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■オープニング本文 ここは神楽の都。開拓者ギルド。 その広間の腰かけに、ほっそりしなやかな少女がたたずんでいた。 見る者に知的な印象を与えているのではあるが‥‥。 「うーむー、退屈じゃの」 足をばたばた、ばたばた。なんか落ち着きがないですよ? 「どこへ行ったか、いつも我の頭を撫でくり回す馴染みの顔もおらんようじゃし」 どうやらじっとしているのは好きではないのかもしれない。 赤い瞳に長いまつげ。 結んで輪っかにした黒髪。 そして、ぺったんこなむ‥‥ごほごほ。 おやかた様(iz0203)、その人である。 そのおやかた様がこんなところで何をしようとしていたのかは、不明。 ただ、いつものようにごろごろうだうだじたばたしようとしていた。 が、さすがに公共施設の土間でごろごろ以下略するなどという可愛らしい‥‥もとい、恥ずかしいことをしないだけの良識は持ち合わせているようで。そのもどかしさもあるのだろう。さらにもじもじそわそわ。 「おおぅ‥‥?」 と、ここでおやかた様の瞳が輝いた。 「ひどいひどいひどい。次々郎さん、ひどい〜」 視線の先に、メイド服姿の娘。珈琲茶屋・南那亭の深夜真世(iz0135)だ。いつもふらっとしている志士、海老園次々郎と話している。 「私だってイルカちゃんと遊びたかったのにィ〜。何で一声掛けてくんなかったんですか〜っ」 報告書「【尖月】イルカを探して」を読んだ後らしく、自分が行けなかったことに駄々をこねているのだ。報告書では、参加した開拓者がイルカに乗ったり一緒に泳いだり、芸をしてもらったり。さらに朋友の竜に引いてもらって海面を滑って「ひゃっほ〜っ」とか好き放題海ならでは楽しみを堪能していた。楽しいこと大好きの真世が見逃すはずもなく。 「そんなこと言っても、真世はアル=カマルの競馬に参加して惨敗してたじゃないか、そのとき」 次々郎は、報告書「【砂輝】砂国四儀杯競馬」を読んでいた様子。 「次々郎さん、一言余計〜っ」 「分かった分かった、今度の依頼は真世に頼むから。‥‥コクリに頼もうかと思ったんだが、いないしな」 「い・やったぁ〜。‥‥って、そもそも林青さん、尖月島の困ったことは私を通して開拓者ギルドに依頼してくれてたのに、いつから次々郎になったの?」 「林青さんも、立ち上げに付き合った真世に頼みたくてもいない時があるからって困ってるんだよ」 「ぶー。‥‥って、林青さん、最近見ないけど何してるのかなぁ?」 「新商材探しとかで忙しいらしいね」 依頼の本当の出所である、旅泰の林青の話で盛り上がる二人。 ともかく、泰国南西部の常夏観光地、尖月島沿岸にいるイルカと遊び、できるだけ尖月島の近くに誘導しイルカの活動圏にしてもらう依頼が開拓者ギルドに張り出されることとなる。海で遊べる朋友と同行し、各種遊んでもいいという。尖月島の評判をあげるためで、とにかく楽しんでもらえばいいという内容でもある。 それはともかく。 「あ。次々郎さん、見て見て〜っ。あの子可愛い〜っ♪」 真世が指差す。 その先で、ほっそりしなやかな体、結んで輪っかにした黒髪、ぺったんこな以下略の少女がこうべを垂れていた。 おやかた様。 どうやら退屈過ぎてすぅすぅ居眠りしたらしい。 ‥‥その様子は伏せるが、破壊力がやばいのだ、やばいのだ。 |
■参加者一覧
朝比奈 空(ia0086)
21歳・女・魔
天河 ふしぎ(ia1037)
17歳・男・シ
水月(ia2566)
10歳・女・吟
村雨 紫狼(ia9073)
27歳・男・サ
アイシャ・プレーヴェ(ib0251)
20歳・女・弓
御陰 桜(ib0271)
19歳・女・シ
十野間 月与(ib0343)
22歳・女・サ
緋那岐(ib5664)
17歳・男・陰
クレア・エルスハイマー(ib6652)
21歳・女・魔
