|
■オープニング本文 泰国は南那、とある村から離れた正規軍天幕にて――。 「心配するな。『防壁の森』だかの突破ルートは情報提供する予定だが、誰も破れんよ。‥‥瞬膳(しゅんぜん)とかいったか、貴様の正規軍はもちろんできんし、開拓者でもできん。俺たち紅風馬軍だから突破できた芸当だ」 ぐい、と酒をあおってから肌の浅黒い、目のぎらぎらした男がきっぱり言った。 紅風馬軍の頭領、紅風山千(コウフウ・サンセン)だ。 彼が提案した「協力や取り引きしたいならそちらで夕餉を用意しろ」というのが実現した、和平の夕餉はすでにたけなわだった。紅風馬軍からは10人が参加し、開拓者は深夜真世(iz0135)のほか8人が呼ばれている。デザートに泰国産めろぉんが出てたりもする。 「何よ〜。私たち開拓者はアヤカシの森『魔の森』からの侵攻だって食い止めたのよ?」 先日まで敵として戦った相手の言葉にカチンときた真世が身を乗り出して突っ込む。 「相変わらず隙だらけで可愛いな、アンタは。‥‥俺が言ったのは、『突破』だ。討伐や制圧じゃねぇ」 近寄った真世の顎に手を伸ばして支え、山千が彼女の顔を覗き込んで言う。「あん」と真世が嫌がるに任せて開放する。 「『防壁の森』のアヤカシを完全退治すると、貴様らは困るんだろ? ‥‥まったく、アヤカシに頼るなんざいけ好かねぇにもほどがあるぜ」 「世の中いろいろです。‥‥ところで、森にいたアヤカシは大団子虫だけですか?」 けっ、という顔をする山千。瞬膳は冷静に言葉を受け止め、逆に聞いた。これが本来、夕餉を設けた目的でもある。 「いや。森では飛行する昆虫タイプが加わるからさらに厄介だ。しかも、半鬼半馬のアヤカシまでいやがる。これらが複合して出てくるともう、手に負えん」 「半鬼‥‥半馬?」 新たな情報に瞬膳が唖然とした。 「ああ。馬の前肢肩口から上が鬼の上半身になっている。盾に槍を持って組織的に戦うからほぼ対人戦闘と一緒だ。文字通り『人馬一体』なんで、機動力は高いな。半面‥‥」 ここまで山千が説明した時だった。 「隊長っ! 信号弾が上がってます。数は二つ」 「何?」 「なんだとっ?」 瞬膳と山千が反応する。 見ると、場所がまったく離れている。 「偵察隊からだな‥‥」 「くそっ。駐屯地を狙われたか。瞬膳、すまぬがいったん戻る。贈られた霊騎、試させてもらう」 「十騎でいいのか? 手は貸すが‥‥」 「無用。二十を伏せてある。‥‥逆に、駐屯地が手薄なんだがな」 瞬膳の申し出を断り、駆け出す山千。 「私たちは?」 「では、真世さんたちは我々の偵察隊の救援に向かってください」 開拓者九人に迎撃を依頼する瞬膳。彼本人はここを守りつつ増援に備えるらしい。実際、正規軍も各方面への偵察などで十騎ほどしか残っていない。開拓者も呼ばれている理由の一つである。 こうして、真世たち開拓者は友軍の援護に向かうのだった。 そして、見ることになる。 半鬼半馬のアヤカシ「人馬鬼」十二騎に弄ばれほぼ壊滅している南那正規軍七騎を――。 場所は琳に隣接する平野部。 夜ではあるが、月明かりで視界は確保できる。 目指すは友軍救出である。 |
■参加者一覧
萬 以蔵(ia0099)
16歳・男・泰
カンタータ(ia0489)
16歳・女・陰
新咲 香澄(ia6036)
17歳・女・陰
ジルベール・ダリエ(ia9952)
27歳・男・志
アイシャ・プレーヴェ(ib0251)
20歳・女・弓
ロック・J・グリフィス(ib0293)
25歳・男・騎
龍水仙 凪沙(ib5119)
19歳・女・陰
クロウ・カルガギラ(ib6817)
19歳・男・砂 |
