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■オープニング本文 ● 場所は天儀、神楽の都。 コーヒーの香りが漂う珈琲茶屋南那亭にて。 「真世君、アル=カマルだそうだよ」 泰国南西部の南那と珈琲の通商協定を結ぶ、南那珈琲通商組合の林青(リンセイ)が楽しそうに話している。 「気候や風俗が天儀とはずいぶん違うらしい。かなり暑いそうだが、泰国の南那ともまた違う。‥‥ありがたい話だよ。また新たな商材にありつけるかもしれない」 「あれっ。暑いなら、珈琲豆もあるんじゃないですか?」 南那亭めいど☆の深夜真世(iz0135)が首を捻りながら言う。 「ああ、あるだろう。‥‥だが、アル=カマルで珈琲の取り引きはしないよ? 我々はこれまで通り、南那の『香陽』ブランドに力を入れればいい。‥‥なぁに、これで珈琲の認知度が高まる。我々にとっては悪い話じゃない」 南那がすっかり好きになっている真世は、ひとまずほっとするのであった。 「それより、まだまだ向こうの民は我々に懐疑的な見方もあるようでね。開拓者ギルドは、出張所を作って困った人たちを助けることで信頼を得ようとしているらしい」 「ふうん‥‥」 真世、この辺りの話は店を贔屓にしてくれる開拓者ギルド職員からちらとは聞いている。好奇心がうずきはするが、戦闘依頼に飛び込んで下手に失敗して無様をさらすわけにはいかないと自重してたり。‥‥先の馬賊依頼で醜態をさらしたあとなので、なおさら。興味のない振りをするにとどめる。 「ただね‥‥」 しかし、林青は開拓者ではなく旅泰の商人だ。視線が違うし、こと商売のこととなるとたくましい。 「人助けもいいが、これは商人の領分ではない。我々が向こうの人にしてあげる事は『これから楽しい事が始まるぞ』という、期待感やワクワク感なんだよ」 「う‥‥。ふんふん」 楽しいこと大好きな真世、あっさり林青の話術にはまる。 「人はいつだって、楽しいことや嬉しいこと、そしてちょっぴり刺激を求めるだろう? これに貧富の差はない。『困ったこと』は開拓者が解決するだろう。そして一方で、我々が『あ。この人たちと一緒に仲良くすれば、こんなワクワク感があるんだ』と思わせる。‥‥そうすることで、新たな取り引きも生まれるんだよ」 「う〜ん。簡単に言うけど、そのワクワク感をどうやって感じてもらうんですか? 私たちだって、毎日ワクワクしてるわけじゃないのに」 「お祭でいい。しかも、お金が自然に動くこと、誰が見ても分かりやすく、不快に思わず、それでいて、ちょっぴり期待感が持てるようなのが最良だな」 にこにこ言う林青。すでに答えはあるようだ。 「真世くんも、最近楽しんでるし半年前には儲けたと聞いたよ」 にやっ、と指差す林青。さすがの真世もここで「あっ!」と得心がいったようだ。 「競馬!」 「そう。アル=カマルで、こちらの馬と騎手が各国代表として出場し、理解を深めてもらいつつお互いを知ってもらう手助けとなるような競馬をするんだ。‥‥きっと喜ばれるぞ!」 実際、この読みは大当たりだった。 準備を進める開催予定のアル=カマルの都市は、競馬交流戦の話題で持ちきりだった。 まだ知らぬ三つの儀からやって来て雌雄を決するのだから、「四儀杯競馬」だとの盛り上がりである。 さあ、機運醸成は成った。 あとは、出場してくれる騎手と馬を待つのみである。 出場者は、基礎能力値「5」を速度・根性・気性に振り分けることで馬選択をして名前をつけ、逃げ・先行・差し・追込から戦法を選んでレースに臨む。どの国の代表として戦うか立場をはっきりするとより盛り上がるだろう。 砂国四儀杯競馬の出走枠は、11枠。 そのうち1枠は深夜真世、もう1枠は現地の神威人騎手となっている。 優勝者には称号の誉れと、副賞の各種ボーナスが。2位にも称号と各種ボーナスが贈られる。3位には、各種ボーナスのみ。 勝負は「戦法>振り分け数値>プレイング」で決する。 |