ナキ=シャラーラ(ib7034)
10歳・女・吟 |
■リプレイ本文 ● ここは神楽の都。開拓者ギルド。 「イルカが、‥‥俺を呼んでいる?」 張り出されたある依頼書を前に、緋那岐(ib5664)がつぶやいていた。 「じゃなくて。イルカってのは今まで見た事はないな。つーか‥‥」 俺、海で泳ぐ事自体初かもー、とぶつくさ。 「丁度いいや。忍犬の疾風を連れて、バカンスついでに鍛えよう」 あ、逆か、とぶつくさ。 そんな緋那岐が立ち去った後、またしても人が来る。 「あっ♪ またいるかと遊ぶ依頼が出てるじゃない♪。最近暑くなってきたし丁度イイわね♪」 鼻歌も心地よく歩いていた御陰 桜(ib0271)が、目敏く依頼を発見する。 また忍犬の桃と遊べるなぁとかにこにこと受付に行き、依頼を受ける桜。 逆に、受付から戻ってくる者も。 「今度はちゃんとした水着も用意したし、イルカと仲良くできるなんて、凄く楽しみだからっ!」 緑色の瞳を輝かせながら、天河 ふしぎ(ia1037)がわくわくしている。 ほかにも依頼書を見上げる姿が。 「南の海を満喫、なの? こんな依頼なら、いつでも歓迎。‥‥三食おやつ付きの専属契約でもいい」 水月(ia2566)だ。ぽややん、とつぶやく。心も純白であるようで。 「ふうん、いいですわね」 さらりと払う銀髪から長い耳が覗く。エルフ女性のクレア・エルスハイマー(ib6652)もいた。 「‥‥イルカってな随分人懐っこいんだな。遊ぶのが楽しみだぜ!」 前回の報告書を読んでいたナキ=シャラーラ(ib7034)は、ぐっと拳を握り親指を立て、行くぜ南国尖月島! 状態だったり。 そんなこんなで、尖月島で遊ぶ依頼の希望者が集まっていくのだった――。 ● ――ざ・ざ〜ん。 「いぅううぅううううう‥‥!!! ぅ海だウェアァコゥるゥぁアあーーーーーっ!!」 なにやら奇声を発して砂浜に足跡を残しつつダッシュするのは、村雨 紫狼(ia9073)。きらーんと被った陽光がきらめく。 そう、海。 ここは泰国は南那のリゾート無人島、尖月島。 開拓者11人が到着したばかりである。 『ふしぎ兄ー、早くするのじゃ、妾達が一番乗りなのじゃ!』 まずは、ふしぎの連れの人妖・ひみつが浴衣姿で出てきた。 「ひみつ、そんなに慌てたら転んじゃうんだか‥‥」 『ち、ちょっと裾が引っ掛かっただけじゃ』 すってんと転んだひみつ。 「ちゃんと水着に着替えなきゃ、ダメなんだぞ」 『じゃ、隠してくれなのじゃ』 せえらあ服のようなセパレートを渡し、ひみつの浴衣を広げて持って更衣室を作ってやると、ぱぱっと着替えるのだった。ちなみに、ふしぎの方は袴のように長い水着。おお、男物だ。 ここへ、深夜真世(iz0135)がやって来る。 「‥‥どうしてさらしを胸に巻いてるんですか? ふしぎさん」 「はわわ、みっ、見ちゃ駄目なんだからなっ‥‥真世、今回も宜しくね」 いやん、な感じに両腕で胸を隠し身を捻るふしぎ。 「まあ、確かに水着は男物なんだけどね‥‥」 『見ちゃ駄目なのじゃ』 苦笑する真世の横では、ひみつがふしぎの真似をして身をくねらせていた。ちなみに、ひみつの水着はふしぎの昨年のお下がりだったり。 ● 「真世ちゃん」 ここで、明王院 月与改め、十野間 月与(ib0343)がやって来た。大きな胸が揺れ、緑のハイレグ水着が踊る。 「あ、月与さんだ〜」 「前の依頼見て、イルカさんと遊びたかったなぁ〜って思ってたから、ご一緒できて嬉しいな♪。‥‥あ、大樹。ありがとう。ほらっ」 ばさー、と上空から降りてきた甲龍・大樹が主人の月与に渡したのは、イルカ型の抱き枕だった。 「中には空の『皮の水筒』がたくさん入ってて、海なら浮くのよ?」 「へええっ☆」 ないすあいであに目を輝かせる真世。 ここで、ドカカッ、と地響きがする。 「真世さん、この間はお疲れ様でしたよー。