【チョコ】羽伸ばしの海
マスター名:瀬川潮
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 易しい
参加人数: 10人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/09/28 22:57



■オープニング本文

「コクリちゃん、お疲れ様」
 にこ〜っ、と満面の笑みを浮かべているのは、チョコレート・ハウスのオーナー、対馬涼子。
「依頼してきたジルベリアの資産家さんは、とおっても満足してたわ。『これで私の顔も立ちました』って」
 どうやら、コクリ・コクル(iz0150)たち開拓者が展開したアヤカシの溜り場「岩人形の河原」攻略のための空陸連携作戦を高く評価してもらったらしい。空路の安全で、その資産家などが取引する空路の安全が確保されたからだ。
「でも、報酬をもらっただけで対馬さんは得してないんでしょ?」
 ちょっとは頭が回るところを見せようと、コクリは涼子を気遣って唇を尖らせた。
 実際、その資産家とはすでにチョコレートの取引契約は決まっていた。評判が上がっただけでは割の合わない仕事である。コクリたちはそれだけ苦労した。仕事の報酬としては妥当な金額なのだが、空路確保で長く恩恵を受けるあたらの方が長期的に見れば断然お得であった。
「ふふ。ありがとね、コクリちゃん。‥‥大丈夫よ。あの資産家は信用できるわ。ちゃんと仕事の価値を分かっているらしくて、チョコレートのほか各種品目の取引を私に移してくれたの。それに、彼ならジルベリアでチョコレートの販路も拡大してくれそう。良いご縁に巡り合えたわ」
 とても満足そうに涼子は言う。
 コクリは、ここで真顔に変わった。
 涼子の言葉の最後に大切なものを見たのだ。
「どうしたの? コクリちゃん」
「‥‥ううん。涼子さん、すごいなって」
「うふふ、今日のコクリちゃんはとっても可愛いのね〜。‥‥んふ、決めたわ。とっても気持ちが良いので、このまま南の島にバカンスに行っちゃいましょう。今年は忙しくてまだ尖月島に行ってないコトですし」
 コクリを撫で撫でしてにんまり目尻を下げて、涼子は言うのだった。
「そう言えば、尖月島の近くにイルカが来るようになったって‥‥」
「ええ。イルカと思いっきり遊んでいるコクリちゃんを眺めたいわ。だからもちろん、コクリちゃんも一緒よ?」
「その‥‥、ボクだけ?」
 コクリ、遠慮がちに口にした。
「もちろん、開拓者を呼んできていいわよ。八幡島たちチョコレート・ハウスのクルーにも休暇は必要だし、私ものんびりしたいし、にぎやかになるわよ〜」
「やった! それじゃ、ギルドに募集かけるね」
「ええ、お願いするわね。前回の空陸連動作戦に限らず、今年はろりぃ隊もチョコレート・ハウスもいろいろあったから、広く募っていいわよ」
 幸せそうに涼子はコクリの右手を取って、両手で包むのだった。

 というわけで、冬以外は泳げる泰国南西部は南那沿岸の尖月島で、コクリと一緒にちょっと遅めの夏休みを楽しんでもらえる人、求ム。
 今回は、チョコレート・ハウスのクルーたち半分と一緒です(全員男性)。夕食はバーベキューとなるので、ねぎらってあげてください。遊ぶときは、船を出して対馬涼子とイルカと泳ぎに行くなどする必要があること、彼らも水着の女の子と一緒は恥ずかしがるので、基本的に夕食時以外はそっとしておいてあげてください。


■参加者一覧
巴 渓(ia1334
25歳・女・泰
新咲 香澄(ia6036
17歳・女・陰
アルネイス(ia6104
15歳・女・陰
猫宮・千佳(ib0045
15歳・女・魔
ルンルン・パムポップン(ib0234
17歳・女・シ
御陰 桜(ib0271
19歳・女・シ
朽葉・生(ib2229
19歳・女・魔
羽喰 琥珀(ib3263
12歳・男・志
リィムナ・ピサレット(ib5201
10歳・女・魔
リーゼロッテ・ヴェルト(ib5386
14歳・女・陰