■リプレイ本文 ● 天幕で開拓者の動きは慌しい。 右へ左へと動く南那正規軍や紅風馬軍をすり抜けながら緊急出動をしていた。 「飯食うてる暇もあらへんなぁ」 やれやれと立ち上がるジルベール(ia9952)。萬 以蔵(ia0099)もすでに動き始めている。 「瞬膳さんっ! 詳しい場所は」 クロウ・カルガギラ(ib6817)は、深夜真世(iz0135)の背後から親衛隊長に声を張った。 「北北西に真っ直ぐ。月を背にして走り森が見えたらその縁を北上。それで遭遇するはずです」 「分かった。急ごう、真世さん」 「うんっ」 より正確な位置を把握して、クロウと真世も踵を返す。 「白蘭花!」 叫んでいるのは、ロック・J・グリフィス(ib0293)。 「白蘭花の魂を受け継いだ、新たな白蘭花よ‥‥行くぞ!」 白い馬体に乗り、引き締まった面を一瞬緩めて霊騎の首をなでる。ひひんと白蘭花は後ろ立ちして駆け出すのであった。 「すいませ〜ん。軍馬を貸してくださーい」 カンタータ(ia0489)は忍犬フーガと一緒。正規軍から軍馬を借りる。 「さぁ、レグルス今回もよろしくだよっ! 観羅も久しぶりに出るよ!」 新咲 香澄(ia6036)も南那での愛馬、レグルスを軍から借りた、 「なんだ、私はついでのようだな。‥‥まぁよい、久しぶりに力を貸してやろう」 香澄の朋友、管狐の観羅がひょっこり出てきて不満を漏らす。が、自分のやるべきことは理解しているので、ふわりと白い三本尻尾をひらめかせて大人しく消えた。 「シギュン、久し振り〜。さあ、私たちのコンビネーション見せてやろう!」 うさ耳をなびかせ走った龍水仙 凪沙(ib5119)も、南那での愛馬、シギュンに騎乗。連れて来た甲龍、桜鎧は近くの都市・眞那に預けている。 「人馬鬼、ですか‥‥なかなか厄介な相手みたいですね」 そんなつぶやきは、アイシャ・プレーヴェ(ib0251)。霊騎「ジンクロー」を駆る。 「アイシャさん、とにかく現場に急行するでぇ」 ジルベールが霊騎「ヘリオス」で横に付く。 「ええ。負けませんよ」 きっ、と前を見て拍車を掛けるアイシャ。 ジンクローと共に月夜の平原を急ぐのだった。 ● 月は、明るい。 森など木々の下に入らない限り、目が慣れてしまえば身動きが取れなくなるなどということはない。改めて月夜の美しさが感じられる夜だ。 「霊騎の人は構いませんから、早く行ってください〜い」 縦に伸びた隊列。 その中段からカンタータの声が響いた。 「無論そのつもりだ‥‥行くぞ白蘭花、助けを待つ仲間達の為、地を駆ける雷となれっ!」 戦闘のロックが高速走行でさらに後続を引き離す。ジルベールもヘリオスに高速走行を指示、一気に加速した。クロウもユィルディルンで付いて行く。その後ろに、以蔵。 「真世さん、無茶はしちゃダメですからね!」 アイシャも加速。真世の静日向は調練不足で高速走行を会得してない。 「真世さんは軍馬組と一緒ですよ。‥‥もちろんこちらも全力移動ですけどね」 「うんっ。分かった、カンタータさん」 「遅れないようについていけば大丈夫だよ」 「真世さんは私たちと一緒に後方支援しつつ、そのまま負傷者の救助してもらうといいかな?」 カンタータの言葉に頷く真世。同じく高速走行の霊騎組に追いつけない軍馬組の香澄と凪沙が急ぎつつもじっくりと到着後の動きを想定しながら励まし合う。焦りはない。 一方、霊騎組。 「おいらがちーと顔見せしない間に、こちらでは色々進展が有ったみたいだな‥‥」 以蔵が朋友の霊騎「鏡王・白」と高速走行で飛ばしつつ、表を引き締めていた。 しばらく南那の仕事から離れていたうちに対立していた紅風馬軍と和解していたのは驚いた。 