一息ついた事ですし、今日はゆっくり遊び倒しましょうね」 愛馬の霊騎・ジンクローに乗って現れたアイシャ・プレーヴェ(ib0251)が、飛び降りながら真世に抱きつく。 「きゃあんっ」 真世が真っ赤になったのは、先ほどの出来事を思い出したから。ついほわほわと回想してしまう。 「さあ、水着に着替えませんとね♪」 女子更衣室で、普段着のウエストを縛る紐を緩めながらうきうきとクレアがつぶやいている。しゃらん、と流れる銀髪。するっと落ちる上着。右手で胸を隠しつつ左手で青いビキニのトップを取って装着。その上からさらに白レースのビキニトップを重ねている。 「合うサイズ‥‥」 貸し水着を探す水月は、言葉とは裏腹にまず白い水着を探していたり。 その隣では。 「華はないですが、実用性を考えるとやはり‥‥」 朝比奈 空(ia0086)である。 いま、水着の肩紐に相当する部分をきゅって上げて肩に掛け、着替え完了。持参したのは、真っ白なワンピースだった。 「あ‥‥」 その様子を見て、ピンとくる水月。細身ですらっとしている空に将来の自分を重ねたか、空と似たような純白のワンピースを身に着けることにしたようだ。 そして、きゃいきゃい水着選びしている別の人たち。 「あ、これ真世さんに似合うんじゃありません?」 「そ、それだとほとんど紐ですよぅ。アイシャさん〜」 アイシャの広げた水着に真っ赤になる真世。 「うーん、サイズが分からないと選びようが‥‥」 「きゃ〜っ。アイシャさんダメ〜っ」 ふにふにと真世の胸を確認するアイシャ。ふにふにとさらに確認。そしてまたふにふに‥‥。 「い、いつものでいいです‥‥」 結局、ほにゃほにゃになったままいつもの赤いワンピを手にする真世だった。 「こういう時はおシャレしないと〜」 不満そうなアイシャは、ちゃっかり蒼のビキニを着こなしていたり。 「そうそう。こういう時はね♪」 騒ぎに気付いたクレアが言う。くねって振り返った下の水着は、Tバック。しかも重ね履きだったり。 ● 「あれ。どうしたんです、真世さん? 真っ赤になって」 「い、いや。アイシャさん、ビキニのまま乗馬してたのね、って‥‥」 アイシャにほっぺつんつんされて我に返り、今の一幕を突っ込んだ。 彼女の方は、くびれた腰に手を当てて「それがどうしたの?」と首を傾げるばかりである。 その、背後では。 「今日は思い切り羽を伸ばす事にしますか」 広い砂浜を見回したおかげで背筋を逸らす格好となり、腰の括れが強調されている空が歩いていた。おそろいの白いワンピース水着でてててて‥‥と続く水月がこくこくと頷いている。 「しばらくは、浅瀬で水遊びをしていましょうか?」 さらに続くクレアがにっこり。 そして彼女らを追い抜く姿が。 「桜〜っ。オいで〜」 「わんっ」 新調シたぴんくのびきには首の後ろで結んで吊るたいぷ。桜が愛犬の桃と一緒に砂浜ダッシュ。 「よ〜し、魚網は持ったし魚篭もあるし」 足の裏が見えるほど高々と脚を上げて歩くナキは、ほぼ紐と言っていいほどの黒いビキニ姿。白い肌が背徳的にまぶしかったりする。 この姿を、遠くから眺めている人物が。 「く〜〜っ。7人の美少女にまよたんとウチのミーアで9人っ!! いやー。今回もロリから人妻、ドジっ娘にロボ少女まで属性豊富ですな〜」 女性陣の瑞々しい姿に紫狼はリビドー全開。 「今回は女性と女性に見える人と女装が似合う人しかいないとは」 紫狼の隣に来た緋那岐が呆れている。 「女装は今回封印。‥‥つかソコの青少年っ! 男なら迷わず肉食男子だろーがっ! 健常な若い男がリビドー全開なのは世界のジョーシキいいいっ!」 身を正し右手を上げる紫狼。 話を振られてしまった緋那岐は、良家の出らしくこほんと咳払いして一句。 「尖月島 漢がいない これいかに」 紫狼の反応は‥‥。 『マスター、そろそろミーアのオリジナルさんに挨拶したいのです!』 「あ、そーだった!」 理屈は不明だが女性型ですくうる水着を着た土偶のミーアにつんつんされていた。 