■リプレイ本文


 尖月島は今日もバカンス日和。
「よ〜し、一番乗り〜!」
 両手を滑空艇のように伸ばして走るちっちゃな女の子は、リィムナ・ピサレット(ib5201)。濃紺のくすぅる水着姿を見せるように半回転。
「ちょっと、リィムナさん待ってよ〜」
 ドタバタと紺のツーピース姿でコクリ・コクル(iz0150)が追ってくる。
「いつもは大胆な水着なのに、どうして今日はそれなの?」
「ばっちり水着の日焼け跡をつけて、来年の夏まで持たせないとね!」
 ああ、今明かされるリィムナの日焼け跡の秘密!
「コクリちゃ〜ん!」
 呼ばれたので振り向くと猫宮・千佳(ib0045)がにゃふん♪と抱き付いてきた。
「うに、あたしの水着はどうかにゃ? かにゃ?」
「大胆な‥‥いや、可愛いんだけど、今のでずれてないかな、とか」
 真っ赤になるコクリ。千佳の水着はオレンジのツーピースで布の面積が若干少ない大胆だた。
「うにうに。可愛い水着にゃ〜♪」
「いや、ずれそうだよ〜っ」
 目を輝かせる千佳に水着を気遣うコクリ。
「コクリちゃん、思いっきり楽しむよっ!」
 この騒ぎに新咲 香澄(ia6036)もやって来た。が、コクリが唖然としている。「どうしたの?」と香澄。
「いや、ボクもそんな可愛いのがよかったかな、とか」
 香澄は、胸元がVの字にざっくりしつつもフリフリなホルターネックの爽やか青ビキニ。下は腰布でひらひらだ。
「まあ、イルカと遊ぶ分にはそれでも大丈夫」
「イルカと戯れるコクリさん‥‥。私も拝見したいです」
 香澄が言ったところで、しっとりと朽葉・生(ib2229)がやって来た。すらっと立つ姿は腰の括れが美しい。肌を覆う部分の多いミヅチの水着を着用している。
「へえ〜。生さん、そんなスタイルしてたんだね〜」
「香澄さん、そんな。‥‥皆さん、そんなに見ないで下さい」
 ぴったりと体に張り付く水着で、普段そういった格好をしない生はじろじろ見られたり。
 ここで、わん、と忍犬の桃が走り寄ってきた。
「今度はコクリちゃんも一緒。楽しくなりそうね♪」
 現れたのは当然、桃の主の御陰 桜(ib0271)。今日もぴんくのびきに姿がセクシーだ。
「さぁ、イルカさん達と遊びにレッツゴー!」
 右拳を上げ笑顔爆発でやって来たのは、アルネイス(ia6104)。白のビキニがまぶしく下は腰巻でひらひら。何より「カエルさん装備セットオーン♪」(本人談)のかえるさん浜辺用ぼ〜るやかえるさん髪留め、かえるさん腰紐などがらぶりーきゅ〜と。ついでに桃がいるならとジライヤ、ムロンちゃんをどろんと召還したり。
「やれやれ、若い娘ばかりじゃないか‥‥」
 大型朋友といえば巴 渓(ia1334)。アーマーケースを担ぐのはいいが、格好はポケットいっぱいの朱藩作務衣だったり。
「コクリちゃん、今日は思いっきり楽しんじゃいましょう!」
 健康的な肢体を伸ばし手を振りルンルン・パムポップン(ib0234)もただいま登場。ももいろビキニは何気におニュー。笑顔も胸も弾んでいる。
「なあ、早く行こうぜっ!」
 虎獣人の羽喰 琥珀(ib3263)は、実は男一人だったが楽しいことを前にそんなの気にするわけもなく、遅い遅いと急かしたり。
「まったく、ゆっくりもできないわね」
 溜息つき最後尾を歩き赤い長髪を跳ね除けるのは、リーゼロッテ・ヴェルト(ib5386)。ふわりと優しい大人な雰囲気の白いホルタービキニ「フラフティ」が似合うとおり、大人びたところのある女性だ。
「きっとゆっくりできますよ」
 ワンピース水着に長い腰巻を纏った対馬涼子もやってきて、さあ、沖に出発だ。