■参加者一覧
萬 以蔵(ia0099)
16歳・男・泰
斑鳩(ia1002)
19歳・女・巫
鬼灯 仄(ia1257)
35歳・男・サ
皇 りょう(ia1673)
24歳・女・志
真珠朗(ia3553)
27歳・男・泰
新咲 香澄(ia6036)
17歳・女・陰
浅井 灰音(ia7439)
20歳・女・志
龍威 光(ia9081)
14歳・男・志
羽流矢(ib0428)
19歳・男・シ |
■リプレイ本文 ● アル=カマルのさる都市。 「なあ、異国の馬乗りが来るんだってな」 「おおよ、競馬でどっちが強いか勝負するらしい」 「ま、ここの馬が強いだろうな。相手さんは遠いとこから来るんだ」 「決め付けるのは良くない。旅人には優しくあれ、だぜ」 「その辺は心配ない。わざと地元の馬は一頭にしてるらしいからな。当然、警戒されるだろう。ちょうどいいハンデになるし、これでウチの馬が勝ってもよその騎手も文句は言うまいよ。ウチの馬はこの時点で相当不利なんだしな」 住民たちはこれから行われる「四儀杯競馬」の話題で持ちきりだ。 今日まで酒場で話題になり大いに人々は集い飲み、普段は競馬に興味のない人まで会話に加わるほど共通の話題となった。経済的にも敬愛精神醸成のためにも大いに効果があった。 しかし。 「なあ、どうしてそこまでしてよその騎手に有利にしてやらなくちゃならないんだ?」 不満の声もある。よほどの力量差がないと、地元の騎手は勝てない辛い勝負に晒されているのだ。 「‥‥紳士かどうか。これから付き合って有効で有益な関係を築けるかどうか。そして、隣家の友としてふさわしいかどうかを量るつもりだろう」 これからレースに臨む開拓者、責任重大である。 ● さて、競馬場の裏舞台。 青い長髪が、純白の純白の陣羽織と共に揺れる。 厩舎の通路を行く後姿が止まったのは、ひひん、と馬が鳴いたから。 「コオリチャン、調子はどう?」 愛馬に声を掛けたのは、浅井 灰音(ia7439)。 しかし、いつも落ち着いたその横顔が曇った。自ら騎乗することになる馬が落ち着かないのだ。何度も足を踏み代えている。 「不安に思うことはない。場所が変わろうがやることは一緒。自分の力を信じるだけ」 ニンジンを食べさせて撫でてやる。優しい言葉には信念がこもる。外の世界に刺激を求めて家を飛び出た彼女も、そうして今までやってきた。その思いが伝わったのだろう、コオリチャンも次第に落ち着きを取り戻していた。 ここで、新たに厩舎に入ってきた人物がいた。 「‥‥ダインさん、親切にありがとう。向こうの儀について分からないこととかあったらなんでも聞いてねっ!」 「新咲さんは研究熱心だ。好敵手が来てくれて嬉しい限りですよ」 元気に礼を言う新咲 香澄(ia6036)と、現地の騎手であるエルフのダイン・マタである。どうやらコースの下調べをしていたらダインと出会い、雑談するうちに仲良くなったようだ。 「香澄さん?」 「あ、やっほー。‥‥あのね、スタートから第一コーナーまでは距離があるから枠順は大きく影響しないんだって。運じゃなくって、実力勝負になりそうだよ」 「流石に経験者は違うね。この状況でも落ち着いているみたいだね」 ふ、と優しい眼差しをする灰音。香澄は天儀の安須杯競馬で優勝している。有益な情報を出走者で共有しようとするあたりに貫禄を感じ、同じ小隊仲間として改めて誇りに思ったのだ。 ● やがてそれぞれの馬を引いて出ると、すでに萬 以蔵(ia0099)がいた。騎乗する鏡王・黒にまたがりまずは緩やかに流している。 「戦闘用と競馬用だと、仕様が違うのはしょうがないよな」 以蔵、最近騎乗戦闘の稽古に熱心だ。