「じゃ、容姿をコピーしたまよたんとこ行くぞ〜」 『お〜、なのです!』 リビドーまっしぐらな二人を、やれやれと見送る緋那岐。呆れて頭に掛けていた色眼鏡を下ろし、目を隠してしまった。 ここで、足元に控えていた忍犬の疾風が主人にねだる。 「うおんっ」 「お。疾風も早く泳ぎたいか。‥‥おおい、まずはイルカ探しだろ?」 疾風に色眼鏡を掛けてやり、黒のさーふパンツ姿の細く白い身体を思いっきり伸ばし手を振る。 あああ、緋那岐さんありがとうございます。これで皆さんようやく本来の仕事に気付いたようですよ? ● さて、皆と離れて一人爆釣スポットに向かったナキ。 「一匹ずつ釣るのもいいが、せっかちなあたしにゃ向いてねえ」 何をせっかちなこと言ってんですか。 って、それはまさか‥‥。 「網を仕掛けて練り餌を出して、と‥‥。パシャ?」 ここで、朋友の駿龍、セリム・パシャを呼ぶとその背に乗ってスカイ・ハイ。金髪をなびかせ空の青と入道雲の白さに目を輝かせてから、撒き餌を投下。 そして‥‥。 「パシャ、一気に網を引くぜ」 しばらく待ってから、岸に着地しつつ網を引く。 「よっし、ごっそり頂きだぜ!」 大小多くの魚をゲットし満面の笑顔を浮かべると、休むまもなくまたパシャに乗って出港した皆を追った。 ナキ=シャラーラ、10歳。 自称、せっかちさんは伊達ではない。 時は若干遡る。 「よし、出港だ!」 冒険少年ふしぎが櫂を取って、事前に住民に聞いておいたイルカ目撃海域に急ぐ。 「私、こんなに胸おっきいかな〜?」 『いやん、なのですっ! ‥‥これがご挨拶なのですか? じゃ、つんつん』 「い、いやんっ」 真世とミーアは何をやってんだか。 「真世さん、いつぞやの話で淑やかに‥‥との事でしたが」 この様子に、以前どこぞで真世とあったことのある空は礼儀正しく正座をしたまま、「前途多難ですね‥‥」と額に手をやり溜息交じり。 その横では。 「水遊び☆」 「あ、クレアさんやりましたね。‥‥水遊びっ☆」 クレアが海面に手を伸ばし隣のアイシャにぱしゃっと掛けてみたり。アイシャも応じて、ぱしゃ☆。 「水遊び♪」 反対側では月与が早速いるかの浮きを浮かべて曳航してみたり。 なんだか定員オーバーでぎゅうぎゅうの船は楽しげな雰囲気。 そんな中、ぽつりと人見知りする姿も。 「‥‥」 水月である。ぎゅうぎゅうな中でもみくちゃにされつつ、ぼんやりしている。 「堅くならずにゆるっと楽しもうぜ水月ちゃん!」 「きゃっ」 なんと、紫狼が水月を背後から不意打ち肩車をした。 「せっかくの可愛い水着が台無しになっちまう。さ、笑おうぜ!」 「そうだな、笑ったほうが楽しいな」 得意げな紫狼に、これだけは同意し緋那岐が声を掛ける。 「日焼けは美肌の大敵だから日焼け止めっと♪。‥‥真世ちゃんも塗る?」 「あ、塗りたい塗りたい」 『ミーアも塗りたいのです、つんつんなのですっ』 「そ、それはもういいのよ。朝比奈さんもどうです〜」 「私も? ですか。‥‥あ」 「んも〜。シかたないわね♪」 桜と真世とミーアと空がつんつんぬりぬりどってんばってん。 「ちょっと、暴れると危ないんだぞっ!」 ふしぎ、バランスを取るため手が早くなり速度アップしていくのだった。 ● 「‥‥彩颯ちゃん?」 しばらくすると、水月の迅鷹が空から戻ってきた。実は、空からイルカを探してもらっていたのだ。 彩颯はくいっ・くいっ、と顔を向けることで主人にイルカの方向を示した。 「あっ、いた。イルカ♪」 この様子に、二度目で慣れた桜がいち早くイルカの群れを見つける。 その先の波間には、確かにイルカの背びれがたくさん見え隠れしている。 「お〜い」 ここで、空から声。 ナキとパシャが追いついてきたのだ。 「これから、尖月島に向けて近付くように撒き餌をするな〜」 呼子笛で音でも注意喚起し、ごっそり取った魚の一部を順に投下。 イルカは、魚を食べたかどうかはともかく、何か面白そうとナキの飛ぶ方へと進路変更。