【南那】防壁のアヤカシ
マスター名:瀬川潮
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/07/02 20:30



■オープニング本文

「どうしてあの時、逃げなかったんですか?」
 泰国は南那、紅風馬軍の出没多発地帯に近い南那正規軍天幕で、騎乗服姿の深夜真世(iz0135)が論利(ロンリ)に聞いてみた。
「‥‥まあ、俺は『敵の手に落ちて殺されるかもしれないなら』と味方に殺されかけた身だ。あの、自分の名を名乗って俺の身を守ってくれた騎士の姉ちゃんにゃ感謝してる」
 論利は、南那に侵入して住民を脅かしている紅風馬軍(コフウバグン)の一員で、南那正規軍に雇われた開拓者が、二度目の戦闘で捕虜にした人物である。彼の言う通り、論利は開拓者に捕らわれる寸前に味方から殺されかけた。開拓者が身を挺して守らなければ命はなかったかもしれない。
「紅風馬軍は、一族じゃない。各地を渡り歩き、分かれて別の道を歩む者がいれば新たに加わって一緒に風となる者もいる。‥‥紅風山千(コウフウ・サンセン)と代々名乗る頭とともに気ままに各地を渡り歩くのさ」
「それで盗賊みたいなことして、民を困らせてるのね」
「‥‥いろいろさ。俺たちを受け入れてくれるところには何もしないし、危害を加えてくるところには武力で返す。全ては風となり、風に任せる。これが俺たちの掟さ」
「じゃあ、早く風になってここから逃げて、仲間と一緒に風になってどこかに行けばいいじゃない」
「だから、もう俺はあっちにゃ帰れないんだよ。‥‥さっき言ったよな、紅風馬軍も一枚岩じゃないと。俺はもう、馬軍の中の俺と仲の良くない連中から命を狙われてるんだよ」
 だから、前回乱戦の中で自分の味方を見つけ、戦いをやめさせ、争うことなくこの土地から出るよう橋渡しをしようとしたのだと言う。
「無理に決まってるじゃない、そんなの」
「前の戦い、やっぱり俺の敵は俺ごとアンタを殺そうとしていたぜ。‥‥ほかの奴らはアンタを捕虜にしようとしてたがな」
「そんな‥‥」
 真世、論利から視線を外した。
 ここは、前回潰された天幕から場所を移して設営されたばかりだ。女性の陰陽師など開拓者から言われたこともあり、今度は簡易の防壁なども設置している。村から離れた場所なので、戦闘を前提とした整備ができるというわけだ。
「俺も、微妙な立場なんだよ。もしかしたら、もうここにいるのが正解なのかもしれない」
「待遇は良くしているつもりだしな」
 ここで、南那正規軍こと親衛隊の隊長、瞬膳(シュンゼン)がやって来た。捕虜になんの枷もないまま自由にさせている時点で、待遇うんぬんではないだろう。‥‥前回の戦いで新たに多くの馬軍を捕虜にし、現在治療中で動けないということから論利は脱走などしないという読みではあるが。
「論利。‥‥このまま紅風馬軍がどこかに行けば、南那の土地を新たな故郷とし、風から大地に根を下ろす大木になると誓え」
「早いよ、隊長さん。‥‥この前までの敵に向かってそれは早すぎだろう」
 3人の間に、微妙な空気が流れる。
 どうすればいいのか分からない、そんな感じだ。
 と、ここで。
「おおい、今度はアヤカシだっ。段々畑開発地に、巨大なダンゴムシのアヤカシがわんさと陣取ってるらしい!」
「何っ! 紅風馬軍の捜索で忙しいって言うのに」
 帰ってきた偵察隊の報告に声を荒げる瞬膳。
 そう。
 南那正規軍は、紅風馬軍とともに、南那領の境となる森林地帯のアヤカシとも対峙していたのである。
「アヤカシには、今度は真世君たち開拓者に当って欲しい。‥‥お仲間はもうすぐ到着するはずでしたね? 近い集落に被害が出る前に、馬で急行して一掃してください」
 かくして、今度は丸くなると人の身長の三分の二程度の直径の球となるアヤカシ、大団子虫15体と戦うこととなる。