実際に戦闘もした。今回は速く走ることのみを目的とする。変わる勝手に対応しようと早くから熱が籠もる。 「ダインさん、ですか?」 新たに斑鳩(ia1002)がやって来た。騎乗は、トライデント。鹿毛の牡、五歳馬だ。 「私、斑鳩と申します。巫女を生業としております」 「その民族衣装は‥‥」 「泰国のものですが、これでもれっきとした天儀人なんです。見習い時代は石鏡という巫女の故郷とも言うべき地で修行をしておりました」 白い旗袍を着ていたので勘違いされたが、淑やかに説明する。 「‥‥実は冥越が故郷で、特産品は魔の森とアヤカシですっ」 「そりゃ特産品じゃねぇだろ、斑鳩」 続けてボケる斑鳩に突っ込んだのは、鬼影に乗る鬼灯 仄(ia1257)。 「異文化交流といえば酒と女に博打かね。博打は今からやるとして、こっちの酒にゃ興味あるねぇ」 「そうそう。新しい土地で新しいものを見ると元気がでますねぃ〜」 「うんっ。楽しかったよね、光さん」 しみじみ言う仄に続いて、観光用の馬を引いて龍威 光(ia9081)が歩いてやって来た。深夜真世(iz0135)も一緒だ。どうやら砂漠で砂上の騎乗を試したりのんびり市場観光をしていたようだ。 「そうですねぃ。前の依頼で落馬して落ちこ‥‥な、なんでもないですねぃ」 どうやら前に失敗した真世を気遣ったらしい。光、やさしいところがある。 ここでふらっと、真珠朗(ia3553)がやって来た。 「さ、今日もらぶりーな真夜お嬢さん。あたしの胸に飛び込んでおいで!」 「それよりも、えいっ!」 「このターバンという帽子はどうですかねぃ?」 両手を広げる真珠朗。これを無視して真世が真珠朗の帽子を取り、光がすかさず散策土産のターバンを巻こうとする。 「なあっ、そろそろ準備しないか?」 そこへ、羽流矢(ib0428)が呼びに来た。 「あ、ダインさんですか? 俺は天儀は陰殻の出身、シノビの羽流矢でっす。宜しくっ」 羽流矢、明るく前向きで今日も元気がいい。香陽杯では伸びなかったが、今回はリベンジに燃えている。準備を急かした理由である。 「さて、愛ちゃーじも終わった所で、いっちょヤりますかね」 真珠朗、真世にターバンの位置を直させる振りをして抱き付き満足そう。真世はその背後で、「ああん、結局こうなるのね」とか。 そして、更衣室。 「‥‥い、いや。恥かしくて出遅れてたわけではない、断じて」 中では、斑鳩のような白い旗袍姿の皇 りょう(ia1673)がもじもじしていた。愛馬の白雲が泰国出身なので、泰国代表としてアピールするつもりだったらしい。 とりあえず勝負服に着替えて、いざ出走。 ● 観客席は期待でざわついていた。 出走表は、外枠から順に以下の通り。 (枠/馬名/騎手/予想戦法/代表) 11/青嵐/羽流矢/追込/天 10/白雲/皇りょう/先行/泰 9/イースタンスカイ/新咲香澄/追込/天 8/鬼影/鬼灯仄/差し/ジル 7/トライデント/斑鳩/逃げ/天 6/エスメラルダ/ダイン・マタ/差し/アル 5/ぢごくうさぎ/真珠朗/逃げ/ジル 4/静日和/深夜真世/先行/泰 3/十六夜/龍威光/逃げ/天 2/鏡王・黒/萬以蔵/逃げ/泰 1/コオリチャン/浅井 灰音/追込/天 やはり一番人気はダインのエスメラルダで、二番人気は香陽杯優勝で気性の良さそうな馬である皇りょうだった。 ● さあ、各馬ゲートインし、出走のファンファーレが鳴り響く。超満員の客席からは「おおお」と大きな期待の声が上がる。 ――パァン。 そしてスタートの空砲。 一斉に飛び出す各馬。出遅れはない。 いい飛び出しを見せたのは真世の静日和。反応がいい。 おっと、その両脇から真珠朗と光が伸びてくる。先手は譲れないと鞭。さらに以蔵、斑鳩も。外からはりょうがいい反応を見せたが、この先手争いには積極的に加わらず。