見事に作戦が当った。 さあ、後は遊ぶだけだ。 「ともかく今日は夏満喫すっぞコゥルアーーー!」 青い膝上水着の紫狼が爽やかにシャウトして飛び込む。これを見て水月は、「時々よく分からない事を大声で叫んだりしてるのはどうしてでしょう‥‥?」とか首を捻ったり。 続くは‥‥。 「さて遊び倒しますよー」 両手をくの字にして上げてジャンプ。アイシャも飛び込んだ。その奥で桜が水蜘蛛で走っていった。わんっ、と桃もついていく。 あとは、我も我もとまさに人波。 そして、空から降りてきてパシャパシャする姿も。 「シルベルヴィント、あなた泳げるの!?」 クレアが朋友の炎龍だ。 が、泳ぎが上手いわけではない。 「ま、まあ、水浴びくらいよねえ‥‥」 船からぱしゃぱしゃ☆してやるクレア。いつも見せない朋友のはしゃぎように、自分の楽しみも忘れて満足していたり。 「わあっ。イルカ、寄って来るねぇ。朝比奈さん」 「ふふ‥‥可愛い物ですね」 真世と空は側まで泳いできたイルカにぺたぺた触ったり、優しく撫でてみたり。 「イルカって、すごくすべすべしているんですねえ‥‥」 「乗せて貰いたいなぁ」 クレアがむにむにイルカを触って、隣にいたアイシャは唇に人差指を添えイルカの表情を伺ったり。 「イヤッホー!」 って、すでにナキがイルカに乗った少女状態でざっぱーん。 これを見た他のイルカも、誰かを乗せて追わねばならぬと思ったらしく‥‥。 「きゃっ!」 「アイシャさん、大丈夫? んあっ!」 「ぷはっ、私もですかっ!」 アイシャ、真世、空を背中に乗せてそれぞれナキを追って泳ぎ出す。 「‥‥をりはるこんの剣だっ!」 「ああんっ。せっかちねっ」 ふしぎは大きなイルカに乗って持参した剣で行き先を指しては謎な剣の名前を叫んでいたり。その手前では、クレアがイルカの背びれにかろうじて捕まって引っ張られている。‥‥むしろ楽しそうではあるのだが。 『ふしぎ兄、妾もこの子と仲良くなったのじゃ』 ひみつは子イルカに乗ってざぶんとふしぎの隣に現れた。 このままぐるぐるこの海域をちきちきレースするのだったり。 ● そして残った人たちは。 「イルカ、興味を持って近づいてこないかなぁ〜」 なんて言いながら、月与はイルカの浮きにしがみついてふよふよ浮いている。 「ちょっと〜っ、気紛れすぎ〜」 何事、と月与が顔を上げると、真世を乗せたイルカが興味を持って引き返していたのだ。イルカは真世を振り落として、今度は浮きに乗る月与に擦り寄ったり。 「きゃっ。‥‥真世ちゃん、浮きをお願い。波に揺れて、結構気持ちいいよ」 結局、イルカの背中に乗せられてしまった月与は真世に浮きを託した。真世、「確かに極楽〜」とふよふよすやすや。 その、向こう側。 「んふっ」 イルカと球「友だち」でつんつんパスして遊んでいた桜が、得意げな表情をした。 「結構高くじゃんぷシてたから‥‥ほら、輪っかを用意シたのよ♪」 じじゃん、と出した竹製の輪は、対岸の住民に「オネガイ」(桜談)して譲ってもらったもの。‥‥夜春を使ったのは内緒だ。 と、出しただけでイルカがジャンプして輪をくぐり始めたぞ! 「桜さん、あたいもするよ」 月与も竹の輪を用意していた。イルカに乗ったまま差し出して、並んで泳いでいたイルカがジャンプ。 さて、船では。 ――ぴゅ、ぴゅっ! 水月が口笛を吹いておいでおいでしてた。早速近付くイルカ。 「んしょ‥‥」 彼女もついに遊ぶらしい。 最初はおずおずと捕まって泳いでいたが、ざぶんとイルカが潜ってあっという間に水月はイルカの上に。 「あ‥‥」 ここで、水蜘蛛連発しつつ水面に立つ桜に気付いた。腰で結んだ水着のリポンにジャンプしてじゃれ付く桃に「ほどいちゃダメだからね♪」している。 「私も」 水月、水蜘蛛で立ったが、ここでとんでもないことがッ! 「きゃん!」 何と、水中からイルカが顔を出して水月をボールのようにつついたり。 