「よし」
 ざ、と砂を踏み締めたのは渓。今、アーマーケースを下ろして解除したばかりだ。
「おおおおおっ! 出ろおおおおっ!! カイッザアアアアアーッ!!」
 パチンと指を鳴らして雄叫び。その背後でがこん、と渓の愛用アーマー、カイザーバトルシャインがそそり立つ。赤い機体に日差しがきらりと跳ねる。
 そこに、コクリが沖へ出ると伝えに来た。
「へええっ。これで渓さんは戦ったんだね〜」
「まーな。折角の休みだ。カイザーの補修指示報告にちょいと整備するぜ?」
「ボクは、渓さんとも一緒に遊びたかったんだけどな」
「嬉しいが、コクリのチョコ何とかって船も、補修を欠かしたら飛ばなくなるだろ? それと一緒だ」
 カイザーに見とれるコクリに言い聞かせ追い返した。
「何かありゃ、すぐに俺が出向くこともできるしな」
 そんな使命感にも燃え、カイザーと共に海を臨む。浜風が渓のマフラーを、カイザーのマントをなびかせている。

 さて、コクリは皆と合流し、イルカの海域に出発。
「それじゃ、いくぜっ!」
 櫂を取るは琥珀。男の出番だと張り切りぎいっと力強く漕いでいる。
「さぁ、思いっきり羽をのばそうかっ♪」
 期待に瞳を輝かせる香澄。ここで、「あ」と何かに気付く。
「観羅。ほら、海だよ?」
「なんで私まで‥‥暑いのは苦手というに‥‥」
 良かれと思って管狐の観羅を出した。が、気高そうな白い姿に元気はなくぐったり。
 この様子に、涼子がにっこり。
「うふふ。コクリちゃんのお仲間さん、こんなに賑やかなのね」
「あはは」
 これがきっかけで、香澄と涼子はじっくり話すことになったり。
 ところで、イルカ探しは?
「取りあえず前に会った場所に行ってみるわね」
「そうだね」
「おっし、任せとけっ」
 桜とリィムナの声に、琥珀が威勢よく返す。ぐいっ、と進路も微調整。
 そんな中、リーゼはふんふん♪と鼻歌混じりにいい気分。
「ん。海中もまた綺麗ねぇ。水が澄んでてよく見えるわ」
 実は人魂の魚を海中に放っている。色鮮やかな熱帯魚の群れとすれ違う様子などが大変美しいようだ。
 そして――。