■参加者一覧
萬 以蔵(ia0099
16歳・男・泰
風雅 哲心(ia0135
22歳・男・魔
新咲 香澄(ia6036
17歳・女・陰
瀧鷲 漸(ia8176
25歳・女・サ
ジルベール・ダリエ(ia9952
27歳・男・志
アイシャ・プレーヴェ(ib0251
20歳・女・弓
ロック・J・グリフィス(ib0293
25歳・男・騎
龍水仙 凪沙(ib5119
19歳・女・陰


■リプレイ本文


 草原は、穏やかだった。
 草はそよ風になびき、小さな虫たちがこっそりと佇み、そして時は健やかに‥‥。
 が、その静寂は束の間だった。
――ドドドドドド‥‥。
 騎馬が、行く。
 装備も兵装もまちまち。
 しかし、一糸乱れぬ隊列。速度も呼吸も合っている。
 いま、ぐぅんと大地の起伏に沿って右に曲がった。
 先頭は、ピンクの髪とともになびく長いウサ耳。龍水仙 凪沙(ib5119)だ。愛馬・シギュンとともに行く。
「アヤカシは大団子虫といったな?」
 二番手を行く白蘭花の主、ロック・J・グリフィス(ib0293)が声を張った。
「そうらしい。‥‥ちゃんと私に考えがあるけどね〜」
 答える凪沙。前を急ぐ理由である。
「アヤカシだったら心置きなく殲滅できるね。‥‥瀧鷲さんは大丈夫?」
 三番手を駆ける新咲 香澄(ia6036)が後続を気にした。
「乗馬というのは初めてだが、いいな」
 続く瀧鷲 漸(ia8176)、ホーエンツォレルンと名付けた馬を駆り長い髪をなびかせ問題ないことを主張した。乗馬は初めだが練習した。そしてなにより、騎乗とその状態での戦闘を「格好いい」と思っている。前屈みの戦闘スタイルと相まって、速駈けは見事なものだ。
 と、ここで後方から駆け上がって来た者が。
「人相手じゃないのはある意味やり易いけど脅威なのは当たり前‥‥」
 大柄な萬 以蔵(ia0099)が、ぐっと力こぶを作っている。何度も共に戦場を駆けた馬、鏡王とか呼吸もぴったり。
「討伐しようぜ!」
「もちろん。‥‥馬賊にも注意しながらだけどね」
「そうそう。人間相手にするよりは気楽よね。‥‥勿論、油断しないけどね!」
 言い切る以蔵。追い抜いた香澄がにやりとし、いま追い付いた先頭の凪沙が伸びをするように言う。
 一方、隊列後方。
 静日和に乗る深夜真世(iz0135)が健気に遅れず付いて来ている。
「そういや、真世と一緒に戦うのは初めてだな。後方支援とはいえ、頼りにしてるぞ」
「一緒、はね。‥‥私が初めて依頼を受けたとき、後ろからまぶしく見てましたよぅ。今回もお願いします」
 気を遣った風雅 哲心(ia0135)に、真世は微笑して返す。迅風に騎乗した姿もやっぱり頼もしいとごにゃごにゃつぶやいたり。哲心、ぶっきらぼうなところがあるが、ゆえに風が良く似合う。
「そうそう、あの尖月島の時も一緒だったよね。‥‥そして今も」
 懐かしそうに振り向きながら言う真世。反対側には、アイシャ・プレーヴェ(ib0251)がいた。
「真世さんは変わらないですよね〜。‥‥あ、アルタイル? 少し速度を上げて。よろしくお願いしますね」
 変わったのは、あの時は南那の尖月島で、いまは南那の内陸。そして、アイシャにとってははじめての南那の騎乗戦闘だ。借りた馬、アルタイルとしっかり呼吸を合わせようと気に掛けている。このあたり、丁寧でしっかりしている。
 ここで、速度を落として下げてきた者が。
 ジルベール(ia9952)である。
「今度はアヤカシか、忙しいこっちゃ。南那もええ加減、人同士で争ってる場合とちゃうよなあ」
 にまっ、とウインクしてからまた速度を上げる。こちらは風というより、自由奔放という言葉が似合いそうだ。
「私に言われたって‥‥」
 真世は困るが、彼女は瞬膳や論利と接する機会が多い。さらりと言うだけなのがジルベールらしい。
「あっ!」
 ここで、先頭の以蔵と凪沙の声がした。
 異常発見である。