「まあ、おいらも前と違い霊騎に乗ってるわけだし」 世の流れか。 そんな思いに包まれるが‥‥。 「やってやるぜ!」 出番とあらば全力を尽くすのみ。加速して前を追う。 これを見送り、微笑する者がいた。 クロウである。 (懐かしいな‥‥) 感慨深く思うのは、夜間行動。 「砂漠じゃ遠くまで行くときは涼しい夜に移動するのが基本だからな」 思わず口にする。 ここで、森の縁に到着。右に進路を取るのだった。 ● 「見えたっ! 皆、止まってくれ」 やがて、遠視していたクロウが声を上げた。 「急ぎたくはあるが‥‥」 「連携は必要だな、うん」 ロックと以蔵が焦る心を落ち着ける。軍馬組も追いついてきた。 「まだ戦場ではないな?」 「急ぐけど作戦は必要だからね」 香澄は懐からちょこんと顔を出して首を捻った観羅にそう言い聞かせる。好奇心旺盛のようで。 ともかく、クロウ。 「敵は十二騎、友軍は森から離れつつこちらに近寄っている。五騎しか見えないから負傷は二騎だな」 彼の解説は手早い。 「その二騎、奥に倒れている可能性が高いです」 カンタータが推測し主張する。 「なにはなくとも、友軍から敵を引き離したいよねっ」 「よし、それならおいらが囮なる」 割って入れれば理想的だね、などと思いを巡らせる凪沙に、以蔵が力強く頷く。 「俺も短銃で敵を呼ぼうかなぁ。‥‥お。あと、真世さんは怪我人よろしゅう。陰陽師さんらは、これつこうて」 「一応の明かりはあるものの‥‥これでは余り遠距離からの射撃は通用しそうにありませんね」 ジルベールが真世に符水を投げ、陰陽師三人に梵露丸を渡す。その横では弓のアイシャが難しそうな顔をする。 「ジルベールさん、アイシャさん‥‥」 符水を受け取りながら、いつも戦場で頼りにする二人のいつもと違う様子に不安そうにする真世。 「行くぞ白蘭花、助けを待つ仲間達の為、地を駆ける雷となれっ!」 そうこうするうちロックが気合と共に駆け出した。もうこれ以上、連携確認に時間は掛けられない。 「真世さん、無茶はしちゃダメですからね!」 アイシャも、にこっと微笑して念押しするとジンクローで駆け出す。 「まずい、二騎が新たに崩れたっ。ともかく行こう」 進行する事態を確認し皆を急がせるクロウだった。 ● 開拓者の到着は、まさにギリギリだった。 「怪我人苛めとらんとかかってきいや」 ジルベールが宝珠銃「皇帝」を有効射程距離外からとにかく撃ったため、敵が攻撃の手を一瞬緩めたのだ。 「この距離なら暗くても覚悟してもらいますね。‥‥ジンクロー」 アイシャの一声で霊騎のジンクローは最適置。間髪入れず構えた呪弓「流逆」を六節で連続射撃。ジルベールの音とアイシャの撃は敵の半分の足を止めることに成功した。 そして二人を次々追い抜いていく霊騎たち。 「これ以上、やらせはせん‥‥輝け聖なる十字の盾よ」 いつも通り迷いもなく先頭で突っ込むロックは、いつもと違い聖十字の盾を掲げている。展開するオーラの障壁。これぞ騎士が誇る専守防衛の極意、スィエーヴィル・シルト。正に突き出されようとする敵の槍と味方の間に最適置で強引に割り込むっ! ――ガキッ! 「もう大丈夫だ」 「すまないっ」 ロック、守った! しかし、敵は津波のように押し寄せているぞ。 「突きだな。‥‥うん」 割って入った以蔵は敵の攻撃を見切ると棍で受け流し、勢いを止める。 次に、射撃音が再び響く。 「これ以上追撃できると思うなよ?」 クロウが見事な手綱捌きで躍動している。 射撃後、これ見よがしに側面を駆け抜ける。 さすがに反応する敵たち。 「ん?」 ここで、クロウが気付いた。 敵の動きが驚くほどいいのである。 ● 「これは反則やろー」 片手剣での戦いに切り替えたジルベールが愚痴っている。 半鬼半馬の敵アヤカシ「人馬鬼」は、先に紅風山千が言った通り、文字通り人馬一体の反応の良さを見せているのだ。 特に小回りがいい。 ジルベールのヘリオスの場合、亜麻色の馬体を巡らせるのに主人を気遣っている。というか、自分勝手で無茶な動き方はしない。人馬鬼は、自分勝手で無茶な動き方をする。 ともかく、先行した霊騎三人は乱戦に突入。覚悟をしていたとは言え、数の違いで防戦一方となる。 「くっ。こうなると選別射撃は難しいですが‥‥」 距離を保つアイシャは援護射撃を続けるが、目まぐるしく動く敵と混戦状態で有効打を思い切って撃ち込めない。 そうこうするうち、やはり数騎がアイシャを狙って詰めてきた。 「むしろありがたいですけどね」 今度は確実に狙える。 朧月を当てて勢いをそぐ。 もう一騎は一瞬にして距離を詰めている。下がりつつ撃つこともできるが‥‥。 「ジンクロー」 前に出たッ! 霊鎧で守りを固め体当り。先の先を取りタイミングをそらせる形で、攻撃を食らったアイシャの傷も浅い。 ここで、後続軍馬組が登場。 「雷雲より来たりて、光を供に疾(はし)れ!」 凜とした言葉とともに雷閃が迸る。 凪沙が両手を前に掲げ射抜くような瞳で止まっている。最初から全力戦闘で出し惜しみする気はない。 「ボクが行くしかないね」 「出番だな」 その脇を香澄が駆ける。観羅が同化して金剛の鎧となる。 「二刀流瘴刃烈破っ! ここは通さない!」 初撃の瘴刃烈破は防がれるが、左の追い討ちはきっちりと。そしてすれ違い。 「真世さん、ボクたちは急ぎましょう」 カンタータと真世はこの隙に抜ける。逃れた友軍は戦線をいったん離脱した。 ところが、敵もさるもの。 二対三で状況不利と見るや、本隊へと取って返す。 戦場は目まぐるしく変化していた。 ● さて、霊騎の最前衛組。 「会食の途中だったのでな、お前達には早々に消えて貰おう。‥‥この槍の輝きと共に塩の固まりと散れ、テンプルナイツトルネード!」 ロックもが自らの奥義で渾身の力を込め、敵を貫く。見事に塩となり散り消える人馬鬼。 そこを、カンタータと真世が通り過ぎた。 「やはり、敵は打たれ弱い面がありそうですよ!」 ロックが感じた手応えをカンタータも予想通りと感じ声を張る。 「そうか? だったら‥‥」 疾風となり戦場を右に駆け抜けつつ数騎を釣り出していたクロウが逃げる足を止めた。銃を放ち防がせておいてから、今度は突っ込む。 「助けに入るのが遅いな」 にやりと体を沈め、撃たれた味方の前に入ろうとした敵の脇をすり抜けてシャムシールで斬り付けた。助けてもらえると思った敵は無防備で、この一撃に大きく動きを鈍らせた。 しかし、クロウは止めに戻らない。 そのまま、数的不利にさらされている味方本隊へと戻り裏から奇襲する。さらに弧を描き取って返すと先の敵に止め。 「如何なる時も足を止めない。それが砂迅騎の戦い方だ」 夜風にざわめく一本木の枝を背景に振り返った姿は、熱砂の戦場と幾分も変わらない。 そして、以蔵。 囲まれ集中攻撃を浴びていたが、受け流しや空気撃、生命波動を駆使して耐えつつ我慢の戦いを繰り広げていた。 その流れが変わったのは、カンタータの到着とその声が聞こえたため。 「なるほど。こいつらおいらより小せぇしな」 実際、人馬鬼は小柄だった。 人馬鬼自体は一般人より大きいのだが、馬に乗った人の高さと比べると身長は低い。くわえて、しなやかな動きはするが、重量感に乏しい。 「力押しでも良さそうだな、っと!」 以蔵は筋肉質でたっぱもある。盾で防がれようがごりごりとその腕力で圧倒する。