「これじゃ逆もぐらたたき‥‥」 つつかれ、イルカの背中にキャッチされと弄ばれる水月。 その向こうでは‥‥。 「はっ!」 イルカに乗った空が水中から出たとたん、さらに跳躍。喉元を差し出すように仰け反って美しい円軌道を描きながらざぶんと飛び込む。 「あそこまでは無理だけど」 水月。空蝉で華麗にかわし始めていたり。 おや、船に誰か残ってますよ? 緋那岐である。 「さて、イルカとはたっぶり泳いだし‥‥。妹にも見せてやりたいよなぁ」 楽しかったのでそんなことを思う。 「実物を連れて帰る事はできないし。式だったら‥‥」 無茶言った、この人ッ! 「やっほー、緋那岐さぁん?」 「だあぁっ。真世、気が散るだろーが。‥‥って、げっ!?」 半イルカ半もふらの謎生物が真世に向かって冷気放出。 「ちょっと〜」 「集中してる時に話し掛けるなっ。‥‥ほら、これを出そうとしたんだよ」 今度は人魂で、小イルカ型の式召還成功〜。 「って、小さいね? これじゃバレちゃうよ?」 「べ、別に妹に見せるためだからいいんだよっ。リルル、泳いできなっ」 可愛い名前を速攻でつける緋那岐だったり。でもサイズが違いすぎるから隠密には不向きかも。 「真世さん。大分ウェスト出てますよ? 特訓ですっ」 「きゃ〜ん」 この隙に背後から忍び寄ったアイシャが真世の腰に抱きついて水泳特訓地獄に突入〜。もちろんイルカも付き合いよかったり〜。 「やるわね♪。じゃあ、この高さはどうかしら?」 その向こうでは桜がさらに芸を仕込んでいたり。 「あれ? やっべ、はしゃぎ過ぎて上の水着どっかいっちまったぜ」 ナキさん〜。何密かに爆弾発言してんですか〜。って、海草胸に巻いて代用してるし。 ● 「ああ、楽しかった〜」 夕刻前、浜に戻って大の字の真世。 「まだまだ。スイカ割り用に陰殻西瓜を持ち込みました☆」 『妾が見事に真っ二つにしてみせるのじゃ!』 「ちょっと、アイシャさんここ置いちゃダメっ。‥‥ひみつちゃ〜ん、チェーンソー出さないで〜っ」 アイシャの笑い声に真世の悲鳴。 「ナキ、ありがとなっ。新鮮な魚がたっくさん取れたぜ」 「な、爆釣ポイントだったろ? ‥‥って、おい! この水着勝手に突然変異したぜ! 元通りだ」 竿かついで大漁でゴキゲンの緋那岐に、びっくりナキ。‥‥いや、ナキさん。それ、なくした水着がたまたま巻いた海草と一緒になってただけですからっ! 「‥‥お手伝い、します」 水月は緋那岐を手伝って火で魚を焼くのだった。 そして、みんなでバーベキュー。 「水月?」 「だから、手伝ったの‥‥」 呆れる緋那岐に恥かしそうな水月。でもぱくぱく食べるのをやめない。 ‥‥水月の胃袋は底なしかッ! 「はぁい。あたい特製のシロップを掛けたカキ氷だよ」 月与えるは、甘刀を溶かしてマンゴー果汁と混ぜたシロップを掛けたカキ氷を配っていた。 「青藍‥‥出ておいで」 賑わいとは離れた場所で、空はこっそり管狐を呼び出していた。人見知りであるようだ。 「美味しい? ‥‥イルカとは、仲良くできた?」 自ら作り出た氷で月与に削ってもらったカキ氷を食べながら、「もうちょっと人に慣れて欲しいけど」などと願いをつぶやいていた。 ●おまけ 「さ、終わったら着替えてしまいましょう」 くるっと回って水着を脱ぐクレア。髪が流れ裸体を隠す。 この時、高床式別荘からどぷ〜んと何かが落ちる音がした。 「あ、『罠伏り』に掛かったかな?」 ほどけたブラを右手で支えたまま、アイシャ振り返って音を確認したり。 「のぞいたり、えっちぃ事をしようとした方は、お☆し☆お☆き です」 同じく胸を片手で支え振り返ったクレアも「はぁと」な笑顔。 さて、下では。 『マスター?』 「俺はミーアをつれてきただけだ〜っ!」 海に漬かって立ちつんつんするミーアに、ぷかぷか仰向けに浮かぶ紫狼。額には「変態」の印字。 どうやら脇に浮かんだ、先っぽがいも版になっている矢が命中したようだった。 |