「あれだっ!」
「段々畑開発地から移動しようとしてる」
 以蔵が指差し、凪沙が口を大きく開けた。
 大団子虫が丸まって移動しはじめているのである。
 予想外の事態である。
「もしかしたら集落に向かってるのかも」
 凪沙、予想進路へ先回りするよう方向転換。
「でかっ‥‥。何やねんあの重装甲」
 ジルベールは弓の準備をしつつ敵の観察を怠らない。表面が明らかに昆虫の甲羅のようなてかりを帯びているのを見て取った。
「罠伏りを仕掛けたかったですが仕方ないですね。‥‥ジルベールさん、距離のある今の内に」
 アイシャの構える呪弓「流逆」は驚くべき射程がある。
「起伏を上りきったらあとはきっと速いで」
 ジルベールのレンチボーンも負けずに射程は長い。共に安息流騎射術できっちり長距離射撃を当てる。
 が、敵は被弾経始が良好。ダメージはあるだろうが刺さらず矢が流れる。
 もっとも、敵が一瞬止まったのは時間稼ぎとなった。
「任せろ! トルネード・キリクで止める」
 矢のように想定進行ルート最短距離へと向かうのは、哲心。迷いがない分早い。
「私は咆哮で二分を狙う」
「よし、加勢するぜ」
「迎撃が必要だね。‥‥レグルス、今回もよろしくたのむよっ♪」
 ぐうんと斧槍「ヴィルヘルム」を振り大きな胸を揺らし、漸が進路を変える。何が必要か気付いた以蔵と香澄が続いた。
「真世さん、ジルベールさん、私も行って来ます。‥‥私の命、貴方に預けます」
 アイシャも六節で射撃の手を緩めず、これに続く。アルタイル、ひひんと気合いが入っている。
 これで漸、以蔵、香澄、アイシャが離れたことになる。
「咆哮するなら、両側面から挟み撃ちできるように誘ってな。‥‥真世さん、今回後方待機とはいえ、俺らは何度も一緒に戦った仲間や。頼りにしてるからな」
「ジルベールさん‥‥」
 ジルベールは撃ちながら真世に指示を出し、望遠鏡と狼煙銃を押し付けた。
 が、真世はついて行きたがっていた。
「真世嬢、後ろの警戒はお任せした。‥‥戦いの後の珈琲タイム、楽しみにしている」
 そんな彼女に微笑するロック。「では、行ってくる」と真世の手をとり、その甲に口付けした。
「あ‥‥」
 真世、ロックの紳士的な礼で赤面し大人しくなった。
 ジルベールとロック、やれやれと哲心を追うのだった。


 さて、敵正面に切り込んだ哲心。
「アイシャとジルベールの攻撃で一瞬止まって、戦闘行動に入ったってことか」
 改めて敵が起伏の上から速度に乗って転がっている様子からそう判断した。
 なんと大団子虫。
 中央突出型の陣形で突撃してきたのだ。速度、威圧感とも十分な突撃である。
「迅風は安全な場所に行ってろ」
 哲心、馬から下りて尻を叩く。驚いた迅風は主人を乗せないまま走り去る。
 そして、敵が来たッ!
 振動と音が激しい!
「一気に行くぞ。‥‥轟け、迅竜の咆哮。吹き荒れろ――トルネード・キリク!」
 前にかざすは呪文の書かれた短剣「オレイカルコス」。哲心を中心にした大きな円周線上に真空刃の竜巻が吹き荒れるッ!
「くっ‥‥。凪沙、頼むぞ!」
 敵突出部分の勢いをそぐが、敵進行線上の哲心も無傷では済まず。
 が、ただ正面から戦ったわけではない。
 痛みを堪え哲心が振り向いた方には、凪沙が回り込んでいた。
「多重玉突き事故で勝手に同士討ちってのは、どうかなー」
 にんまりといかにも悪戯好きっぽい笑みを浮かべる凪沙。
 何をするかと思えば、どどんと黒い壁が現れる。結界呪符「黒」だ。
 ゴロゴロゴロ‥‥と転がってくる敵は、哲心の攻撃で中央突出部分の勢いが無くなり横一直線に近くなっている。
 凪沙が召還した位置は、その横並びの一番端。
 そして、45度の角度をつけている。
 今、圧倒的な迫力で突撃してくる大団子虫が、この黒い壁に激突したッ!
――ガコォン!
「よしっ!」
 黒い壁に隠れる凪沙、会心の笑み。
 壁に衝突した大団子虫は方向を変え、隣を転がっていた大団子虫に激突。
 さらにその大団子虫が遅れていた中央の大団子虫にぶつかる。
「全部にぶつかるっての無理か‥‥。シギュン、化け物相手だけど、いける? ‥‥よし、行こうか!」
 改めて愛馬に声を掛けて、速度の落ちた敵へと向かっていく。
「偶にはビリヤードというのも乙なものであろう」
 ロックも寄せている。というか、得物の長槍「蜻蛉切」を撞球のキューのように構えている。
「そうら、もう一度ぶつかるがいい」
 勢いの止まった敵に、渾身の突き。敵の装甲は固く槍を通さないが、転がり別の敵に当る。
 そしてその背後から突っ込んで来る者が。
「ミネルヴァ‥‥今までの間合いとは違うで。今日は‥‥もっと前や!」
 青い瞳が決意に燃える。
 ジルベール、いつもの弓から両刃の片手剣に持ち替えている。
 転職した志士として初の一撃は、味方が狙った敵の追撃。片手手綱から身を乗り出し、叩きつけるッ!
 哲心、凪沙、ロック、ジルベールが減速組担当となった。
「すごい。敵は見事に二つに割れたわけね」
 離れて戦況を見ていた真世が、胸の前で両手をグーにして感心していた。
 別の場所では、漸、以蔵、アイシャ、香澄が広く戦っていたのだ。


