は、ない? ‥‥よかった‥‥」
 我が身を犠牲にシュラハを守ったレヴェリーは安堵した。
 だが、シュラハは違った。致命傷を受けたレヴェリーにまるでさげすむような視線を向けたのだ。
「シュラハぁ‥‥もう、私には貴女しかいない、のに」
 最後の拠り所であるシュラハにすら見捨てられたレヴェリーは、絶望した。
 すると、その絶望に呼応するように、彼女の力は覚醒を遂げたのだった。
「‥‥もうこんな世界は嫌――共に往きましょう。誰も居ない場所へ‥‥!」
 拒絶する能力の極致。レヴェリーは、この世界すら拒絶したのだ。
 逃げようとするシュラハ、だが彼女の前にはレヴェリーの障壁が立ちはだかる。
「いやぁぁっ!? しゅ、シュラハはこんなトコで‥‥やぁぁぁぁ‥‥!」
 2人は、レヴェリーの体から発散された闇に飲まれて消えていくのだった。
 すべてを見届けた開拓者たちは、世界の敵達が滅んだことにほっと安堵するのだった。

 もしかすると、それはただ一時の安寧かもしれないが。
「‥‥うふふぅ‥‥♪ まだまだ、みんなで遊ぼぉね‥‥」