 「いたっ! イルカさん!」
 ルンルンが指差す先の先、波間に小さくイルカの背びれがあった。
「やっほ〜♪また来たわよ〜♪」
 桜は持参した球「友だち」をイルカに投げてから飛び込み。
「よっし。菫青(きんせい)、こっちだ!」
 琥珀はどぷ〜んと錨を投じておいてから空を飛んでいた朋友の駿龍、菫青を呼ぶ。
「わ、すごい。こっちに寄って来た!」
 歓喜の声は、コクリ。こんなの見たことない、と大喜び。
「遊んでらっしゃい、コクリちゃん」
「うんっ、それじゃ」
 涼子が笑顔でコクリを送り出す。コクリ、どぼ〜ん。
「よ〜し、ボクもっ」
「私も行きましょう〜」
「にゃっ」
 香澄、アルネイス、千佳も続く。
「コクリさんたちがイルカと戯れるようにするには‥‥」
 生はそっと入水しつつ思案する。が、すぐに目を大きく見開いた。
「ち、ちょっとぉ! ‥‥がふっ」
 どっぱ〜ん、とコクリを乗せたイルカが大きく水面から顔を出して沈んだのだ。
「きゃ〜っ!」
 今度はアルネイスの乗ったイルカがどっぱ〜ん。アルネイスの大きな目が楽しそうにまん丸になっている。
「これは凄いですね‥‥」
 あまりの迫力に唖然とする生。
「コクリちゃん面白そうにゃ♪ あたしも一緒に遊ぶのにゃ〜〜〜っ!」
 どうやら千佳は乗り遅れたようだが、最後に悲鳴。下からイルカにあおられ、次の瞬間にはイルカに乗っていたのだ。
「あはは。‥‥生さんも気をつけたほうがいいよ」
「え?」
 ざざざ、と隣をイルカに乗って泳ぎ去った香澄が楽しそうに言う。
「わっ!」
 この隙に、生も下からあおられイルカに連れ去られていた。
「これは‥‥これは確かに凄いです」
 真っ赤だった生の顔が、イルカの速度に爽やかな笑顔を取り戻した。気付くと、右にコクリが「ぷはっ」と現れた。さらにその向こうにはアルネイス。左には、千佳が並ぶ。そうこうするうち、香澄にも追いついた。
「いやっほーっ!」
 五騎が並んで、いま左にバンク。白い水しぶきが跳ねる。
 その手前を、琥珀がさあっと横切った。
 何と、菫青に結んだ荒縄を持ち、水に浮く竹盾に乗って水上をスキーしている。
「アハハー、菫青もっと早く早くっ」
 あまりに楽しそうな様子に、イルカも寄って来た。一緒にジャンプしたり。
「あ、そうだ」
 ここでピンと来る。方向を変え船に近付くと、どぱ〜んと飛び込んだ。イルカもどぱ〜んと真似したり。
 そして、船でコクリたちを眺めていた涼子の元にざばりと顔を出す。
「乱暴しなけりゃ大丈夫だから、撫でてみるか?」
「ありがとう、気にしてくれて嬉しいわ」
 涼子、びっくりしたようだがイルカにタッチ。イルカも喜んでいる。何かと気にして話し掛けてくれた香澄と共に、感謝するのだった。


 賑わいはまだまだ続く。
「桃。水練もいいけど、イルカとも遊んだら?」
 涼子の隣で、戻ってきた桜が忍犬にそんなことを。
「わんっ! わんっ!」
「じゃあ、いるかの背中を飛び移ってあっちまで行くってのはどう?」
「わんっ!」
 というわけで、桜は持参した竹の輪を遠くに投げる。桃は泳ぐイルカの背中をぴょんぴょん飛んで、竹の輪をあぐりっ! 次の瞬間には、楽しそうだと寄って来たイルカに竹の輪ごとつつかれてもみくちゃになったが。
 ここで、船に上がる人影一つ。
「よ〜し、今度は‥‥」
 リィムナである。イルカと遊んでいたが、戻ってきた。朋友の迅鷹、サジタリオも喜んで翼を広げる。
「サジ太、合体だ!」
 掛け声と共に、サジ太が光の塊となる。同化スキル「友なる翼」だ。白い光の翼が背中に生える。これで空飛ぶスク水少女の完成。間髪入れずに、空へ。
「わ、リィムナさん!」
 空からコクリたちと併走するリィムナ。気持ち良さそうに飛ぶ。
 と、ここでスキルの効果切れ。
 そのまま両手を伸ばし飛び込む。サジ太はそのまま高度を取った。
 どぷ〜ん。
「あははっ。ボクもっ!」
 コクリもイルカの背中から飛び込んでリィムナに抱き付き。
「面白そうにゃっ♪」
「じゃあボクもっ」
「あはっ」
 千佳も香澄もアルネイスも飛び込んで抱き付きっ。イルカも追ってきてどぷんどぷんと体を撫で付けてきてからかわれまくり。
 その蚊帳の外で、生が一人。
「私は‥‥」
「生さんも一緒だよっ!」
 引き返したコクリが生を引きずり込む。「はわっ」と生。
 いや、もう一人。
「ちょっと。私はのんびりと‥‥」
「リーゼさんも、ほらっ!」
 のんびりイルカの背に乗ってうつぶせになっていたリーゼロッテだが、運悪くこの海域を通り掛かったところでコクリに襲い掛かられた。ああ、リーゼさんも女の子やイルカからからかわれまくりの運命に。
「うふふふ」
 船からこの様子を双眼鏡で見ていた涼子も大満足だった。


