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■オープニング本文 「あん? 魔槍砲だぁ」 茶屋で串団子をほお張ろうとしていた貸本絵師の下駄路 某吾(iz0163)が、大口を開けたままその動きを止めた。 「ええ。朱藩国王『興志宗末』が今、改良に力を入れている新しい武器です」 志士の海老園次々朗(かいろうえん・じじろう)が自分の串団子を注文しながら言った。 「ほー。興志王、ねぇ。あの好奇心の強いというか、一発に懸けた無茶強化とかの好きな王様らしいねぇ」 「そう、好奇心が強く一発に懸けた無茶強化とか好きな性格。そしてそんな人物が一発逆転無茶強化に成功した暁にする行動は‥‥」 くっくっく、と笑った下駄路に次々朗が畳み掛けた。 「‥‥自慢、だな」 下駄路は真顔になって言った。がぶり、と団子に食らいつく。下駄路、仕事への嗅覚は鋭い。 「まあ、王様に対して失礼な表現もしたけど、つまり下駄路さんに頼みたいことがあって」 「無茶強化の成功した魔槍砲を使ってるところを俺が絵にして『これが興志王の驚天動地の新兵器』みたいに宣伝すればいいんだな?」 「だからそれは言い過ぎですよ」 やる気満々の下駄路を、どうどうと抑える次々朗。つまり下駄路も職業柄新しい物好きだということで。 「正確には、アル=カマル由来の武器・魔槍砲の欠点を興志王たちが改良していて、開拓者の助力もあり何種類か実戦投入できる試作品にしたらしいんです。今回は、けっして一発狙いの無茶強化じゃないですから」 ‥‥興志宗末、好き好んで鍛冶場に入り浸ってるからそういう偏見を持たれたりする。が、まあ本人は気にしてないからそれはそれ。ついでに、庶民特有の面白半分の偏見が入っていることを興志王の名誉のために付記しておく。 「分かった。‥‥しかし、なんで次々朗がこの話を持ってくるんだ?」 「ギルド職員の知り合いから、『あの気難しい戦場貸本絵師と親しいなら、そちらから頼んでくれ』って泣きつかれたんですよ」 「何で俺が気難しいんだよ。‥‥つーか、その戦場貸本絵師ってなぁ、なんだ?」 「自分の胸に聞いてみるのが一番ですよ。‥‥それより、すでに開拓者ギルドで試作品を実戦投入するアヤカシ退治の依頼は張り出されているようですから、あとで一緒に見に言ってみましょう」 次々朗はそう言って、茶屋娘の持ってきた串団子に食らいつくのであった。 それからのち。開拓者ギルドにて。 「夕焼け朧ネコ車‥‥」 「‥‥なんだかなぁ」 下駄路と次々朗は、該当する依頼のタイトルを確認して呆れた。 退治するアヤカシは、なぜかにゃーにゃーと音のする朧車一台。朧ネコ車と名付けられたようだ。 なぜに夕焼け、と本文を読むと、ある村にきっちり十日に一度、日が暮れてから現れ村を爆走しつつ住民を轢き殺そうとするらしい。 さすがに住民は、該当日の夕暮れには屋外に出ないこと、という対策を立てて無事に過ごしていたが、やはり不安は不安。開拓者ギルドに退治を頼もうにも資金不足で困っていたところ、興志王関係者の目に留まり魔槍砲試作品の実戦投入の場にする条件付きで依頼金を負担、無事に開拓者に退治を頼むことになったという。 「ともかく、俺もこれについていって、安全な屋内から戦いの様子を見て絵にすればいいんだな?」 「そういうこと。じゃ、あとはよろしく」 「待て。なぜ逃げる」 「私は、こっちの結婚式の手伝い依頼を受けてますんで」 次々朗、ちゃっかり楽しそうな方に逃げた。 そんなこんなで試作段階の武器、『魔槍砲改・壱式』(総合性能向上型)、『魔槍砲改・弐式』(威力特化単発型)、『魔槍砲改・参式』(低威力連射型)の中から一本だけ選んで主兵装とし、突進型のアヤカシ「朧ネコ車」を退治してくれる開拓者、求ム。 |