 凪沙の多重衝突を逃れ高速で直進した大団子虫の群れは、漸の咆哮できききと止まり進行方向を変えようとしていた。
「弓騎士、アイシャ・プレーヴェ。参ります」
 きりりと言い放つアイシャが、まずは先手を放つ。六節での弾幕は敵の形状から決定打にはならないが、細かく表面を削っている。
 と、その矢が止んだ。
「ほら、高い場所に上って来い」
 大型で黒毛のホーエンツォレルンに乗った漸が一気に下って詰めたのだ。
 と、激突の軸線をずらした。瞬間、すうっと息を吸い込んだのは鬼腕のため。
 ボゥン! と大きく膨らむ胸を突き出し弓なりになるのは、大上段から繰り出す隆気撃のため。
 そして、突っ込む勢いそのままに擦れ違いざま、隆気撃をぶち込むッ!
――グバッ!
 さしもの装甲も砕け、勢いが無くなった。そこへ、アイシャの集中砲火。今度は割れ目にも入り突き立ちまくる。
 一方、ほかの大団子虫は咆哮がまだ利いている。
 今擦れ違った漸を追うべくさらにきききと止まる。
「敵の勢いに惑わされず飲みこまれず‥‥」
 冷静に突っ込んできたのは、以蔵。
 なんと、空気撃をここで使う。
 止まった巨体に直撃すると、さすがに転がり体質。以蔵の狙い通りの方に転がり同士討ちをさせた。さらに棍を振り回し攻撃したかと思うと、今度は気功波で離れた敵に追撃。上手いところに飛び込んで暴れまわっている。
 その隣の敵集団は。
「さぁ、主砲発射、いっくよー!」
 直線で撃ちあう気はないが、反転途中なら話は別。
 香澄が得意の火炎獣で焼く。
「こっちもアイシャさんが戦いやすいように、と。‥‥さぁ、二刀流陰陽師を抜けると思わないでねっ!」
 いつの間にか風也と九字切に持ち替えて二刀流で突っ込んできている。
 敵はまだ転がってない。ここが勝負所と読んだようだ。
 陰陽刀「九字切」に黒い瘴気を纏ったまま、初撃を叩き込む。
 アイシャの射撃の影響もあり、敵の装甲が割れる。
 ここに、間髪入れず忍刀「風也」で切り込んだ。防御を砕いて斬る二刀使いで確実にダメージを与える。
 そして、ボゥン!
 何と漸が戻ってきてさらに敵を砕いていた。アイシャが狙う。
 敵が転がり出さなかったのは、漸が取り囲むように戻ってきたからであった。
 後に乱戦になり削り合いにもなったが、この時点で勝負あった。