 さて、浜辺の渓。
「よし、こんなもんかな‥‥」
 ふうっ、と汗を拭いほん整備用のメモを畳んだ。
 ここで、渓を呼ぶ声。コクリが走ってきている。どうやら戻ってきたようだ。
「渓さん、ただいま。‥‥今度は浜で遊ぼっ!」
「あ、いや。俺は監視もするつもりだし、後でな」
「絶対だよ?」
 苦笑し駆けて戻るコクリを見送る。嘘を言った、と感じているからだがまあ、夕食の仕込みも手伝う予定なので仕方ない。
 見上げる空には、千佳の甲龍と琥珀の菫青の龍2匹がくるりと円を描いて楽しそうに飛んでいた。
 と、すうーっと低空に降りてくる影が。
 その先に、生がいた。どうやら生の朋友、迅鷹のヤタのようだ。
「羽は伸ばせましたか?」
 優しく生が聞くと、こくと頷く。すると、また飛び立った。空にはルンルンの迅鷹、忍鳥『蓬莱鷹』と、サジ太も飛んでいる。弧を描く二羽の輪へと入っていくのだった。
 ここで琥珀の声が響く。
「そんじゃ、びーちばれーはじめるぜ〜」
 早速棒を立てて投網を渡して参加8人を二組に割って‥‥。
「じゃ、いくですよ〜♪」
 アルネイスが下からサーブ。
「そっちボールいったぜー」
「任せてっ!」
 琥珀の指示にコクリが反応し、レシーブ。
「こ、こうですかね?」
 生がトスをして、琥珀がスパイク。見事に決まる。わーっ、とルンルンを交え円を描くように回って喜び合う。これがバレーのお約束でお楽しみ。
 この様子を浅瀬で見ている者が。
「楽しそうで何より。‥‥観羅、海に入る?」
「入るわけなかろう‥‥こんな塩水に」
 ぷいっとする白い管狐をくすくす笑う香澄だったり。
 その横を千佳が泳ぎぬける。
「今年は泳いでなかったからちょうどいいにゃ♪」
 とっても気持ちいいにゃぁ、と極楽気分のご様子で。