■参加者一覧
奈良柴 ミレイ(ia9601)
17歳・女・サ
メグレズ・ファウンテン(ia9696)
25歳・女・サ
朽葉・生(ib2229)
19歳・女・魔
ルゥミ・ケイユカイネン(ib5905)
10歳・女・砲
ニッツァ(ib6625)
25歳・男・吟
ミル・エクレール(ib6630)
13歳・女・砂
クロウ・カルガギラ(ib6817)
19歳・男・砂
リラ=F=シリェンシス(ib6836)
24歳・女・砂 |
■リプレイ本文 ● 暑かった。 初夏ではあったが日差しは強く、村人たちは田んぼの雑草取りに追われた。腰を屈め、辛い作業ではあるがこれを放っておくと収穫量にかかわる。 そして、日が暮れた。 依頼のあった村の一日が、いま終わろうとしている。 「仕事ね」 ぶっきらぼうに言い放って、奈良柴 ミレイ(ia9601)が立ち上がった。傾奇羽織の胸元の合わせが乱れているが、これはチャームポイントだ。 村人たちは運良くへとへと。 いまから仕事をしようとする開拓者にとっては好都合だ。 「しっかし、魔槍砲を使えるし、妙な敵だし、とにかく面白そうじゃん」 「私は魔槍砲は使いません」 気軽に言うクロウ・カルガギラ(ib6817)の言葉に、メグレズ・ファウンテン(ia9696)がぴしゃりと言う。 「私は魔槍砲を使う方々の守りや敵の誘導に尽力しようと思います」 メグレズ、咆哮を使うつもりである。 「集めた情報じゃ、あっちから来て村に入るって感じだ。メグレズの咆哮で右手の斜面に引きつけて減速させ迎え撃てばいい」 「私がアイアンウォールで止めます。‥‥そのアヤカシの鳴き声を聞いても脱力しないように頑張ります」 クロウの手筈を聞いて、朽葉・生(ib2229)が面を引き締めた。重要な役目を担う。 「仮にタイミングがずれても心配は無用ですよ?」 メグレズ、いざとなればその身で盾でとめるつもりだ。「翼竜鱗の壁」との呼び名は伊達ではない。 「ま、潜伏場所は日中に作ったからな。村の手前で止めるぜ」 「新しい武器に新種のアヤカシか。にゃーにゃー言いよるみたいやし、楽しみやなぁ」 気合いを入れるクロウ。そして、ニッツァ(ib6625)もクロウと似たような反応を示す。 「ま、楽しみではあるけど‥‥」 そわそわしつつミレイもつぶやく。ほわほわと彼女が想像したのは、大八車に丸々と太った猫。にま〜っと笑っているのがキモカワイイ。というか、明らかにご機嫌な猫のようなニッツァの笑顔に引きずられた想像である。 「朧車とネコなんて‥‥」 ぶつくさ言うのは、生。どうも納得いかないようだ。 「まあまあ。ともかく、俺はあの小屋に潜伏して窓から様子を見て絵にすればいいんだな?」 「迎撃と、下駄路さんの都合のいい場所を探すのはそれなりに骨が折れたんだぜ?」 下駄路某吾(iz0163)が潜伏場所を指差すと、感謝してくれよ、とばかりにクロウが肩をすくめる。 「ぼーごちゃん! あたい達の事かっこよく描いてね! 張り切って車にゃんきちをやっつけるぞ!」 「お〜う。任せときな、お嬢ちゃん」 元気に飛び跳ねながらルゥミ・ケイユカイネン(ib5905)が言うと、下駄路が請け合う。ついでに松明も受け取る。潜伏する小屋に明かりとしてつけておくのだ。 「あれは断じてにゃんきちなどでは‥‥」 「生ちゃん、かわいらしく『にゃんきち』って言うねー」 生が納得できずに言うと、ルゥミは水色で薄手の衣装をひらひらさせつつ喜んだり。 「ともかく、参式の性能を限界まで試す」 すっ、と支給された魔槍砲改・参式を構えるミル・エクレール(ib6630)。霞んでいた表情だったが、瞳に決意が宿る。 「前に私やミル達で考案した武器がようやく試作品となった感じね。