連々打で手数も忘れない。がっちり乱戦の中心を担う。 もちろん、ジルベールも。 「馬と人が別々やからこそ協力し合えるし、何より心強いもんな。頼りにしてるでヘリオス!」 剣で戦いつつも、ヘリオスが距離を取ってくれている間に銃のリロードをしたり。各個の動きが同時にできる利点を生かしつつ銃撃を見舞っていた。 ● さて、カンタータ。 「やはり手前と奥。‥‥真世さんはとにかく奥へ」 倒れた負傷者を発見。自身は止まる。 が、すでに戦場の流れが変わっているぞ。 敵がこちらへ取って返しているのだ。 もちろん、味方も来ている。 「ボクの火輪はなかなかに熱いよ? 耐えられるかな」 香澄が遠方から援護射撃。 アイシャの射線も来ている。 この隙にカンタータは結界呪符「白」を展開。 しかし、当然敵は回りこむッ! 「くっ!」 背後に要救助者がいる。カンタータ、逃げることはできない。忍犬フーガが主人を守らんとダッシュアタックで果敢に攻撃するも反撃を食らっている。 その時、結界呪符「黒」がどどんとそびえた。そして雷閃の音。 「ちぇっ。馬の腹の下からせり上がって吹っ飛ぶと思ったのに‥‥」 二枚の壁の裏から現れたのは、凪沙だった。障壁は下からせり上がるわけではないのでこれは仕方なし。 そして壁の向こうの向こう、最初の激戦区では。 「これ以上戦うというのであれば、俺達は容赦はせぬ、全滅したくなければ、早々にここより立ち去れっ!」 ロックが最後まで前線に残っていた敵に大声を張っていた。ばさりとなびくマントに、構えた騎槍と盾。空に浮かぶ月を背後に、雄々しく猛る。 この時、いったん離脱した友軍三騎も呼吸を整え戻ってきていた。 これで継戦していた敵もついに転じることになったのだった。 もっとも、敵の敗走ルートは要救護者の倒れる場所と重なる。暗くても動きやすい獣道でもあるのだろう。来た道を去るつもりらしい。 「逃げ道を作ってください!」 カンタータが叫ぶ。 うまい手で、全員がそれと理解するもこれが難しい。 「え? ちょっと!」 何せ、一番突出している形となっている真世がいるから。しかも一番傷付いている二人を守らねばならない。 「真世さん、当たらんでもエエから撃って」 遠くからのジルベールの声。これに従う真世。 「あ」 ジルベールが自分の撃った弓で体制を崩した敵に背後から迫り秋水で止めを刺したところは見たが、そこで呆けたような声を上げていた。 結界呪符「黒」が目の前にそびえたのだ。 「真夜さん、安心して救護に当たってね、こっちには通さないからっ!」 「香澄さんっ!」 障壁の横から現れたのは、香澄だった。そのまま火輪で敵の動きをそらす攻撃に移る。 これで、敵は来た道とは違うが若干手前から森に入るのだった。 「ふうっ」 「真世さんが怪我したら彼氏に怒られるからな」 力を抜く真世に、追いついたジルベールがにやりと言う。「んもう」とか言いつつ手当てに戻る真世だった。 「馬の首が前にない分、移動の早い鬼アヤカシ、という感じでしたか? 武器の取り回しも良さそうでした」 援護射撃をしつつ寄って来たアイシャが、後方から観察していた手応えを話す。 「う〜ん、そうだねぇ。動きの反応も良かったような?」 凪沙もやって来て真世を手伝いながらアイシャに返す。 「一体ずつのパワーや迫力はなかったな。落ち着けばたいした敵じゃないかな、うん」 「そうだな。救出戦でなければまだ戦果はあったろう」 以蔵が顎をさすりロックも頷く。確認し合うと、五騎を退治したようだ。 「これからあいつらと戦うわけになるのかぁ」 ともかく本陣の瞬膳にも報告しないと、と考えをまとめる凪沙であった。 |