 再び、バレー。
「ルンルンさん、いいよっ」
 コクリが両手を組んで構え、ルンルンがそこを足場に三角跳び。
 キラリ煌く陽光を浴び弓なりで‥‥。
「降り注ぐ太陽の力を借りて、今必殺のルンルンアタックなんだからっ!」
 揺れる胸に、高角度からどばーんと打ち下ろされるスパイクが炸裂っ!
「なんのっ!」
 これをリィムナが素晴らしい反応で着弾点に転がり込んでレシーブしたっ!
「あたしは揺れるものはついてないから。思いっ切り動いて勝ちにいくよっ」
 へへっ、と会心の笑み。つるぺたの意地である。
 さらにアルネイスのトスからスパイクするリィムナだが、生のブロックにかかる。背の低いろりぃ隊の中で生の身長は高い。これは仕方なし。
 しかし、球はまだ生きている。
「桃、こうなったらアレをやるわよ!」
「わんっ!」
 実は忍犬の桃と参加した桜。桃に拾わせると、高くトス。豊かな胸も揺れる。桃が飛跳躍で高くジャンプすると、そのまま「わおんっ!」と打ち下ろした。
「どっち打つかわかんないよ〜っ!」
 生のブロックを越し突き刺さるボールに飛びつくコクリと琥珀だが、犬は回転して打つのでどこを狙ったか分からない。あっさりと抜かれ、ずさーっと砂もぐれに。
 この様子を、木陰で楽しむ者も。
「試合終了かしら?」
 リーゼロッテがおみ足をくねりと伸ばし、優雅に夜幻扇で扇いでいる。隣で忍犬アルベドがすやすやしている。のんびりとしたものだ。
「魚取りくらいは手伝わないとね」
 す、と立ち上がる。といっても、手伝うのは真水作りの方だったが。
「んじゃ、投網でたくさん魚取るよ〜」
「そーれ引っ張れー」
 リィムナと琥珀はバレーに使った網で漁。
「うに〜♪ いい眺めだったにゃね〜」
 バレーでお姉さんたちの瑞々しく躍動する姿をたっぷり堪能していた千佳もお手伝い。
「コクリさん、これで体の海水は流れ落ちましたよ。‥‥こちらの陰殻西瓜は真水で冷やしておきますね」
「じゃ、生さんはボクが洗い流してあげるね」
 生は真水を魔法で作ってコクリを洗い流したり。もちろん、美味しく食べるための食事の準備も。
 渓はここで手伝いに来る。
「準備ってのは重要だからな」
 きらりと笑顔。
 もうすぐ夕暮れ。


 そして、バーベキュー。
 じゅうじゅう焼けるお肉に魚に野菜。
「めろぉんもあったから、これも冷やしておいてくれ」
 チョコレート・ハウスの乗組員たちは森へと探検に行ってたようで、自生していためろぉんを生に渡す。
「では、後で切り分けて配りましょう」
 にっこり生。
「おひとつどうぞ♪」
「お、美人の酌は最高だねぇ」
 桜は酒を注いで回り。乗組員たちは喜んで飲むが、桜が他人の酔う様を観察したがっているとは露も知らずに後々醜態をさらすことになったり。
「さぁ、思いっきり食べて飲みましょう」
 そうそう、飲むだけじゃいけません。ルンルンがにこにこと給仕に回る。「花の妖精さんのようだねぇ」とか乗組員から喜ばれる。
「何時もお疲れさんー。沢山焼いてくから、腹一杯食ってくれな〜」
 焼く方も大丈夫。琥珀がじゃんじゃん焼いて量産態勢。
「‥‥一曲、やるか」
 渓は、バイオリンを取り出しぐっと雰囲気を盛り上げる。不思議な、夢のような一夜を印象付けた。
「今日はオレたち、お客様みてぇだな」
 この状態に乗組員たちは浮かれまくりの飲み食いしまくり。
「はい。千佳さん、あ〜ん」
 涼子も開拓者の心遣いににこにこしつつ、千佳に食べさせて楽しんでいる。
「にゅ。コクリちゃんもあーん、するにゃ♪」
「う‥‥。あ〜ん」
 千佳、食べさせてもらったり食べさせたりでもう幸せ状態。
「はい、今まで大人しくしてたご褒美よー」
「あ、リーゼさん。ボクもやってみたい〜」
 アルベドに魚をやり首を撫でるリーゼを見て、恥かしがったコクリはこっちに逃げたり。すぐ千佳も来たが。
「ムロンちゃん、そろそろ良さそう」
 しばらくして落ち着いてから、アルネイスがムロンを再召喚。
「美味そうなのだ!」
 ああ、ムロンちゃん食いしん坊万歳状態。
「あつあつで美味しいお肉やお野菜をたっぷり食べましょう♪」
 次々ムロンに食べさせるアルネイス。どちらも何とも幸せそうだ。
「チョコと西瓜、めぉろんはどうです?」
「お、いただくぜ?」
 生はでざーと配給。演奏を終えた渓はチョコを味わい、「ふぅん、この嬢ちゃんたちみてぇな味だな」とか。
 と、この時。
「生さんも食べてっ!」
「食べるにゃっ!」
「う‥‥」
 コクリと千佳に捕まり、交互にあむっと食べる姿をさらす生だった。
「花火でもしましょう!」
 アルネイスの言葉が響き振り返ると、どばーっと線香花火セットを出していた。
「いいわね。こういうの」
 リーゼは持参したワインを優雅に傾けていたり。
「あら、お子様はダメよ?」
 にこりとリーゼ。ちぇっ、とコクリと千佳。
 そんなこんなで南国の夜は、賑やかに、しっとりと流れる――。