‥‥まだ市場に出回る前の武器を使えるのは嬉しい」 同じく魔槍砲改・弐式を持つリラ=F=シリェンシス(ib6836)も頷いた。共にエルフで、魔槍砲の改良に携わった仲である。 「へえっ、アンタらがエルフさんか。‥‥故郷の武器になるのかな。とにかく、そっちが依頼主の望んだところだ。頼むぜ」 「まあ‥‥全力を尽くす」 やはりもともと派手な性格ではないのだろう。下駄路に期待されると、ミルは恥かしそうに淡々とした口調に戻るのだった。 そしてこの時、誰も想像していなかった。 まさかあのようなことになろうとはッ! ● 「さってとー。村人さんに被害が出る前にちゃちゃーっとやってまおかー?」 ひらっ、と潜伏場所に飛び込むニッツァ。エンジェルハープで念のために武勇の曲を弾いておく。隣には、メグレズ。 そして、配置完了早々にアヤカシ「朧ネコ車」が現れた。見た目や外観は朧車そのものである。 「来た!」 「うおぉっ!? ほんまににゃーにゃー言うとるっ!? 中で猫でも飼うとるんか〜?」 そのメグレズが叫び、ニッツァが「堪忍してえや」と驚いた。 ガガガ‥‥という走行音に交じり、にゃ〜にゃ〜♪という鳴き声も交じっているのだ。 「速いな、オイっ!」 小屋の窓から覗いていた下駄路は、予想外の早さに焦っていた。 ここから、開拓者たちは瞬間の戦いを強いられることとなる。 「こっちだ、アヤカシッ!」 まずは潜伏場所からメグレズが飛び出し、昼間にクロウと一緒に掘った溝の前に立ち咆哮。 これで、アヤカシは毎回爆走する直線ルートから上り勾配のややきついこの斜面に向かってくるはずだった。 しかしッ! 「あ〜っ! にゃんきち酷いよ〜っ」 魔槍砲改・弐式に銃架「金輪」を三つ取り付け想定停止場所を狙撃する準備万端だったルゥミがぶーたれた。 なんと、朧ネコ車は咆哮を無視して直進したのだ。 いや、車体を斜めにしつつもあまりの速度のため曲がることもできず直進しているのだッ! ここで、改めて戦場を見てみよう。 クロウがおびき寄せ場所に指定したのは、朧ネコ車の突進してくる道に向かって、右手。 道を外れた想定進行ルートの左右に開拓者は展開するという配置である。下駄路の潜伏する小屋は、道と想定ルートの真ん中の角度にある。 「ミルっ。右車輪はやめて左車輪を狙おう!」 長身のリラが立ち上がると、戦陣で新たな指示を出す。想定ルート左側に潜み右側車輪を集中砲火する申し合わせを、リラとミルはしていたのだ。咆哮の誘き寄せ失敗に、いち早く作戦変更を告げる。 「とにかく、機動力をなんとか‥‥」 ミル、魔槍砲改の初撃を放つ。 ごうん、と結構な手応え。銃口の手前空間から火球がすっ飛んでいった。 「まずはこっち」 リラはファイアロックピストルをサリックで早撃ち。 これの二発で右側前輪は吹っ飛ぶが、むしろ状態は悪い。 本格的に道を外れて、民家に突っ込むルートを辿っているッ! 「にゃんきち〜っ!」 ルゥミが矢盾をそりにして武器を載せ、くくりつけていた縄を引いて射程内へと走る。 「まったく、厄介だわね」 ミレイの反応もなぜか早い。出る。 「くっ。王都に居る連中が装備してるのは見たこと有るが、射程は短かったよな‥‥」 クロウも出た。 以上三人が、想定ルートの右側に潜伏していた。射程よりどんどん離れていくので動かざるを得ない。 この配置を、多くの開拓者が後悔していた。 その、瞬間だったッ! ● 「これにネコという単語をつけるのは間違いです。あれは断じてネコではありません」 隠神刑部の外套をなびかせた生が堂々と立ち、杖・フロストクィーンを掲げていた。 ――ドッ・ゴォン! そして、凄まじい衝撃音。 生のアイアンウォールがギリギリ間に合ったのだ。射程があったことと、生の配置が想定ルート左側だったのが幸運だった。 「止まった!」 開拓者全員の声が響く。 ここから展開は早い。 