 もう一方も、似たように乱戦となっていた。
「頑丈そうだけど、術には耐えられるかしら?」
 凪沙、伸ばした手の五行呪星符に一瞬のきらめき。雷閃が迸り敵を撃つ。
 そして吹っ飛び球形から元の姿に戻りつつある敵に、駆け寄る影一つ。
「一生懸命隠してるトコを見たくなるのが男ってもんやで」
 振りかぶったドラグヴァンデルに紅い燐光が。
 ジルベール、紅葉のような燐光が散り乱し紅蓮紅葉の一撃。弱点に入ると敵は脆い。気合いの言葉はともかく、敵は瘴気に戻った。
 その向こうで、哲心のトルネード・キリクがまたも唸る。
「行くぞ白蘭花。ロック・J・グリフィス、参る! ‥‥全てを貫き通せ、疾風の白き花よ!」
 ばさりと舞うは騎士のマント。燃やすオーラはオウガバトルッ!
「人馬一体必殺のカミエテッドチャージだっ!」
 有無を言わさない一撃は、足の止まった敵装甲を打ち砕き昇天させた。
 さらに凪沙の雷閃が走る。
「これで終わりだ。 ‥‥響け、豪竜の咆哮。穿ち貫け――アークブラスト!」
 哲心自身も追撃。凪沙と同じく装甲に関係ない攻撃で敵を屠っていくのだった。

「‥‥あ」
 ここで、最後方というか横から見ていた真世が気付いた。
 何と、アヤカシの出てきた段々畑開発地に数騎の騎馬が並んでいたのだ。中央には、黒い肌の凛々しい姿。紅風馬軍の長、紅風山千である。
 どうしよう、と逡巡する真世。
「なにかがあれば駆けつけて守る」
 戦場に来る前、漸の言った言葉が脳裏に蘇る。超真顔だった。
「絶対一人で対処しようとしないで、仲間を頼ってね」
 にっこり笑顔の香澄の姿も蘇った。
 そっと、ジルベールから託された狼煙銃を構えようとする。
 その時、肩にぽんと手を掛けられた。
「あ、哲心さん。漸さんも」
「‥‥余計なのも、何が敵かは分かってるようだな」
「そうだな」
 哲心と漸の視線を追うと、紅風山千は仲間に撤退の合図を送って下がっていた。
 開拓者の戦闘も、成功裡に終わっていた。


「さて、真世さんかいつまんででいいですから状況、教えてくれません?」
 親衛隊本営に戻ると、アイシャが今までの話をねだった。
「あのね‥‥」
 馬賊との戦いを話す真世。「お姉は私の知らない間に‥‥」などと冒険譚を聞くアイシャ。
「おや。あんた、弓も使うのかい?」
「‥‥私は貴方の事、知りませんから。またお姉はお人よしだなぁって呆れるだけです」
 声を掛けた論利に、溜息交じりのアイシャ。論利は、アイシャの姉に命を救われていたりする。
「けど‥‥風は吹く場所を選びません。そして望む場所に落ち着くもの。私のお姉、真世さん、他の方々。彼等と接し何も感じなかったんですか?」
「温かい、いい風だな。‥‥悪くはない」
 アイシャに詰め寄られ、珈琲を飲んでかわす論利。
「切れた縁も有ればこうして結ばれる縁も有るし。だからこそここは素直に受け入れた方が良いんだぜ。‥‥なっ、論利兄ぃ」
 隣に座って肩を叩く以蔵。それと感じて有無を言わせない雰囲気を作る。
 論利は、視線を逃がした。
「ありがとう。じっくり飲ませてもらうよ、真世譲」
「あ、私は砂糖は多めでね〜♪ 」
「はぁい。ちょっと待って下さいね」
 ロックが珈琲の香りを楽しみ、凪沙が真世にこっちもねとねだっている。そんな仲間を世話する真世は幸せそうだ。
「レグルス、お疲れ様だよっ♪」
 その奥にいる香澄は、馬の世話を楽しそうにしている。
「‥‥仲間ってのは、いいモンだよな」
 しみじみ言う、論利。
「そういやジルベールさん、何か叫んでなかった? 一生懸命隠してるトコを見たくなるのが男って‥‥」
「さぁぁ? 真世さんの聞き違いのような気もするなぁ?」
 本当に楽しそうな雰囲気だ。
 だが。
「‥‥風に聞く時間が欲しいな」
 何を思うか、空を見上げる論利だった。