 そして、おねむの時間。
「やるなっ。‥‥っていうか、手加減する方の身にもなれ〜っ!」
 男性用別荘では、枕投げ大会で琥珀が集中砲火を受けていたり。
 そして、女性用別荘。
「あぁ! 駄目です駄目です! それは枕じゃなくて私のぬいぐるみです〜」
 やっぱり枕投げ大会で、アルネイスのかえるのぬいぐるみまでいつの間にか右に飛んだり左に飛んだりする始末。
 しかし、それも束の間。
 干した水着のはためく別荘の明かりが落ちる。
「ふふっ、皆は寝たかな?」
 むくりと起き上がったのはアルネイスだ。
「旅行と言えばコレですよね〜♪」
 筆を出して、皆の顔に可愛い髭を書いて悪戯し放題。
 そしてしばらく後。
 むくり、とまた起きる人影。
 こそっと誰かを起して外へ出たぞ?
「今日も南十字が明るく輝いてるね、天儀とは星が違うから楽しいよ」
 笑い合って悪戯書きを消した後、別荘の濡れ縁に腰掛けて星を眺める二人の人影。
「うん。星がきれい。‥‥あ。いま振り返ったとき、髪飾りみたいに見えたよ?」
 満天の、降るような星空。その下で香澄とコクリが静かに微笑み合った。
「むにゃ‥‥。もう食べれません‥‥」
 目をこすりつつ、ルンルンもやって来た。半分寝ぼけてるが、綺麗な星空を見て正気を取り戻し、コクリの隣に座る。といっても、それは一瞬。
「戻ろうか?」
「うん。一緒に見れてうれしかったよっ♪」
 二人でルンルンを支えて布団に戻るのだった。

 夜半。
「ん?」
 体を撫でる感覚に、コクリが薄目を開ける。
「‥‥ね、コクリちゃん」
 軽く、ぎゅっと抱きついてきたのは、リィムナだった。
「ずっと友達だよ?」
 うん、と頷くと、またぎゅっと抱かれた感覚があった。夢か現か分からない。
 そしてさらに。
「うに〜、気持ちいいにゃ〜。‥‥幸せにゃ〜♪」
 ごろごろと千佳が抱きついてきた。もちろん寝言でわざとではない。すりすりと頬ずり。コクリも気持ちよくなった。
 そして、朝。
「あれっ?」
 コクリと香澄の声。
 拭いたはずの顔の墨が付いているのだ。
「わ、私にも?」
 理解不能というようにアルネイスもぐるぐるこんぐらがっている。
「千佳さん、もしかして‥‥」
 どうやら千佳、寝ぼけて全員にごろごろうにうにすりすりしたようで。
「あれ? 怒られませんでした?」
 覚悟をしていたアルネイスは肩透かしを食ってなぜか残念そうだったり。怒られ「にゃ〜!」と悲鳴を上げる千佳の方は、とばっちり。
「お〜い、楽しそうだな。俺もまぜろよ〜」
 外からは、元気な琥珀の声。
 さあ、もう少しだけ遊ぶ時間はあるぞ――。