ほぼ全員が、アイアンウォールを砕き止った朧ネコ車を狙っていた。 ルゥミが再びうつ伏せで弐式を発射。 クロウもここが勝負どころと壱式で狙う。 ミレイに至っては、そのまま突っ込み距離を詰めると魔槍砲改・弐式の切っ先を敵横っ腹に突き立てた。 「おっと、俺もや。脚が止まればこっちのもん、ってなぁ♪」 ニッツァ、ハープから弐式に持ち替えた分遅れた。 そして、弐式三丁、壱式一丁の銃声が響くッ! 「きゃあっ!」 まずは槍を突き立て零距離射撃をしたミレイが吹っ飛んだ。火力重視の弐式の威力は伊達ではなく、刺した刃先が折れてミレイ自身が反動で尻餅をついていた。ルゥミのしっかり銃口を固定してから放った一撃とクロウの手堅い射撃も着弾しており、刺した対象が大きく揺れたのも一因だ。ニッツァの火球は、揺らいだ車体の隅を掠めた。狙いが外れた、というか反動で照準が微妙に狂うようだ。 ともかく、この集中砲火で完全に止まっていた朧ネコ車はがたんと跳ねてから残った三つの車輪が外れ、大地に落ちた衝撃で屋根も揺らいだ。がたがたになった車体の隙間から順に、黒い瘴気に戻っている。 「‥‥猫のように跳んで交わすかもと思ったがな」 「うんっ。呼吸法とターゲットスコープは使えるね」 2発目を用意していたクロウが物足りなそうに言い、ルゥミが密かに試していたスキルの納得いく効果――もっとも、彼女はノリで力を発揮するタイプだが――に満面の笑顔を作った。 その、時だった! まさか、この事態を誰が予想しただろう。 開拓者は、さらなる戦いを強いられることとなる。 ● ――にゃ、にゃ〜ん☆ なんと、くたばった朧ネコ車の中から多数の猫が躍り出てきたのだった。 「ちょっと、何すんのよっ!」 まず、一番近くにいたミレイが爪の集中砲火を浴びた。どうやらアヤカシの化け猫である。 「ミレイさんっ」 「これ以上はさせませんっ! 生がレ・リカルでミレイの回復を図り、メグレズがベイル「翼竜鱗」を前面に構え突っ込んできた。 「何や何や、ホンマに中で猫飼うとったんか〜?」 ニッツァ、戦闘のリズムが変わったことに対応し、騎士の魂を奏でて後退。 「化け猫‥‥。止め用だったけど、ここで」 リラは、ファイアロックピストルから弐式に換装。ぶっ放つ。 が、ここで悲劇が。 「きゃっ! 何コレ?」 撃った後に、がっくりと力が抜けたような状態に陥った。胸が大きいが、胸が重いわけではない。 「‥‥まさかこれが、宝珠の暴走?」 改良中に聞いていた、使用者の練力を消費し尽くすという現象。もちろん防止用に逆止弁を取り付けていたのだが、運悪くこれが機能しなかったらしい。‥‥火球が命中し、化け猫を倒したのは収穫だったが。 「‥‥小回りが利く参式の出番、だよね」 とにかく速く大きく威力のあった敵から、とにかく小さくすばしっこい敵に変わったことで、連射特化の参式を持っていたミルが連射に踏み切った。 「あ、さすがにちょっと限界、かな」 ミル、手応えの悪さで顔に影が差した。 連射できるのはいいが、初撃の反動が残り次弾の狙いに時間が掛かること、銃自体が連射に耐えられない手応えがあったことなど問題点を感じたからだ。敵も一発では屠っていない。 「どのみち、三発までだし‥‥」 短筒「一機当千」に切り替えるミルであった。 「私に掛かってきなさいっ!」 ここで再び、メグレズの咆哮。 これは決まった。 「今です! 包囲と攻撃を!」 刀「鬼神丸」も構え十字組受で完全防御。皆の体制の立て直しと反撃を待った。 「そない可愛らし鳴いてもアカンでぇ? ほんまもんの猫以外に優しする気は無いんや。残念やったなぁ」 ニッツァが魔槍砲の槍で追ってきた敵を払う。 「よし、いいな」 クロウも最後の一発を放ち、あとはシャムシール「アッ・シャムス」で戦う。 