同じく外の羽流矢、そしてその内の香澄は我慢の競馬で下げながら内側へと整える。最も内側だった灰音もじっくりこの位置に。後方組の前には仄とダインが様子を伺うという展開だ。これは長い隊列になりそうだ。 再び前を見てみよう。 先手争いが激しい。 「鍵はスタート、理想は単騎逃げだけど‥‥」 斑鳩、後方を気にして方針転換。若干下げる。 それほど逃げ馬が多い。 以蔵、光、真珠朗、斑鳩の四騎で競り合いつつ、速いレース展開となっている。 「おいらのは速度が命だから只管に逃げまくるしかないよな」 以蔵は下げるつもりはない。 「全力全開でがんばりますねぃ!」 光も同様だが、無理はしない。 「‥‥これは、前は潰れるな」 中団後方のダインはこの競り合いをそう見る。それだけペースが速い。これは騎手全員が感じていることでもある。 ――ではなぜ、意地の張り合いをせずに下げないのか? 「何から逃げようと、自分からは逃げられないって話でして。困った事に」 今、先頭に立った真珠朗の呟きがその理由である。 逃げ馬は一般的に、力を溜めて最後の直線にかけても追込馬の加速に敵わず勝負にならないのだ。 だから、逃げる。馬を信じる。 逆に、後方。 「ここはじっと我慢だよっ、イースタンスカイ」 「よしよし、機を狙って落ち着いていこうな」 前を見つつ呟く香澄に、愛馬の首筋ぽんぽんと撫でてやる羽流矢。 追込組も、「届くのか」と思いつつ力を溜める。馬を信じて。 第一コーナーから第二コーナーを過ぎる、次第に列が落ち着いた。 先頭は内の以蔵とほぼ並ぶ真珠朗、三番手に光、やや遅れて斑鳩。間が空いて真世にりょう、さらに間が空きダイン、仄。そして香澄、灰音、羽流矢と続いている。 ● それにしても、速い。 いくら逃げ馬は逃げないと勝負にならないとはいえ、無茶な逃げがもつ距離ではないぞっ! 「だからこそ行く。かっちょ良く勝とうなんて思っちゃいないんですよ。こっちはね」 一体何から逃げてるのか、ついに真珠朗が先頭に立った。 もっとも、真の狙いは後続馬の焦りやリズムの乱れである。乱戦好きの彼らしい策だ。 「おいらが撫でてやった。入れ込みもなく調子もいいよな」 続く以蔵も問題なしの判断。もしかしたらこのままがありうるぞッ! そして、白地に黒ラインの勝負服が上がってきた。斑鳩だ。 「最後のスピード勝負で、必ず前を何とかするチャンスはあります」 ハナに立てなかった分、トライデントの持ち味である根性に懸ける。 「先行の利点を活かしてポイントを抑えるですねぃ」 光は無理をせず。流れと位置取りを気にして進めている。 「ああん、静日和ちゃん。前についていって〜」 「真世殿。単独で気持ち良く走らせてやる事こそが肝要」 ぢたばたする真世。これを見かねたりょうが声を掛けてやったり。りょう、道中の順位にはこだわらない構え。自然体である。 「こりゃ、願ってもねぇなぁ」 後続先頭のダインに続いてやや外寄りにつけた仄は、会心のレース運び。馬群に呑まれると前馬の蹴り砂がかかったりするからなどと、とにかく揉まれる事を嫌っていたが運良く気持ちよく走ることができている。 そして、追込組は届くか。 運命の最終コーナー。 ● 「よしッ!」 観客席からは、力強い、そして熱のこもったそんな声がわいた。一番人気が差し位置のダインだからである。 つまり、前の足が見るからに鈍り、後ろのペースアップがそれだけ目覚しかったのだ。 「逃げて、逃げてっ!」 鞭を入れる斑鳩。ついに以蔵と真珠朗を抜き去り先頭に立った。 「ラストですねぃ。力を貸してくださいですねぃ」 光の思いが伝わり十六夜も続く。 「まぁ、あたしの相棒になったのが運のつきと思って、もうちょっと頑張ってくださいねぇ。美味しい人参買ってあげますから」 「力の限り尽くせば結果は必ず出るよなっ」 真珠朗、以蔵も粘るが、光にもかわされた。 