「まったく‥‥」 ミレイは薙刀「巴御前」で逆袈裟。地奔で一撃離脱の敵の引き際を叩く。 「あたい、頑張るからね」 ルゥミは、鳥銃に持ち替え単動作で連射。 メグレズを囮とした戦法で、次々と化け猫を退治していく開拓者であった。 「‥‥魔槍砲で延焼などもなかったです。これで終わり、ですね」 すっかり静かになってから、周囲を警戒していた生が声を掛けた。 これ以上の敵もいない。 村はこれで、静かになった。 ● 「見てたが、ちょい重いんじゃねぇか?」 依頼の村で感謝の夕餉を囲む開拓者たち。酒を飲みつつ、下駄路が切り出した。 「狙いをつけるのに、銃架を使ったり間が長かったり。‥‥あと、槍として使ってなかったってこたぁ、槍としての使い勝手が悪いってことだろうなぁ」 外から見ているとそういった点が気になったようだ。 「威力が大きいのはいいんだけど、疲れるわね。やっぱり。‥‥あと、暴走にも参ったわね」 弐式を使っていたリラが言う。過去には機械修理の仕事もしていたらしい。決して重さに慣れてないというわけではない。 「っていうか、ダメじゃん? あんなひ弱な槍じゃあ」 ミレイは手厳しい。まさか突き刺して砲撃して折れるとは思ってもみなかったようだ。‥‥もっとも、威力だけ強化して、槍の方を強化していたかどうかは謎であるし、射撃の瞬間に対象が動くという不運もあった。 「呼吸法とターゲットスコープは使えたよっ。ギルドに報告しておくよ!」 「ルゥミさん? 射程はいいとして命中は‥‥」 「こまけぇことはいいんだよ」 クロウの突っ込みに、威勢よく言うルゥミ。大好きだったじいちゃんのように茶をずずずとすする。 「でも、普段使わん武器使てみるっちゅうんもおもろいな」 ルゥミの元気の良さを見て、ニッツァもにこにこ。っていうか、大抵にこにこしているが。ついでに、「ほぉぉ、この料理もいけるなぁ」とか料理好きの血も騒ぐようで。 「リロード無しで三発‥‥。弐式はやはり一発か。クロウ? 壱式は?」 なにやら研究熱心なのは、ミル。淡い表情をするが、こういう時は瞳に強さがこもる。 「俺としちゃ、胸元の合わせの乱れた姉ちゃんのぶっ刺し撃ちと、ちっこいお嬢ちゃんの銃架を使った射撃とかで変化を出しながら、戦闘風景を描写するな。‥‥使い勝手の方の報告は、みんなに任せるぜ」 「何よ、その胸元の合わせの乱れた姉ちゃんて‥‥」 下駄路の表現にぷんすかへそを曲げるミレイ。っていうか、今も胸元の合わせが乱れてますよ? 「もちろん。‥‥やっぱ、連射性活かす為にもう、少し軽い方が良いな‥‥」 上の空で返事をするミル。実は戦闘中も「反動も少なかったら、夢の小型化も‥‥」などとつぶやいていたことは、内緒だ。 ちなみに、彼女が書いているのは ・槍として使い勝手が悪い? ・弐式は刺して放つには強度不足? ・反動軽減が少なく照準が微妙に狂う? ・重く取り回しがしにくい? ・暴走防止用の逆止弁が甘いのがある ・参式の威力は結構低くなっている ・参式の連続使用には強度に不安? などである。 矛盾する要素もあるので、これからどうするかは関わる者の考え次第だろう。 そして、メグレズの反省の言葉が聞こえてきた。 「しかし、朧ネコ車の速さは咆哮で向きを変えられないほどとは思いませんでした」 ここで、書き物をする手を止めるミル。 「でも、中の猫はアヤカシの化け猫だったなんて‥‥」 猫がいるかもとまでは思ったが、そこまでは読めなかったと反省の弁。 「まあ、俺らに向かってきただけで村には悪さもせぇへんかったし」 後片付けがいらなかった状態にほっとするニッツァ。 「退治されて当然です」 そして、ぴしゃりと言う生。 「猫とは、こういう可愛いものを言うのです」 にゃーん、と寄って来た猫を抱き上げる。 案外、猫好きなのかもしれない。 |