いやッ! さらに後ろは凄まじい! 「どんぴしゃり。大きく外に出す必要もねえな」 スペースがあり自由の利く仄が根性で伸びて来た。位置がいいッ! 「さあ、ゆこうぞ。我等に武神の加護やあらん!」 並ばれたりょうも鞭を握り締めて並んだまま抜かせない。そのまま前に襲い掛かる。ダインもすぐ後ろから前を伺っている。 そして、大外っ! 「さぁ、こっからごぼう抜きを見せるよっ」 「よし、今だ行くぞっ」 香澄が鞭を一発入れて前へ持ち出すっ。羽流矢がぎゅっと足に力を込め合図のムチ。 速い・速い・速いっ。 高速レースはもう速さの問題ではなくなってきている。最後にモノを言うのはスタミナと根性だ。姿勢を低くした羽流矢が馬の集団の外側をとり 風を切って一気に追い上げて行くッ! 「‥‥コオリチャン?」 灰音も後続から二人に続いて伸びていたが、予想外の速度に目を丸くしていた。 「そうだね。勿論目指すは優勝だよ」 改めて、灰音が風になる。 ――おおおおおっ! わき上がる観衆。 それだけ最後の直線が熱いっ。 先頭だった斑鳩は根性を見せるが、やはり逃げ組はスタミナを使いすぎたか、一気に差し馬に追い抜かれた。 代わって先頭は、仄。ついていたダインは荒れたルートを通ったか沈んだ。りょうも根性に欠けたか伸びが足りない。 そして圧巻、追込組がゴール直前で襲い掛かる。 「届く、か? いや届かせるっっ、青嵐っ」 追いすがる羽流矢。掛けた言葉は励ましか祈りかッ! そして今、捉えたっ。 「よしっ。もらったろ?」 会心の仄の声。 羽流矢、無念。並んで追い抜いたのは、ゴールした後。根性の勝負は、終始好位置につけていた仄だった。 確定順位は、仄、羽流矢、灰音、香澄、りょう、ダイン、斑鳩、以蔵、真珠朗、光、真世だった。 ● 「雇われ騎手だよ。ジルベリアの葡萄酒に雇われたのさ」 優勝した仄はそんなことを言って笑う。「細けえことは気にすんなよ」とも。 「それより、勝利の美酒は最高だな。なんていう酒なんだ?」 どうやらアル=カマル特産の酒が気に入ったようで。 「酒は酒ですよ?」 ダインはそういう。とはいえ、明らかにどの儀の酒とも違う。何か区別する名称がほしいものだ。 「みんな、お疲れ様。いいレースだったよ。‥‥真夜さんも、レースに出れるくらい成長してくれてうれしいよっ♪」 香澄は、競馬の醍醐味ともいえる逆転レースの興奮そのままに出場騎手を労っていた。後日談だが、この都市の住民もご当地騎手が負けたにもかかわらず今回のレースを絶賛したという。競馬好きとはそういうものかもしれない。 「レースはお疲れ様ですねぃ」 一方、厩舎では光が十六夜を労い手入れをしていた。いや、ほかの出走馬にもそうしている。馬好きというのはそういうものかもしれない。 「異文化交流はまずは食べ物だよなっ」 羽流矢は食い気。もっとも、梅干と芋幹縄で作った味噌汁をこちらの人に味わってもらったり。食べるのが好きな人というのはそういう以下略。 「店主殿、このお品書きの上から下までを」 って、りょうさん。あなたもですか。 「サンドワームのほかには、サソリなんかもいるなぁ」 「へえ‥‥それは楽しめそうだね。そのアヤカシと戦う機会、あればいいけどね」 灰音は、アヤカシの情報収集。バトルマニアというのは以下略。 「馬関係で何かいい話はないかい?」 以蔵も一緒に情報収集。こちらは馬に限ったみたいであるが。 「真夜お嬢さんも食べますか?」 「私、馬じゃないモン」 「扇情的な踊り子もいるみてえだし。こっちも期待だな」 「何でがっかりした目で私を見ながら言うんですかっ!」 真世は真珠朗にツンしたり仄に突っ込んだり。 そんな様子を見て、斑鳩とダイン、そして現地の人は心から笑い合うのだった。 後、この都市では開拓者は快く迎えられたという。 |